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お前が　その日まで生きて来た事の全てを

全部、


握りつぶしてやる。


お前の目の前で。

お前が俺にした事を、俺は許さない。
お前の人生なんか、何もかもが無駄だったと後悔させてやる。

俺を見くびった、その罪の重さを思い知れ。



不器用な恋人の、熱く、切ない想いが　雫になって
体に降り注ぎ、
空気になって　魂を包む。

想いあえば想いあうほど、泣かせてばかりいた。
自分が惹かれなければ、
他の誰かなら、この恋人はもっと　幸せだったかもしれない。

そんな脆弱な感情さえ浮かぶ。

誰よりも、何よりも大切だから　迷いなどなかった。
それなのに。

辛辣な恨み言。
そうとしか聞こえない言葉が　ゾロを大きく揺さぶった。






それは、とある妙に蒸し暑い気候の島に立ち寄った時だった。


時に、その土地独特の病気が存在する。
その島には、「７日病」と呼ばれる　治療法の確立していない病気があった。

感染して１０時間後に発病。
体温が徐々に上昇し、３日目で４０度を超える。
同時に酷い鉄分を損なう貧血を起す。

４日目、心臓の筋肉が侵され心筋炎を起こし、
５日目、肺、胃から出血し、肝臓の機能が低下する。
６日目、腸などの内臓からも出血、極度の貧血と高熱で意識が完全になくなる。
７日目、多臓器不全で死亡

そう言った経緯を辿って、患者は死亡する。
いまだ、特効薬が開発されず、ただ、奇妙な民間療法だけが
その病気の治療法だった。



ログは、４０時間。


麦わらの一味は、その島に碇を下ろしていた。
コック・サンジと世界一の剣豪を目指すロロノア・ゾロは
賞金首を狩るために、二人で　この島に


この島の、とある　宿に
真昼間から　裸身でベッドの上にいる。

お尋ね者を狩るのは夜の方が手っ取り早い。
略奪をしようにも、めぼしい相手も見つからず、

特別な間柄の二人は、陸の上での情事に溺れている最中だった。


体の下で喘ぐ、恋人と繋がったまま、ゾロは
その白く汗ばんだ体を掴んで　体位を変えようと持ち上げた。

「やめろ、バカ！」


呼吸を乱し、額に汗を滲ませていながら、サンジが拒む。
それでも　聞く耳など持たない、と言わんばかりにゾロは無言で
サンジを抱き上げた。

「痛エっ・・・。」

サンジの顔が苦痛で歪み、小さな悲鳴をあげる。
ゾロの腕から逃げるように体を捩った。

「悪イ。」
腕を離し、シーツの上に戻してから　ゾロは全身をサンジに預けるように
深く密着して口付ける。

薄い胸が上下に激しく動き、ゾロを舌先で煽る。
サンジの痛みのない体位など、この向き合って抱き合う方法しか
今は判らない。

もっと、違う角度で、自分の愛撫に悶える姿を見たいのに。

そう思いながら、無理強いできないのは、
サンジがただ、性欲だけで行為を受け入れているのではないと
ゾロが気が付いたからだ。


性欲を満たすだけでサンジを抱いているつもりはないけれど、
それでも、サンジを見て欲情し、堪えきれなくなる事は事実だ。
その欲望の赴くままにサンジを抱いて見たい、と思っているけれど、

実際、サンジはゾロとの行為を　排泄行為だとも、
性的欲求を満たすものとも　思っていない、

ゾロと自分の間に存在する　誰よりも深い絆を確かめる為、
自分自身でより深く自覚するため、
素肌を晒す事で　よりお互いの真実の姿を見詰め合う為に、

ゾロに身を任せているのだ、と　
サンジに言葉で教えられたのではなく、ゾロ自身がサンジの肌から
感じ取った。

時には痛みを伴う行為の中でもサンジは
その痛みごと、ゾロを受け入れていたけれど、
自分の男としてのプライドを羞恥で塗りつぶされるような体位だけは
頑として受け入れない。

結局、サンジの言うままに、望むままに、
ゾロは行為を進めて行く。



そして、ログが堪る予定時間が迫り、金も充分に手に入れて、
二人が船に戻った。

「ナミさんとはぐれただと？」

ナミは　厄介事を背負い込むルフィを押さえる為に
常に　陸では　ルフィと行動する。
最も危険だが、最も安全だ。

ナミも、自分の身は自分で守れる力はあるけれど、
やはり、一人での行動は、多額の賞金が掛けられた、
麦わらの一味の航海士として　凄腕の賞金稼ぎに狙われたり、

若い女性に付きまとう、様々な危険がナミを襲うとも限らない。

「そうなんだ、先に船に帰ってねえかな、と思って帰って来たんだけど、」
「まだ、帰ってねえんだ。」
「どうしよう、サンジ」とルフィも困惑した様子だ。

「どうしようじゃねえだろ。」とサンジは忌々しげにルフィを一瞥し、
「チョッパーが帰ってきたらすぐに見つかるだろうが。」
「なんの為にナミさんの側にいるんだ、役立たず。」とひとしきり、
ルフィに罵詈雑言を浴びせ、

結局、チョッパーが戻ってくるのを待ち、ナミを探す為に町に戻った。



「すばしこい女だな。」
ナミを町外れの朽ちかけた　廃屋の中に追い詰めた賞金稼ぎ、
初老の色のやけに浅黒い男が呆れたように溜息をついた。

「あたしなんて、狩っても対した金額にはなんないわよ、おじさん」
「額がどうのこうのじゃねえ、お前が麦わらの一味だって事が重要なんだよ。」
「お嬢ちゃん」

真っ青な顔ながら、ナミは男の隙を密かにうかがい、それを悟られないように、
媚びたような目をして見せた。
けれど、男は動じない。

「俺は生け捕り専門だ、安心しな」と男は薄笑いを浮かべて
銃をナミに向ける。

誰か、助けて

絶体絶命、回避不能と、思わず、目を瞑った。

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