流れ方向南北の切妻屋根で軒の出約800、ケラバの出800程度、4.5寸勾配で、ごく一般的な形状であるといえる(外観写真参照, 写真-1)。
屋根仕様は垂木40×70@360mm, 野地板 12×120程度の上、桟瓦葺き。垂木・野地板の仕様は当時の一般的な仕様で、現時点では特に問題は見られなかった。
外観上は軒先の垂下がりや屋根の波うちはほぼなく、垂木や野地板に著しい劣化は生じていないと判断される(写真-20〜写真-22)。小屋組み内部からの観察でも、目に見えるような雨漏り跡等は確認されなかった(写真-55,写真-57)。
ケラバ側は軒桁・母屋の先端部に劣化が少し見られるが、現状では問題となる程ではないと思われる(写真-23)。
但し、母屋梁はけらば側が化粧丸太となっていて、外壁位置で一般の母屋梁に継足されている(写真-60)。写真に示すように、継手は梁を相欠きにして釘止めしているので、劣化時の交換は容易だが、上向きの力(風が軒裏へ吹き上げ等)に対する耐力が小さく、屋根仕上を軽量なものに交換した場合などで、屋根重量による重しが無くなる場合は注意が必要である。
一般的な和小屋組で、小屋梁のスパンの最大は2間(3.64m)、母屋スパンは1間(1.82m)。梁断面が著しく小さいと思われる箇所や、蟻害・腐朽の生じている箇所はなかった(目視範囲)。
小屋内部の振れ止めとしては雲筋かいが棟ラインと梁行(短辺)方向の主要な通りに設けられている。断面は30×90oで釘N65・2本止めで、当時の一般的な仕様である(写真-57,58)。
主要な横架材等の仕口接合部は蟻+羽子板ボルトによる接合で一般的な仕様となっており、継ぎ手においては腰掛け鎌継ぎであった。
建物隅には火打ち梁が設けられており(写真-53)、2階の床面積(48.46u)と比較すると、火打ち梁一本あたりの2階床面積は約6.05u/本となる。一般的には5u/本以下が目安とされているが、ある程度の性能は期待できると考えられる。
なお、ボルト接合部は木材の乾燥により、一部でナットの緩みが見られたが、金属部分の腐食等は顕著ではなかった。
小屋束と梁・母屋の接合部においては、隙間が生じている箇所(写真-63)や、束のホゾ穴などの大きさや位置にズレがある箇所も見られた。耐震的に問題となる事はすぐにはないと思われるが、音鳴り等が生じる恐れがあるので、できれば金物等で緊結したほうが良いと思われる。
なお、小屋裏内部から確認できる筋交い端部には接合金物が無く釘止めのみであった。地震時の筋かいの外れや柱頭の抜け出し等が生じる危険性がある(写真-54)。
2階同様、外観上は特に問題なく健全だと判断される。また、1階の和室の天井に雨漏りの痕跡が見られたが、1階小屋裏内を調査したところ、過去の雨漏りの痕跡があるが、継続的に雨漏りしている経跡は見られず、さほどの問題無いと思われる。
また、2階同様、屋根けらば側の母屋は化粧丸太になっていて、内部から継手が確認できた(写真-50)。
小屋組の架構については、2階屋根裏と同様に標準的な施工がされており、建物隅には火打ち梁も確認できた。
2階柱脚部分の筋かいの接合も釘止めのみであった(写真-51,52)。よって、建物全体の筋交い端部の接合部状況が同様に釘止めであると推測される。