入之波温泉 五色湯 (奈良県)

2009年5月閉館

所在地 : 吉野郡川上村
施設名 : 五色湯 (入浴日:2002.7.22 宿泊日:2008.2.18)
温泉名 : 入之波(しおのは)温泉 
川上村は奈良県東南部に位置し、東西を台高山脈と大峯山脈そして北を吉野山に囲まれている。
年間降雨量が最多と言われる大台ケ原多雨地帯から流れ出る数々の源流はここで合流して吉野川となり、しばし北行、後に西行して名前を紀の川と変え、和歌山市で紀伊水道に注ぐ。

川上村はこの吉野川の源流沿いに開けた村であり、その名に相応しく吉野川・紀の川の生みの親である。
鮎やアマゴの魚影濃い清流と杉の香漂う清涼な空気のこの地だが、南北朝時代には後南朝の中心地であり、往時を偲ばせる旧跡も多い。

日本三大人工美林の一つである吉野杉の産地であり、吉野林業発祥の地でもある川上村では、500年前から植林が進められてきた。
村のほとんどが山林で、国道168号線沿いから仰ぎ見ると、よくあんな高いところまで植林したなと感嘆する。
しかしながら、林業は輸入材に圧迫されて低迷を続け過疎化が著しく進行していて、村の人口は1965年には7,000人余りいたのが2008年にはわずか1,800人弱となりほぼ1/4に減少している。
過日大崩落が起きて迂回を余儀なくされていた国道169号線も最近完全復旧した。
奈良県北部から南紀(和歌山県南端)にかけて、紀伊半島を南北に縦断する山岳国道が2本通る。,

番号が隣り合わせの国道168号線と169号線だ。
何れも急峻な山の斜面をえぐって完成した山岳道路で、近年、あらたなトンネル建設や2車線化が進んで入るものの、両道で豪雨により大規模な土砂崩れが起こり復旧に数年を要するなど、いぜんとして日本有数の秘境を通過する難路である。

この両国道沿いには多数の温泉が点在している。

国道168号線は、2004年4月に全施設源泉掛け流しを宣言した十津川温泉郷から和歌山県に入って湯の峰温泉川湯温泉渡瀬温泉を通過する。国道169号線は、ここ入之波(しおのは)温泉から上北山下北山村の温泉、さらには三重県側の秘湯・湯ノ口温泉へと通じている。
国道169号線から左折して大迫ダムの上を渡って入之波温泉に向う。この日は粉雪が舞っていた。
入之波温泉は国道169号線を進み、大滝ダムを通り過ぎて間もなく左手に現れる大追ダムの堰堤の上を通り、4、5km進んだ先ある。
最後のアプローチはすれ違いが出来ない隘路部分が多く、また一部ガードレールが無い箇所もあるので、特に悪天候や夜間の運転の際は慎重な運転を心がけたい。

温泉教授の松田忠徳氏は、その著書「日本全国温泉ガイド(光文社新書)」で「日本最後の秘境は北海道の知床半島だと思っていたが、この入之波温泉こそ、秘湯中の秘湯と言えるかもしれない」と述べている。

入之波温泉は元禄時代に「御夢想塩湯」という温泉名で知られていたようで、谷崎潤一郎の「吉野葛」にも登場している。
最後の数キロは「大滝貯水池」に沿って隘路を進む。前日は雪が降り凍結して、宿のスタッフでも運転が怖かったそうだ。
温泉通の間では全国的に知られるようになった「山鳩湯」
入之波温泉には全くタイプが違い、源泉も異なる2軒の旅館がある。

近年、各種温泉ガイドブックで紹介され、温泉好きの間では全国的に知られるようになった「山鳩湯」と川上村が経営する公共の宿「五色湯」だ。

山鳩湯は、ダム湖へ続く斜面にへばりつくようにして建てられ、これぞ秘湯の温泉宿といった風情たっぷりの素朴な宿だ。
温めで豊富な温泉が掛け流しで注がれ、風呂から溢れ出た湯がそのまま湖に流れ落ちている。


一方、五色湯はアクセスの悪い秘境にあり、しかも村営という公共の宿にもかかわらず、昭文社が毎年発表する「西日本の宿ベスト100」で、一流旅館と伍して毎年堂々ランクインしている人気の宿である。
最初に入之波温泉に行ったのは今から6年前、温泉巡りを始めて間もない時だった。目的の五色湯の前を通り過ぎてしまい、到着したのはまだ存在を知らなかった山鳩湯。
汚い宿だなと思いつつ恐る恐る入浴を請い、長い階段を下りた先の風呂に入ってみると、温泉が高い所から音を立てて流れ落ち、温泉成分が厚く付着した風呂から茶色の湯が溢れ出る様に驚嘆した。

帰りがけに五色湯への進入路を発見、ようやく目的の宿で入浴することが出来た。
以来、山鳩湯には4,5回入浴したが、五色湯は長い間ご無沙汰していた。
これまで地元奈良県の温泉宿で宿泊したのは、十津川温泉のホテル昴に2回だけ。
あまりに地元無視と反省し、宿泊地と考えたのは入之波温泉、それも山鳩湯でなく五色湯だった。
データ (データは変更されている可能性もあります。お出かけ前にご確認ください。)

