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■2007年12月29日(Sat)
屍骸術師と壊れた杖2
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「杖が壊れた。とは、武器の方か」 「ええ」 「ふうん」 白衣の美女は、興味なさげにビーカーに注がれた琥珀の液体を飲み干した。 「まあ、見せてみろ。刑事たちの武器メンテもわたしの仕事だ」 「そんな仕事してましたっけ。というかコレは刑事ではないんですが」 コレ扱いした途端、メイが脛を蹴ってきた。 「他はどうか知らんが、ここでは業務のうちだな。日がな刑事どもが自分の兵装についての相談にやってくる」 ここ、科学特捜課武器開発研究室、主任サナエ・ヴァンプ。 知性を感じさせる鋭いまなじり、日の光を知らなそうな白く透ける肌。艶のある黒のポニーテールを腰まで垂らす。オークノート市警でも知る人ぞ知る才媛である。 「儲かりますか」 「繁盛してるよ」 不機嫌そうに言う仕草すら、絵になっていた。 そりゃあまあ来るんだろうなあ、男の刑事が。 ナエさんと目が合うと、彼女はふっと表情から力を抜いて目を細めた。 「おまえもその1人だがな。タツ」 「タツマさんは足軽ですね」 「意味がわからん」 もう蹴っては来なかったが、メイの表情はまだ怒っていた。 「見せてみろ」 メイが腰ひもにぶら下げた杖を取り外す。 一見、スタンド付の登山杖(スタンドをおろすと椅子になる)に見える杖だった。 メイは、その杖にくくりつけた水晶のストラップをサナエに手渡す。 「根付け型の“杖”か。随分小さいな。壊れた箇所は?」 「展開部です」 「そりゃまた主要箇所だな。場合によっては買い換えた方が早いかもしれん」 そのコメントにメイは、黙ってこたえない。 ただ少し寂しそうにしただけだった。 「やるだけやるが、な」 嘆息して、サナエは抽斗から眼鏡を取り出した。 かけて、ストラップを眼鏡の前にぶら下げる。 「期待するなよ...分解すら出来ないかもしれん」 そう呟いて水晶を覗き込むサナエは、今までタツマが見た表情のどれより優しく見えた。 | | |
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2007年12月28日(Fri)
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杖。 携行式術杖、サイクルアーム、軍用杖、ただ単純にハンドウェポンとも言う。 呼称は多くあったが、魔術の大陸カトルニカの多くで『武器』に分類されていることは共通している。
「兵装としての杖は、災禍の時代――二百年前にその原型が完成されています。そして、現在に至るまで杖の構造は...性能や外機能的改良はあっても、内部のシステムそのものが変わると言うことはありませんでした」 「つまるところ、パーツの品質やデザインの改良はあったが、仕組みそのものは二百年前のままということか」 この辺、傘みたいなものだろうとタツマは1人納得する。 傘はどれだけ時代が進もうと、その仕組みと形状そのものは変わらない。 もっとも、進衰著しい兵器として「今も昔と変わらぬ仕組み」 なんて言うのがまかり通るというのは、いかがなものかとも思うが。 「杖の機能は、大別して三つに分かれます。発信、受信――そして、展開の三つです。地域によっては“増幅”“発動”を加えて五機能とする場合や、逆に受発信を一つに纏めたりする場合もあります。」 「俺は五機能で教わったわけだが...君は三機能なわけか」 「はい、確かに杖の中には、発動補助――術者の意思ではなく杖に備え付けたトリガーによって発動を行える物がありますが...魔術とはあくまで人の行う業です。術者の任意である発動を杖の機能とするのは不適切です。 また、増幅を含めこれらの機構は元来の杖の機能には含まれていませんでした。杖を構成する最低限の機能としては不必要でしょう。よって、三機能としています」 すらすらと、答えるメイ。 まるであらかじめそういう文面が用意されていたかのような、淀みのない回答だった。まあ、実際教科書にでも載っているのだろう。 屍骸術師に教科書があるのかは知らないが。 「で、その杖がどうした。」 「ええ、壊れました」
(屍骸術師と壊れた杖)
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■2007年12月16日(Sun)
いやあ、全く更新してないな
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 | いつの間にか5周年過ぎてました。 えーまあ、いろいろありました。 概ねアイドレスという長期的なネトゲみたいなのに関わったせいで、日記に費やす部分が減ってしまいました。 それとは別に今の業務がこう毎日更新できないようなあれなので、必然的にmixi(こっちはアイドレス関係の人が多いため)で更新ばっかりしてました。
でまあ、ぶっちゃけ日常的な日記もmixiでやる方がいいわけで、ここで更新すると言えば、自作の小説の書き連ねや日々思ったことがメインとなるんですが。 それはさすがに書く余裕がないのでした。 毎日更新していた頃が懐かしい。
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2007年06月16日(Sat)
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Replay
 | これはまあ、Hi-うささんという機体なのですが、いきなり載せても誰が一体分かるのかという。 まあ、一応絵も描いてますということをアピール。 | | |
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2007年04月25日(Wed)
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 | 吉田遥 ばっかり書いている気がするこのごろ | | |
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■2007年04月17日(Tue)
げふん
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 | アイドレスというゲームに、なんというか根っこの方から巻き込まれてます。 エントリーネームは はる@キノウツン藩国 です。
おかげで絵も描けないし、小説更新できないし、もうどうしろと〜 | | |
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■2007年03月08日(Thu)
無題
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最近読んだ4コマ ・教艦ASTRO(万能葱)
ようやく一巻が出ました いやいや待った甲斐がありました。 | | |
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■2007年02月22日(Thu)
sai修行中
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 | saiは線の描写に優れたソフトですが、色塗りも出来ます。 でもやっぱり線かなあ。描いた線を再度いじれたり、入り抜きが表現できたりと線がヘタレ気味な自分にはありがたいソフトですね。 | | |
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2007年02月20日(Tue)
