サンジからは、なんの愛撫も受けていないのに、自分の呼吸が
乱れて行く事と、
自分の掌と、その乱れた呼吸がサンジに興奮を与えている事に
ゾロは昂ぶる。
胸の鼓動が体全体の血管に響き、震わせているような甘い緊張に
飲みこまれながら、努めて穏やかにサンジに口付け続けた。
シャツのボタンを外すと、滑らかなサンジの胸の肌の色が
薄暗い中にも、赤みを僅かに帯びた白い色が冴えて見えた。
(なんで、こいつの体は、こんなに)綺麗なのだろう、とゾロは息を飲む。
唇から、顎へ、首筋へ、となぞって穏やかになぞり、
けれど、サンジの下半身に甘い刺激を与える手の動きは焦らす様に、
サンジの感じる場所を移動し、
愛撫する振りをしながら、ゆっくりと下半身の覆いをも少しずつ、剥いでいく。
中心へ、太股の内側へ、また、中心へと撫でて、また、先端の敏感な部分を
くすぐる。
サンジの荒れた呼吸を聞いて、ゾロの呼吸も乱れて行く。
眼を閉じて、ゾロから与えられるもの全てを受けとめようとしているようにも
見えるサンジの姿態に頭が痺れる。
その姿をもっと見たい、
堪え切れずに上げる甘い声を聞きたいと、唇でサンジの胸の敏感な突起を甘く
噛み、ゾロの手の中で濡れて硬くなったサンジを
決して性急にではなく、緩やかに、それでも確実に、快感を与えて、
乱れた呼吸の中から、漏れる小さな呻き声のような歓喜の声を聞き拾う。
「イきてえか。」と低く囁くと、サンジは何も答えずに
ただ、小さく頷いた。
「・・・あ、止めろ・・・汚エのにっ・・・。」
素直に頷いたサンジの言葉を聞いて、ゾロはサンジの足を広げさせて、
その間に体を割り込ませた。
自身の体液で体に張りついたサンジの体毛を指で撫でて、ゾロは
サンジの男性器を口に含む。
途端に、サンジが拒絶の言葉を吐いたけれど、ゾロは構わない。
「・・・ア・・・っク。」
自分がされて気持ちの良い様に、とゾロはサンジを受けとめた。
サンジの膝頭がガクガクと震えているのが、
ちょうど、ゾロの肩にそこがあたっているから、判る。
下半身に力が入っているのも、肩に乗せられた足の筋肉の緊張で
判る。
「・・・ああ、ダメだっ、ゾロ・・・っもう、」
射精の衝動が体を突き抜け、けれど、ゾロの口の中へそんなモノを出せない、と
思わず、サンジは起き上がってゾロの肩を押し戻そうとした。
が、下半身に押し寄せる衝撃の早さと強さを堪えるのが辛くて、
声も指先も震えた。
やめろ、と言う言葉が言葉にならない。
呼吸が乱れて、息が苦しい。
(ああ、ダメだ、)背筋に電流が走り、サンジの体が戦慄いた。
自分の体を突き抜けたモノがゾロの咥内に流れ込むのを止められない。
頭の中が真っ白になり、気を失いそうなほど意識が薄れる。
が、ゾロの温もりをまだ、まだ、感じたりなくて、自分の意識を繋ぎ止める為に
サンジは、うわ言のような声でゾロを呼んだ。
「サンジ」と答えるゾロの声を聞くだけで温かい物に包まれているような
安心感を覚えて、力が抜ける。
何をされても構わない、と言う気持ちと
ゾロにも同じ感覚を与えたい、と言う思いが同時に沸いてくる。
甘い気だるさに抗って、サンジは体を起こしてゾロを壁に押しつけた。
押しつけながら、ゾロの体の隅々までに触れたくて、髪に指を絡めて、
しっかりと自分の体に引き寄せながら、口付けた。
温かくて、温かくて、それだけで涙が出そうになる。
ゾロの指がサンジの感情を伺うように、そろそろとサンジの滑らかな
臀部を滑って降りて行く。
僅かに腰を浮かせて、ゾロの指が動きやすいように少し体を浮かせた。
「痛エなら、言え。」とゾロが囁く。
