第3回  
不妊症検査1 血液検査と検査時期
 
 多嚢胞性卵巣症候群の患者さんの診断は比較的容易にできます。診断基準として臨床的には月経不順、それもほとんどの方が初潮の頃からずっと不順であること、内分泌的には血液検査でLH(黄体形成ホルモン)の上昇が見られること、そして卵巣の形態的変化として超音波検査で卵巣の腫大と未成熟な卵胞が数珠上に卵巣表面に並んでいるのが確認できることが挙げられます。欧米ではこれに加えて肥満と多毛という臨床所見も加わりますが日本人の場合はあまり顕著ではありません。原因に関してはまだ不明の部分も多いのですがステロイド合成の異常により卵巣内のアンドロゲン(男性ホルモン)濃度が上昇しているためにおこる機能性卵巣アンドロゲン過剰分泌と理解されています。
 そしてこのアンドロゲン濃度を上昇させる要因として注目されているのがインシュリンです。インシュリンは卵巣に直接作用して卵巣内のアンドロゲン産生を促進する働きがあります。このため欧米では糖尿病治療薬であるメトフォルミンという薬が多嚢胞性卵巣の患者さんに使用されており良好な結果を得ています。しかし我が国ではまだ一般的ではありません。
 さて現在行われている内科的な治療として、はじめはクロミッドやプレドニンなどの内服薬で排卵を試みます。これが無効な場合FSH製剤やHMG製剤などの注射薬を使用することになります。しかしながら注射薬を使用した場合卵巣内の未成熟な卵胞が一気に発育してしまい卵巣腫大や腹水貯留といった卵巣過剰刺激症候群という合併症を引き起こす可能性が高くなってしまいますので注意が必要です。一方、外科的な処置として、以前は開腹手術で卵巣を楔形に切除する方法も行われていましたが傷跡が大きいことと手術による癒着形成も問題となるため、最近では腹腔鏡下にレーザーや電気メスを使って、肥厚して固くなっている卵巣の表面に沢山の穴をあけて排卵させやすくする多孔術(ovarian drilling)という方法が一般的です。この処置によりホルモンバランスが改善され、注射薬などの使用量をかなり減量させることが可能となります。また、未熟な卵子を採取して体外で培養し、体外受精-胚移植に応用するIVMという方法を実施している施設もあります。
   
 
 
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