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■2006年09月20日(Wed)
あの曲(どれ)
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 | ルーラ・ループ。
劇中ではヌンチャク最強みたいに書いてますが、実際はトンファーの方が強いよね。 ほら、トンファーは技が多彩だから。 Wii買いたいなあ。 | | |
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■2006年09月20日(Wed)
風紀部50
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どんちゃん騒ぎが続く中、木下真佐樹は柿の木の木陰で麦茶を飲んでいた。 「柿が落ちてくぞ、この時期は」 見上げると、風紀部の副部長――中尾英鳳が立っていた。 真佐樹は彼のことを松方風紀の騎士だという噂でしか知らない。 手には透明のポリカップが二つ。 中身は...ビールだ。 「風紀と夜宮には内緒な」 片方を手渡された。 遠慮しようかとも思ったが、迫力に押されて受け取ってしまった。 「気分じゃないか?」 「いえ、」 首を振る。 「確かにこう言うときに、飲みたくなるって言うんでしょうね」 忘れたいワケじゃないが、何とも言えない鬱屈した気持ちが、今の真佐樹にはあって。 少しだけ黄色の液体を見つめてから、一気に飲み干した。 炭酸が喉に痛かった。 「おいおい、無茶するなよ」 「あつい...」体の中で熱が生まれる。火が着いたかのようだ。 「次はゆっくり飲めよ」 中尾先輩は真佐樹の手から麦茶を奪い、そこに自分の分のビールを持たせた。 真佐樹は、そのときにはもう酔っていたのだろうか。断りもせずに頷いた。
「なんで...先輩方にとって柊先輩ってどんな人だったんですか?」 思考が回っていない。 「そうだな」中尾先輩の声。目の前にいるのだろうけど、頭がボンヤリしてそこまで意識が届かない。「とにかく、物好きで、お人好しだった」 どういうワケか、遠くに視線が飛んでしまう。 「なにやってるんだ、あいつら...」 中尾先輩が呆れながらそう言った。 松方風紀が花火をしていた。演劇企画部部長(彼女も有名人だから知っている)と12連射打ち上げ花火をよりバットで打ち返した方が勝ちという危険な遊びをやっている。遠巻きに生徒会長がやめなさいと怒っている。 あいつは他人が風紀を乱すのは怒るクセに、自分が率先してメチャクチャをやるからなあとぼやきが聞こえた。 「楽しそうですね...みんな」あんな事があったのに。 柊先輩が死んだのに。 「幸輔が帰って来ると、バーベキューをするって決まっててな。夜宮は忙しさが祟って今日が初めてなんだが...柊も結構参加していたな」 「そう、なんですか」 胸の熱さに痛みが混じる。 「柊は飲酒はしない――まあ飲酒自体俺と幸輔ぐらいしかしないけど、どういうわけか宴会に酔う体質みたいでな。普段に輪を掛けて饒舌で、しかも相手の不安を理解できるヤツだったからズケズケ痛いところをついてきてな」 俺も何度か痛い目にあったと、中尾先輩は思い出すように、とつとつと語る。 聞きたい気持ちと、聞きたくない気持ちが混じる。 あらためて友人だったのだなと思い知らされる。 柊運命にとっての自分は、結局のところ...ただの依頼人の一人なのだ。 「負けず劣らず、にぎやかなヤツだった。もういないと考えれば考えるほど、物足りない気分させてくれるぐらいな」 無口で必要以上語らないイメージがある中尾英鳳だが、その言葉には微かな感情が伺えた。 「俺がそう思ってるぐらいだから、あいつらもそう思ってるだろうな」 ああ、そうか。 彼女達は、そうやって物足りないと感じることで、柊運命という人物がいたことを思い出して、そして彼女がもうこの世に居ないことを悲しんでいるのか。 相変わらず馬鹿騒ぎで、けどやっぱりどこか盛り上がらないと悔しんでいるのだ。 それが、彼らなりの弔い方なのだ。 「不器用なんですね」 「思いなんて、みっともないぐらいが丁度良いんだよ」 風紀の言葉だけどな、と言いながら中尾先輩は麦茶を飲んだ。 真似るようにして、真佐樹もビールを一口飲みこんだ。 苦さが口に拡がって鼻まで突き抜ける。 苦いという感覚に抵抗を覚えなかったのは、思えばこれが初めてだった。 | | |
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■2006年09月20日(Wed)
屍骸術師と勇者株19
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「では、幻体をこちらに呼び寄せます」 今からカルラ氏の幽霊が表れるから、必要以上に驚かないようにとの旨を全員に伝える。 「不安だったら口を手で押さえとけばいい」 「わかった。だがその前にひとつだけ言っておきたいんだが...」 ルイスが真面目こくった顔で、自分に頷き掛けてきた。 「タツマ、今のおまえってなんかメイ女史のマネージャーみたいだな」 「...五月蠅い」 パイポをしがむ。 「なんか、頭の痛いところをつかれたみたいとよ」 「気にしておられるようですな」 「そっちもだっ!」 突如、穴から青い光が溢れた。 全員の目が、一瞬でそちらに中止される。 青い光は粒となり、一塊となって穴の上で人体を形成していく。 ガウンを着た欲得の強そうな中年。顔のパーツが中央に寄ってるが、太ってるせいと言うわけではなく、元からそういう顔なのだろうか。 「旦那様...」 哀情の混じった声で執事長が呟いた。たとえ世間から恨まれてようと、自らの仕えた主には親愛と呼べる念があったのだろう。 光が弱まると、そこには半透明の幽霊が浮かんでいた。 その瞳は閉じている。 「セーフモードで起動します」 タツマ以外の観客があっけにとられて息を呑む中、メイは淡々とそう告げた。
「うっちゃ無実っとよ!」 今日何度目かの台詞を叫んで、ルーラ・ループは脱出をはかろうとした。 が、 「今逃げると全国指名手配にするからな。正義の怪盗」 既にタツマは、回り込むようにルーラの進路を妨害している。 「うっ。に、逃げるんじゃないとよ。うちは自らの潔白を証明するっとよ」 「潔白っつても。殺されたカルラ氏本人がお前に殺されたって言ってたわけだしなぁ」 「で、でっちあげっとよ! あんなトリックで陥れようなんて甚だ遺憾とよ!! 非ぃ科学的っとよ!!」 「遺憾の意味を間違って使ってそうだが。一応言っておくと、メイのネクロマンシーと警察の捜査方針はあくまで別物だ。そうだな、探偵の助言で警察が動くことがあるが、それと同じと考えればいい」 「だ、大体まだうちと決まったわけじゃないっとよ。見知らぬメイド服の女に突然襲われて首の骨を折られたって言ってただけっとよ! 弁護士を呼ぶっと!!」 「非科学的はどこ言った」 じりじりと近寄る。 徒手空拳の構えを見せるルーラ。 どうやら徹底抗戦に臨むつもりらしい。 実際、ルーラ・ループは強い。そしてその強さは、武芸者として裏打ちされた強さだ。タツマとて、まともな武器を使われたら髪の毛一本触れることは出来ないだろう。 二度も勝てたのは、ただ単に彼女が迂闊なのと初撃から全力を出すことで意表を突いたからに過ぎない。 が、実際の印象はともかくルーラからすれば二度も負けている相手とは対戦したくなかったのだろう。 そのまま、登山杖を持ったままのメイに向かって走っていった。 おそらくメイを人質にとって逃げようと考えたのだろう。 「ネイザーリア殿!!」 「まずいな、タツマっ」 焦る二人の男を尻目に、タツマは警戒を解いてパイプを取り出した。 しがんで、 「...まあ、迂闊ってのは致命的だよな」
二秒後。
「なんとおおおおおおおおおおっ!!??」 ルーラ・ループがメイに投げ飛ばされてオークテーブルの空を舞った。 | | |
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■2006年09月20日(Wed)
天上へのモーダルシフト65
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「ヒュウイ...」 「うん。そんな声だったっけ」 記憶の中の声より少し低いかなと思った。 「どうして、驚かないの? どうして、」 戸惑いを隠せない様子で、スーベリーアは何度も自分の喉を確かめている。 こちらを見つめて、困ったような申し訳なさそうな顔。 別に、そんな顔する必要ないのに。 「どうしてって言われると、結局ズレが見えたからってことなんだろうけど、」 頬を掻く。 「櫓のあたりで、いろいろおかしい気はしたんだ」 D・Jは櫓を自分の一部とはみなさない。だから、櫓に登ると言うことは「D・Jから離れる」と言うことを意味する。 だから、D・Jは、櫓の上の会話を認識できず、塔の構造材がないため会話も出来ない。デュランダルを遠ざけるために材木の山へ登ったとき、ヒュウイはこの事実に気づいていた。 「よくよく考えると、D・Jって櫓の上の出来事を知らないんだよな。ハバキさんとも会ったことがないような口ぶりだったし。で、まあそれに気づいてすぐに思ったんだよ。じゃあ、ハバキさんと話をしたD・Jはなんだったんだって」 スーベリーアの肩が微かに震えた。 あのとき確かに、櫓の上でスーベリーアがD・Jの通訳を仲介してハバキさんと会話をしていた。 「いろいろ考えたんだけどな、どうしても俺には――たぶん笑い飛ばされるぐらいしょうもない思いつきなんだろうけど――この答えしか思い浮かばなかった」 たぶんルーィが聞いたら目一杯笑い飛ばすだろう。 「スー姉が...ええとなんていったかな。そう、腹話術ってヤツでD・Jの声真似をしてるんだって」
「最初、腹話術かなあと思ったんですけどね。流石にないなあ、と思って」 ウサギとカメという童話。話自体はウサギが余裕ぶっこいて一眠りしている間にカメがひたすら走り続けて勝ちましたという寓意的な話だった。話自体に真新しさはなかったが、ルーィにはこのカメがなんだか塔の住民みたいだと思えた。のろのろと、けど一生懸命で。だとしたら、このカメも最後の方は塔の住民みたいに自分が何のために頑張ってるのか解らなくなってるんじゃないかと。 「まあ、それでも説明は付くけどねえ」 ミハルさんは、元に戻った図書館の裂け目あたりをしきりに点検している。 ちょっとでも隙間があれば空間転移が出来なくなるのだという。 「ただ、精霊の声ってのは骨伝導的な聞こえ方だから、声真似だけでは無理があるわね、確かに」 「ですよね。だから」 「うんだから、そのスーベリーアって子はたぶん」 「――精神感応者。かぁ」 その可能性を考えなかったわけではない。 だが、どちらにせよ珍説には変わりがなかった。 「確か到達不可能って言われてませんでしたっけ」 「魔術ではね〜。人間で言うなら例がないワケじゃないわ。ましてや、あの塔には塔の精霊なんて存在もあるんだし」 「D・Jが?」 あのトンデモ管理精霊がなんだというのだろうか。 「D・J、ディベロッパー・ジェーンだったっけ。語感的には開発花子とかそんな意味だろうけど。付喪神――精霊って言うのは異世界の法則そのものだから、そのスーベリーアって子が年がら年中影響を受ける立場にいるのならその精霊が持つ“異世界”が彼女に流れ込んだとしても不思議じゃないわけよ」 「え゛。それって...」 ミハルさんは、なんでもないという風に頷いた。 「いわゆる魔族・魔獣化ってヤツね」 | | |
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■2006年09月19日(Tue)
右手左手振りかざして
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ファイアフォックスを導入したんですが、ルビタグが作動しやがりません。 だからと言ってルビタグ表記はやめません。
ルビさえ表示されればなあ...