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 | | saiを使ってみました | | |
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2007年02月16日(Fri)
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 | HDDがぶっ壊れててんやわんやでした。 今更ながらに絵とか日記にあげまくってて、セーフだった。 他の人の絵とかはもろとも吹っ飛んだけどw
小説に関しても...実害がないなあ。 小ネタ集は吹っ飛んだけど、設定資料集とかそう言うのは問題なし。 作った設定をすぐに出すという、出し惜しみのない性格なのが幸いだったみたいです。
てか、案外被害がないな...サルベージする気もおきねえ... | | |
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2007年02月04日(Sun)
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ウィンター邸のダンスフロアは飾り気もなく簡素である。 もっとも、ダンス自体は今も行われているらしいが。
「なんというかまあ...」 リノリウムの床を蹴って、デューは反響を確かめる。 窓も柱も飾りもないフロアにそれは良く響いた。 刑務所に体育館があれば、こんな感じだろうか。 「道場みたいな所ですね」 「改装しましたのよ」 タイトなスーツ姿で顕われたウィンター婦人が、傷だらけの壁を誇らしげに叩いた。 このフロア、本当になにもない。婦人とおばさんの傍らにあるウッドチェアも、執事が今運んだものだった。 「このお屋敷、もともと曾祖父の別邸を頂いた物なんですけど、ダンスというご時世でもありませんし。ならばいっそのこと使用人たちの運動施設にしようかと」 「はあ、それはまた思い切ったものですね...壁とか床とかまで改装したんですか?」 「ええ、遠慮して暴れられなくなっては元も子もありませんし」 軍人でも要請しようと言うのでない限り、その配慮は必要ないと思うが。 気になるのは壁の傷だ。線状の筋が幾重にも、まばらに穿たれたような痕もある。 刀傷、打撃痕、あきらかに戦闘による物だ。 「ええ、と。ここで何を...なにか事件が起ったとかですか?」 「いえ、ここでは何も」 ここでは、ときた。 「では何を。どうも、おばさん向けの話じゃなさそうなんですが」 「失礼ね、デュー。失礼よ」 椅子に腰掛けて晩餐で膨らんだ腹をさすっていたおばさんが指を突き付ける。婦人にデューに執事にメイドと誰1人座ってない中、おばさんだけがチェアに座っていた。 「指...あと、なにが?」 「なんとなくです。あなたいま私を、ええと、ほら」 「運痴?」 「そう、そう思ったでしょう!」 「まさか。カケラも思ったことないよ」 「いまさっきノーヒントで運痴って言ったじゃないの!」 せめて椅子から立って言えば弁解も出来ようが、おばさんは頑なに椅子に座ったままだった。 「ええとそんなわけでおばさんは正直、腰も直角まで曲がるかどうか解らないほどの運動音痴なんですが」 「それはただの不摂生じゃないかしら、いえ」 首を傾げてウィンター婦人。 「なにかをして頂きたいのは貴方なのよ。デュー君」 微笑んで手を掲げる。その手を合図に、執事達が横に整列をした。 「...くんはやめて下さい」 嫌な予感。 「まあ、俺に出来る範囲であれば、なんでもしますけれど。一宿一飯の恩もありますし」 「まあ、良い子ね」 手を叩いて喜ばれる。 なんだろうこれ。 自分と(見た目)同じの女性に君付けやら良い子とやら言われている。物凄く気恥ずかしい。年上の女性と付き合うことは何度かあったが、それとはまた別の感覚だった。妙にむず痒い。 その心境を察しながら、彼女はデューにとってまったく予想外のことを言った。 「デューさん。あなたのことは、ある人からよろしく託かっているのよ」 | | |
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■2007年02月03日(Sat)
風紀部Ex01
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冗談には距離というものがあるらしく、その距離感を間違えば冗談は暴言にも空虚なものにもなり得るのだという。 馬鹿な話だ。 そんなものに気を遣わなければ冗談も言えないというのであれば、いっそ最後まで赤の他人でいればいいのだ。冗談を交わす必要もないぐらいに離れれば、距離なんて気にしなくてすむ。 中尾英鳳は冷めきっていた。 それがいつ頃からなのかというと、物心つく頃としか言いようがない。 小学校時分にはすっかりそう観念していたし、別段フラグがあったという訳でもない。 中尾英鳳という人間は、その人格が形成された瞬間から冷め切っていた。 小一の通信簿にでさえ「人と必要以上に距離を取ろうとするようです」と書かれているのだ。「風紀ちゃんだけじゃなくて、みんなとも遊ぶように言ってください」とも。
式外社松方神社宮司、息女――松方風紀は幼い頃から幼なじみだった。 家も近く、家族ぐるみの交流もあった。生まれた頃から風紀と英鳳は知り合いであり、半ば姉弟のように育ったと言っても良い。 二人は保育園にも幼稚園にも通うこともなく、小学校に入るまで二人だった。
つまるところ、風紀は英鳳が英鳳と言う形を作る前から隣にいた存在だった。 むしろ、英鳳という人格形成に最も影響を与えた人物である。 英鳳の人間性は、風紀を基準にして形成され、コミュニケーションも風紀を参考にして行われた。
が、風紀は英鳳より更にたちが悪かった。
英鳳が物心ついた頃には英鳳だったのであれば、風紀は生まれたときから風紀だった。ありていに言えば、変人だったのである。 そして、その変人を相手に育ったのが英鳳だった。 彼女(変人)専用に鍛え上げられた人格が小学校で空回りするのはある意味仕方がないことだった。 友人というものに対して風紀の様に扱う(それはつまりどうしようもない人間を相手にする様にということなのだが)ことしか出来ないのだから、仲良くなんてできるわけがない。下手に付き合えば相手を怒らせるだけだであるし、実際にそうなったこともある。 ああ、これは無理だなと気づいたとき、英鳳の人格は形を固めて完成したのだった。 以後そのままなのだが、かといって英鳳に友人がいないかというとそうではない。 彼のまわりに残ったのは、風紀のようにどうしようもない――だが、誰のどんな冗談でも寛容に受け止められる。そんな馬鹿ばかりだった。
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■2007年02月01日(Thu)
その正義呼び覚ませ命をかけて
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 | 3−1 夜宮吹雪(風紀部ver) ぱっと見構図が下といっしょなのは気にしてはいけない。
どサド。 そのサド成分のほとんどは主に雪路をからかい、吉泉を攻撃することに使われます(吉泉は受け流すけど) 生徒会長になるため自分の美貌を利用したわけですが、正直やりすぎたと思っている様子。
インスパイアは【六具】。 六種の召還獣を呼ぶことが出来る。 召還獣はパリーグのそれぞれの球団に対応し、威力はその年の順位に比例する。(つまり、フブキの六具とは対のアイテム) | | |
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■2007年01月31日(Wed)
アリアオロフォーム
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 | →デザイン:辺境紳士さん←