「恥かしい事言ってネエで、さっさと動けよ。」と照れ隠しにサンジは
答えて、ゾロの頭を掻き抱いた。
実際、(いくら解しても無理じゃねえか)とゾロは物理的に
サンジの体にはどうやってもねじ込めそうにないと自分の体の大きさに
呆れながら、それでも、
解す途中の段階で尚、サンジの体に悦楽を与える為に
ゆっくりと指をサンジの体に差し入れていく。
飲み込まれて行く間にも、サンジが息を詰めているのが判って、
ゾロは、目の前にあるサンジの胸の突起をまた、口に含んで舌で転がしてみる。
「・・・ッ。」サンジは、声にもならないほどの浅い喘ぎを漏らして
反応する。
「ここ、前はちっとも感じなかったんだぜ。」とゾロはサンジを見上げて
愛しげにからかい、サンジの言葉が返って来る前にまた、口に含んだ。
かなり、長い間解して サンジは自分の手でゾロの大き過ぎる男性器を支えて、
ゆっくりと自分の体をそれで貫くように腰を落として行く。
「・・・・ッ・・・。」温かく、まといつき、締め上げるようなサンジの
体に飲みこまれてゾロは思わず、呻き声を上げた。
苦しさではなく、自分の先端から凄い勢いで体を駈け抜けた快感と言う電流に
声を押し殺せない。
「すげえ、ドクドク言ってるぜ。」とサンジが高熱にうなされたような声で
喘いだ。
いつもなら、ゾロの背中に回った手は握りこまれているのに、
サンジはゾロの肩に顔を埋めてゾロの体にしがみ付く。
それを合図にゾロは下からサンジを突き上げた。
そのスピードと早さが増すごとにサンジの呼吸も吐息も
甘さが増して行く。
それを感じる、ゾロの興奮度も加速する。
心臓が鼓動を打つ。
皮膚から滲み出た汗が肌を伝って交じり合う。
ゾロに貫かれ、サンジに包まれて、生きている事の確かさと
その温もりの愛しさに何も言葉が出なかった。
全身全霊でお互いを必要としている、と言う想いを現すには ただ、名前を
呼び合うだけで充分だった。
「ちょっとだけ、寝てもいいか。」
半裸でお互いに凭れ合い、離れがたい想いが自然に指を絡めたままで、
夢の中にいるような感覚に漂いながら、サンジはもう、目を瞑って
ゾロにそう言った。
「ああ。」
いつ、賞金首が二人の屍骸を確認しにくるか判らない。
彼らが来ないにしても、ここから脱出する為に体力は温存しておかねばならないが、
サンジはゾロの返事を待つ前に、崩れるようにゾロの膝に頭を乗せて、
横になった。
さっき、抱いた時は確かにとても温かく感じたのに、握りこんだ指先は
もう、冷たくなり始めている。
「なあ、もう、二度とあんな事するなよ。」と
サンジは眠りに入る寸前に、そう呟いた。
「あんな事?」と良く、聞き取れなくてゾロはサンジの顔を覗き込みながら、
聞き返した。
「俺に嘘をつく事も、俺の為に命を捨てるような事も。」
「二度目はねえ。今度やったら、絶対エ、許さねえからな。」
半分、眠ってしまったような声でサンジは答えて、
規則正しい寝息を立てはじめた。
「判った、二度としねえ。」
「だから、安心して寝ろ。」
ゾロは いつもよりもずっと荒い手触りのサンジの髪を撫でた。
もっと、自分の今の心を言葉に出来たらいいのに、と思う。
サンジだから、命がけで助けたかった。
サンジだから、死にたくない、と思った。
死んでたまるか、と思えた。
自分の野望の為で生きたいと願ったのではなく
サンジの為に生きていたかった。
そんな風に思う事を煮詰めて、固めて、簡単な言葉で、間違いなく、
サンジに伝えたいのに、
その言葉を口に出せば、とてもその思いが軽くなってしまうような気がして、
口に出せない。
「最高だ、お前は。」と零れた気持ちは、そんな言葉になった。
(終り)