購入。 「Q.E.D.............証明終了25」 「桜蘭高校ホスト部9」 | | |
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■2006年09月19日(Tue)
屍骸術師と勇者株18
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「万物ノ理ヲ体現スル、我ハ世界ノ杖也」 解体したゴミ処理施設の穴を覗き込むように、儀式が始まる。 穴を覗き込むメイの体を抱えるのは、相変わらず自分の仕事だった。 「大丈夫なのか」こんな遠くから、 「特に問題はありません――<踏査>」 見たい見たいというルイスの要望もあって、術式は穴の底近で執り行ないたかったのだが、あいにく下に降りる時間がなかった。 なら穴の上からやりましょうと、言うことになったのだが。 まあ、大丈夫なのだろう。 屍骸術は時間が掛かる。死体の修復、交渉、そして幻体化もしくは蘇生。どれもこれも様々な意味で長ったらしい。 見る物も定めずに周りを見ると、ルイスが解体したゴミ箱を見聞していた。 「どうした?」 白手袋で布きれのような物を摘んでいた。 「いや、」 とだけ言って布きれを――元の位置なのだろうか。巨大ゴミ箱の構造材に引っかける。 「旦那様の、ガウンの一部みたいですな」 「やはりそうですか。手触りが良いと思いました」 「落ちた際に引っかかったのでしょうか」 「多分そうでしょうけど。偽装工作ということも...」 露骨にゴミ箱に引っかかっていたことに違和感を覚えているのだろう。 もしそれが誰かと言うより殺人犯――これもいるのかいないのか微妙だが、殺人犯の偽装工作だと仮定するならば、 「ここから落ちて死んだんじゃないってことか。別の場所で殺して死体を穴に落としたか。それとも下の収集口から侵入して放置したか」 「飛ばし読みのような推理で面白みもないが、その可能性はあるだろうな」 メイに寄れば、死因は頸椎骨折である。飛び降り自殺などの落下死の場合、自己保存本能によって落下直前に気絶やショック死を起こすケースがあるが、見た感じそう言った痕跡はないという。 また、穴の底には布団と言うよりマットレスが引かれていた。これは落としたゴミ袋が破れたり飛散したりするのを防ぐためのもので、元から備え付けられていたものである。ただ、あくまでゴミの緩衝であり人間が落ちたときの生死の保証はというとご覧の通りである。 が、マットレスがあるため頭から落ちただろうに頭部が破壊されることもなく、建物十階分はあろうかという高さからの落下衝撃も、二階から落ちた程度にまでは弱まったはずで。 「二階から落ちた死体だったとしても、見分けは付かないだろうな」 偽装工作、と言う言葉に信憑性が生まれるのである。 それでも、微かになのだが。 「そうでしょうか。わたしならたぶんわかりますよ」 「そりゃ君なら死人と会話できるわけだから」 そんな中途半端な情報どころか、どうやって死んだかのインタビューを本人に取ることさえ出来るだろうに。 「死人ではなくて死体ですが。というより、そう言う話ではなくてですね...」 ふと、閃くものがあった。 「...もしかして“死体を見ただけで”そこまでわかるのか? 屍骸術を使うまでもなく?」 「ええ」それが何かという口調である。 「接地した部位に残る痣とか、首の骨の折れ方とか。大体どんな場所でどうなって死んだのかぐらいは。マットを敷いたぐらいなら計算補正して落下距離を求めることも出来ますし、凶器なども布でくるんだ程度なら――と、終わりました。交渉に移ります」 ブツブツと小声で、何事かを話し始める。 「ふむ、職業柄というヤツか。火葬場の職員も骨の焼け具合を見ただけで生前の病歴がわかると言うが、」 何やら勝手に納得した様子のルイス。 「是否解剖学の壇上に立って貰いたいものだ」 「てか、見ただけで死因がわかるなら今やってること無意味なんじゃないか」 「え」 メイが硬直した。 おそるおそると言った様子で、こちらの顔を覗き込む。 「お仕事やっぱりないんですか?」 「そんな顔するなよな」こっちが悪者みたいではないか。 「いや、続けてください。実際の屍骸術を見てみたい」 出資者というわけでもないのに、ルイスが慌てて促した。 本当に見たいのだろう。まさか、このために自動車までかり出してきたのだろうか。 「話し中に済みませぬが、ヴァイン殿」 「はい、なんでしょう」 「屍骸術、と言う言葉が聞こえたのですが。もしや、メイ・ネイザーリア様はネクロマンサーであらせられるのですか?」 声に微かな畏怖が混ざる。 ネクロマンサー。 都市伝説、あるいは伝承。それに語り継がれるだけの、幻の魔術。その使い手。 「おや、説明していなかったでしょうか」 「じ、事件を解決して頂けるとしか。ですので、」 執事長は全身と眉と髭をわなわなと震わせた、 「わたくしめはてっきり今はやりの魔女っ子探偵かとばかり」 「んなわけなかっと」 ルーラ・ループが律儀にツッコミを入れた。 ルイスが無理矢理連れてきたのだが、興味がないのかさっきから立ち尽くすだけである。 傍目から見れば執事長にメイドが付き従っているだけにも見えた。 ちなみに常務氏は職場に戻った。これから行われることには幾許かの興味があった様子だったが、お得意様との良好な関係を維持することを選んだらしい。下手に深みにはまる前に逃げ出したのだった。正しい選択ではある。 「てか、お前は驚かないんだな」 「うちは魔術自体ぜんぜんしらんっとよ」 なんのつもりなのか、ルーラは手の平をひらひらと振った。 「魔術とか言われても、なんぞ得体の知れない力で得体の知らないことをしとーぐらいのイメージしかなか。そがけん死体と会話しよーと、得体の知れないタネがある思うだけで驚くよーなことじゃねーとよ」 魔術自体は都会では珍しくもない技術で、得体の知れないことをするのはあくまで魔術士――魔術技士だけなのだが。それに、 「会話というか、今やってるのは念話らしいんだが」 ぶつぶつとメイが呟いている言葉もよく聞けばただの独り言である。 かろうじて聞き取れた言葉としては「あ、よかった」等。 「ちょっと待て、タツマ。」 反応したのはルイスだった。ずかずか近寄ってくる。 「精神感応術だと? 今、彼女は死体とテレパシーで会話をしているというのか」 何故か睨まれる。 「ああ、」そう言えば、以前も自分に念話を使っていたか。 「それがなんだって言うんだ」 気がつけば、メイとタツマと対峙するようにルイス。その間にルーラと執事長と、輪になるように歩み寄ってきた。全員がルイスが驚いた理由がよく解っておらず、なんかいきなりビビってるぞこいつという空気が漂っている。 「...タツマ、お前も魔術の基礎講義は受けたはずだろうが」 「そのはずだが」 何故かため息が漏れた。 「お前、自分がどれだけ途方もないことを言ってるか解ってないだろ」 どこかで聞いたような台詞を言うルイス。 「三大限界――って言えば思い出すか?」 「あ〜。あったな」そんな言葉が。たしか、 「俺、あの問題間違えたんだよな」 「誰がテストの話をした。いいから、思い出せ。魔術の到達技術には、三つの限界があると言われている。ひとつが、【透視】、ひとつが【予知】、そして最後が、」 「錬金か?」 「そりゃ三代禁則だこのマクロコスモスアホ。ここまで来たら最後は【精神感応】に決まってるだろうが」 とは言うが... 「いまここに実際やってる魔術士がいるわけだが」 「だから、出来る筈がないんだ。なぜなら、本来それらの能力は【念動力】を源力とする念動力回路運転術――魔術と、対等の位置に属する力だからだ。 念動力、ようは魔力と同じで持って生まれなければ使えない類の力なんだよ」 「じゃあ持って生まれたんだろ」 簡単なことではないか。 「って、あのなあ...二股の大根が生えるのとはわけが違うんだぞ」 「雄の三毛猫が生まれることもある。君、聞いてたか? その辺どうなんだ」 「はぁ...聞いてはいましたが」案の定、彼女は小首を傾げた。 「そうですね。言われてみますと、お婆ちゃんが昔にネクロマンシーは魔術と違って先天的な素質が必要不可欠だと言ってました」 「魔術も持って生まれた素質が無いと無理な気がするが」 「お婆ちゃんの時代には、誰でもちょっと勉強すれば使えたそうですよ」 「いつの時代だ...」 確かに、昔の人達は今に比べて念動力が強く、誰でも魔術を使用するに足る力を有していたという話は聞く。だがそれは昔は昔でも100年は向こうの昔の話である。 ルイスは、尚も唸り声を上げていた。魔術に関する知識量がタツマと違い豊富なためか(それでも魔術技能者やナエさんには遥に劣るが)辺にブツブツと独り言を繰り返している。 「終わりました」交渉が終わったと言うことである。 「で、カルラ氏はなんて言ったんだ」 おそらく周りの人間は「どうやって死んだのか」という質問だと受け取っただろうが、術の行程を知っているタツマの意図するところは違っていた。 すなわち「屍骸が提示した、証言のための交換条件はなんだ」と言う意味である。 メイも、その意味で頷いて答えた。 「最後にアヴェル・ファイラムの勇者株が見たかったそうです」 「...そりゃなによりだ」
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■2006年09月18日(Mon)
天上へのモーダルシフト64
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振り下ろした次の瞬間には、瓦礫に円形の切れ目が入った。 ヒュウイは、タイミングを見計らい、その切れ目の中心にデュランダルを突き刺す。 変化は突然だった。円の内側の構造材が軋み、罅が入り、崩れ、そして斜め奥へと落ちていく。ざああああああ、と小豆を流したような音が響いた。 縁の切れ目は、そのまま螺旋階段の下へと円筒状に続いていた。 岩や壁が何層も刳り抜かれ、その瓦礫のことごとくが砂粒まで崩れて螺旋階段の下段へと雪崩れるように落ちていく。 そのタイミングで、今度はデュランダルを地面に突き刺す。 滑落が収まる。後に残ったのは、人一人が屈んで入れる程度の、滑り台のようなパイプ。 その断面はまるで今磨いたかのような光沢があった。 「D・J、向こうの様子は?」 『...これなら全員滑っていけるネい』 「よっし」 軽く拳を握る。手首に巻いたバンダナが誇らしげに揺れた。 「おい! 人の声だ、本当に生きてたぞ!」 「ん?」 「おーい。生きとるかあ!!」 滑り台の向こうから、声がした。 反響が酷くて、誰の声かがわからない。 「おーい、こっちはなんとか生きてるぞー。ってD・Jに聞いてるだろうけど」 「ヒュウイ、何してる、早くみんなを連れて来い!!」 「お、親父どの?」 『いえ〜す、ザッツライ。心配してきてたんだよ』 「よっしゃ。親父どの〜そっちに人が落ちていくから、上手くフォローしてくれ〜。怪我人もいるんだ」 「なんだと〜〜! ...あ、ああ、そういうことか。わかった。こっちには人も担架もある。どんどん来い」 D・Jが説明したのだろうか、親父どのはあっさり納得した。 「やっぱり便利だなあ。D・Jって」 『電話扱いかいッ』 もっとも、ここまで容量を裂いてくれるのは非常時か、スーベリーアの前だけだ。 いやまあ、そうで“は”なかったのだが。 「ヒュウイ、すまねえが俺らから行っていいか?」 同じくD・Jの説明で事情を察してる様子の鳶のおっさんたちが、即席滑り台を覗き込んだ。唾を呑んで「大丈夫か、コレ」と怖がっている。 「ああ、そうしてくれ。こいつのこともあるし、おれは最後だ」 突き刺したデュランダルを指でさして。 おっさんは、礼を言って滑り台へと足を伸ばした。おっさんは、最初両手で穴につっぱるようにして慎重に降りていく。 臆病と言うわけではない、真っ先に降りて安全を確かめようとしているのだ。 ヒュウイを振り向いた。 「じゃあな、ボウズ」 「そのボウズはやめてくれよ」 「ああ、そうだな。ありがとよ、お前は命の恩人だ。ヒュウイ、お前スーにフられたらウチに来い。俺の娘を嫁にくれてやるよ!」 その言葉を残して、おっさんは手を離して滑り落ちていった。 あのおっさんとは、あまり喋ったことはないが、そういえば生き遅れの娘の愚痴をよく喋っていたなと思い出す。 肩をぽんと叩かれた。 「ハーっさん。生きてたんだ」 「殺すな...」 親父と同じ年齢ぐらいの細身の鳶。普段から無口なヒュウイの先輩である。 この人も生きていたのかと、今更そんなことに気づく。 全然見えてなかった。 というか、存在感が薄いのだ。本気で無口だし。ヒュウイは彼から言葉らしい言葉を聞いたことがない。身振りと雰囲気だけでこの人にはいろいろなことを教わった。 「スーにフられたら、俺のコレクションを分けてやる」 「虫の標本なんていらないよ。しかも、あれ塔で取れる虫ばっかりじゃん...いらない」 「そうか、またな...」 D・Jの合図が来た。おっさんは無事降りられたらしい。 ハーっさんはノッポだった。窮屈そうに落ちていく。 そのあとも、次々と人が降りていく。 即席担架に乗せられていた人も、担架からおろしてやはり滑らせた。途中でつっかえるといけないので、前後に人を配置して、慎重に。 滑っていく鳶の全員が、ことごとくヒュウイに「スーにフられたら〜」と言っていくのであった。 「なんでフられるの前提なんだか」 毒づく。 『みんな気づかってくれてるのサ』 「そんなんは解ってるわい」 ルーィのバンダナを巻く自分を見て勘違いしたのだと途中から気づいていた。 誤解を正そうにも、その気づかってくれる気持ちが胸に痛いほどに切なくて、言い出せなかったのだ。 「...じゃあ、フられるか」 振り返る。 スーベリーアが、目に涙をためて自分を見ていた。 | | |
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■2006年09月18日(Mon)
ラーララ ララララー
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 | 伊勢崎多奈その2。
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ラウグラフト全集を読み始めてます。 とりあえずインスマウス面の意味を理解しました(序盤やん) そういえば、この間読んだばかりの「ジャストボイルドオクロック」にインスマウって家電が出てきたなぁ。 さっそく教養効果が発揮してる気がします。 | | |
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■2006年09月17日(Sun)
ココナツの香り あ〜ハワイ
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Replay
 | 絵板の機能があることをすっかり忘れているこのごろ。 ソードマスターヤマト(ギャグマンガ日和2) http://youtube.com/watch?v=urFeIsct9Pc&mode=related&search=
ちょっとだけ斬が映ってるw 電話のシーンだけでアニメを作るなんて、神業だと思います。 ちなみに自分は、このぐらいのテンポが好きだったりするのですが、このテンポでラジオドラマの編集とかしたら物凄いことになるでしょう。 気を抜くとやってそうですが。
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ボウケンジャー 黄金の剣に認められようとするチーフの俺理論が凄まじい。 「持ち主を選ぶだと、ふざけるなっ! この俺がお前を選んでやるんだ!!」 と言う趣旨の発言に大爆笑。
って、剣がロボになった〜〜!