さて、これで自分に罪はないな(額の汗を拭う)
ペンタブのペンがぶっこわれました。 症状としてはクリックができない&芯が引っ込む。もう駄目です。 なにも、こんな絵描きまくってるじきに壊れなくても。 ・ ・ ・ と嘆いていると。 救いの神登場! なんと、白さんがペンを譲ってくださるというではありませんか。 まさに焼け石に水、泣きっ面に蜂、のれんに腕押し!(全部違う) 遠慮無く頂いてしまいました。 いやはや、ありがとうございました。 | | |
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2007年01月31日(Wed)
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 | アイドレスで描いた一枚 自国は何かつぶれそうだぜ、いやふ | | |
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2007年01月24日(Wed)
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禁酒法時代の新大陸。 北方自治領の酒屋とギャングが闇酒で儲けに儲けた時代。 デューもおばさんも、酒に執着はないのだが、あのパブの面々に地獄のような国に映るのだろう。 父母含め母の親友や常連客が眉間に皺を寄せて「やな国」と言う理由は大方がそこだった。 「葉巻にブランデーを仕込む人もいるという話ですが、それって無意味だと思いません?」 ブランデーグラスを傾けておばさんはふと呟いた。 「なんでさ」デューは、ワインをちびちびと飲みながら尋ねる。 おばさんの飲酒量が気になった。 久々に飲む酒のせいかペース配分が明らかにおかしい。 「だって葉巻が吸えなくなるじゃないですか」 「そうだね」 「ほら、意味が無い」 意味が無いのはこの会話だろうと思いつつもデューはワインを飲み干す。 未成年のデューではあるが、ワインぐらいなら水と同じだ。まったく酔う気配がない。 「だって葉巻が吸えなくなるんですよっ!!?」 「そうだね」 「お酒が飲めてもタバコが吸えなかったら、意味が無いじゃないですかぁ!」 誰だろう、おばさんに酒を勧めたのは。
憲法修正第十八条――いわゆる禁酒法の間抜けなところは、この法律が醸造・販売・輸入・運搬を禁止した物だと言うことで、つまり「飲むこと」は禁止されていないことにある。 自宅で酒を飲む分には、国は禁止していないのだ。 よって、例えば酒を大量に買い溜めておける裕福な屋敷であれば、法施行数年後の今でも普通に酒を飲むことが出来るのだった。
「このワインは今年のものみたいだけどさ」 「ほう...解りますか」 卓の向こうから、渋みのある声がした。 「まあ、酒場の息子ですから」 といいつつ卓の向こうを見ると、黒髪の少女が似たようにワインを飲んでいる。 「ほう...貴方の実家は酒場を経営されているのですか。なんとも羨ましい。さぞや様々なワインを口にされたことでしょう」 「いや、まあ確かにそうですけど」 たまにお客さんに奢って貰うことがあるだけで、別に牛乳の変わりにワインを飲んで育った訳でもない。この人の方がきっと多くワインを飲んでいることだろう。 「このワインは、自治領から苦労して入手したものです。出来の方は――海の向こうから来られた方にとっては物足りない味でしょうが...」 「いえ」密輸入の新造ワイン。 きっと目玉がメガネを突き破るぐらいに高いことだろう。 「若いワインが好きなんですか」 禁酒法下では若いワインを振る舞うことが一種のステータスなのだろうかとも思ったが、 「ええ、それはもう」 どうやら違うらしい。 しわがれた声の少女は、ワイングラスを持ち上げた。 ランプにワインを翳し、瞳を赤紫に輝かせ、恍惚としながら、 「ああ...この果実の香り立つ鮮やかな赤色。まるで、処女の生き血の様ではないですか」 凄いこと言うなこの人。 「エリザベータ・バートリーですねぇ」 「よく言われますのよ」 “流血の伯爵夫人”に喩えた失礼なおばさんに、からからと応じる館の主。 「よしてくれよ」 あまりにも嵌り役すぎていた。 “見た目”はデューと同じぐらい。深窓の令嬢のように色素の薄い肌。“若い見た目”に似合わないアイシャドウと真っ赤な口紅。見ただけで香水かジャコウの臭いでも漂ってきそうだ。 その年齢は――不明。 声だけが、老人のように嗄れていて、まるでそれだけが本当の彼女を語っているかのようだ。
母国でならば、間違いなく「吸血鬼婦人」とでも綽名がついたのだろう。 あるいはそれこそ、鉄の処女で有名なエリザベータ・バートリの生まれ変わりとでも。
アメリカ貴族の末裔、ウィンター・E・ベリー“婦人”は、そんな女性であった。 | | |
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■2007年01月22日(Mon)
が
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 | おそらく下書きの方が似てたであろうキサラギさん。 最近、顔やら目線やらが思った方向を向くようになってきた気がします。 | | |
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■2007年01月18日(Thu)
優しさを確かめたなら
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「なかごこと書いて茎子。変な名前だと思わない?」 それが変だというのであれば、夜半、ショベルカーの天井で刀を振り回すことは、どれほどの表現で変と言えばいいのであろうか。 「なかごって、ええと、刀のどっかだよね」 我ながら珍妙な言葉だったが、それで茎子には通じたらしい。 頷いて、自分の模造刀に指をさす。 「この峰があるでしょ。峰って言うのは峰打ちの峰で」 「それぐらいは知ってるけど」 「え、あ、そうなの」 必要以上に驚かれるが、誰だって峰ぐらいは知っている。 だというのに、彼女は睫の長い目蓋をぱちくりと瞬いて、へぇと頷くのだ。 「で、その峰と刃の真ん中にある縦筋が茎なんだけど」 「ふ〜ん」 「え?」 また、ぱちくり。 街路の白い灯りが瞳に反射しているのが解る。 眼球には、自分の影まで映り込んでいた。 見られている。 無駄にドキドキした。同年代の女性の瞳とはこれほど綺麗なモノだったのか。 「どうしたの」 声がかすれた。呼吸が苦しい。息が出来ない、吐き出せない。 目は瞳を見たままだった。 目を見て喋りなさい、と言う小学校の頃の教師の声が脳裏に過ぎる。 人と話すことが恐くていつも口ばかり見て話しているからそう説教されるのだが、その悪癖は今も治ってはいない。 今も気を抜けば視線が茎子の唇へと向かいそうだった。けど、そんな無意識を押しのけるように、自分は茎子の瞳を見ていた。 やばいと思っていた。今、茎子の唇を見るのは、とてつもなくやばい。 やばいやばいと思ううちに、そう言えば茎子の苗字を聞いていないと言うことに気づいて、そんなことに何故今気づくのだろうと自分で自分にビックリする。 意識がどんどんとドツボに嵌っていく。何も出来ない茎子の瞳を凝視して、その瞳に映る街路樹の光を更に見つめることしかできなくなる。 街路樹の光が、どんどんと自分に近づいてくる。 いや、ちがう、いや、これはやばい、自分が近づいているのだ、それはやばい。 「しのぎ」 「え?」 「だから鎬よ、しーのーぎ」 「苗字が?」 「私の苗字は月見里よ。なんでそうなるのよ」 溜息が鼻先にかかる。鼻先? 「近い」 その鼻先に刀の腹の部分がすっと表れて、鼻をちょんと叩いた。 「うわぁっ」 冷たい感触に驚いて、それが刃の鎬の部分であることに更に驚いた。 