南紀湯川温泉・きよもん湯 (和歌山県)
所在地 : 東牟婁郡那智勝浦町湯川
温泉名 : 南紀湯川温泉
施設名 : きよもん湯 (入浴日:2005.12.13)
那智勝浦町は紀伊半島の南東端に位置し、昭和30年、那智山(熊野那智大社・青岸渡寺・那智の滝)の門前町である那智と温泉と漁業の町である勝浦などが合併してできた町だ。

町は、西側の阪和自動車道が延伸してきたとはいえ、まだ130km先でありアクセスには恵まれていない。

しかし、それでも宿泊・日帰りを含めて、毎年、200万人前後もの観光客がやって来るのは、自然・信仰・歴史が融合した観光スポットの魅力、湯量豊富な温泉(南紀勝浦・南紀湯川等)、新鮮な海の幸(延縄漁法による生マグロ水揚げ日本一)の3拍子が揃っているためだろう。
それに今般、「紀伊山地の霊場と参詣道」の世界遺産登録が加わり、魅力度が一段とアップした。
湯川地区にある汽水湖・ゆかし潟
新宮市出身の詩人で「秋刀魚(さんま)の歌」で世に知られる佐藤春夫(下記)が命名した「ゆかし潟」は、南紀随一の幹線道路・国道42号線沿い、白浜方面からだと南紀勝浦温泉に入る直前にある美しい汽水湖である。
(汽水湖とは海水と淡水が混じり合う湖)

季節になると桜・はまぼう・つつじなどの花々が咲き誇り、冬には多くの水鳥が訪れ、周囲には散策路(一部は熊野古道大辺路)が整備されていて一周30分程度で周れる。

そのゆかし潟の湖畔沿いにひっそりと数軒の小さな宿が佇んでいる。南紀湯川温泉だ。
南紀勝浦温泉の陰に隠れてあまり知られていないが、その歴史は古く、平安時代、熊野詣の湯垢離場として栄えた温泉地であり、今なお湯治場として親しまれている。
その小さな温泉街の手前、国道42号線の左側(白浜方面から)、ゆかし潟の湖畔にあって、小川を跨ぐ専用の橋を渡った対岸に洒落た設計・雰囲気の軽食・喫茶「きよもん」がある。

「きよもん」はすぐ近くの日帰り温泉施設「きよもん湯」とともに、温泉教授・松田忠徳氏が著書「日本百名湯」の一つとして選考された南紀勝浦温泉・海のホテル一の滝が経営している。
私達は「きよもん湯」に入浴後、「きよもん」で昼食を取っていた時に、経営者の中村ご夫妻と親しく話す機会があって、翌日、ホテルに2回目の宿泊をすることになった。
佐藤春夫

詩人・作家。1892年4月9日生 - 1964年5月6日没。
現在の新宮市(和歌山県)の医家に生まれる。上京して旧制一高の入試に臨んだが試験を中途で放棄、慶應義塾大学予科文学部に進む(のち中退)。
「スバル」「三田文学」などに詩歌を発表、のち小説に転じた。代表作は詩集「殉情詩集」、小説「田園の憂鬱」「都会の憂鬱」「晶子曼陀羅」など。1960年、文化勲章受賞。

友人の小説家谷崎潤一郎の妻・千代に恋慕し、のちに譲りうけたことがあった。その経緯は谷崎の中期の小説「蓼食う虫」に書かれているが、谷崎と千代子の離婚成立後、三人連名の挨拶状を知人らに送り、「細君譲渡事件」として当時センセーショナルな反響を呼び起こした。代表作である「秋刀魚の歌(下記)」も千代への思慕が背景にある。

俗に門弟三千人と称され、門人に太宰治や吉行淳之介、稲垣足穂、檀一雄、柴田錬三郎、中村真一郎、五味康祐、遠藤周作、安岡章太郎、古山高麗雄など、著名な作家がいる。

東京の自宅を移築した佐藤春夫記念館が熊野三山の一つ・熊野速玉大社(新宮市)の境内ともいうべき所にある。

秋刀魚の歌

あはれ
秋風よ情(こころ)あらば伝えてよ
男ありて
今日の夕餉(ゆうげ)に ひとり
さんまを食ひて
思ひにふける と

さんま、さんま、
そが上に青き蜜柑(みかん)の酸(す)をしたらせて
さんまを食ふはその男がふる里のならひなり。
そのならひをあやしみなつかしみて女は
いくたびか青き蜜柑をもぎ来て夕餉にむかひけむ。
あはれ、人に捨てられんとする人妻と
妻にそむかれたる男と食卓にむかへば、
愛うすき父を持ちし女の児は
小さき箸をあやつりなやみつつ
父ならぬ男にさんまの腸(わた)をくれむと言うにあらずや。
(以下略)