カブト 矢車さん、すっかりグレちゃって... | | |
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■2006年09月17日(Sun)
天上へのモーダルシフト63
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子供の頃はいつも高いところを目指していた。 ついさっきまでだって、そうだったのだろう。 けれど、天上に昇る意志なんてのはすっかり消え失せていて。 思えばなんだったのか。 自分たちは、一体全体なんのために塔を築き上げてきたのだろうか。 地面の下にはもっと住み心地のよさそうな場所があるって言うのに。 この塔の住人は、本気で下に降りて楽に暮らそうって考えなのかったのだろうか。 いや、 降りようと考えたやつは、とうの昔に塔を降りていったのだろう。 だから今ここにいる奴らは誰もそんなことを思わないで、ただ高く高く昇ろうと浮かれて。 塔を建てれば認められて、塔を建てれば生活が出来て、けどその塔自体にはそれ程の意味もなくて... そんな芸術家みたいな、プロスポーツプレイヤーみたいな、音楽家みたいな暮らしを全員が真面目にやってて、なんてなんて。
――ズレてるんだろう。
「――そう、ズレだ」 『ズレ?』 「いや。なんてことはない、俺が見えていたのはズレだったんだ」 それは、罅の入った窓ガラスと同じで、お互いが少しだけ在るべき位置からズレて、だから線として見えてしまうのだ。破いてしまった絵画を戻しても、けして元には戻らずに一筋の線が入ってしまうかのような、そんなズレなのだ。 今の自分には、あらゆるズレが見通せるのだと、そのときヒュウイは自覚した。 『ズレねぇ...斬るときに見えるのもズレなのかい? 崩壊と均衡を保つ線みたいな』 「そこまではわかんねえけど。ただズレに切っ先を入れてそのズレを少し広げるイメージっていうか」 『空間の裂け目を広げてるってことかィ?』 「いや、」 それは違うだろう。 「斬りたいと思ったときに見えるズレは、多分目の前の現実と俺の思い描いた理想との間に生まれたズレなんだ。だから、それをずらすと言うことは...どういうことなんだろうな」 『ヲイ』 もともと魔術めいたものには疎いのである。 「なんでもいいじゃねえか、振ったら斬れる。それで充分役に立ってるだろ、オーケ?」 『...ボーイ随分軽くなったねえ。吹っ切れたのかい?』 「ああまあ、そりゃ吹っ切れるだろうさ」 手首に巻き付けたバンダナを見て笑う。 『なんだいなんだい、あっちでルーィとキスでもしたのかぃ?』 「そんなんとはほど遠いよ」 スーベリーアが近づいてきていた。ちょうど階段があった位置を指さしている。 朝の体操に間に合わずに駆け下りた階段は、10m近くの層を成す瓦礫に埋もれていた。 『ヒュウイ。この下に階段が埋もれてるから、出来れば慎重に』 そんな事を言うスー姉の目の前には、やはりズレの線があった。 ヒュウイにはそのズレの正体が、もうわかっていた。 だから、そのズレに切っ先を当てて、少しだけ広げる。 「いいよ、スー姉。ここからは俺がやる」 「でも、ヒュウイ。迂闊に切ると...」 「大丈夫だって、任せてくれよ。俺だって鳶のエースなんだぜ」 その肩書きに意味なんてもう無いのだが。 意味のないことがおもしろくて、もう一度ヒュウイは繰り返した。俺は鳶のエースなんだぜ。 「安心しろって、別にスー姉の前で良いかっこがしたいとか恩を返したいとかそんなんじゃないからさ。やれそうだから前に出て、やりたいからこう言ってるんだ。 それに、どうも今の俺って斬る以外にもいろいろやれそうなんだよな。てか、やれそうなことが多すぎてスー姉に説明してる時間がないぐらいだし」 「ヒュウイ...」 デュランダルを青眼に構え、階段があるとおぼしき瓦礫の山に正対する。 そこから大上段に振りかぶった。剣道など囓った程度だっが、剣が何となく教えてくれたのだ。 「それに、久々にスー姉の声も聞けたからな。気合い入りまくり」 「え...」 『スー、あんた...声が』 振り下ろす。 | | |
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■2006年09月16日(Sat)
屍骸術師と勇者株17
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「さて皆さん」 と、言ったのはソファに座るルイスである。 舞台は応接室を出ていない。 「解決編をはじめましょうか」 しらけた顔でその様子を見守るのは、左に証券会社の常務、ストラグル家の執事長、右に怪盗ルーラ・ループ、屍骸術師メイ・ネイザーリア。そして真ん中にタツマ・アヴェル...誰一人メンツは変わらない。 「ちょ、狭いっとよ。おっっさんら向こう行くっとよ」 常務と執事長を邪険に払うルーラ。おっさんのカテゴリに自分も入っていた気がするが...気のせいだろう。 すごすごとルイスの両隣に座り直すおっさん達。 「解決編?」 話が進まなそうなので、促す。 ルイスは何が楽しいのか署内では滅多に見せない笑顔で、 「ああ。死体があって、頭の硬い警察がいて、少し奇抜な探偵役がいて、老練たる執事がいて、ただの観客がいて、そして」 順々に、誰かの顔を伺いながら、その目がルーラに落ち着く。 「物語に華を添える怪盗がいるんだ。これで謎が解決しないわけがない」 ルーラがうっとりとした表情ではいと頷いた。頭が硬い警察とは、自分のことだろうか。 「ただの観客は私でしょうね、はい」と、常務氏。 「あの、探偵役って私のことでしょうか...」メイが首を傾げた。 何が言いたいのかさっぱりわからないが、聞き返すのは自分の役割なのだろう。 「で、お前はなんの役なんだ?」 「無論、ストーリーテラーだ。メイ女史」 タクトを振る指揮者のような仕草で、ルイスはメイに質問を投げかけた。 「君は生活費に困窮し、勇者株を売ろうと考えた。しかし、ああこともあろうにその株券はここにいるヘナチョコ警察官タツマ・アヴェル警部補のご先祖様の株券で無論ヘナチョコの祖先だからヘナチョコで売ろうにも売れないで困っている」 「おまえな、ぶっ飛ばすぞ」 かなり本気で腹が立ったのだが、ルイスはどこ吹く風だった。 「まあ、昔そんな風にコイツもいじめられていたわけですが、さておき、メイさん。商談の方はどうなりましたか?」 「はあ、それが...」 浮かない声だった。横目で見ると、やはりそう言った顔をしている。 結局、買い手が死亡してしまっては商談も何もないと言うことになった。 勇者株のコレクションをしているのは当主であるカルラ=ストラグル氏のみであり、他の家族は一文の得にもならないこの趣味をむしろ迷惑がっていた節もあるらしい。 聞くだけ聞いたルイスは、ひとしきり頷いた後、 「では執事長。名前は...たしかセバスチャンでしたか」 「いえ、マクマウェル・ワイトヴァンドですが」 「て、待て。さっきの話はもういいのか」 ルイスが、めんどくさそうな顔をして90度振り向いた。 「いいから黙ってろよ。お前は普段ぼっさりしてて何もしないクセに、人の話は結論から知りたがる。何事も順番だ、このヘナチョコ」 「ルーラ、ヌンチャクを貸せ」 「没収されてるっとよ...あんた以外と短気なんね」 「タツマさん、今日は機嫌が悪いみたいですね」 確かにその通りなのだが、ほっといて欲しい。 「さあ、そこでメイ女史の出番だ」 パチン、とルイスが指を弾いた。 きょとんとするルーラとメイ。タツマも何が言いたいんだという顔をした。 それを見て、ルイスは憮然とした顔で、 「なんだ、聞いてなかったのか」 「人の反応を待たずに会話を続けるルイスに問題があるような気がするが」 隣でメイとルーラが頷いた。 「む、いいかね。ここの執事長氏もまた困っているのだよ。なぜなら、カルラ氏は事故で死んだのか殺されたのかさえわからない。だと言うのに、今この屋敷には親類縁者の諸々が急ぎ駆けつけようとしている。そうなれば執事長と館にいた遺族は、ことのあらましを説明しなければならなくなる」 「そのまま説明すればいいじゃないか」 思ったままを言ったのだが、とたん執事長と常務氏の顔に陰が差す。ルイスに至ってはため息をついていた。言葉を濁す、そんな感じである。 「そんなことしたら掴み合いの喧嘩になるっとよ」 見かねてなのだろう。 ルーラ・ループが横から口を挟んだ。 「さっきも言ったっとよ。」 (ストラング家はお世辞でも“善良な”なんて言えた銘柄じゃないっと。金遣いはあざといし、平気で人の人生をめちゃくちゃにするし、同業ですら品が疑われると煙たがってた程っとよ) さっきした殺される動機があるのかという質問に、返ってきた答えがそれだった。 「そがけん家族関係も同じでドロッドロ。ウチが情報収集しゃ〜ときぁ、愛人の数が家族よりも多かなんてホラまで流れてたっとよ。そんなんで、殺人の可能性なんて示唆されたら遺産争いが更に揉めるのはわかりきっとーと」 「なるほどな」 確かに、それは話しづらいだろう。唯一対面を気にする必要のないルーラだけが正直に言えたのも頷ける。 「なんにせよ、葬儀までには事件を解決しておきたい。その考えは、奥方氏や館に残っている兄弟の方も同意見だそうだ。殺人となればまず疑われるのは彼らだからな。運悪く同時期に忍び込んでいたルーラ女史が、あろうことか殺人犯にまで疑われたのはその辺が理由だな」 「でっちあげっとよ」 「そこのところは、今後の調査次第だろうが。今のところのルーラ女史が犯人かどうかの可能性は他の人達と同様にイーブンだと思っている。だな、タツマ」 「ああ」 むしろ殺人に関しては無関係だろうとタツマは考えている。 理由を問われれば、勘だとしか言いようがないが。 「さあ、これで解っただろう。タツマ?」 「解りたくはないがな」 メイは金が欲しい。しかし金を手に入れる望みは失われた。 一方、ストラング家の面々は早々に事件を解決したいと望んでいる。 そして、警察よりも早くに問答無用で事件を解決する方法が、いまタツマの横でお茶を飲んでいる。 これ以上解りやすい利害関係があるだろうか。 「探偵役の出番か...」 思わずため息が出た。 | | |
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■2006年09月16日(Sat)
深きハートには未来が見える 輝く場所にたどり着けるまで
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 | 刀はなかごにグリップテープ巻いて使うとカッコイイと思うんですが、どっかで流行らないかなあ。
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ボウケンジャーまとめて視聴しました。
ボウケンジャーはボウケンレッド(チーフ)が素敵すぎます。 なにこの無敵人間。もう凄い傍若無人。
「俺は冒険が好きなんだ。誰に与えられた使命でもない。 だから、だからこそ絶対逃げる訳にはいかない! これは俺の冒険なんだ。俺は冒険をやめない!」
は名言過ぎます。
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小説講座そのいくつだったか... 「負の伏線」
伏線は、あらゆる場所に発生します。 ときには作者の意図を離れた場所にさえ。 作者の意図を離れる伏線のひとつが、いわゆる界王拳です。 作者としては、もう界王拳を使うつもりはない。 しかし界王拳という技を描写してしまった以上、読者はいつも「界王拳は使わないのか」と思ってしまう。これが作者の意図を離れる伏線。負の伏線と言うヤツです。 作者はこの疑問が発生することをあらかじめ予見し、そして天津飯に「悟空にはまだ界王拳がある」と言わさなければならないわけです。 界王「残念だったな、今使ってるのがその十倍界王拳なのだ」
良い伏線を張るということは、裏を返せば意味のない描写を失くすことなワケです。 | | |
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■2006年09月15日(Fri)
和製イチロー
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読書 「ジャストボイルド・オ'クロック」うえお久光
ノリの良い小説は好きです。 どうも自分の小説はその点表現しきれてない気がしますね。 音楽かけながら小説を書けば? それとも「完全HIP HOPマニュアル」を読むべきか。 「完全HIP HOPマニュアル」は特別付録の「ダンジョン・アンド・ヒップホッパーズ」だけやってみたいなあ。 今懐かしのダンジョンクエストですよ。
今期はいろいろあって同人誌を4冊購入しました。 通販です。 これが10冊20冊と増えていってやがて聖地巡礼となるんだろうなあと思いました。 以下ラインナップ。
「夏休みの友」 こわしや我聞の作者、藤木俊さんによるこわしや我聞外伝本。 ちょっとだけ我聞を意識し始めた國生さんが初々しいです。 2000部擦って売り切れちゃったので、また再販するのだとか。
「にょろ〜んちゅるやさん」 話題になったハルヒの、更に話題になったちゅるやさん公式本。 実はハルヒは一巻とアニメしか見ていないという。 あまりにもアニメのインパクトがあるせいなのか、文庫本を借りて読んでるとあら不思議。いとうのいじさんの絵が偽物のように見えたという...