「あ、あぶないだろ」 「大丈夫よ、どうせ模造刀で切れないし」無造作に刃の部分を触りながら、刃の腹へと動かして。「だから、ここは鎬なの」 「鎬?」 「そう、しのぎを削るの鎬。刀の部位って、慣用句になってるのが多いわよね」 はあ、なるほど。つまりあの部分が削れるほどに激しく打ち合うような、と言う意味があるのだろうかと考えながらも、首を傾げる。 「え、茎じゃないの?」 「違うわよ。嘘よ」 どっちの意味でだと思ったが、彼女はそのまま続けた。 「茎って言うのは、刃の方じゃなくて柄の方、この柄の内側にある金属のことよ」今は剥き出しだけど、と呟いて、茎子はそれを見せてきた。「漢字で茎って字を書くの、イメージあるでしょ」 なるほど。 刀というものは普通、刃に鍔や柄の部分を固定させて使うものだが、この刀には、その鍔と柄がない。博物館などに飾られている金属が剥き出しの状態だった。 ただし、その剥き出しの柄を固定する部分――これが茎というらしいが、その茎にはテニスのラケットみたいなラバーテープが巻かれている。 「テニスのラケットみたいだね」 「バタフライなんだけど」 バタフライなんてスポーツあっただろうか。 それはともかく、茎に巻かれたテープはこれでもかと言うぐらいぴっちり巻かれていた。なるほど、これなら柄が無くても、手が滑るようなことがないだろう。 が、いかんせん厚みが無い。テープがそれなりに厚みをくわえてはいるのだろうが、正直それでもまだ薄い。 「痛くないの?」 これでは物差しを握って素振りしているようなものだ。 「痛いわよ。当たり前じゃないの」 じゃあなんで振るんだよ、と言う当然の疑問が思い浮かぶが、聞かない方が良いのだろうなと考え直して質問を変えた。 「柄はつけないの?」 「そりゃ、あったらつけるけど」 無かったらしい。 「刃と鞘は、土蔵にあったんだけど何故か柄はなかったのよね。腐ったのかな」 柄が腐食したら刃も錆びるなりするだろうが、この刀は汚れてこそいたが錆びてはいなかった。 「刃は潰されていたけど、昔はちゃんと斬ることが出来たみたい」 「へぇ」じゃあ模造刀じゃねえじゃねえかとも思ったが、そんなことより、自分の意識は小学生の頃に戻っていた。 土蔵にあった刀と言うキーワードで、小学時代に模造刀を嬉しそうに自分に斬りかかってきたケンちゃんを思い出していたのだ。 当時小学生の自分にも、斬られるという恐怖はしっかり存在した。当時の自分は大泣きしながらケンちゃんから逃げたのだった。 あのときの恐怖は今も自分のトラウマとして残っている――と言うことはないが、子供の無邪気さは時に人を殺しかねないということだけは、身に染みて覚えている。 刀を見つけたらとりあえず振り回したくなる、と言う小中学生特有の青い願望自体は、まあ解らなくもない。今もこうして刀を握っているだけで、シャキーンとか口で言いながら振ってみたくなる。 同級生の女子――月見里茎子の手前、そんなガキみたいな真似をしちゃいけない、と自制しているが、よく考えればその茎子自身が先ほどまでこの刀を振り回していたのである。理不尽な話だった。 思わず、ため息が出る。 「...いま、ガキっぽいって思ったでしょう」 「うん」わかってはいたが、やっぱり自分はガキなのだろう。 刀を見て、こんなにもワクワクしている。 そして、その刀を振るい、鮮やかな舞を見せていた同級生に、あれほど心を動かされている。 わくわくして、どきどきして、喜びと楽しさが込み上げてきて、とにかく叫びたい。そんな感情。 そう、自分はあの瞬間、そう。月見里茎子にときめいていた。 自覚したとたん、顔の表面の温度が上がった。火で炙られたみたいに頬と耳が痛くなってくる。 真っ赤になりながら茎子を見ると、茎子は鬼の形相だった。 顔を真っ赤に(たぶん自分とは理由が違うのだろうが)して、拳を握りしめて肩ごと振るわせている。分かりすぎるほどに怒っていた。 何故そこまで怒っているのだろうか、さっぱりわからない。 わからないから、驚いて思いついたままの言葉を言ってしまった。 「うわ、鬼の形相」 「なんですってぇえええ!!」 刀を自分が持っていてよかったと、後々になって自分は思うのだった。 | | |
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2007年01月17日(Wed)
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絶えず水が溢れ続ける水瓶。 仕組み自体は難しいものではない。水道管が繋がっていない噴水と同レベルだ。 そこは、水瓶によって作られた水汲み場である。 もっとも、最近ではそこで水が汲まれることはなく――言葉としてはおかしいが噴水と呼ばれている。事実そこは噴水のような水場であった。 その水場(噴水)の目の前には「国宝」と書かれた看板がどんと立てかけられている。 とてつもなくでかい。 看板ではなく文字が。 文字の一個一個が、肝心の水瓶ぐらいにある。 水瓶は大人が余裕で入る大きさなので、そんなにでかいわけはないのだが、それぐらいにでかい。 その、でかい文字で「国宝」。 なるほど、この水瓶は国宝なのだなと嫌でもわかるのはいいが、なんとも間抜けな看板である。これではまるでこの水瓶の名前が「国宝」であるかのようだった。 そんな間抜け極まりない立て看板は、そんなだからして多くの観光客の苦笑を誘うことに成功しているのだが、立て看板を設置した現地の観光組合はいたって真剣だった。 「せっかくの国宝なのだから、しっかりわかってもらわないと」 水瓶の名前やら、来歴やら、そもそも何故この水瓶が国宝であって、どういう仕組みで水が絶えることがなく溢れているのかなど「しっかりわかってもらわないと」いけないことは他にもあるはずなのだが、その辺はどうでもいいらしい。 とにかく、この水瓶が「国宝」であることを自慢できればそれで満足らしかった。実際、オークノートの人間は国宝であると知れば「とりあえず凄い」と理解するし、「いやいや、いいもの見せて貰った」と、それで充分満足するので、あながち間違ってはいない。 「国宝」という肩書きがあれば、とりあえず手を合わせて拝むのだった。 そう、拝むのだ。 拝むからして、噴水には当然の如く賽銭が投げ入れられている。 コインを投げ入れて拝めば御利益がある。と言う風習ではなく、単純にオークノート市民にはありがたいモノを拝まずには居られないという性分があり、拝むには賽銭が必要というのが彼らの常識であり、よって水瓶はありがたいものだから賽銭が投げ入れられる、という三段論法である。 とへいえ、別に国宝だから拝むわけでもなければコインを投げるわけでもない。水瓶以外でも、ありがたいものや場所であれば恐竜の化石からオスの三毛猫まで、彼らはコインを投げ入れては当たり前のように拝み倒すし、投げ入れる場所がなさそうなところにはきちんと賽銭箱が置いてある。ちなみに、三毛猫の賽銭は猫の殺処分回避基金に使われていた。 とかくありがたいモノを拝む風習があるオークノートにとって、看板によってそのありがたさを表現することが大事、という風潮になるのも無理からぬ事である。 かくしてオークノートでは間抜けな看板ばかりになり、他の町からやって来た観光客を混乱に陥れる。
「国宝」と書かれた看板の前で、青年が両手を合わせて水瓶の噴水(言葉的におかしい)を拝んでいる。 コインは既に投げ入れられている。 投げ入れたのは首都でのみ流通している銅価だった。 白の外套に白のチューリップハットと、身なりからしても首都からやってきたであろう青年だ。そんな彼がオークノートの風習を知っているわけもなく、他の観光客がコインを投げ入れては一心不乱に拝むので、面白そうだからつい真似したというところであろう。
よせばいいのに。
