湯川地区にある汽水湖・ゆかし潟
新宮市出身の詩人で「秋刀魚(さんま)の歌」で世に知られる佐藤春夫が命名した「ゆかし潟」は、南紀随一の幹線道路・国道42号線沿い、白浜方面からだと南紀勝浦温泉に入る直前にある美しい汽水湖である。
(汽水湖とは海水と淡水が混じり合う湖)
季節になると桜・はまぼう・つつじなどの花々が咲き、冬には多くの水鳥が訪れるそうだ。
周囲には散策路(一部は熊野古道大辺路)が整備されていて一周30分程度で周れる。
そのゆかし潟の湖畔沿いに、ひっそりと数軒の宿が佇んでいる小さな温泉地がある。南紀湯川温泉だ。
南紀勝浦温泉の陰に隠れてあまり知られていないが、その歴史は古く、平安時代、熊野詣の湯垢離場として栄えた温泉地であり、今なお湯治場として親しまれている。
那智勝浦町は、昭和30年に那智山(熊野那智大社・青岸渡寺・那智の滝)の門前町である那智と温泉・漁業の町である勝浦が合併した町だ。
紀伊半島の南東端に位置し、気候温暖、海・山・森・滝と自然に恵まれ、そのシンボルが日本一の落差を誇る那智の滝である。
また、神武東征の上陸地・熊野三山の一つ熊野那智大社、西国33所第一番札所の青岸渡寺そして世界遺産に登録された熊野古道(大門坂)が所在する歴史・信仰の地でもある。
さらに町域には豊富な温泉が湧出し、また勝浦港は延縄漁法による生マグロ水揚げ日本一である。
和歌山県の高速道路は大阪からの阪和自動車道が通じているが、那智勝浦町までは、最終点の田辺ICから42号線を約100kmほど走らねばならない。また奈良方面からは、土砂崩れが相次ぐ国道169号線で紀伊半島の山岳部を約180km縦断しなければならない(約6時間)。
それでも宿泊・日帰り客の合計が毎年200万人前後に達するのは、上述の通り自然・歴史・温泉・海の幸の4拍子が揃って、多くの人を魅了するからだろう。
施設名 : ゆりの山温泉 (入浴日:2005.12.13 2回目入浴:2011.5.27)
那智の滝。落差133mは一段の滝としては日本1位を誇る。華厳の滝、袋田の滝と共に日本三名瀑に数えられている。
ゆりの山温泉は、相互リンクしているコスモスさんから7年ほど前に推薦頂いた温泉だ。
後日分かったが、加温・加水無し、正真正銘の源泉かけ流しとインターネット上でも絶賛されている日帰り温泉施設だった。
今般、久しぶりに南紀勝浦温泉海のホテル一の滝に宿泊した機会を利用して再訪した。
白浜方面から国道42号線でゆかし潟が見えてくる直前の細い道を左折、1kmほど進むと黒塗り木造の簡素な建物のゆりの山温泉に到着する。
玄関からは見えないが、ゆかし潟の東端に面していて温泉旅館が数軒並ぶ湖畔の対岸にあり、地理的に南紀湯川温泉に含むのは正確でないかもしれない。
木立に囲まれた20台ほどが停められる駐車場から玄関に入ると、入浴料金300円は昔のままだった。
温泉が風呂の2方の縁から流れ出している。
湯船は4mx1.5mほどの大きさ、タイルと石を組み合わせた端正なものだ。
ボコボコという音が間欠に響き、温泉が湯船に大量に流れ込んでくる。
表面張力の限界を越えた湯が、贅沢に浴槽の2面から溢れ出ている。
いつ見ても感動する風景だが、これだけ豪快に温泉が流れ出る風呂はそう多くない。
湯温は絶妙な温さの37〜38℃くらい、。皮膚にまとわりつくようなシットリ感、極上の湯だ。
館外に表示されたかなり古いデータ(昭和47年6月)によれば、泉質は硫化水素泉だが、現在は単純温泉のようだ。
湯量は126リットル/分、源泉温度は37.6℃、無色・透明・硫化水素臭、pH9.6のアルカリ性温泉で、しっとり感はこの数値の高さによるものだろう。
人気があるのに300円という低料金、それに湯温が低いので長湯する人が多く、いつも混雑している・・・これが唯一の難点かもしれない。
温いので長湯する人が多い。
以前はすべてのカランに栓がなく、温泉が流しっぱなしになっていた。
黒塗りの雰囲気ある建物。左手に20台分の駐車場がある。
温泉を買うことが出来る。100円で1分30秒器械が動き、22〜25リットルを汲み出せる。
データ (変更されている可能性もあります。お出かけ前にご確認ください。)
南紀湯川温泉は古くは熊野詣の湯垢離だったが、現在は家庭的な旅館が数軒の小さな温泉地だ。ゆりの山温泉は汽水湖である「ゆかし潟」東岸にある人気の日帰り温泉施設で、硫黄臭がするしっとりした温めの温泉が贅沢にかけ流しされている。