「王女様とこりない復讐者」 花鳥風月さんのところのリプレイ本第二集。 前回の本は、サイトで読んだ記憶があったのですが今回のは読んだ記憶がない。 呆けたのか本当に読んでないのか、どちらだろうか。 黄色かった頃の講談社現代新書を彷彿とさせる作りになっています。
「NOT FOR PUSH2」 メイド本第二話。 マンガというよりは、吹き出し付きの画集のような、そんな豪華さがあります。 読む度にどういうわけか箸ペンを思い出す... 味噌汁を勧めるミティアが恐い。 武器屋ラフはビックバンソードがカッコイイです。 アニメみたいな表情集とかないかなあと思いましたが、ありませんでした。 ちぇ。
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このラインも久々だな。
「読んでもらえる小説」を書く
―はじめに―
ウェブ小説限定の話ですが、ウェブ小説は読みやすいスタイルにすることが必須です。 これが上手くいっていないと読む気力が大幅に失われます。
例えば、章ごとにページを分割する。一行の長さを40字にしてみる、等です。
自分の場合、あまりに読みにくい小説などを前にしたときは「窓の中の物語」という文章を本の様な体裁にして読めるソフトを使いますが、普通の人はそんな物を使いません。読まないだけです。
では、今回のメイン。
「プロローグでつかむ」
つかみです。つかみましょう。 しゃんぐのプロローグ論ですね。
1:ありがちな(しかしできれば止めた方が良い)プロローグ
良質の序章は、たった数ページ読むだけでキャラと世界観を理解させ、章末に至る頃にはどっぷりはまって「続きが読みたいっ」と強く思わせてくれるものです。
ではどんなプロローグがベストでしょう。 「謎の人が謎の会話」 とか、 「謎の遺跡で現地民が謎の異物を拾う」 とか、 「謎の遺跡で謎なアレが見つかって謎の世界観の説明が入る」 というパターンを思い浮かべた方。 間違いです。 謎が謎して謎やってるというと言う思わせぶりなパターンですが、正直ああ言うのはお勧めできません。
つまらないからです。
知識ゼロの状態でいきなりワケのわからないことされても、それはやっぱりワケがわからないだけなのです。 これが許されるのは推理モノの最初に死体が転がってるパターンぐらいでしょう。あと、SFの年表と用語集。 なんでも推理モノの教訓には「序盤に迷ったらとりあえず死体を転がしておけ」という諺があるのだとか。 似たような教訓に「とりあえず走っとけ」と言うのがありますが。
謎プロローグもまあ、これから始まるであろう壮大な物語を期待してワクワクする人もいるにはいますが、たいていの人は胡散臭く思うだけです。 映画ならいいでしょう。ボンヤリしてればいいのだから。 実際、映画でも主人公が登場するまでどうでもよさそうな顔をしている客は多いです。コンスタンティンとか。 ゲームでもほら、ゼノサーガとか。 ああいうのは見るのに労力が必要ない映像物だからできるのです。 読んで貰えるかどうかも危うい小説でやるのは難しいでしょう。 やってる小説もありますが、あれはそこそこ実力のある小説家がやる芸当であって「多分面白くなる」という信頼があるから出来るのです。と、そんなことを書いていたガイド本もありました。俺が言ったんじゃない。
2:5ページ
序章の中でも最初の5ページは最も大事です。 ここだけ50回ぐらい見直してもバチは当たりません。 それぐらい大事です。 以前どっかの本で、 「5ページ読んで少しも興味がわかない小説は、やっぱり全部読んでもつまらない」 と書かれていたことがありました。その通りだと思います。 実際、小説大賞の下読みさんは最初の5ページでその小説を読む態度を決めるらしいです。
じゃあ5ページでどれほど書けるのかと言うことです。 5ページで序章が終わる必要はありませんが。 ちなみに5ページと言っても400字詰め5Pと言うことではなく、ラノベの体裁である17×40の680字で5ページです。 3400文字だから、原稿用紙だと8枚と半分。 解りやすいところだと、この日記小説の一回分ぐらいに値します。 ひとつ話が展開して、落ちがつく、程度ですね。 映画だとワンシーンぐらいじゃないでしょうか。 そのワンシーンでつかめということです。とても理に適った話ですね。
3:つかむということ
じゃあ掴むって何だよと言う話です。 まあ、掴むと言ってもいろいろあります。
・キャラを掴む ・世界観を掴む ・ノリを掴む ・話の流れを掴む
こんな感じですね。 欲を言えば5ページで全て掴むべきでしょう。 もうあれですね。箇条書きにしたい気分です。 箇条書きにしたらノリが掴めませんが。 ・キャラを掴む キャラ描写ですね。主人公を描写する場合は、外見の描写もさることながら性格や周囲の印象なども大事です。 三人称視点、いわゆる神の目線や客観描写で説明してもいいのですが、そうすると主人公に感情移入できないという欠点もあります。 一人称視点の場合は、話の流れで外見が解るようにする、等の工夫が必要でしょう。 「背が低いので舐められる。いつものことだ」とか「今の俺の格好は黒のスーツに、オマケに赤のワイシャツである。加えて金髪に日焼けの濃い顔ときては、俺のことをホストかなにかだと勘違いしても不思議はない」等ですね。 それさえできれば充分です。 慣れないうちは視点が自分から神の目神の目から自分とコロコロ切り替わったり、一人称視点なのに外から見ないとわからないことを書いちゃったり、また逆に三人称視点なのに心理描写をしてしまったりという失敗をしがちですが、こういう場合は初めから一人称視点(古くはリナ=インバースやゴクドー君、最近では七人の武器屋のマーガスなど)に固定するのがいいでしょう。
・世界観を掴む 探偵やトレジャーハンターなどの「職業物」の小説は、おおかたの場合、小さな依頼や小さな遺跡のクライマックスから始まります。その依頼や冒険に成功なり失敗なりして、メインの物語に進んでいくわけです。 ありがちですが、必要な設定を全てを説明できるため、よく使われます。 序章っぽい、と言えば序章っぽいでしょうか。 ちなみに「屍骸術師シリーズ」のオープニングもコレに当たります。
さて、世界観の掴みで陥りがちなのが、いらない説明まですると言うことです。 いきなり魔法の原理やらなにやらまで説明すると言うアレですね。そしてあっさり5ページが終了しているという魔のトラップです。 世界設定の説明は楽しいものですが、読んでる側にしてみれば苦痛です。いっぺんに説明されても覚えきれませんし、今知ったばかりの世界にそこまで強い興味は覚えてません。 剣と魔法の世界であれば、剣や魔法があるのだなと印象づけるのが必須であってそれ以上は必要ないでしょう。 伏線を張るぐらいののんびりしたもので充分だと思います。 ただ、「彼女は変態ヒーローだった」とか、「主人公は全ての魔法をかき消すことが出来るのだ」とか、物語の見所的な要素はもったいを付けない方が良いようです。 他にも「女だらけの女学校の子供先生になった」とか、「ツンデレの魔法使いの使い魔になった」とか。
・ノリを掴む この項は必要ないなあ。 持ち味を出そうと言うことです。 文体を弄ったりとか、変にプロローグにこだわって自分らしさが出ないようなら、やめといた方が良いでしょう。 自分らしさを読んで貰う前に読むのを中断される結果になります。 漫才のような掛け合いがウリなのだったら、最初からそれをやれと言うことですね。
・話の流れを掴む この辺はもうセンスというかなんというか。 コツは「疑問を作る」ことでしょうか。 「とりあえず走っておけ」というのは「なぜ走るのか」という疑問を産むためです。 「死体を転がせ」も「どうやって殺されたのか、何が謎なのか」という疑問を産むためです。 そうしてなぜ走っているのかを読んでいくウチに自然と物語の流れを掴む、というわけですね。なんでだろうな疑問を作れば5ページ後も読んで貰えるわけです。メロスは激怒したって奴ですな。
以上です。 駆け足で纏まりもない感じですが、 これを読んで良い序章が書けるようになりたいもんです。 いや、俺が。
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■2006年09月14日(Thu)
屍骸術師と勇者株16
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ノックが聞こえ、薄茶のコートを外套のように羽織った男が応接室に入室してきた。 腰には紅玉の鍔飾りが付いた剣。しつこいようだが、帯剣はなにより警察官の証明である。 オークノート市警強盗殺人課、警部。 「ルイス」 署内では冷静沈着、いついかなるときでも表情筋の一ミクロンとも動かすことはないと称されるルイス・ヴァイン部長刑事は、麦茶を飲んでいたタツマを見つけると相好を崩して手を振った。 「いやいやいや、美少女とフケ面の組み合わせというからもしやと思ったが、やっぱりお前だったか。いやいや、デート中に済まんな」 「ただの休暇中だ」 なんとはなしに窓の外を見る。 エンジン音は聞こえていた。妻兄弟が来たのかと思っていたのだが、庭に停まっている車両はよく見れば警察の車両であった。それも貴重な自動車車両である。 「ルイスだけか。というか、なんでわざわざお前が来るんだ」 金持ちとは言えストラグルは成り上がりの一族、以前のクロナクル家のように政治的な発言力を持っているわけでもない。 「おまえ、俺が金持ちに媚びうるために来たと思ってるだろ」 「違うのか?」 こいつは...という目でルイスが睨み付けてきた。 「ウチの刑事が巻き込まれてるって言うから、わざわざ押っ取り刀で出てきてやったんじゃないか。ここはご迷惑を掛けましたと警部とかそういう殊勝な態度で臨むべきところだろう?」 腕を束ねて、ふんぞり返る。 「ご迷惑をおかけしました」 「ああ」 「で、本音は?」 「お前がメイ女史とデート中だと聞いては見学しないわけにはいくまい」 と、隣で麦茶を飲んでいたメイへと近づき、慇懃に挨拶をした。 「そういうヤツだよ、お前は」 「ね、ちょっと。この美形誰?」 前で珈琲を飲んでいたルーラが目を輝かせて尋ねてきた。 「警部って。この年で管理職なワケ? やだ、玉の輿?」 誰に対してだと思ったが、頷く前にルイスがルーラに微笑んだ。 「あいにくわたしは売約済みですので」 そう言って熱い目線をタツマに送る。 ルーラが一メートルほどのけぞった。不審者を見る目つきで、何故かこちらを凝視する。 「え、なにあんた達そういう関係っとよ?」 「いえいえ、とんでもない。彼にはメイさんという好い人がいますので」 自分で振った冗談を、自分でさらりとかわすルイス。 ふとルーラを見ると、不審者を見る目つきは犯罪者を見るかのような目つきに変わっていた。 「え、なにあんたそういう趣味っとよ?」 「そういう趣味ってなんでしょう」 メイが小首を傾げるのを嘆息しながら、タツマは窓の外を見た。 ルイスに依れば、遅れて援軍が到着するらしいが、彼らを乗せた馬車まだまだ来ないの様子だった。 | | |
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■2006年09月12日(Tue)
屍骸術師と勇者株15
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死体を確認したところで、タツマのやることもなくなった。 メイの方もメイの方で買い取り人を失っている。どうしようもない。 三人は、自然の流れで応接室に戻ることとなった。