郷に入りては郷にに従えという言葉がある。 その地方を訪れるなら、その地方の風習を見習えという先達のありがたいお説教であるが、ことオークノートでそれをやることは危険行為に近い。 八百万都市オークノート。 人類の坩堝、それは即ち入り組んだ風習の坩堝である。 そんな彼らの前で、郷に入ろうとする行為、 ――すなわち、ありがたいモノに手を合わせようとするということは、すなわち、人類の坩堝たるオークノートを受け入れるという行為であり、自らもまた自らの風習を持ってオークノートへ混じりいるという宣言でもあるからだ。 まあ、要するに。 余所の国の旅人がオークノートで迂闊にも手を合わせようものなら、彼らはそれを見逃す筈もなく。
「よぉ兄ちゃんよく来た!」 「は?」 「今手を合わせたな、手を合わせただろ」 「えっと」 「あまつさえ賽銭も投げたな、投げただろ!!」 「あれ...え?」 「いやいやいや、わかったわかった。もう、兄ちゃんの心意気は理解しているつもりだ。全部オールOKだ! 大丈夫」 「へ?」 「さあ、じゃあまずはどこに行こうか! オークノートの名所は何も水瓶だけじゃねえんだぜ。先ずは墓だ! 俺の先祖の墓を紹介しよう」 「いやそれより、今なら移動図書館がやって来てるはずだ!」 「いやいや、ロングテイル通りで甲冑の騎士があらわれたって話だ。まずそれを見物しにだな」 「馬鹿もん、新入りはまずわしとチェスをすると、この前の町内会で決定しただろうが」 「かくれんぼしよー」 「あなたが神を信じたのですか!」 「ざけんな! オークに来たらまず魚河岸だろう!! この俺がまず、新鮮なフグ料理をだな!」
ちなみに、全ての台詞を別の人間が言っている。 青年はいつのまにやらお年寄りから子供まで、東西南北、さらには明らかに大陸の外から来たであろう人間にまで囲まれていた。 「ひっ」 オークノートでは誰も気にしてなどいないのでそういう感覚が全くないのだが、外国人に囲まれるというのは、はっきり言えば恐い。 純粋血統による単純支配を推奨する首都の人間ともなれば、さらにである。 まあ、そんな青年の恐怖を知ってか知らないフリをしているのか、彼らは尚のこと青年を取り囲み気さくに語りかけるのであった。
郷に入ろうとすると、熱烈歓迎されるのがオークノートなのであった。 | | |
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2007年01月17日(Wed)
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 | お題は工業に適した土地だったのですが 時間がないので以前描いた絵を元にリファインしました。 | | |
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■2007年01月13日(Sat)
めーらーめーらとー
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 | 電網適応アイドレスというゲームに参加してるわけですが、なんだか 「ただの人間には興味在りません、この中に絵描き、物書き、謎ハンターがいたらあたしのところに来なさい。以上」みたいな感じです。 (なんだそりゃ)
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2007年01月09日(Tue)
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アスファルトに描かれた魔法陣(常駐式あるいは補助式。この場合は後者)の上を黒い円盤が回転する。 その回転はコマのように速く、円盤に貼られていたレーベルの文字も糸のように溶けて読むことが出来ない。 横にはメガホンスピーカ。教師がよく使うアレである。
青い髪のおかっぱ頭。その瞳も蒼く燃えて、世界に最初単位の言葉を語りかけている。 「いきます――」体操服を着たメイが、深刻な面持ちで呟いた。 「たのむっとよ」その横でやはり深刻そうな金髪の少女、ルーラ。 ちなみに、いつものメイド服姿ではなくえんじのジャージ姿である。 「<再生>」 スピーカからざわざわとした雑音が漏れ出す。専用の録音室で撮ったりとかではないらしい。なにやら妙に生々しい生活音だった。
スピーカから流れた音に、おぉ、と言う歓声がそこここから漏れた。
レコード盤から読み取られた音がスピーカから流されているのだ。レコードを魔術で浮かせ、魔術で回転させ、魔術で読み取り、魔術で振動に変換して、魔術でメガホンスピーカにハッキングして拡散させている。 複数の術を操れば操るほど累積するように処理能力が必要になるのが魔術である。やってることは単純ではあるが、並の魔術士が聞けば卒倒するような仕業ではあった。 「余りよく聞こえませんね。音量を大きくしましょうか?」 そんな自分の技を誇るでもなく、メイは首を傾げてルーラに尋ねる。 体操服には3−4「ひゅありい(あ)」と書かれたゼッケン。どうも妹からお下がりを貰ったらしく、彼女自身はいたく気に入っているらしい。 喜びはしゃいでいた彼女を、幸福そうに見ていた、ヒュアリィを思い出す。 小柄なメイにぴったりな体操服に疑問を覚え、現在大学受験生のヒュアリィに尋ねたのだ。 「3年の服にしては随分と小さいな、中学校の体操着か?」 「まさか」良く見ると、ヒュアリィの幸福そうな顔は少しだけ口の端がひくついていた。「小学校のときの体操着。ここまでぴったりとは思わなかったけど」 それはそれとして、音量を調節したとたん劈くような甲高い声が早朝の運動公園に響き渡った。音量を上げたところでレコードの方も本気の音を出したのだろう。 スピーカがハウリングをおこし、あまりの大音響にカラスと鳩がびっくりして飛び立った。今度はそれにビックリして猫が木から落ちた。 様子を覗いていた子供がはしゃぎ、老人がショックで昇天しようとしているところを別の老人に呼び止められている。 大惨事だった。 「さ、さささげるっと」 「わ、わわわかりました」 耳を押さえてわたわたしている二人。と、何故かいる数人の子供とご老人達。 音量を調節するとようやくまともに聞き取れる音が鳴る。
“よい子のみんなー! 今日も元気にエンジョイしているカー!! それでは○月×日のレディオ体操〜いってみよーー!!” “ターンターカタンタンタタ ターンターカタンタンタタ...” “脛を後ろから前にまわしてのびのびと回し蹴りの運動〜から!!” “サン、ハイ”
老人と子供達が、ルーラの演舞にあわせてゆっくりと足を上げた。 | | |
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■2007年01月07日(Sun)
左へ受け流す
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今年間違いなく流行であろうムーディー勝山 の事を誰も知らないことに絶望した。 ムーディー勝山を知らずして今年の流行を語るとか、もうね、ちゃんちゃらおかしすぎます。 彼の「右から左へ受け流す歌」 は一度ハマルとやみつきになること請け合いです。 時代はムーディーなのです。 | | |
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2007年01月07日(Sun)