住  所 和歌山県東牟婁郡那智勝浦町湯川1062
電  話 0735−52−0880
交通機関 阪和自動車道みなべICから国道42号線で約130km
五條から国道168・42号線で約160km

JRきのくに線紀伊勝浦駅から熊野交通バスで8分、湯川温泉下車すぐ
施  設 軽食・喫茶処「きよもん」、湯上り処、 駐車場(50台 きよもん前の駐車場を含む)
宿  泊 無し
外来入浴時間 12:00〜23:00
定休日 無休
泉 質 単純硫黄泉
適応症 不記載(理由は「温泉の基礎知識ー温泉の効能」参照)
入浴料金 大人 500円 小人(0歳〜小学生)300円
入浴施設 内湯 : 男女各1
浴室備品 シャンプー、ボデイソープ、ロッカー、ドライヤー
観光スポット 勝浦漁港周辺、那智の滝、熊野那智大社、青岸渡寺、紀の松島(観光船)熊野本宮大社、熊野速玉大社、瀞峡(ウォータージェット船)、北山川筏下り、くじらの博物館、鯨ウオッチング
お土産・食事 きよもんで軽食可。那智勝浦駅から勝浦漁港にかけて食堂・鮮魚/水産加工品販売店多数。
近くの温泉 南紀勝浦温泉めざめ温泉、太地温泉、串本温泉、夏山温泉、錦温泉、太地温泉、串本温泉、夏山温泉、錦温泉雲取温泉湯の峰温泉渡瀬温泉川湯温泉
那智勝浦町内:天然温泉公衆浴場はまゆ、きよもん湯、さくら湯、ゆりの山温泉、那智天然温泉
那智勝浦町HP
観光協会HP
旅館組合HP
海のホテル一の滝HP

きよもん湯HP
(上記ホテルHP内)
http://www.town.nachikatsuura.wakayama.jp/index.html
http://www.aikis.or.jp/~nachikan/stay/index.html
http://www3.ocn.ne.jp/%7Enk-onsen/
http://www.kansai.ne.jp/ee-onsen/

http://www.kansai.ne.jp/ee-onsen/kiyomon.htm
雑記帳 今回の南紀行まで湯川温泉の存在を知らなかった。いつものように移動時間が長くハードなスケジュールだったら、気がつかずに通り過ぎていただろう。それほど地味な温泉地だが、日帰り温泉施設は何れも掛け流しで、しっとり感のあるいい湯だった、
手元のガイドブックによれば、なんと、きよもん湯のオープンが平安時代となっている!
これは、上述の通り、この地が大辺路を通って熊野三山を参拝に向かう際に、身を清める湯垢離場であったことに由来するのだろう。

きよもん湯は、国道42号線沿いの右手、ゆかし潟の東端にあり見落とすことは無い。
ここは、南紀勝浦温泉の海のホテル一の滝が経営する日帰り施設である。ホテルにはここの割引券が置いてあるので、宿泊する方はそれを利用すると割安になる。

建物は平屋、純和風の品格のある外観だ。館内には眺めの良い湯上り処以外は特別な施設が無いシンプルな設計だが、軽食・喫茶は国道を隔てて反対側にある姉妹施設「きよもん」
で取ることが出来る。
データは変更されている可能性もあります。事前にご確認ください。
風呂は内湯のみで露天風呂は無い。
浴室は石材をふんだんに使用して品格があり、湯船は7〜8人が一度に入れる中規模のものだ。
室内は湯気がもうもうと立ち込め、それで外部からの光が遮られてほの暗くなり、落ち着いた入浴が楽しめる。
温泉は皮膚に滑らかな単純硫黄泉で、心持ち青味がかっているように見えた。加温はしてあるものの、新鮮な湯が掛け流し状態で注がれていた。
浴室の雰囲気といい、泉質といい、温泉好きを満足させる日帰り施設である。

勝浦漁港
軽食・喫茶処の「きよもん」から見たゆかし潟
洒落たデザインのきよもん
熊野速玉大社
佐藤春夫記念館
記念館内部
湯気が舞い上がる内湯
きよもん湯外観
「出しっ放し」宣言のボード