応接室へ入ろうとしたところ、扉の向こうに気配を感じる。 タツマは一秒だけ考えた後、その扉を開けた。 身を全部入れたところでルーラ・ループが襲いかかってきたので、左手でルーラが振りかぶるクリスタルの灰皿を受け止め、右手でルーラの顔面を鷲づかみにしてそのまま床板に叩きつけた。 頭を打つ鈍い音に、床板の軋む音が重なる。 一息吐いて禁煙パイポを銜えると、その横をメイと執事長がすり抜けていった。 中でぐるぐる巻きに縛られている証券会社の常務氏を見つけ、何やら会話をはじめる。 ルーラが性懲りもなく起きあがろうとしたので、背中を踏みつけた。 むぎゃあという音がする。声ではない。 「...正当防衛だ、悪く思うな」 「思うわボケっ! 人の頭でダンクかまっしょって、うっちぁバスケットボールかっ!! 女性上位と言う言葉を知らんとよっ!!」 「いや、流石に知らんが...聖典に、こういう教えがある」 「なんね」 「“クリスタルの灰皿で殴りかかられたのなら、アイアンクローで投げ飛ばしなさい”」 「やかましいわっ」 逃げる気力も起きなくなったのか、ルーラ・ループは両手を広げて大の字に寝込んだ。それを見てタツマも床板に座り込む。 「職務質問だ」 「ルーラ・ループ。姓はヒオウギの旅烏。17歳とよ。身長163、体重は秘密。3サイズは上から88・55...」 「聞いてないしあからさまな嘘を吐くな。黙秘は認めるが」 ヒオウギの旅鴉。ヒオウギが何色を示すのかはよく解らないが、鴉なのだから黒だろう。黒と鳥の組み合わせは、記憶が正しければ怪盗を示す姓だった。 「...警察前に名乗るか、普通」 根性は認めるが、警察相手に犯罪者と宣言するのも微妙な話だ。 「ふ、こちとら社会悪を滅す市民の奉仕者。金持ちぃ尻尾振りよー政府の犬にゃ屈しないとよ」 「権威の犬から言わせて貰えば、そういう必要悪気取った馬鹿が確信犯じみた正義を振り回すから、正攻法で世の中を変えようとする奴らまで弾圧されちまっていつまで経っても世の中が良くならないんだがな」 「え、そうなの?」 不思議そうに聞き返すルーラ。 嘆息するタツマ。どうにもやりづらい。 アンバランスなのだ、実力はあるクセにプロが感じさせるような“スレ”がない。 妙な訛りから察するにオノボリなのかとも思うが、それでは姓を立てる風習を知っていることに齟齬が生まれる。 「で、その怪盗の目とやらでどうなんだ。ここの当主とやらは殺されかれないぐらいあくどかったのか?」 横目でソファの方を見る。 常務と執事長とメイは、勇者株の売却について話し合っている様子だった。 まあ、捜査が入れば契約どころではない、話があるならば急いだ方が良いだろう。 「...うちはやってないとよ」 ルーラもそちらの方を見ながら呟く。 「殺人については認めてやらんでもない」 息を吐くように囁く。 「いいから話せ」 「あんた珍しか人とね...」 ルーラ・ループは倒れたままシャンデリアを見上げた。 「殺されて仕方ね〜人なんていないっとよ」 | | |
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■2006年09月10日(Sun)
屍骸術師と勇者株15
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「<蛍灯>」 メイの唱えた汎用術式が、真夜中の蛍のような光球を生み出す。 「ま、魔術士の方で御座いましたか」 先ほどからちょろちょろ付いてきているメイに疑問を持っていた執事長は、そう一言呟いて納得したように顎髭をさすった。 「いやはや、仕事柄魔術士の方を拝見する機会は多いですが、ここまでお若い方は初めてです。さぞかし名のある方でしょうな」 明らかにタツマより丁重な扱いだった。 「いや、こう見えて20代後半なんですよ」 言うがいなや足を踏まれた。 「タツマさん。冗談を言う暇があるなら、少し体を支えていて頂けますか?」 メイはストラップから発した魔術光を手に、穴を覗き込むような体勢をとった。 言われたとおりにタツマは、彼女の腹に腕を回し抱え込むように支える。 「では、落とします」 メイはその光球を無造作に穴へと放り投げた。 人工のトーチは一直線に地表へと落ち進んでいく。それ自体に浮遊性質があるのか、重力に反した等速的な動きである。にしても、 「大丈夫か? どんどん暗くなっていくんだが」 「大丈夫ですよ。地表に付いたら出力を上げるように調整していますから」 淡々とそう告げられ、内心で舌を巻く。普段からかわれては顔を真っ赤にして憤慨する彼女だが、こう言う場面での彼女は大人顔負けの落ち着きがある。 なんとなく、こっちが子供扱いされているようで少ししゃくだったが、まあ、事実その通りではある。 「こんな穴がテーブルの至る所にあるわけか」 「少し違いますな」 執事長が微妙な否定をした。 「確かにオークテーブルには下水や排水用の穴が柱の内部に存在します。ですが、その穴をダストシュートとしているのは...」 そこで執事長は言い淀んだが、大体の察しは付いた。おそらくは、テーブルでも一部の富豪だけだということだろう。 「敷地が広すぎて割り当てられている柱の数本を独占する形になるのですな。そうなりますと、人口密度の都合上いくつかの下水管は必要がないわけでして」 この穴を通る下水管も実際は使われていないのだそうな。道理で匂わないわけである。ちなみに落ちたゴミは、地表側で業者が回収するらしい。 「なぜ地面にゴミを落とす必要があるのでしょう?」 メイが腕にぶら下がったまま、小首を傾げた。 「動くなよ。回収業者を上に呼ぶより下水穴を改造した方がコストが安いんだろうさ」 もっとも、何十年先に黒字になるかわかったものではないが。 「金持ちは50年先の黒字まで見越すって言うからな」 「死んでますね」 一瞬、タツマに対する相槌かと思ったが、そうではなかった。 蛍火が地表まで到達したのである。 不思議な発光だった。どういう仕組みなのかは知らないが、四角柱の内側は全てが白日に晒されたかのように自然な色を見せている。 その一番下で、焦げ茶の布団のような物の上に人が倒れていた。 太ったうつぶせの死体だった。ガウンのような服を来ている。 建物十階分も離れた位置からだったが、タツマにもそれが死体であることは理解できた。 うつぶせの死体は首だけが折れて天上を向いていた。 | | |
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■2006年09月08日(Fri)
屍骸術師と勇者株14
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見晴らしの良いことで知られ得るオークテーブル上層にも、場所によってその景観の善し悪しがある。 中でも最も美しいとされている場所がテーブルの南の縁側であり、ストラグル家の屋敷はその南側に位置する豪奢な建物だった。 海側に面した人工の絶壁。その向こうに見える海と港の壮大なコントラスト。 その全部が南天の太陽に照らされて時間事に色を染め変えていく光景は、海に生まれ海と共に育ったオークの市民でさえも魅了する。 そんな絶景が拝める場所であるテーブルの南端は、当然地価もべらぼうに高い。テーブルの上に住むこと自体が金持ちのステータスであるが、更にその南端部に住むとなえば、これはもう更に二桁はグレードの高い大金持ちであることの証明なのだ。 つまりそんな場所に豪邸を建てるストラング家はとてつもない大金持ちなのである。 ――と、常務さんが、まるで自分がそこに住んでいるかのように自慢してくれたのだったが、あいにくタツマはその大半を聞き流していた。 どのみち肝心の絶景とやらも見る間もない、応接間に転がり込んでは常務さんと縛って気絶したままのルーラを残し、メイと執事長を連れたって庭へと息せき切って急行したのである。 必要があっての暫定処置だったが、人殺しの容疑をかけられた泥棒と同室に閉じこめるというのも気の毒な話だ。 通されたのは裏庭の片隅、喩えるならばゴミ捨て場を派手にぶちこわしたかのような場所だった。 「なんというか、ゴミ捨て場を派手にぶちこわしたかみたいな場所ですね」 「ゴミ捨て場ですので」 そのゴミ捨て場にはぽっかりと見るからに深そうな四角の穴があった。 大人ならギリギリ飛び越えられそうな程度の大きさで、なにやら下水管のようなものがその穴を下っていってる。 「あの下水管みたいなのは」 「下水管です」 まわりに散在する鉄板やらを頭で組み立ててみるに、どうやらこの穴に被せるようにして巨大なゴミ箱が作られていたらしい。 覗いていいですか、と尋ねる前に既にメイが穴を覗いていた。 タツマも、一応断ってから穴を覗く。 「真っ暗ですね」 灯剣を持ってくれば良かったと、また後悔する。 穴は、四方を鉄板のようなもので囲まれていた。 「どこまで続いているのですか?」 「地表までです」 「はあ、」 メイが首を傾げた。 「地面にゴミを投げ落とす習慣が?」 「ダストシュートって奴か」 その割りに、あまり悪臭めいたものはないが。 「あの、わたしが灯りを焚きましょうか」 「ああ頼む」 是否もなかった。 | | |
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■2006年09月07日(Thu)
天上へのモーダルシフト62
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「待ってくれ、おれ、お前に...」 言いかけて言葉を失う。 ルーィが自分を見ていた。 さっきまでふくれっ面をしていたのに、今は苦い笑いで。 困ったような、怒ってるような、自分で気づかないと意味がないと口ごもる母親のような、そんな微苦笑で。 その顔に、ヒュウイはふと目眩に似た既視感を感じ、言葉を失う。
ヒュウイにとってのルーィは、親友だった。唯一、気の置けない隣人だったと言ってもいい。 同年代の男の友人がいないというわけではない。 ただ、気づけばいつもルーィが隣にいて、そして自分とスーベリーアのことを本気で応援してくれるのだった。 まわりはあきらめてとっととルーィとくっつけばいいのになんて茶化したけど、不思議とそんな話にはならなかった。いや、 一度だけ尋ねたのだ。自分が好きなのか、なんて言葉は出なかったけど。 「どうして、いつもいてくれるんだ?」 そんな風な言葉で尋ねた覚えはあった。 そのときルーィは今みたいに少し困ったような笑い方で、 「あんたがスー姉に正真正銘のマジ告白をして、それでもフられたんなら教えてあげる」 と誤魔化したのだった。
――違う。あれは、誤魔化したのではなかったのだ。 ルーィは――待っていてくれてたのだ。だと言うのに... ヒュウイは飲み込んだ言葉のかわりに、腹の底からその言葉を投げ出した。 「待ってろ! いつか、絶対!! そこへ行く!!!」 うつむきかけていたルーィの顔が再び持ち上がる。 なびく碧の髪、その下でルーィはびっくりしたような表情をしていた。 馬鹿だ。なぜ謝ろうなどと考えたのだろうか。 「俺はお前が作ってくれたチャンスを、絶対に、無駄にしないから! そんで、絶対絶対お前の前にまた行くからな!! だからっ、答え用意して待ってぐえ」 叫ぶだけ叫んだヒュウイの首を狭まった空間の裂け目が絞めた。図書館側から見たら生首が空中に植わっているように見えただろう。 頭に血が上る中で、ルーィの目が点になっていた。 くすという笑い声のあと、スーツ姿の美女が指を振った...様な気がした。息も出来ない状況では確認してる余裕もなかった。 息苦しさが限界を迎える寸前、空間の裂け目が少しだけ拡がった。 慌てて首を引っこ抜き、何度を呼吸を繰り返す。 「し、死ぬかと思った...」 などといってる間にも、空間の裂け目はどんどん閉じていた。 気を取り直してヒュウイが裂け目に振り向くと、手の平ほどもなくなった穴の向こうでルーィが腹を抱えて大爆笑していた。 そうして、裂け目は閉じて今度こそヒュウイとルーィは別離した。
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■2006年09月07日(Thu)
楽しい小説書き方1
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小畑先生が銃刀法で捕まってますねえ。 アーミーナイフって聞こえは鋭いけど折りたたみ式の10得ナイフのことですな。 そんなもので捕まえる日本は平和だなあ。良い意味で。 許可なく刃物を持っちゃいかんよ、うん。9得ナイフ(ナイフ抜き)とかどうだろう。
で、小説の書き方なワケですが。 とにもかくにも小説のハウツー本を読むことです。 文芸ナイフでもOKですが、できればプロの小説家が書いたハウツー本を読むといいでしょう。理由はプロの作家が書いてるだけあって読みやすいからです。読みやすいとほら説得力在りますし。つまらない教科書読んだせいで勉強そのものが面白くなくなったなんてこともありますしね。 詳しくはここ参照。シナリオ講座などよりは入門と書いてあるやつがいいですね。久美沙織さんのが面白かったんですが今でも売ってるのかな。若桜さんのもオススメ。 長ったらしくて読む気になれない、内容が多すぎて何を読んだか覚えてないって人も大丈夫。まあ自分のことですが。 こういうのは基本さえ覚えてりゃいいと思うんですよ。現行の小説には少なからず作法というヤツがあって(たとえば「」内の文章は「〜。」で閉じない、三点リーダーは二マス六個「……」等)それを学ぶだけでも充分だと思います。自分も実践したときはおお、なんか小説っぽいぞと思ったものです。 あとはまあ「こんな文章が読みにくい」とか「これだけは書くこと」とか読みやすい文章を書くための最低限の知識だけさらっておけばいいでしょう。 そこから先の文章は参考程度でいいかと思います。 アスレチックみたいなもんで、それを読み終わったらある程度文章が上手くなってるはずです。一番いいのは読み終わった直後に自分の文章を読むことかな。
次回、「読んでもらえる文章編」に続く | | |
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■2006年09月07日(Thu)
メイドスタイル