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宇宙を飛んだバカップルは静止衛星に速度を合わせる。 全長にして約40m程の羽を広げた静止衛星の頭脳部に、比沙の腕から伸びたアンカーワイヤーが取りつく。 ワイヤーは、そのまま自立式のスネークロボットとして静止衛星を這った。 数秒。 「ありませんね」 「え」 2年も見捨てた娘をようやく迎えに来たという心持ちで感激していた戒が、涙を宙に浮かべて尋ねた。克己が形成したフィールドが浮遊する涙を危険物と見なして宇宙へと排出する。 遠ざかるスペースデブリを見もせずに、比沙は驚く戒を抱きしめた。 「え。え?」 「考えて然るべきでした。時代差で300年。経年による消費摩耗放出。普通に考えれば、まともに機能しているはずがないのです」 「あ、ああ。そうかもしれんな」 念動力回路とて永続ではない。保守性で言えば電子機器とたいして変わりがない。 「じゃあ、その...カグヤは」 「ですから。ありません。ただ、この静止衛星を中継に通信がされています」 比沙、どこからともなくペットボトル(×2)を取り出す。 「その刀のポテンシャルでは推進力が足りないようですね」 そして見上げる。青い地球の反対側――灰砂色に輝く月を。 「コンバート――」 そのペットボトルが克己の鞘に融合するように絡みついて固定される。 「え。ちょ、比沙さん。そのペットボトルの中身って」 「近頃流行の酸素水です」 「いや、あのな。含有量100%は酸素水って言わないと思、」 比沙、更に戒に抱きついた。 戒、もう照れていない。顔面蒼白だった。 「まさか」 「テイクオフ、ロケットスレッド――Ready...steady...」 戒、比沙にさらに抱きついた。ゴワゴワのコート地が二人の間で締め付けられて層になる。 呼吸が重なる距離で二人は叫んだ。 「「GO!」」 静止衛星からロケットが飛び立った。 その軌道は地球に垂直、まったくもってスイングバイを無視する勢いだった。
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2007年01月04日(Thu)
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趣味で英単語を覚える少女、名を暮臥あずさと言う。夕方には疲れて寝ているからその苗字である。 3−6の生徒である暮臥のインスパイアは【与える英単語帳】。他者の能力に英題を付与し、そのインプレッションを第二候補まで読むことが出来る――ありていに言えば他人の能力を知る力であり、風紀部にとってはまたとなく必要な人材だった。風紀部には風紀自らの熱烈勧誘によって入部した。 趣味が能力として封じられた、最も多いタイプの力でもある。 まあ、そんなことはともかく。 風紀部には彼女とネコのフク部長だけがいる。黒と茶の混じったしなやかな体躯の猫だが雑種である。風紀部内ではハバナかヨークシャテリアの血を引いているのだろうと言うことになっていた。 扉が開いて松方風紀があらわれる。 風紀はふらふらと幽霊のように彷徨ってから長机に突っ伏した。 それを見て暮臥は「おはよう」とだけ言って英単語帳を黙々と読む。 「おはようあずちゃん...」 ふらふらだった。 「何かあったの?」 「うん...自分はもう大ショックだ」 shock――衝撃・激しい振動。 「あ〜もう世の中は真っ暗だ。神は死んだ! ガッドイズデッド!!」 dead――死んでいる・枯れている。 元ネタはドイツ語のはずである。 暮臥はしばらく風紀の激怒レベルを分析して、考えられる候補を上げてみた。 「中尾が誰かに告白された?」 「...なんで英鳳が告られて自分が怒らねばならんのさ」 「以前中尾が二年生に告白されたとき、そのぐらい怒ってから」 「そ、そんなことあったか?」 刻乃華マカと一緒になって(何故か)中尾をぼこぼこにした通称「血の昼休み」事件である。マカはともかくとして風紀の方は無自覚だったから始末の悪い事件だった。 「じゃあ部長が告白された?」 これも風紀は大激怒する。主張としては「他にもっと可愛い子がいるのに見る目がない」 と言うことだそうだ。自分が美人だと言うことを自覚しての発現なので、これも始末が悪い。 「それよりももっと激怒よ。アングリーよ」 angry――怒って腹を立てて。 どうでもいいがこの部長。自分の前ではやたら英語を使いたがる。まあ、英語と言っても和製英語がほとんどだが。 「それより激怒というと...」 暮臥、少し頬を赤らめる。自分が言おうとしていることが思いも掛けずに駄洒落になっていたという風な感じである。つまり恥ずかしい。 「DEPRIVE――誰かに寝取られた?」 「ぐわぁあああ。畜生ーーー! あの金髪めぇ!」 風紀が両手両足をバタバタさせた。 白鳳高校でブロンドの生徒などTakeBack'sの武之部希生ぐらいである。 が、まあ...あの人は三次元の恋愛には興味ない人なので風紀がやっかむような理由はない。 となると、 「...まだ諦めてなかったの?」 昨年、一昨年のリスト二位に輝いた美少女高校生。 完璧美少女。ハイクリエーション・サイボーグ。至高の偶像。。。そのお相手、金髪、金目。正真正銘の元・勇者。 「そういう問題じゃないっ! あの人は、あのお方はだなあっ」 机の上で仰向けになってだだをこねる風紀部長。 物凄い荒れようである。 結婚でもしたのだろうか。もしかして子供が出来たとか。 ――ありえないか 一つ息を吐いて暮臥は風紀のじたんだを楽しむことにした。 | | |
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2007年01月03日(Wed)
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月の女神を利用した通信手段を大陸樹法網と呼ぶ。 交信可能範囲は雌月の見える範囲であればどこでも、それはそのままカトルニカの魔術が及ぶ範囲でもある。 魔術圏を越えた世界の向こう側はカトルニカの民にとっては力の及ばぬ魔境だった。彼らはそれら魔境を恐れ、忌避していた。 もっとも、カトルニカの民でも魔術に頼らない類の人間であれば、その限りには入らない。
「魔術圏外か――まいったな」 交信端末と睨めっこして、顎髭を蓄えた中年が嘆息した。 冒険大国タルミテルミ名物「刻の大洞窟」。その内部である。 タルミテルミ財務局が用意した管財士とツーマンセルで潜っていたのだが、その管財士はというと既に尻尾を巻いて逃げている。 あまりにも奥に入りすぎて恐くなったらしい。 曲がりなりにもタルミテルミの戦士が、客分冒険家の自分より先に逃げるとはどういう領分か。 まいったとぼやきつつも、ひどく落ち着いた自分が居ることを自覚する。 「まあ、無いモノを当てにしてもしょうがない」 言い聞かせるように、呟いた。 戻る方向の遠くから悲鳴が反響してきた。 大洞窟の奥も奥である。誰の声かは明らかだった。 中年はカンテラの火を翳してのっそり歩く。足場が不安定なのでのっそりしか歩けないのだ。 暗視鏡を使えれば良かったのだが――月のない魔術圏外では念動力回路さえ展開できない。自力で魔術を行うなど、並の魔術士でさえできない芸当だった。 辿り着くと、探検服姿の男が亀に噛みつかれていた。岩の甲羅を背負った魔獣である。たぶん肉食。 男――管財士の噛みつかれている足には力がなかった。骨を噛み砕かれているからだろう。 中年男は溜息を吐いた。 慎重派の魔獣でよかったと安堵する。喉笛に食らいつかれていたら即死、助けようがない。 慌てず騒がず棒剣を握りしめる。棒状のそれは丈夫なだけが取り柄の破砕武器だった。 振りかぶって岩亀の甲羅に打ち据える。引き斬る必要がないので叩きつけるような打ち方だ。 硬い甲羅ごと叩き砕かれて岩亀が圧壊した。 その衝撃で亀の歯が食い込んだか、会計士が白目を剥いて悲鳴を上げた。
