ここまで建物を鉛直構面と水平構面というパーツに分けて検討し、それぞれの部分の変形性状を求めてきました。これらの変形は独立している(相関していない)ので、建物全体の変形は剛床仮定での耐力壁の変形と水平構面の変形を足し合わせることで求めることができます。(Fig.2-8)
Fig.2-8 変形の足し合せ |
水平構面の変形を考慮に入れた場合、各構面の変位分布は直線分布にならないので、耐震性の評価をする場合などでは、代表変位として各構面の変位の平均値を用いたりしています。
3-2でも述べましたが、このようにして水平構面の変形を考慮に入れるのは煩雑なので、許容応力度設計法や品確法の簡易設計法では剛床仮定を原則として、水平構面の耐力の検定のみを行っています(Fig.2-9)。
Fig.2-9 許容応力度設計の床モデル |
大地震時には水平構面の変形も無視できなくなりますが、耐力壁の靭性が大きいことを前提にすれば、耐力壁が塑性変形すれば水平構面の多少の変形は吸収できると考えられます。現行の設計法では実験結果や地震動を受けた建物の調査結果なども勘案して耐力壁と同程度の評価基準で床倍率を定めることで、水平構面が同じ倍率の耐力壁と同程度の剛性を得られるようにしています。但し、耐力壁間の距離が大きくなると見かけの剛性が低下してしまうので、耐力壁線間の距離が一定以下になるように制限(8m以下、靭性の高い要素で壁・床を構成する場合は12m以下)しています。