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 | メイドのメイということで、花鳥さんところの「王女とこりない復讐者」が届いた記念の絵でした。
辺境紳士さんのところのNFP2はまだ届いてないですね...これもメイド漫画だ。 面白いと良いなあ。NFP1はデュープリのクリア順で揉めに揉めて以来デュープリ自体見るのも聞くのも嫌になったという思い出が蘇るので迂闊に読めない罠。
小説書き始めの頃「もっとたくさん小説を読んで文法とか、書き方とかを学んでください」と言われた覚えがあります。 アレ?と思いました。 「おれ結構、小説読んでるよなあ」と。 めちゃくちゃ読んでます。図書館もいっぱい通ってました。 てか、これ以上読むと書く時間がありません。
まあ、ぶっちゃけこの理屈はおかしいのです。 マンガが上手くなりたい人に「もっと漫画を読め」と言ってるようなもので、1000人中999人がこう言うでしょう「そんなんで上手くなるか」と。残り一人はもとから天賦の才を持っている人です。許斐先生のような。
文章を上手くするために小説を読むのはまったく無駄です。 そんなんじゃ絶対、学べません。
皿の上の料理を見たところで調理法が理解できないのと一緒です。 小説を読んだところで「その作者がどういう手順を踏んで、何に気を付けて、どういう工夫を凝らしたのか」なんて解るはずもないし、気づける筈もないのです。 気づけるのならばその人は既に小説の書き方を学んでる人であって、上達というよりは見聞を深めているという言葉が正しく、書き方を学べなんてアドバイスは誰もしないことでしょう。 ともかく、小説が上手くなるための読書というのはおかしな話なわけで、「血をもって血を洗うかのごとし」と夏目漱石も文学書を読んでて文学の神髄なんてわかるか〜みたいな意味で言ってたような言わなかったような。 まあ、向こうは文学論の話ですが。
じゃあ、どうすりゃ上手くなるんじゃと言う話ですが、これも料理と同じで教本読むか教室通うか独学をするかな訳ですが時間もないのでまた次回。 | | |
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■2006年09月06日(Wed)
天上へのモーダルシフト61
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御所ミハルはゴキゲンでそれを見ているのである。 3万年余の永劫を生きる刻の賢者、一度見た者は全て覚えてしまう呪いを背負う彼女の娯楽は、唯一にして普遍の変節を繰り返す個性のページェント――人間ドラマを観劇することなのであった。 掟(というよりは暗黙の了解だが)が無ければ是否ひきこもごもの台詞を乱れ飛ばして欲しいところではあるが、これはこれで趣があるかもしれないなとか考えているのである。 背後でルーィが石材の破片を握りしめ、ヒュウイ君に向かって投げた。 当たる軌道ではなかったが、そこはミハルが気を利かして空間をねじ曲げる。裂け目ごと破片の放物線上へと一瞬で転移したヒュウイ君は、額に石片の直撃を喰らってのけぞった。 叫び声を上げて岩石ごと裂け目に押し戻されていったヒュウイ君だが、すぐに顔だけ飛び出して、 「なにするんだよっ、痛いじゃないか」 どこか遠慮気味の言葉で抗議する。 どうもルーィが犠牲になったことをまだ引きずってる様子で、一方のルーィはその態度が許せない様子だった。 ちなみにミハルにはなぜルーィがそれを許さないのがさっぱりわからない。 ミハルは意図して人間の機微にうとい。推理小説を推理しながら読むタイプと何も考えずに読むタイプにわけるならミハルは後者なのだった。 むろん完全記憶を持つミハルならば少し考えれば答えに行き着いてしまう。だが、それではつまらない。推理小説に限らず、気づかされる楽しさがあってこそ物語は面白いのだから。 もっとも、傍観者を決め込むのは刻の賢者の常癖でもあるのだが。 ルーィが髪をかき上げて整える。 「閉じてください」 と、ミハルにだけ聞こえる声で言うのであった。 「いいの?」 「もう、いいです。あんなヤツ」 物凄く不機嫌そうだった。口をくいっと尖らせているのだ。 閉じろと言われりゃ閉じないでもない。もともと図書室に裂け目があるという状態は非常に不味い。 異世界として維持されている移動空間の存在密度が拡散されるため、下手すればこの世界自体に取り込まれかねない。そうなると、ミハルの司書本来の役目が果たせなくなってしまう。 即座に念じると、空間は再度ゆっくりと狭まっていった。 | | |
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■2006年09月01日(Fri)
熱しやすく冷めやすい
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 | 説明を良く読めば、タイトルロゴだったり特定の絵がメインページへの入り口であることが解るはず、嘘エンターに引っかかるお前はちゃんとサイトの説明を読んでないんで来なくてイイヨという罠。 コミックのファンサイトによくあるのがこのパターン。 正直めんどくさい上に人の信頼を裏切ってるようで腹正しいことこの上ない... | | |
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■2006年08月31日(Thu)
風紀部49
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飛来する岩石を次々に消滅させる桂介のビームサーベル。 「なんだそのへっぴり腰、花火やってるんじゃねえんだぞ」 実際、桂介の太刀さばきはそんな感じで、出来るだけ刃から離れようとしながらしきりに振り回す姿は花火を振り回すガキを連想させた。あるいは感度の悪いリモコンをしきりに連打しまくるおばはん。 「うるせ。ペンライト振り回してるみたいなもんなんだぞ。手返しただけで首落ちかねないっつーに」 「まあ、ライトセーバーもフォースの加護なしには使えないっていうしね」 と、これは武之部コメント。 「だからって、もう少し剣らしく振れっての。見栄え悪ぃぞ」 「うっせうっせうっせ! 重みもない剣でそんな芸当できるヤツがいないっての。どーせ映画だって棒持って撮ってるに違いないぞ」 ため息が漏れた。 「“そ”んなの使うなよ...めんどくせえ」 とたん、ビームサーベルが桂介の手から弾け飛び、光を失い筒に戻る。 桂介の手から離れたため、能力が適用されなくなったのだ。ただの演劇小道具に戻った筒が、桂介の頭をこづいた。 「はい、勝負あり。桂介の負け〜」 別にどういう取り決めで勝敗を定義していたわけでもないが、審判の武之部希生がそう宣言するのだから相馬の負けなのだった。 どのみち、そろそろ次の肉が焼ける時間だ。 もっとも、桂介のみが少し不服そうだったが。 「...てかよイズミ。その力卑怯過ぎじゃないか」 「なわきゃねーよ。デスノートつかえって、デスノート」 「世界観がもたねえよ」 能力者の能力発現は法則の相転移であり、能力の種類に限らず識空間内の世界観を別世界に変質させることによってこれを行う。 二個以上の能力が同時に発現する場合も同様であり、この場合は各者の能力が完全適用される位相に転移を起こしている。このとき、互いの能力が制限される等と言うことはない。イメージとしては世界観が重なる訳だが、それによって能力が相殺されたり干渉を起こしたりということは無いのだ。 また、能力の展開範囲は自分を中心とした極小の認識範囲であり、位相が重なるとその位相差を補完するためにより極小の範囲となる性質がある。 よって多人数を巻き込む能力は、世界観が拡がらないために「もたない」のである。 「まあ、」武之部希生が草場に落ちたビームサーベルを拾った。 微笑みながら、 「卑怯と言えば卑怯なんじゃないかな。桂介が小道具出しても、コウはそれが言葉一つで奪えるわけだし」 実際、吉泉は白鳳高校で最強の存在である。能力などと言う小難しい概念ですらない単純力であるため、弱点がないのだ。 もっとも、なにより実戦経験が段違いということもあるのだが。 んなわけあるか、と幸輔はまた呟いた。 「まあ、言ってることはわからんでもないけどな」 肩をすくめる吉泉。 「確かにそういう一面はある。身も蓋もねえ力持ってるヤツには、どうしようもねえ。念じただけで殺せる力を持ってるやつが相手じゃ、俺だって勝てる見込みはまるでねえ」 コップに入ってきた麦茶が飛んできた。吉泉の手に収まる。 「けどな、それを知ってるだけでも随分違うんもんだ」 飲み干す。 「イズミなら勝てるって言うのか?」 「負けはしねえよ」 相馬の問いに、吉泉は不敵に笑う。 「肝心なのは、だ。そういうヤツとはまともに立ち会うなってことだ」
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■2006年08月31日(Thu)
天上へのモーダルシフト60
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なんてことだ。空間の裂け目から頭を出したのはヒュウイだった。 亀裂が狭すぎて頭しか出せないらしい。きょろきょろとしている。本棚の死角に隠れているためか、自分にはまだ気づいていないらしい。 「どこだ、ここ。こんな場所、塔の中にあったか...」 あるわけがない。 大体の事情はミハルさんから聞いていたので、ヒュウイがどこから顔を出しているのかの察しは付いた。 見るからにやつれた印象だが、それでも死の直前に見たヒュウイよりは元気がある様子だ。少しホッとする。 自分が犠牲になったことで凹んでないかと心配していたのだ。 「図書館。スー姉、図書館がある!」 スーベリーアも近くにいるらしい。 彼女が最後に見せた、自分を責めるような目を思い出す。 目があった。 ヒュウイの顔が驚愕に歪み、それがだんだんと...ああ、なんて嬉しそうな顔をするんだろうか。こっちまで笑いたくなってしまう。 「ルーィ!」 「(だめよ、話しちゃ)」 頭の内側から音が響く。自分が喋っているわけでもないのに、自分が話しているような奇妙な感覚。ミハルさんの声だった。 「ルーィ、ルーィだろ!? 生きてた、生きてたんだな!!」 「(今、あなたが彼と会話をしたら、彼を引き込まなければならなくなるわ)」 簡潔な言葉だった。 引き込む、それはつまりヒュウイまでこの世と決別しなければならなくなると言うことである。ルーィは喉の奥から出かかった言葉を飲み込んだ。 「ルーィ! なんで返事しないんだよ」 叫び続けるヒュウイ。 自分が応じないのを見て次第に焦りが混じってくる。 「人違いよ」 ミハルさんが、肩から瓦礫の埃を払いながら自分の前に立ちふさがってくれた。 ヒュウイの顔が見えなくなる。いつも、ずっと見ていたいと思っていた顔だったけど、今はそれがありがたかった。 「彼女は、ルーィじゃないわ」 「...あんたは」 「ハバキの友人よ。そしてこの千会図書館の司書でもあるわ」 千会図書館。本の虫の耳には馴染みの幻の図書館の名前だった。 それは、古今東西のありとあらゆる書物が所蔵されてれているという伝説の図書館。真に知識を求める者の前にのみ姿を現す賢者の書斎。 「え、ここがそうだったの?」 小声で呟く。 「(そうよ...言ってなかったっけ?)」 聞いていない。 「そんなはずない、そこにいるのはルーィだ! なあ、そうなんだろ! 答えてくれよルーィ!」 胸が締め付けられる。思えば、ヒュウイがあそこまで真剣な声を上げたことなど一度もなかったかもしれない。しかも他ならぬ自分のために、だ。 思わず顔を確認したくなるのを必死で堪える。 「(いい彼氏じゃないの。やっぱり引き込んでみる?)」 茶化すようなテレパシー。首を振って否定する。 今がどうであれ、私という存在は一度死んだのだ。未練はない。 未練があるとすればただ一つだけだけど、それはスーベリーアに任せることにしたのだ。自分がどうこうすることではない。 ミハルさんは、それ以上は何も言わずに一回だけ頷いた。 再び呪文を唱え始めると、空間の裂け目が徐々に狭まりはじめる。 「頭を引かないと、ちぎれて落ちるわよ」 「待ってくれ! なあ、何か言ってくれよ! 謝りたいんだ! 助けてくれた礼を返したいんだよ!!」 ...いや、まだあるかな。未練。 手近な瓦礫を一つ、握りしめる。
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■2006年08月30日(Wed)
天上へのモーダルシフト59
