第3回  
不妊症検査1 血液検査と検査時期
 
 子宮内膜症と不妊症は複雑な関係です。まず、不妊症の方の約半数に子宮内膜症が見られますので頻度としてはかなり高いのですが、子宮内膜症の方が皆さん不妊というわけではありません。そして、子宮内膜症の代表的な症状は生理痛、性交痛、排便痛、月経時以外の腹痛などですが症状の程度と病気の進行度とは必ずしも一致しません。また、現在一般に広く普及している治療薬はGn-RH agonistという薬剤ですがこれは一時的に排卵を抑制し、卵巣ホルモンの分泌を止めて内膜症組織を萎縮させようとするものです。当然治療期間中は排卵がおこりませんので妊娠しません。しかし休薬すれば必ず再発します。子宮内膜症自体は慢性の病気ですから卵巣を摘除するか閉経するまで完全に治癒することはないからです。一方、卵巣や子宮の筋層の病変は超音波検査やMRIなどの画像診断で比較的容易に判断できますが、骨盤内に癒着という形で病状が現れますと診断をつけることは非常に難しく、腹腔内を確認しないと分かりません。中には深部子宮内膜症といって腹腔内の観察だけでは分からない場合もあります。CA−125という腫瘍マーカーも参考にはなりますが、約半数にしか陽性にでません。そして約3%の方に肺や臍部(おへそ)、腸管などの遠隔臓器にまるで悪性腫瘍の転移のように病変が現れることがあります。このように子宮内膜症とは本当に悩ましい病気で、治療法を選択するのに頭を抱えることもしばしばです。
 さて私の検査・治療方針ですが子宮内膜症を疑った場合は腹腔鏡をお勧めしています。そして骨盤内の癒着の有無や卵巣、卵管などを徹底的に調べます。実際に内膜症病変が認められた場合は電気メスやレーザーで病変を念入りに焼灼します。そして卵管の通過性を確認します。この後、自然妊娠を期待するか、一般不妊治療を続けるか、体外受精に進むかを患者さんとご相談いたします。以前にもこの欄でお話ししましたが、卵管のpick up障害(卵子の取り込み障害)が機能性不妊の方の約半数を占めていると言われており、その確認には腹腔鏡検査が必須と考えているからです。
   
 
 
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