建物が水平力(一般に地震力・風圧力)によって変形していくときに、建物としての限界の性能を決める指標は何でしょうか。
まず、"建物が倒れないこと"がひとつあげられます。
もうひとつ考えなければならないのは、全体が一体となって変形していくことです。例えば、2階の梁が外れて落ちてしまったら、たとえ建物の外側が無事でも、中にいる人は危険です。
A.「材料または接合部が破壊する寸前」か、
B.「建物が自立できる限界の傾きに達したとき」のどちらかで決まります。(Fig.2-1)
Fig.2-1 建物の限界性能の決定要因 |
しかし実際に建物を設計しようとした場合、建物に何百とある接合部のどの部分が破壊するか検討することは非効率に思えます。そこで一般的には、建物全体が限界に達するまでに生じる力に対して、接合部の耐力が上回るように設計しています。
また、建物全体の検討を行うときには、計算を行いやすくするために、建物をいくつかのパーツに分けて考えます。(Fig.2-2) 一番大きな区分は屋根・床などの水平方向の要素"水平構面"(→第3章 2 床・屋根(水平構面))とそれを支える柱・壁などの要素"鉛直構面"(→第3章 1 鉛直構面)です。
耐力壁などの鉛直構面要素は、部屋配置などの関係で、1列に並んでいることが多く、これを"耐力壁線"、あるいは単に"壁線"とよび、簡易計算では鉛直構面の基本単位とすることがあります。(→第3章 1-6 壁線)。
このようにパーツごとに分けると建物全体の変形は、鉛直構面ごとの変形と水平構面ごとの変形の組み合わせととらえることが出来ます。このようにすれば、各部分に生じる力とその部分の耐力を比較すれば、各部分に生じる力と変形に対する検討は容易に行うことが出来ます。
Fig.2-2 建物の分解 |
また、全体の変形についても、鉛直構面と水平構面に分けて考えれば、鉛直構面の変形とそれによる水平面の移動・回転と水平構面の変形にわけて考えることができます。まず、水平構面の変形を無視して鉛直構面の変形と水平構面の移動・回転だけを考え、それに水平面の変形を足し合わせると全体の変形を得ることが出来ます。ただし、計算を簡単にするために水平構面の変形は無いものとして無視して考える場合があります。このように水平構面の変形を無いと仮定することを剛床仮定といいます。