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「うおおおおおお!!!???」 ズズズズズズズズン―― 突如として図書室に崩れ落ちてきた瓦礫の山に危うく飲み込まれそうになるルーィ。 「な、ななななんですか」 「あの、馬鹿!」 瓦礫の落ちてきた空間の裂け目を見上げて、ミハルさん。 「ワームホール閉じるの忘れてるんじゃないわよっ」 そうこう言ってる間にもどんどん瓦礫が流れ込んでくる。 「な、なんで室内に落ちてくるんですか」 「元々ハバキとを繋ぐホールだったから、引きずられてきたんだわ。あの、トウヘンボク。今度あったら絶対日記覗いてやるんだから」 ピンク色の文庫本を開きながらミハルさん。 そのまま源語を呟く。 『偉大なる閃き、万有の英知... 其は、人の疑念より生じ、移ろい、ないし潤いをもたらすもの。 本懐を遂げるため――』 「――黒い...裂け目? 奥が全然見えない!」 「ん?」 懐かしい――今となっては――声がした。 見上げれば、空間の裂け目から見知った人物が頭を逆さまにして顔を見せていた。 ――ヒュウイ
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■2006年08月30日(Wed)
屍骸術師と勇者株13
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「見つけたぞ、賊め!!」 「当主様の仇!!」 気付いてはいたが、いつのまにやら執事やらメイドやらが集結し馬車を囲んでいる。全員が天秤棒やら長刀で武装をしていた。 「げ」ルーラが青ざめて逃げ場を探す。 「かかれっ!」白ひげを蓄え、一際年を召した執事の号令で他の者達が飛びかかる。 「ひ、ひえええ」 御者と常務さんが悲鳴を上げたが、タツマとメイはとくに何もしない。 執事達が攻撃を仕掛けたのはあくまでルーラのみ、こちらに危害を加える気がないことは明白だったからだ。 「大丈夫、流石に分別はありますよ」 「そ、そうですね」 と、常務さん。その表情が曇る。 「あの、服装に家紋章は...ストラング家ですよ」 「それって...今から行くところの人でしたよね?」 「ええ、当主の仇とはどういう」 「カルラ氏のライバルという意味でしょうか」 「君にしては割りと正しい言語認識だが、多分違うだろうな」 ルーラと執事達の戦闘は思いの外、長引いている。 連携を取る執事達に対して、スピードで掻き回すルーラ。 軽快な足捌きで八方から迫る棒をかいくぐり、死角に回り込みつつヌンチャクの一撃を浴びせてそのまま離脱する。 それを逃がすまいと執事達が包囲の輪を広げると、それを見越したかのように横へ飛んで隊列が伸びて薄くなった箇所を叩き、また離脱する。 ヌンチャクは、その変幻自在の型もさることながら、遠心力やしなりを用いた打撃は一撃で骨をも砕くと言われている。その使用には熟練を要するが、もし使いこなせるのならば、これほど多様性と実用性を兼ね備えた武具もないだろう。 ルーラはそんなヌンチャクをまるで自分の手足のように使いこなし、執事達の連携を一撃離脱で切り崩していく。 彼女の技は、タツマの素人目にもかなりのものに見えた。 執事達は迂闊に攻め込めぬコトを悟り、包囲を固めて遠巻きに牽制をしかける。 絵に描いたかのような緊張状態だった。 とはいえ、 「どうするのですか?」 歩き出すタツマに小首を傾げるメイ。 「いや、私闘を納めるのも警官の仕事だからな」 更に小首を傾げる、メイ。不思議でならないと言った風に、 「今日は非番ですよね」 案外ビジネスライクな性格なのだろうか。 それとも、自分がそうだと思われているのだろうか。 「生憎、切り替えが出来るような性分じゃないんでね」 この前殺人犯を見逃した人物とは思えない発言だなとは思うが。 灯剣を持ってきていないのが悔やまれたが、無いモノをねだっても仕方がない。 「君は、そこの二人をしっかり守っておけ」 乱闘に飛び込む。
「双方、直ちに武器を納めて解散しろ。公道での私闘は禁止されている」 包囲の輪の中に入り、宣言する。 どよめき、執事の長らしき老人が白髪の垂れる目の奥で尋ねてきた。 「オーク警察のタツマ・アヴェルだ。姓は鴇色の落穂。あいにく今日は非番で剣を持ち合わせていないが、これで身の保証は立つだろう」 聞く者が聞けば素っ頓狂な自己紹介だが、執事の長らしき人物はそれで納得したようだった。 「...これは警察の方でしたか」 うやうやしく一礼をされる。と、 「執事長、信じるのですか?」 「帯剣すらしてないのに...」 あからさまに不信そうな若い執事たち。 「馬鹿者、今の姓を聞いていなかったのか」 執事長はそれを咎め、タツマに再度一礼をした。 「ご無礼をお許しください」 「いえ、俺だって姓を立てるなんて久しぶりですし」 あまりこだわって話が進まないなんてのはごめんである。 「それより、出来れば私闘を止めていただきたいのですが」 「申し訳ありませんが。警察の方に説くには愚かに過ぎるとは思いますが、一般人にも現行犯を捕まえる権利が認められていますので」 慇懃だが、頑として譲らぬ口ぶりだった。 「なるほど――現行犯ね」 まあ、そんなところだとは思っていたが。 「な、なんねその納得した目は!」 「何をしたって言うんだ」 全員が言い淀んだ。その間にタツマは周囲の執事やメイド達の表情を眺めた。怒り、不安、混乱...そして、悲しみ。そんな顔ばかりである。 老練たる執事の長でさえ、髭を怒りに振るわせていた。 「...殺人です」 「うそっとよ! うっちゃがやった〜はこの家の金庫っそ盗みいっただけとよ」 「どっちにしろ不法家宅侵入か」 う。という声。しまったという感情がありありと浮かんでいる。 どうやら、ルーラ・ループは生粋の泥棒らしい。わざわざメイド服まで着込んでいるところを見るに貴族専門のプロだろう。 あれほどの実力がありながら、強盗犯罪課のタツマが知らないと言うのがひっかかるが。 「...コイツの身柄は俺が預かる。いいな」 老人に断る。返事は割りとあっさりとしたモノだった。 「わかりました」 「執事長!」 「それでは我々の面目が!!」 若い衆が持ち場を離れて執事長に詰めよろうとし、 「包囲を解くな!!」 叫んでそれを止める。 屋外だというのにエコーが響き、集団がすくみ上がって動きを止めた。 「敵を中心に円状に密集し、常に一定の距離を保て!!」 「は、はい!」 一斉にそのようにする執事とメイド達。 普段、蚊の欠伸のような声しか出さないタツマだが、腹の底から声を上げればこの程度の芸当は出来る。 (警察学校式恫喝術なんだがな、要するに) 効果はてきめんで、執事はおろかルーラですら一瞬飛び跳ねていたのが見えた。 背後でメイが目をしばたいている。 「そんなに意外なのか...」 少し傷ついて、執事から棒を借りる。断ってから折り、警棒サイズにして振る。 「ほ、ほんきとよ?」 「逆らえば公務執行妨害だからな」 もっとも、非番だが。 「あんたがうちゃの身柄預かるってのはマジとね?」 「ああ。もっとも、警察が来るまでの間の一時預かりだが」 まあ、それにしたところで。 「ここの奴らにボコられるよりなんぼかましだと思うんだがな」 警棒サイズにした棒を構える。 それを見ただけで、ルーラの警戒はより深いものとなった。逃げ腰に見えるのは、なにもタツマが警察官だからと言う理由だけではない。 ヌンチャクは長柄の武器相手には絡め取ったり変則的な軌道で攻撃をしたりと有利な面もある。 だが、警棒のように肘程も丈がない武器が相手では小回りと間合いの関係上、その優位性を十分に発揮できない。近接用に二節棍を束ねて棒として突く用法もあるが、今度はリーチで劣るのだ。 つまるところ、ヌンチャクは警棒とは相性が悪い。 (まあ、間合いに入る前に打たれたらおしまいだけどな) 知ってか知らずか、ルーラはヌンチャクの一方を脇に納める独特の構えを見せる。ヌンチャクには鞭のように棍をしならせて中距離を一瞬で打ち据える技がある。おそらく彼女が今している構えはそれだろう。 脇で固定されたヌンチャクは、引き絞られた弓矢を思わせた。 じりじりと間合いを詰める。静寂の中、ルーラの呼吸が微かに聞こえる。 なるほど、確かに攻めあぐねる。 「どうしたとよ。威勢が良かった割りに、消極的っとね」 小馬鹿にするかのようなルーラの笑い。 「まあ、逮捕術にヌンチャクなんて無かったからな...」 実際、非番で怪我なんかしたくないよなあと言う思いもある。 労災も降りない。まったくもって消極的にならざるをえない。 「ふ、いまから負けたときの言い訳とは見苦しいべし」 「べし? ...あ、後ろ。」 「その手には乗らんとよっ!」 ゴゲス―― 緊張に耐えかねた――と言うより、あまりにも隙だらけなので思わず殴ったのだろう。ルーラの真後ろのメイドが棍棒で思いっきり彼女を殴り倒したのだった。 「そういえば、」 今更気付くタツマ。 「手出しするなとは言ってなかったな」 「そ、そこは言っとくっとよ...」 ルーラの呻きがテーブルに染み渡った。
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■2006年08月30日(Wed)
天上へのモーダルシフト58
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――ズパン ズズズ... ――ズパンスパン ズズズズズ... デュランダルが手に入ってからのスーベリーアの決断は一瞬だった。 すなわち、
「全てを切り開き、階下に降りる」
作戦は生き残りの中で圧倒的な計算力と空間は空く能力を持つスーベリーアの下で行われたが、デュランダルを振るうのはヒュウイの仕事だった。 幸か不幸か、デュランダルはヒュウイにしか扱えなかったのだ。 もっとも、例えスーベリーアやおっさん達が使えたとしてもヒュウイはその役目を譲らなかっただろうが。
迷惑を掛けたことを、全員に謝ったのだが、スーベリーア個人とはまだ向き合えていない。二人して後回しにしようと言う雰囲気だった。 『ここ』 「わかった」 スーベリーアが指をさしてD・Jの声で命令する。 昔は違和感を感じたモノだが、すっかり当たり前になっている。 瓦礫を斬り、平坦な道を造っていく。一行は既に床にまで到達していた。 怪我人を含む20数名を移送するための道を切り開きながらの行軍であったが、順調なものだ。 最上階の床は10m近い瓦礫に埋もれている。遠くに瓦礫にしては丸い石の固まりが転がっていた。 「お、おい...本当にここを降りるのか」 マルガリ――生き残ったおっさんの一人が近より、尋ねる。 『大丈夫、いけるから』 その言葉はどちらの言葉だったのだろうか。どちらにせよ、おっさんはその言葉で安心したようだった。 『螺旋階段はあっちよ、急ぎましょう。ヒュウイ、頼むわね』 「ああ...」 デュランダルを振るい、瓦礫を斬っては障害物を除去し、あるいは裂け目に足場を作る。 「す、すげえな、坊主」 「坊主はやめてくれよ...」 苦笑する。 「あ、ああそうだな。にしても...夢でも見てるようだ。今さっきまで足の踏みどころもなかったはずの瓦礫の山が、お前が一振りするだけで人が通るに申し分のない道になっていく。まるで魔法じゃねえか」 「魔法と言えば魔法なんだろうけど...」 淡く発光する刀、デュランダルを見やる。 「その剣か。確かに切ることに関してはその剣の力なんだろうってのは判るが」 「わかるんだ」 「そりゃそうだ、刃筋すら立ってないわ、刃の向きに関係なく真っ二つになるわ。物理法則とか完全に無視してるじゃねえか。俺だってそれぐらいは判るわい」 そう言えば、この人は剣道をやっていたか。 「そうなんだよなあ。それでも切れるんだからやっぱ凄いんだよなあ...」 ヒュウイとしては刻の賢者に貰ったと正直に言ったつもりなのだが、このおっさん達は信じないのである。もっとも刻の賢者自体、絵本や伝承の中の存在としか信じられてないのだが。 このデュランダルも塔の備品――ルーィが使っていた装備の類だと彼らは勘違いしているのだった。 丸い岩が、目の前に近づいてくる。 瓦礫に3分の2ほど飲み込まれているその岩に、ヒュウイは見覚えがあった。 あの岩は、ルーィを潰した岩だ。 刀を握る拳に痛いほどの力が入る。岩に線が見えた。 切る。 岩が真っ二つに割れて、片方が沈み込んだ。 「すげえな。切っ先で斬っただけなのになんで真っ二つになるんだ?」 「俺が聞きたいよ」 死線が見える、とD・Jは表現した。そこを斬れば物理法則を無視し連鎖崩壊を発生させる。そういう線が見えるのだと。 「なんか違う気がするんだけど」 ヒュウイはその喩えにさっきからずっと引っかかりを感じているのだが。 再度、岩石を斬る。 『こら、関係ないのを斬るな!』 先行していたスーベリーアあるいはD・Jがヒュウイを怒る。 そんなスーベリーアにも線が見えていた。いや、正確にはスーベリーアの喉の前の空間にだ。 『ど、どうしたのさボーイ?』 嫌な視線を感じてか、スーベリーアが身じろぎをする。尋ねたのはD・Jだったが。 唐突に、窓ガラスのひびを思い出す。眼前の光景はアレに似ている。 「...ああ、そうか。だから線“みたい”に見えるのか」 恐くて試すことはないだろうが、それを斬ってもスーベリーアが真っ二つにならないだろうことを、ヒュウイは無意識で理解した。 『何かわかったのかぃ?』 「いや、別のどうってことない認識の違いみたいな...」 とたん、八つに裂けた丸岩の一部が音を立てて瓦礫に飲み込まれていく。ちょっとした揺れもあったため、一同は悲鳴を上げてその場にしゃがみ込んだ。 「な、なんだこれ」 その中で、ヒュウイは立ちすくんでいた。 丸岩が飲み込まれたその場所には、床板が存在した。 つまり、天板が割れてそこにへ落ちたわけではなかったのだ。 いや...瞬間、何を感じたというわけでもないが、ヒュウイは飛び降りていた。 「黒い...裂け目? 奥が全然見えない!」 人一人入るのがやっと程度の裂け目が、そこにあった。
