北東北6泊7日の秘湯巡り(その1)
一番訪れてみたい温泉地、それが北東北(青森県・岩手県・秋田県)だった。しかし、関西から車で行くにはあまりにも遠い。
構想1年、暇をみては温泉ガイドブック、新聞・雑誌の温泉記事、先輩諸氏の温泉サイトなどで研究、是非行きたい温泉地を10ヶ所選定した。それをベースに近辺の温泉を探し、また家内が同行してくれるので、合わせて周辺の観光地をはめ込んで、何種類ものルートを作成した。
2004年6月、姪が東京で結婚することとなり、この機会を利用して実行することを決定し、6ヶ所の旅館を一挙に予約した。披露宴の翌日の2004年6月14日(月)、東京・目黒区の実家を出発、全走行距離2,000km、6泊7日の旅が始まった。
 全走行距離 : 2013km
(奈良・東京往復を含めると3,078km)
主な行程 立ち寄り入浴 宿泊温泉旅館 観 光
 1日目 東京→東北自動車道→花巻南IC(約500km) 無し 大沢温泉
山水閣(岩手県)
宮沢賢治記念館
 2日目      花巻南IC→東北自動車道→盛岡IC→国道46号線→国道341号線他→乳頭温泉郷 ・国見温泉(岩手県)
乳頭温泉郷
・黒湯温泉(秋田県)
・孫六温泉〔秋田県)
乳頭温泉郷
妙乃湯(秋田県)
・角館(武家屋敷)
・田沢湖
 3日目 乳頭温泉郷→国道341号線→アスピーテライン→八幡平→国道341号線→乳頭温泉郷 乳頭温泉郷
・蟹場温泉(秋田県)
・大釜温泉(秋田県)
八幡平温泉郷
・藤七温泉(岩手県
・後生掛温泉(岩手県)
乳頭温泉郷
鶴の湯
・アスピーテラインドライブ
・八幡平頂上散策
 4日目 乳頭温泉郷→国道341号線→東北自動車道→国道103号線→十和田湖→国道102号線→八甲田山→国道103号線→蔦温泉 ・玉川温泉(秋田県)
・谷地温泉(青森県
蔦温泉・
蔦温泉旅館
十和田湖
奥入瀬渓流
八甲田山
 5日目 蔦温泉→国道103号線→青森市→東北自動車道→滝沢IC→国道46号線他→網張温泉 ・酸ヶ湯温泉(青森県) 網張温泉
休暇村岩手
・ねぶたの里
・青森市
・小岩井農場
 6日目 網張温泉→国道46号線他→東北自動車道→国道4号線→平泉→国道342号線→須川温泉 ・真湯温泉(岩手県)
・祭畤温泉(岩手県)
須川温泉
須川高原温泉
中尊寺
 7日 須川温泉→国道342号線→東北自動車道→仙台市→
国道286号線→秋保温泉→東北自動車道→東京
・秋保温泉宮城県) 実家 仙台万華鏡美術館
2004年6月14日〜6月20日
1日目
東北自動車道仙台南IC付近。東京から360km、残り150kmだ。
花巻市郊外、宮沢賢治記念館。代表作「セロ弾きのゴーシュ」を思い起す賢治愛用のセロ。
湯治部のレトロな休憩室
渓流に張り出した名物の混浴露天風呂
6月は山菜の季節。夕食の先付けとして、7〜8食の山菜が並ぶ。
男性用の半露天風呂。素通しの大きな窓から渓谷美が迫る。
2日目
盛岡IC近く、はるか前方に岩手山(2038m)が見えてくる。これからこの山の南の裾野を走る。
秋田県との県境、雄大な十和田・八幡平国立公園内にある駒ヶ岳の山腹、国見峠近くにある秘湯。療養・保養のための湯治場として人気がある。
標高900mにあり、厳しい気候のために冬期は閉鎖される。
   