天井に張り出した氷柱状の石から水滴が落ちる。 どうやら地下水脈より下にいるらしい。随分潜り込んだものだ。 「潮時か」 管財士は処置こそしたが右足を粉砕骨折。治療不可能だった。 しかるべき場所で切断するより無いだろう。 「...を置いていけ...」 株主の依頼は洞窟を二十分岐奥まで探索して地図にすることだった。 既に三十三分岐以上進んでいる。依頼は完了していると言えよう。 「俺を...」 「二十ぐらいまで戻れば圏内だったよな。そこまで戻れば消毒して傷を塞ぐぐらいはできるだろう」 暗視鏡も復活する。幾分か楽になるだろう。 「いいから...俺を置き去りにして奥に進め!」 管財士のおっさんが、息も絶え絶えに喚いた。 さっきから何事か呟いていたのは気づいていたが。 中年男は「あのなあ」ともらして、 「一度逃げておいて、そういうカッコイイ台詞が言えると思うなよな」 「俺はもう死ぬんだ」 「とことんやめてくれ。あんたが生きてないと納税で不利になる」 タルミテルミでは冒険者も納税の義務がある。そして冒険者の儲けを監視するのが管財士なのだ。 冒険者は彼らを同行させ(財務局が派遣してくれる)て儲けを証明する場合においてのみ書類審査の免除と納税額の大幅な控除を受けることが出来る。 逆に彼らの同行なしに冒険を行えば、財務局からの強制捜査紛いの身体検査を受けるハメになり、その後目が飛び出るほどの納税をしなければならない。 「管財士が死んだ場合も、同行無し冒険と似たような扱いなんだって聞いたぜ」 「それぐらい。俺が一筆書けば済むことだ...時間は掛かるだろうが、納税額は控除される。お前の力量を見誤った財務局が悪いのだ」 性質上、管財士は冒険者より力量が上でないといけない。管財士が冒険者の足を引っ張ることは許されないからだ。 「二十図を作ると言ったはずなんだがなぁ」 まあ、初心者冒険者のハッタリに聞こえたとしても無理はない。 「...俺は管財士として、二つのタブーを犯してしまった。だから、もういい」 「足引っ張った上に俺より先に逃げやがって、何がもういいだ。挙げ句の果てに遺書書くから置いて行けだと? 勝手にも程があるっつーか、ちっとも反省してねえじゃねえか」 「五月蠅い! お前には俺の悔しさがわからんのだ! 管財士としてこれほど無力に思ったことなど一度もなかった!!」 「そりゃ」管財士などやったこともないのに解るわけがない。 「全然解ってないようだから言ってやる! 今お前は、タルミテルミの冒険者の中でも五大に入る程の大冒険をしているんだ! それを、管財士の俺なんかのせいで終わらせてしまうなど、あってはならないのだ!」 「んな大げさな」 呆れながら縄を編む。管財士のおっさんを背負う背負子を作っているのだ。 「この場所にだって、けっこうサクサク来れてたじゃないか。誰でも来れるって」 「だからだろうが。この入り組んだ大洞窟の二十分岐先までこの短時間で来るなど、何十回と潜った冒険者でも出来やしまい。それをお前はやってのけたのだ! お前なら、あるいはこの大洞窟の最奥にまで...」 それは勘違いというものだ。自分が暗く入り組んだ洞窟を迷わず歩けたのは、ひとえに空間探知魔術のおかげである。自分の手柄ではない。タルミテルミの人間には偉業に見えようとカトルニカの人間なら誰だって出来るのだ。 更に言えば魔術の圏外を離れた今となっては、並の冒険者と条件は変わらない。 「まあ、いいけどな。どのみち俺は帰ると決めたんだ。管財士にそれをどうこうする権利はないだろ?」 できた背負子を中年男は管財士の背にそれを回して固定する。 有無を言わせぬ、と言うよりはも意見をまったく聞いていなかった。 「...勝手にしろ」 「よーし帰るぞ。帰ると決めたらどんどん帰りたくなってきた」 背負うと男が苦しげに息を吐いた。本当なら強がりを言うほどの体力も残ってないのだ。 荒い呼吸に紛れて「すまない」と言う呟きが聞こえたが、中年男は聞かなかったことにした。 「財務局に言っておいてやる。それで最上級の管財士がやってくるはずだ。そいつと共に...」 「やだね。こんな暗くてじめったいだけの場所、もうごめんだ。依頼は終わったわけだし二度と潜るもんか」 「なっバカヤロウ! 話が違うぞ!! 降ろせ!!!」 「知るか、俺を動かせるのは株主様だけだ!! 文句があるなら株を買え!!!」 カトルニカ人にしか解らない文句が、辺境の洞窟にこだました。 | | |
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2007年01月03日(Wed)
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Replay
 | 「む、なんだあれは」 「レシプロだねえ」 珍しく揃って移動中の三人娘が茜に染まる空を見る。 夕日に照らされて紫色の...だからたぶん青いトンボのような物が空を走っているのだ。 それの正体を知っていたのは、意外だろうがなんだろうがレンティスタだけだった。 「打ち落としましょ〜かぁ」 言い終わらないうちに念動力回路を自力発動させるシェディ。 「いやいや」レンティスタは首を振ってそれを制す。 「いやいや」もう一度振った。「人乗ってるからね、シエちゃん」 「というかいきなり撃ち落とそうとするな、バカ」 「わーん、ソルデちゃんにバカって言われた」 頭を抱えてしょげるシェディ。 「バカはバカだからバカなんだ、なんでそういう発想しかできないんだ、おのれは!」 「だってぇ、なんか打ち落としたくなるですよ。魔術士としては」 「おのれ個人がバカなんだ! 魔術士のせいにするな」 「いやまあ...あながち間違ってないんよね〜」 レンティは頬を掻いてソルデスタに語る。 「カトルニカって空飛ぶ乗り物とか発展しなかったから未だに知らない人いるでしょ。だから昔はシェディみたいに軽い気持ちので意味無く撃ち落とそうとした魔術士が多かったらしいよ。おかげで国際問題起きまくり。まあ、撃ち落とされる危険性があまりにも多いことが判明したおかげで、敵対国に空爆が無力だということを知らしめたって功績もあったそうだけど」 元商家令嬢のレンティスタは、カトルニカ外の事情にも詳しいのだった。 「人が乗ってるなんて思わないからねえ」 文明大国を謳っておきながら、内実野蛮なものである。 「思わないとはいえ、なにも撃ち落とすことはなかろう」 意外なところから弁護が出たので(まあ弁護ではないが)ソルデは少し勢いを無くして呟いた。 「バカに大砲を持たせるようなものだ」 「うわーーーん。またまたバカって言われたーー!!」 「まあ、ソルの意見も間違ってはいないわねぇ」 確かに、人単位で無意味に航空機を撃ち落とす魔術(ちから)なんて持ってるから、そんな惨状を招くのだ。 「大戦の影響だか知らないけど、存在さえ知ってたら誰だって大規模破壊術式が使えるってのはねぇ...魔術士じゃない人間にとっては恐いもんよ」 まして、その使い手が不審な物が飛んでるのでじゃあ撃ち落としましょうみたいな思考である。 正直、導火線が燃え尽きたのに爆発しないダイナマイトに近づくより不安だ。 「むぅ〜。レンティまでひどい」 「あはは、ごめんごめん」 笑ってスルーしながら、案外深刻な問題かもねとレンティは思うのだった。 シェディはまだむくれている様子で、 「大規模で破壊な術式なんて、お月様が使うのを許してくれませんですよ」 そう言って雌月を指さす。 「お月様ねえ」 「そうです。月の女神様が、悪い魔法を許してくれないのですよ」 月には神――魔術の使途にあらゆる知識を与える女神が住うのだという。 長き戦争の時代、魔術士たちは彼女から知啓を授かることに成功した。 その瞬間から彼らは天地創造の域にも列する様々な魔術をばしばしと使えるようになったのだという。 「女神ねぇ」 そんな存在を奉じる集団がいることは知っていたつもりだが、どうせ迷信かなにかだろうと気にもとめていなかった。 シェディが真面目こくっていうあたり事実なのかもしれない。 と、 「ん。どうしたのソル。微妙そうな顔して空を見上げて」 ソルデが微妙そうな顔をして空を見上げていた。 「ああ...月で少し思い出した話があってな。それだけだ」 それだけと言われて納得する好奇心ではない。 目で「詳しく」と叫ぶように見つめる。 ソルデスタは少し頬を赤らめて。 「いや。なんていえばいいのか。副知識の方に情報が残っていてな」 こめかみを叩いてそんなことを言う。 「「どんな?」」二人して聞いた。 「月だ。あそこには――わたしの姉がいるらしい」 そして、二人して顔を見合わせた。 「「はい?」」
