第3回  
不妊症検査1 血液検査と検査時期
 
 体外受精や顕微授精などの補助生殖医療のことをAssisted Reproductive Technologyといい頭文字をとってARTと呼んでいます。タイミング法や排卵誘発、人工授精などの一般不妊治療が精子と卵子が出会う確率を上げることによって妊娠の可能性を高めようとしているのに対して、ARTは受精・分割が確認された胚(受精卵)を直接子宮内に戻すという非常に直接的な治療法であるという点が両者の大きな違いです。従ってこの治療においては胚の最終的な分割や着床といった妊娠にいたる最後の段階が順調に進むかどうかが妊娠するかどうかの決め手になります。一般不妊治療が、本当に排卵しているのか、卵子はpick up(捕捉)されているのか、精子と卵子は出会っているのか、受精は起こっているのか、受精卵は卵管から子宮まで移送されているのか、などの素朴な疑問に対して何一つ確実にお答えできないのとは対照的に、体外受精では成熟卵子、受精卵、分割卵をそれぞれ確認し、子宮内に確実に送り込むことができますので他の治療法より妊娠率が高いのはある意味当然といえるでしょう。
 1978年に英国においてヒトで初めての体外受精成功例が報告された時は、全くの自然排卵のタイミングで採卵は全身麻酔をして腹腔鏡下で行っていました。その後、HMG製剤による卵巣刺激と自然排卵を抑制するためのGn-RH agonistの併用、経膣エコー下採卵法の確立により現在では外来ベースで安全・確実に採卵できるようになりました。同時に培養液の進歩により、当初初期胚までしか培養出来なかったものが着床直前の胚盤胞という状態まで長期に体外培養が可能となっています。また以前は廃棄せざるを得なかった余剰卵(移植しないで残った胚)を凍結保存することにより一度の採卵で複数回胚移植を行うことが可能です。そして従来の体外受精では克服出来なかった重症男性不妊に対しては顕微授精という方法で運動精子を直接卵子に注入して受精卵を得ることが可能となっており、今日では体外受精のおよそ3分の1が顕微授精で行われています。そして現在日本だけで年間1万人以上の赤ちゃんが体外受精で誕生しており、これは全出生児のおよそ100人に1人の割合となっています。
   
 
 
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