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■2006年08月29日(Tue)
天上へのモーダルシフト57
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居住層へ降りる螺旋階段は滑落が進み、まともな足場はもう無い。 天然の崖昇り(降り)はこんな感じだろうかと、ヒュウイは思った。 ちなみに、ロッククライミングという遊び自体は塔にも存在する。 『あんまり剣近づけるんじゃないよ、ボーイ』 無茶を言う。塔そのものであるD・Jから遠ざけると言うことは、常に腕を伸ばしてデュランダルを掲げ続けろと言っているに等しい。 「鞘、とかいるよなぁ」 『どアホ。斬ろうと思わないと切れないんなら鞘なんてあってもなくても一緒ジャン。そんなものいらないっつーに。持ち歩きたいんなら紐にでもくくっとけ』 「う、それもそうか...」 剥き出しの断面を見せる石材を飛び降りる。 途中、螺旋階段を阻むかのように小高く積もった石材の山があったが、それはデュランダルで慎重に切り裂いて道を切り開いた。 「こりゃ楽だ」 『力に毒されるんじゃないよ』 いらだった声調で、D・Jが釘を刺す。 『行きがけ普通に登って越えたのにどうして斬る必要があるのさ』 「でも折角ハバキさんがくれたんだし、」 『ほーほー、ミーに口答えかい。偉くなったねボーイ。で、そうやって刻の賢者に踊らされて、それですっかりその剣に頼ることしかできなくなるわけだヨ』 どうにも、D・Jはヒュウイがこの刀に依存することに懸念を抱いているらしい。 「...なあ、なんでそんなにハバキさんのこと」 『それを知ってもどうにもならないからタチが悪いのサ』 あきらめにも似た言い方だった。 ますます解らなくなるヒュウイ。D・Jが、自分のことを心配してくれているのは理解できる。だが、それが何故なのか理由が解らない。 「力に頼るな。道具に頼るな」等と言うお説教は大人に限らずヒュウイですら常日頃に心がけていることではある。だが、それさえ心がけていれば道具は人の生活を助ける便利な存在なのだ。必要以上に恐れて使わないなんてのは馬鹿げている。 (ただまあ、それだけのお説教とは思えないんだよなあ) 物憂いながら遠くを眺める。 「ん?」 ふと、その光景に違和感を感じた。 「なんだ、あれ。断層が...いや、あんな入り方するものなのか」 『どうしたのサ』 「いや。あっちの方の壁に線が入ったみたいに亀裂が」 走りながら、会話を続ける。 『どこさ』 「どこと言われても」 困る。なぜなら、その亀裂の線は壁やら石材やら柱やら窓やらの凹凸を無視して“ほぼ一直線”に入っているのだ。そこ、としか言いようがない。 「なんて言うか、ほら、あと5度ほど向こうの真上から入ってる断層、いや線かななやっぱり」 『おかしいネェ...そんなものない――って、ヒュウイ! 止まれ!!』 止まれ、と言う前に既に止まっていた。D・Jに説明するためと言うこともあるが、何故だか嫌な感じがして断層の線の上に行く気が起きなかったのだ。 途端、目の前に砂が落ちた。塔の壁を形作る石材が軋み、擦り合わさって崩れ落ちてきたのだ。それが何を示す予兆なのかはヒュウイでも解った。 壁が崩壊し、大規模な崩落が螺旋階段を飲み込んでいく。 岩石の一つが落ちるたびに、螺旋階段の石段が大音声と共に破壊され、埋もれる。 静止していなければ...それに気付いたとしても逃げる間すらなかっただろう。 ヒュウイは、それを呆然と見ていた。口を開いていたので土埃をまともに吸い込み、むせた。 もうもうと立ちこめる砂埃、石材の粒の零れる僅かな音。 少し離れて座り込み、砂埃が晴れるのを待つ。 「なんだったんだ、あれ」 『こっちが聞きたいネ。塔のせーれーとして面目立たないけど、ヒュウイが呼びかけてなきゃ気付けなかったヨ。なんだい、崩落を予見できたのかい?』 「いや、どうなんだろ。ただ線が見えて」 『またそれカイ。重ねて言うけどね、あの崩落は連鎖的なモノでもとから一本の亀裂が入っていたとかの原因によるものじゃなかったヨ』 D・Jがそういうのだから、そうなのだろう。つまり、あの亀裂もしくは線はヒュウイにだけ見えていたのだ。 そして落ち着いて今の記憶を辿ると、崩落の範囲と見えた線では場所も範囲も同じなのである。 『するってと、ボーイには崩落が線としてあらかじめ見えていたってコトかい?』 「まさか」 煙が晴れたので立ち上がり、遅れを取り戻そうと足に力を入れる。 『お、コラ。そんな急ぐとまた滑落が』 「っても、今降りないと次の滑落で二度と降りられなくなるだろ」 ボールが跳ねながら落ちていくかの様に、ヒュウイは一歩で跳び続ける。 踏みしめた足場は、ヒュウイが飛んだ次の瞬間には音を立てて滑落していく。 『ちょ、待て! そこから先は一歩でも踏む場所間違えたら落ちるゾ。せめてミーがアシストを』 「いらんっ」 その言葉でヒュウイは飛び、石材で出来た足場を駈け抜ける。 その足場は、崩れ落ちた階段の裂け目に縦長の石材が重なるように架かり出来た橋である。橋のバランスは石材同士の微妙な緊張によって保たれているだけであり、なるほど踏み場によっては一気に足場が崩れ落ちることだろう。 が、ヒュウイはそんなコトもお構いなしに石材の橋を一気に渡りきっていた。 『う、うそぉ。なんであれだけ走って落ちないのサ』 「ん〜なんていうか線が見えたっつーか」 またかと言われそうだが、事実そうなのだから仕方がない。 確かに見えるのだ。ここを踏めばまた崩落するのだろうなと言う気配を感じさせる線が。 『それはアレか、こう、ここを辿ればダイジョーブとか、勝利へのパスルートみたいな感じのアレか』 「それはよくわかんねーけど、たぶん逆」 『ふうむ。生命線じゃなくて、死線が見えるってコトかネぇ』 確かにそんな感じではある。 「なんか違うような気がする...」 『なにがサ』 「いや。死線、って言葉かなぁ。感覚的に...っと、」 螺旋階段は円筒の内側をなぞるように在る居住層へと飲み込まれている。が、その居住層への入り口である穴が瓦礫で埋め尽くされていた。 「使うけど」一応断ってみた。 『断られてもナア...』 デュランダルを振るう。その一太刀で瓦礫が崩れ、穴の内側へと流れ込んでいった。 「よし、行こうか」 『待たんかイ』 何故かD・Jが声を上げた。めちゃくちゃ驚いている。 『い、いま何やりやがった、ボーイ! 壁刳り抜くとかそんなナマカナなことじゃなかったゾ』 「なにって、」 崩した瓦礫の中は、膝立ちで侵入せねばならないほどに狭かった。 もう少し崩せばよかったと独りごちる。 「瓦礫崩したんだけど」 『崩すって積木崩しとわけが違うんだゾッ! 上部からの切断のみで力学的な均衡を潰しなおかつ一定量を滑落させるだとか、そんな熟練の発破師みたいな芸当が剣で出来るわけないでショ!?』 「いやでも出来たし」 這い出た居住層の中は薄暗かった。石材独特の据えた匂いがきつい。下へ続く螺旋階段は大量の石材の土砂で埋もれている。そっちは無視し、左右水平に続く円周廊下を見やる。 円周廊下なので、どちらから行ってもスー姉達のいる場所には着くのだが、それでも近い方向を向いて歩き出す。 手近な採光窓の砂埃を手で拭う。窓ガラスは割れてはいなかったが、圧力に耐えかねてひびが入っていた。 透明の板を斜めに走る一筋のひびを見て、ヒュウイは熟考する。 「なんか出来そうな気がして、だからやったんだけど」 押し黙る、と言うのも変だがD・Jは何かを考えるかのように数秒唸っていた。 『...そうか、デュランダルだ。そいつが徐々にヒュウイに馴染んできてるんだな。さっきからのコトもそうダ』 忌々しいそうな声。まるで危惧していたことが実際に起ったかのような。 「デュランダルが?」 『どこまで手が届くか、どこまでジャンプできるのか。走れば間に合うのか、殴れば壊れそうか。そんなことは誰だって判る。 猿は尻尾で枝にぶら下がるし、鳥は自分が飛べることに疑問に感じない...ボーイに起ってるのはそういうことなのサ。デュランダルが馴染むってことは、無意識下でデュランダルが出来ることを自分のこととして認識するようになるってことなのさ』 「無意識...で?」 『う〜...持ってる道具に併せて、自分がなにが出来るかの認識が変わるなんてのはデュランダルじゃなくても起こりうるケドさ。デュランダルはそれが顕著なのサ。靴や服よりももっと身近に、それこそ手足のように――デュランダルは自分の存在を持ち主の心に認識させるのさ』 だから厄介なのさ、とD・Jは付け足した。 『死線が見えるのもその影響なんだろうサ』 「なるほど」 今にして思えば、ヒュウイが斬ったのはまさしくその線だった。 その線を斬れば瓦礫が崩れると何となく思ったのである。 スーベリーア達のいる部屋が見えてきた。 | | |
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■2006年08月25日(Fri)
天上へのモーダルシフト56
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「やだよ、めんどくせぇ」 『なぬっ、このトウヘンボク!!』 「ってもなあ。D・Jが喚くんじゃ持っていけもしねえし...」 木材の山に突き立つ刀を見上げてヒュウイ。 「ハバキさんが使ってたみたいに、輪っかの部分だけになったりしないんかなあ」 『そりゃ無理さ、ボーイ。その【デュランダル】はもう剣としての機能しかないのサ。刻記憶から察するに【杖】としての機能がその鍔にあったことはアンダスタるけどネ。その鍔にはもう杖はないのサ』 床から響くD・Jの言葉は、半分以上が意味不明だったが。 「デュランダル?」 『その剣の名前サ』 なぜ解る、と言う顔をしたのだろう...もっとも、D・Jに視覚はないが。 『不本意だけどミーら精霊にゃ、そういうのが解るのサ。ヒュウイだって、初めて見る花が何色をしているかを知るのは簡単ッショ。そういうことなのサ』 「どういうことなんだ...」 首を捻る。 『イイヨ。持っていきねー。別にコイツが状況を打破するキリフダになるなんてことぁないケド、それでもクソのヤクにはタつだろーし』 「いいのか? 恐いんだろ、デュランダルが」 『こここここ恐くなんてあるかボケェ! こちとら萎えてもカ・ディンギルの精霊やっちゅーねん!! たかたかたかだか刻の賢者のじんせいれー如きに恐れなしてたまるかワレェ!』 よく解らないプライドを持ちだして喚き立てるD・J。 その音の振動でと言うわけではないのだろうが、木材に突き立てていたデュランダルが倒れた。 『きゃああああ近づけないでぇえええボーイ! ヘルプミーヘルプッ!!』 あるいは魔剣のことだ。意志を持ってワザと倒れたのかもしれない。 「まあ、いいか...」 今ヒュウイがやるべきは、上に残った人達を無事に下の階に運ぶことだ。 それには現状で最も信頼の置けるリーダー、スーベリーアの元へと戻る必要がある。 妙に落ち着いた気持ちだった。 体が軽く、無性に何かをやりたい気持ちに満たされている。 いじけてる暇など、まったくもって無かったのであった。 | | |
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■2006年08月24日(Thu)
史上最大の藪蛇
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冥王星降格しちゃいましたね。 妙にいたたまれないこの気持ちは何なんだろう...カッコイイのになあ、名前とか。
エントラ外伝(※)終了〜。
世の中は三部作で終わるようにできているので、これで完結っぽくしておきましょう。 このシリーズ、色々考えるべき点があるというか。...まあ一番の教訓は、人様のキャラを拡大解釈してはいけないと言うことかなあ。サリーを崩しすぎた気が。 どうも自分の考え方は捻くれてるみたいで、主要な人物を中心にするとどんどん捻くれていくというか、アクワイとか色の付いてないキャラとか書いていた方がいいっぽい。 外伝作家の所以か。 (※エントラ外伝はハッピーラッキーエントランスという投稿小説コーナーの二次創作っぽい話です。)
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