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2007年01月02日(Tue)
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青いトンボのような複葉機が店の滑走路を滑り落ちていく。 航空中の店を予備加速として僅かな距離で離陸速度を得た青トンボが飛び立つ。 先導するように前を飛ぶ青トンボ。 異常なしのストロボ後、ではまたと挨拶。
――ヨイカイモノヲシタ
店側の管制、異常なしOKの後、こちらも挨拶。
――アリガトウゴザイマシタ。マタノオコシヲオマチシテオリマス
青トンボがバレルロールで軌道をずらし、旋回しながら店を離れていく。 その機体は、夕日に照らされて紫色になっていた。
「何が良い買い物をした、だよな」 叩きつけるように呟いて、アキバラ・ユリ(管制警備員)はグラマーな肢体をソファに埋めた。 腰を沈めた瞬間、タイトなスカートから太股が剥き出しになって、レンはぐらぐらして目を逸らす。 年の近い女性にそういうことをやられると、その羞恥心の無さにどぎまぎするのだ。 あれは見たら駄目なのだと自分に言い聞かせながら、レンは話題を探した。 「ああ、ただ乗りさん行っちゃったんですね」 「け。何か買って行ったか? あのおっちゃん」 青トンボのパイロットのことである。 いつもビールとつまみぐらいしか買っていかない癖に、航空店に便乗して燃料代をケチるのである。年間のダイアグラムに基づいて世界中を飛び回る飛空店を便乗するなど、一人年一回出来るかどうかのはずなのだが、あのおっさんは毎回ピーシフルテンペストに相乗りして様々な場所で降りていく。 ある意味謎である。 カトルニカなんてところに何の用があるというのだろうか。 かの国々には飛行機が存在しないというのに。 「DIY」 アキバラさんの質問に答える。 「へぇ。めずらしいな。犬小屋でも建てるってのか」 あまり興味なさそうにアキバラさん。 「いや、男爵のタイヤが落ちたまんま戻らなくなったとかなんとか」 「突貫修理かよ...あのおっさんよく生きてるよなあ」 | | |
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2006年12月30日(Sat)
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第二種大規模小売艦2300級「ピーシフル・テンペスト」 嵐の前に“静けさ”の名を冠す大規模航空艦がカトルニカ北部の上空に差し掛かる。 透明チューブ状の搬入通路は店をぐるりと囲むように設置されている。透明だからもちろん外の光景はよく見てとれる。 通路から見える高度2000の空は、いつものように遮る物もない雲の海... ――というわけには行かなかった。 牛乳パックを600本ぐらい積んだコンテナ(やたら重い)を引っ張りながら、レンは天空に伸びる塔を見上げる。 「この店、空飛んでたよな?」と思わず自分に尋ねるのも無理はない話である。 なぜなら、その塔はまだまだ上に伸びていたからだ。 水平線・地平線なんて言葉はあるが、たとえるならその塔は空の地平へと伸びて先が見えない。天平線とでも言うべきか。 ここが地面だったとして、ここから伸びていたとしてもありえない高さだというのに、この船の下2000mにはまだ塔が根を張っているのだ。 「この店、空飛んでるよな?」だんだん不安になってくる。停泊日は明日のハズである。 まあ、疑問に思うまでもなく、駐車場エリアには航空中のランプが点灯していて、いつものただ乗り複葉機が停船しているのだが。 「ん、どうした? レン」 日配部門チーフのキノシタさんが後ろでレンと同じコンテナを押している。 レンが立ち止まったので動けないのだった。 それには答えず、レンは塔を見上げた。 見上げることが、答えになる気がしたからだ。 「ああ、レンはカトルニカ、初めてか」 「そりゃまあ、半年前からのバイトですし」 一度立ち止まったせいで勢いを無くしたか、キノシタさんも一息ついて空を見上げる。酸素タバコを口にくわえ、牛乳のケースの数を数えはじめる。 あと5ケースぐらいいるかと呟くキノシタさんに同意しながら、レンはふと耳を傾ける。 「ん、どうした」 「いや、今声が聞こえたような」 「この空でか?」 あいかわらず、航空中である。 外気遮断の上、圧力の効いた搬入通路。ましてや、メインエンジンのいびきにも似た轟音が響く中である。外の音なんて聞こえるはずがない。 「この塔って、なんのために立てられたんでしょうね」 三つ編みを肩に掛けて、レンは口を半開きにして呟いた。 酸素タバコを噛んで、キノシタさんは「さぁなあ」と呟き返すのだった。 「ただ、この塔は神様に会うために立てられたらしい」 「神様?」 商売がら、レンたちは様々な神を知っている。 豚を嫌う神がいれば、鳥を好む神もいる。リンゴを罪の象徴と言う神もいれば、アボガドをエリクサーと称える神もいる。それらを知っておくことは、大規模な売れ筋・死に筋を知ることでもあるのだ。 が、カトルニカに神がいるとは聞いたことがない。 カトルニカが信じるのはただ一つ――英雄だけだったはずだ。 「いやまあ、お前の方がそういうの詳しいんだろうけど...なんでも大昔にはいたって話でなあ。にっちもさっちもいかなくなって月に逃げたなんて話が」 詳しいだろうと言うキノシタさんの方がよっぽど詳しい。 まあ、レンの知識は所詮書物の知識である。 現地の人の昔語りを聞く機会のあるキノシタさんの方が、下手な学者より詳しいのは当たり前なのだ。 「その神様を追いかけに月に?」 「いや、神様は赤道月――雌月とか言ったか。そっちの方にいるらしい」 ...赤道月は赤道側にある月状の天体である。 地域によって一般の月と分けたり同一視したりするのだが、カトルニカではどちらとも神聖な存在として信仰されているのだそうだ。 「まあ、月下大陸って言うぐらいだからなぁ」 「遠い、ですよね?」 赤道上で見かけ静止している月である。北半球のカトルニカに建つこの塔ではどれだけがんばっても赤道月へは行けないだろう。 「そう、それだ」 「なんですか」 「そこが面白かったんだよ。なんだっけな」 忘れてるのに面白いもあったものではない。 「いやまあ、面白かったんだ。待ってろ今思い出すから」 「そう言われてキノシタさんの話が面白かった試しはないのである」 「いやおい声に出すなよ。せめて心の中で呟けよ」 酸素タバコを必死に吸って、思い出そうとするキノシタさん。頭がすっきりして脳が回ったのか、ああと手を打った。 「月の船だ」 「月の船?」 予想外にメルヘンな語感が出て、レンは少しのけぞった。 「いや、だから普通の月の方は年一回ぐらいはこの塔の上に来るだろ」 「そうだったかな」 月の運行なんて覚えていやしない。が、まあ確かにそういうこともありそうだ。 「だからはじめは普通の月の方に行って、その月が神様の月の方に重なった時に移動すれば...みたいな話になったんだよ」 「んな、乗り換え電車じゃないんだから...」
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■2006年12月29日(Fri)
キリノ
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 | BambooBlade 4巻購入 ついに第五の戦士登場ですね まあ自分はキリノが好きですが | | |
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