第1回  
もう一人のあなたと出会うために
 
 一年間に渡って不妊症とその治療についての連載をすることになりました。
今回はそのイントロダクションとして私の不妊治療に対する想いをお話したいと思います。
 私のクリニックの待合いにはクリムトの「接吻」という絵がかけてあります。非常に有名な絵画なのでご存じの方も多いと思いますが、プーさんでもなく石榴(ざくろ)の絵でもありません。男女の抱擁と接吻・・・。私は不妊治療の原点であると思っています。よく赤ちゃんが欲しいと思う気持ちは理屈ではないと言われます。確かにその通りだとは思うのですが、「この人との間に子供が欲しい」「この人と一緒に子育てがしたい」という気持ちをご夫婦そろって持ち続けていただくことが非常に重要だと思います。
 とかく苦しいことの多い不妊治療をお受けになる患者さんにとってご主人の存在はなによりも支えになります。たまに外来にご夫婦で来院され診察室で夫婦喧嘩を始めるカップルがあります。そんなときは、こちらの方がつらく寂しい想いがするものです。この治療を受けられることでご夫婦の間に溝ができるとしたら、それは全く本末転倒です。確かに不妊治療は決して楽なものではありません。また、お金も時間もかかります。精神的にも追いつめられますし、努力したから必ず結果が出るというものでもありません。いろいろな治療を受けられても最終的に約20%の方は赤ちゃんを抱くことができない、それが現在の生殖医療の限界です。それでもこの治療を受けられたことで必ず患者さん側にも何かしら得るものがあると信じています。それはご夫婦の結びつきや信頼関係、互いを思いやり尊重する心ではないでしょうか。
 みなさんが待ち望んでおられる自分自身の分身ともいえる赤ちゃんと、その赤ちゃんを抱いているあなた自身、まさにもう一人のあなたと出会うお手伝いができることをスタッフ一同願ってやみません。
(次回は認定健康スポーツ医としての立場から、ストレスやスポーツ、肥満、喫煙などとの関わりをお話しようと思います。)
   
 
 
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