「嘘なら許さねえ。」
「そう言ったよな」
「俺を騙そうとした落とし前、つけて貰うぜ。」
ゾロがそう凄んだ瞬間、サンジは床に引き倒された。
肩にかかっていただけのシャツが剥ぎ取られる。
ゾロの体重が体にかかる。
(!)。
何をしようとしているのか、瞬時にわかった。
「俺とヤったらお前まで」感染する、と言いかけたサンジの口に
手ぬぐいが乱暴に突っ込まれる。
息が出来ない、
胸に激痛が走り、目がかすむ、
けれど、
サンジは抵抗した。
ゾロに伝染す事など 絶対に出来ない。
ゾロの命と引き換えに生かされるくらいなら、
(死んだ方がましだ)と思った。
だが、高熱を孕む体は、いつもの半分も動かない。
下半身に冷たい空気を感じ、ゾロが自分を全裸に剥いだ事に
気がついた。
それでも、抵抗を止めない。
ゾロの体全体で押さえつけられ、その体の一部分が硬く、
勃ち上がっているのを感じて 血の気が引く。
(こいつ)
知っているのか。知らないのか。
サンジがゾロの行動の意味を考え初めても、
そこまでで思考が止まった。
「一回でいいから、お前を無理矢理ヤってみたかったんだ。」
「他の奴に出来て、俺が出来ねえなんて不公平だからな。」
乱暴にサンジ自身を掴み、強い力で扱かれる。
「ウッウッ。」と喉から声が 勝手にあがる。
その強い刺激にサンジは息が詰った。
背中にあたる冷たく、固い床が、サンジの体から流れ出た
嫌な汗でじっとりと湿った。
その強い刺激にサンジは息が詰った。
「気持ち良く、ヨガってろ。」
必死の抵抗が、ゾロにとっては 善がっている様にしか見えないのか。
緊張で硬いままの、サンジの深部への入り口に、
馴らしもせずに、ゾロの一番長い指がねじ込まれ、
グチョグチョと湿った音を立てながら 中を乱暴に掻き回される。
「お前、結構乱暴にされるの、スキじゃねえのか。」
「いつもより、ずっと大きいし、」
「垂れ流しっぱなしだぜ」
侮辱するゾロの声が そのまま、鋭い刃になってサンジの心も
切刻む。
(嫌だ。)と心の中で サンジは叫ぶしかできなかった。
ゾロだけはと、信じ切っていたのに。
ゾロだけはどんな事があっても、絶対に自分を傷つけない、と
信じ切っていたのに。
もう、痛みと悲しさと、苦しさで 病気の事など
頭にはない。
ゾロが酷い言葉を 吐きながら自分を犯している。
犯される体の痛みよりも、
ゾロの本心を探る余裕もない状態で、
サンジは、
本当に死ぬほどの絶望を感じた。
目尻から勝手に涙がボロボロと零れる。いつもなら、
それを拭う指も唇もなく、
与えられるのは、気の遠くなるような痛みと、淫猥な言葉だけ。
俯けにされ、腰を高く上げさせられ、
今までは絶対に そんな体位をしたこともないような、
屈辱的な姿勢でゾロはサンジの中に 強引に入って来る。
背中に、体中に痛みが走った。
肉が軋む音がする。
それでも。
「お前、まだ、勃ったままだぜ」と囁かれて、
自分の体の卑しさにますます、絶望的な想いが濃くなる。
腰を鷲掴みにし、ゾロは動き始めた。
痛みから無意識に逃れる為に、サンジは体を引く、
それをゾロは許さず、体全体でゾロのリズムを押しつけられて、
サンジの体は戦慄いた。
それでも、床に、自分の体液を飛び散らせると、
また、
「悪くねえだろ。もっと早く、こうやれば良かったな」と意地の悪い声が
背中に降ってくる。
いつしか、気が遠くなり、激しく揺さぶられながら、
サンジは 朦朧と為すがままになる。
抵抗する気力も、体力も全て失った。
息が出来ない程 胸が、頭が痛む。
凄まじい倦怠感と疲労で、指1本動かせない。
このまま、死ねたらいい。
死んでしまえたらいい。
体が冷え切って、凍えてしまいそうだ、と思った。
凍えても、もう、
誰も自分を暖めてはくれない、その事がただ、悲しかった。
サンジは、意識を取り戻し、まだ、自分が生きている事に落胆する。
ゾロは、黙って自分の顔を覗きこんでいた。
自分を包んでいるゾロの体が温かい。
その目が、真っ赤で、
頬には、涙の伝った跡がはっきりと残っている。
それを見て、
サンジは急に気がついた。
気がついて、愕然とした。
「お前、知ってたのか。」
ゾロの答えを聞くのが怖かった。
けれど、聞かずにはいられなかった。
ゾロは何も言わない。
黙ったまま、ゆっくりとサンジを床に横たえた。
「俺の顔、見るな。」
そう言って、ゾロはサンジに背を向けた。
顔を見られたら、ゾロはその心の全てを、サンジの前に晒してしまう。
瞳を見て、声を聞けば、嘘をつき続けてはいられない。
これ以上ないほど傷つけた、自責の念から逃げたくなる。
許してくれ、と泣いて縋って 許しを請い、
泣き叫ぶ心の痛みを一人で堪えていられなくなる。
だから、背を向けた。
背を向けるしかなかった。
「お前、知ってたな。」
「知ってて、俺をヤったんだな。」
サンジの声が背中に突き刺さる。
判ってくれた、と安堵する気持ちと、猛烈な後悔が
ゾロの心に同時に湧き出した。
だが、何も答えられない。答えれば、
サンジの言葉になにか反応すれば、きっと 今以上に動揺する。
言葉を忘れてしまったように、ゾロは押し黙った。
サンジを抱き締めて、詫びたい、
本当の想いを告げたい、生きて欲しかったからやったことだと
弁解したい。
心の中のそんな感情が体を突き動かそうとしているのを、
ゾロは 押し止める為に、拳を握りこんだ。
今更そんな事をしても、取り返しがつかない。
自分で選んでやったことだ。
サンジの言葉はそれ以上、続かない。
ドサリと床に倒れる音がした。
束の間、意識を取り戻し、その体の中の病が体から消え去っても、
肺や、心臓が孕んだ熱が急に下がる筈も無く、
振りかえれば、サンジは再び、昏倒し、意識を失っていた。
熱があるはずなのに、
思わず包んだその掌は、ぞっとするほど冷たかった。
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