  
花巻温泉郷・大沢温泉・山水閣 (岩手県)
国道46号線からそれて、地図上では虫眼鏡がないと見えないような県道に乗って国見峠に向う。
    
   
国見温泉・石塚旅館 (岩手県) 
岩手県を代表する温泉旅館・大沢温泉山水閣に到着
大沢温泉は一軒宿だが、山水閣・自炊部・菊水館から構成され、合計すると131室、最大600名弱が一度に宿泊できる。しかし、それぞれの独立性が高く、山水閣に宿泊した場合、専用の大浴場・露天風呂があり、混雑を感じない。
外観は洒落たロッジ風だが内部に入ると、湯治場の雰囲気が漂う。
混浴露天風呂の脱衣室源泉がすぐ近くにあり、強烈な硫黄臭が漂っている。
温泉マニア垂涎、日本唯一かもしれないエメラルドグリーンの含硫黄・ナトリウム・炭酸水素塩泉。入浴すると湯床から真っ白な湯の花が舞い上がる。
国道42号線に戻り角館(かくのだて)に向う。
佐竹北家の城下町として発展した角館は、多くの武家屋敷が現存し、国の重要伝統的建造物群保存地区に指定されている。また桧木内川堤の5千本のソメイヨシノは、昭和50年に国の名勝に指定され、平成2年には武家屋敷の枝垂桜(国・天然記念物)とともに桜の名所100選にも選ばれた。
● 角館(秋田県)
武家屋敷の通り。
春には百数十本の枝垂桜咲き誇り、多くの観光客で賑わうが、訪れたのは6月、人影はまばらだった。
秋田は酒どころ。土産として買い求めた。
● 田沢湖
田沢湖は、那須火山帯に生じた火山陥没湖。最深部の水深が423.4mで日本1、世界でも17位の深い湖だ。
角館から15km北上、田沢湖に向った。
湖畔の田沢湖プリンスホテル。神秘的な田沢湖を望むラウンジでのコーヒーは格別だった。
乳頭温泉郷に向けて高度をあげて行く。

   
乳頭温泉郷 (秋田県)
田沢湖の北東20km、駒ヶ岳・乳頭山に抱かれた標高1千メートル弱の高地、ブナの原生林に囲まれ、そこを流れる先達川と支流沿いに乳頭温泉郷の七つの温泉が湯煙を上げている。
乳頭温泉郷は、旅行読売選考の「にっぽん温泉遺産100」のトップ10(順位なし)、ルルブ2003年全国温泉番付で東の横綱に選考されるなど、各種温泉ランキングで、常にトップクラスに番付される日本有数の人気温泉地である。いま流行の「秘湯」という言葉は、ここが発祥の地だそうだ。
 
   黒湯温泉 (秋田県)
ブナの林に囲まれて、いくつもの茅葺や杉皮葺きなどの屋根を持ち、黒く塗られた宿舎や湯小屋が寄り添うようにして建ち並んでいる。
今夜泊まる妙乃湯で荷を解くとすぐに7湯の「湯めぐり帳」を購入し、車で黒湯温泉に駆けつけた。黒湯温泉は、乳頭温泉郷の最深部にあり、先達川と黒湯沢が合流する地点にある。
ガイドブックで御馴染みの4人が入れば一杯のワイルドな混浴露天風呂。目の前に源泉の噴煙が見える。
白濁した湯が溢れ出ている内風呂。
    
 孫六温泉 (秋田県)
孫六温泉は、乳頭温泉郷の中で車で行けない唯一の温泉。黒湯温泉から徒歩5分(冬期以外)、大釜温泉から15分の先達川沿いに湯煙を上げている。
乳頭温泉郷の中でもっとも鄙びた雰囲気があり、これを好む温泉客も多いようだ。
岩盤が突き出た混浴の「石湯」
野趣いっぱいの打たせ湯
混浴の露天風呂(女性専用もある)

 妙乃湯温泉 (秋田県)
乳頭温泉の中で女性にもっとも人気のある温泉宿。
脱湯治場、それがコンセプトだろうか。館内に一歩入ると焦げ茶色と白を基調にした和風モダンなロビー。鏡のように磨かれた床、低いテーブルに籐の椅子、客はここに座ってチェックインを済ます。
館内にはいたるところに特注したと思われる家具・調度類が置かれていて、都会の建築会社に勤務していた女将のセンスと細やかな気配りが感じられる。
従業員の接遇が行き届いており、すれ違うたびに丁寧な挨拶が返ってくる。
和風モダンなロビー
食事処(夕食・朝食)
ヤマモモの食前酒と先付け秘湯なのに料理が洗練されていると評判だ
ここの売物・混浴露天風呂「妙見の湯」
男性用内湯から露天風呂を望む
貸切の半露天風呂
貸切の内湯
別源泉の混浴の露天風呂
部屋数わずか16室に対し、とにかく風呂の数が多い
3日目
今回は乳頭温泉郷の人気旅館2ヵ所に宿泊した(予約は3ヶ月前)。可能なら乳頭温泉郷の7ヶ所の湯の完全制覇をしたからだったが、結果としては「乳頭温泉・休暇村田沢湖高原」に入浴できなかった。
八幡平に向う前、妙乃湯に近い、2ヶ所に立ち寄った。

