第3回  
不妊症検査1 血液検査と検査時期
 
 精子が臭いを嗅ぎ分けているのをご存じですか。これは今年、米国とドイツの研究グループがサイエンスという科学誌に発表した最新の研究結果です。精子の表面にはにおい物質がはまりこむ「鍵穴」に当たる受容体があるらしく、この受容体は人間の鼻の嗅覚細胞にある受容体によく似ているそうです。研究グループはこの鍵穴にはまる新たなにおい物質を発見し、精子がこの物質の濃度が高い方向に進むことを突き止めました。どうやら精子はこの物質を頼りに卵子までたどり着いている可能性が高そうです。
 ところで精液検査の正常値には一般にWHO(世界保健機関)の基準が用いられますが、体外受精の際に夫の精子を評価するとWHOの基準を満たしているだけでは受精率が低いことが多く、不妊症専門クリニックでは独自の精液検査や評価方法を併用して用いることが多いようです。
 そもそも精子は約2ヶ月半かけて精巣のなかで作られます。常に新しい精子が一から形成されます。女性が卵母細胞という未熟な状態の卵子をすべて卵巣に蓄えて生まれてくるのとは決定的に違います。すなわち卵子の老化は問題になりますが精子の老化は問題になりません。正常男性の場合、精子は一日に約80×106個生産されています。(精子は細胞ですので一匹ではなく一個と数えます。)また、禁欲期間は平均2〜3日が適当とされています。性交をもたれた翌日には約半数の精子は回復されていますので排卵の頃に2日続けて夫婦生活をもたれることは妊娠率を高めると思われます。一度の性行為で射精される精子数は数億個ですがそのうち卵子にまで到達できるのはほんの数十個ですのでこの段階でもうすでに非常に厳しい自然淘汰が行われているのです。もちろん受精する精子は超エリート精子ということになります。
 ちなみに先のにおい物質ですが研究グループが香料のもとになる約100種類の物質を使って研究したところ、花の香りをだす物質に最も強く反応したとのことです。そんなことを考えながら顕微鏡を覗いていると目の前で動き回っている精子たちも結構かわいく、いとおしく見えてくるものです。
   
 
 
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