住  所 奈良県吉野郡川上村入之波温泉
電  話 0746ー54−0777
交通機関 西名阪・郡山ICから国道24・169号で65km
南阪奈道路葛城IC延長線から50km
近鉄線 八木駅・大和上市駅から奈良交通バス湯盛温泉ホテル杉の湯行きで40分、終点下車、タクシーで約10分(要予約)
施  設 レストラン・喫茶、駐車場(65台)
宿  泊 13室 (洋室・和室) 2人1室1人12、600円〜16,800円(料金は変動するので下記五色湯HPで確認ください)
外来入浴時間 11:00〜17:00 
定休日 火曜日 (日帰りの場合)
源泉名・泉質 単純温泉
適応症 不記載(理由は「温泉の基礎知識ー温泉の効能」参照)
入浴料金 大人800円 
入浴施設 内湯男1女1、露天風呂男女各1
貸切風呂(宿泊者のみ 有料)
浴室備 品 シャンプー、ボディソープ、ロッカー、ドライヤー
観光スポット 大台ケ原、大迫・大滝ダム、蜻蛉の滝、不動窟
お土産・食事 館内で昼食可
近くの温泉 入之波温泉山鳩湯(車で1分)湯盛温泉小処温泉上北山温泉下北山温泉
川上村HP
五色湯HP
http://www.vill.kawakami.nara.jp/
http://www.goshikiyu.com/
雑記帳 169号線からそれて大迫ダムの堰堤上を通過する。それから4kmほどのダム湖沿いの道は狭いが,冷や汗をかくほどではない。五色湯は左手の小高いところにあり、狭い入り口を見落とすと別掲の山鳩湯に着いてしまう。
レストランは素晴らしい展望、とても清潔な明るい雰囲気で、ここで喫茶か昼食をお勧めする。

理由は簡単、山鳩湯は風呂場への階段が長く急勾配、膝に支障を持つ家内には向いていないからだった。
また、アクセスが不便でしかも村営の五色湯が人気が高いのか、その理由を確かめたい気持ちもあった。

6年ぶりだったが、維持管理や毎日の清掃がしっかりなされているのだろう、ロビーをはじめ廊下から部屋に至るまで傷んでる所は一つもなく、どこもピカピカして埃一つなく清潔感が漂っていた。

部屋数は全部で13室、10畳と12畳の和室(何れもT付き)が7室、ツインが4室とシングルが2室(何れもBT付き)である。
料金は2人1室で、洋室が1人12,600円、10畳の和室で14,700円(何れも税込み)となっている。(2008年2月現在)

チェックインは15時だがチェックアウトは午後11時と遅めなのが嬉しい。

貯水池より少し奥まった小高い所に建つ瀟洒な五色湯
ツインの洋室(BT付き)、1人12,600円(税込み)。シンプルな造りだが清潔感が漂う。
正面玄関、手前の駐車場は宿泊者専用で、日帰り入浴は坂下の方に停める。
シティホテル風のフロント
床・窓がピカピカに磨きこまれている。広い窓からは吉野の山々が望める。
食  事
風 呂
レストラン、11時〜14時までは外来者でも昼食・喫茶が取れる。
鄙には稀な(?)夕食の見事なお品書き。
夕食・朝食とも見晴らしの良いレストランで頂く。足腰の関係でテーブルを好む我々にはとても嬉しい。
結論を先に言えば、この宿の人気の大きな要因が食事だろう。

平地が無く山また山の川上村、地元の食材と言っても限りがある。海の幸も取り入れた夕食は盛り付けもきれい、、季節感に溢れ、温かいものは温かく、冷たいものは冷たく、タイミングよくサーブされる。
● 夕食の一部
先付け・前菜・お造り。時は2月、刺身に寒ブリ、ニンジンは鬼の面に彫ってある。黄色いものは鬼の金棒だ。
熱々の柚子味噌の大根葉饅頭に鉤蕨添え
ボリュームたっぷり、ピリ辛の牡丹鍋
これまた油から出されたばかりの揚げ物
手に持って食べられない焼き立てのあまご。とても美味しかった。
季節の牡蠣釜飯
写真には載せていないが酢の物の容器は予め冷やされていた。

事前にチェックしていなかったが、宿のHPでは、季節感を大事にしていることを謳っていた。食に煩くない私にもその意が十分に伝わった。
食後のコーヒーは、ここ(レストラン)でなく、(落ち着いて飲める)ラウンジで飲まれますか?と聞いてくるなど、心遣いも行き届いていた。
コーヒーはラウンジで。
しっかりした味付けの朝食
風  呂
風呂は内湯と露天風呂の組み合わせが2ヶ所、宿泊の場合は午後7時に男女が入れ替わるので4種類の風呂が楽しめる。
2つの内湯は同じような規模・雰囲気、、浴槽が石、縁が木の端正な造りで7、8人一度に入れる大きさだ。
露天は内湯と比べると小ぶりで、片方がしっとりした優しい木造、もう一方は大きな石を配した岩風呂と趣向が異なる。

何れの風呂も温泉は加温の上で循環・掛け流し併用、湯が静かに湯船から溢れ出ていた。
泉質は透明・癖の無い単純温泉で、同じ入之波温泉でも山鳩湯とは大きく異なっている。
これらの風呂は24時間入浴が可能で、他に有料の貸切風呂が1ヶ所ある。

日帰り入浴は11時から17時(受付は16時30分まで)、料金は700円で予約不要、昼食もレストランで取ることが出来る。
改訂版
入之波(しおのは)温泉は小さいながらも十津川温泉郷とともに奈良県を代表する温泉。川上村が経営する五色湯は、西日本温泉宿人気ベスト100の常連メンバーだ。
地元の木材を使用した心地よい露天風呂。
大きくないが岩石を積み上げた形の良い岩風呂。
2つの内湯はほぼ同じ形・大きさ。