  蟹場(がにば)温泉 (秋田県)
県道の途切れる一番奥にある蟹場というユニークな温泉の名前は、付近の先達沢に蟹が生息していたことによる。開湯は弘化3年(1846年)、かっては湯治場だったが、乳頭温泉郷の中でいち早く改装した。
温泉名が書かれた提灯がぶら下がる玄関をくぐって中に入ると、外観以上の素朴な温泉宿の風情が漂っていた。
唐子の湯、乳頭温泉では珍しい透明な湯で満たされた大きな露天風呂。
趣深い秋田杉使用の内湯
 
  大釜温泉 (秋田県)
終点の乳頭温泉バス停の前に、廃校になった学校の木材を利用して建造され、正面にかけられた当時の大時計が時を刻む大釜温泉が佇んでいる。建物の正面には「乳頭温泉小学校分校」と記された門も建っていた。我々の世代には少年時代を思い起こさせる懐かしい雰囲気だ。
浴室内はすべて風情がある木造、湯舟は6x2m程度の大きさで深目
露天風呂は2つ、湯船がヒバの木で造られている。湯は通常は茶褐色だが、天候によって青味がかったり、グレーになったりするという。
2ヵ所の温泉に入ってから、国道341号線経由で山岳道路・アスピーテラインに乗って、日本百名山の一つ八幡平(はちまんたい)(標高1613m)に向った。ここは十和田八幡平国立公園の地域だ。
●八幡平(はちまんたい)
八幡平頂上に達し、そこから八幡沼を一周する。
この日は快晴、東北の名山、鳥海山や月山が
望めた。
八幡平頂上に向う。6月だというのに、池に残る雪。
ヒナザクラ
チングルマ
ミズバショウ
コバイケイソウ
周辺で見かけた高山植物
 
  藤七温泉・彩雲荘 (岩手県)
お馴染み、日本秘湯を守る会の提灯
「東北で一番高い温泉」の看板
八幡平頂上直下の旅館
八幡平頂上をトレッキング後、藤七温泉に向った。
アスピーテライン(県道23号線)の中ほど、岩手県と秋田県を分ける見返峠から、樹海ライン(県道318号線)で3kmほど下った所に藤七温泉がある。標高1,400m、東北一番の高所に湧く温泉で、南に岩手山や秋田駒ヶ岳などを仰ぐ絶好のロケーションにある。
但し、冬期は風雪のために道が途絶え休業する
秘湯の雰囲気タップリの風呂と湯
混浴露天風呂からは荒々しい源泉風景が目の前に見える。女性の露天風呂はもっと見晴らしがいいようだ。

  後生掛(ごしょがけ)温泉 (秋田県)
アスピーテラインを下って、本日5番目(妙の湯の朝風呂を含む)の温泉に入った。後生掛温泉は標高1,000m、八幡平の焼山東側山麓の谷間にあり、玉川温泉と並んで東北屈指の湯治場である。周辺から噴きだす熱湯や熱泥、激しく舞い上がる噴気によって強い硫黄臭が漂っている。
旅館の背後には源泉の噴煙。
浴室・湯船がすべて黒ずんだ木造。これぞ東北の湯治場だ。
八幡平の自然と温泉を満喫して、今夜の宿、乳頭温泉郷の鶴の湯に向った。

  乳頭温泉郷・鶴の湯 (秋田県)
日本でもっとも人気のある温泉・温泉宿、それが鶴の湯だ。

鶴の湯は、乳頭七湯の中で歴史が最も古く、寛永15年(1638年)に秋田藩主佐竹義隆公が入浴した記録が残されている。
明治・大正の雰囲気が残る温泉地・温泉宿は全国に点在している。しかし江戸時代にタイムスリップしたような温泉宿はそう多くない。
「秘湯」という言葉が、ここ鶴の湯が発祥の地だという。もっともなことだ。
鶴の湯の入口。左の茅葺屋根の建物「本陣」も宿舎として使われている。右側は湯治棟
鶴の湯風景
山菜・川魚がメインの夕食には、名物「山の芋鍋(右の写真の右)」がつく。
懐かしい田舎風の朝食
鶴の湯のシンボル・「混浴露天風呂・鶴の湯」
中ほどから熱い源泉が湧き出ていた。
内湯の一つ
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温泉19ヶ所
本日の宿泊地は南花巻・大沢温泉、東京から500kmを超える。
岩手山遠望
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