乳頭温泉郷(秋田県)
田沢湖の北東20km、駒ヶ岳・乳頭山に抱かれた標高1千メートル弱の高地、ブナの原生林に囲まれ、そこを流れる先達川と支流沿いに乳頭温泉郷の七つの温泉が湯煙を上げている。
乳頭温泉郷は、旅行読売選考の「にっぽん温泉遺産100」のトップ10(順位なし)、ルルブ2003年全国温泉番付で東の横綱に選考されるなど、各種温泉ランキングで、常にトップクラスに番付される日本有数の人気温泉地である。いま流行の「秘湯」という言葉は、ここが発祥の地だそうだ。
田沢湖を眼下に望む田沢湖高原を通り過ぎ、「ブナの木の回廊」の趣があるよく整備された道を進み、しばらくすると鶴の湯温泉を示す標識が出てくる。これに従がって左折して3km進むと、最後は未舗装の道となって、まるで江戸時代の関所を思わせる木戸前の駐車場に至る。そこからは、本陣と呼ばれる茅葺の長屋のような宿舎が見える。
元の道に戻って3kmほど直進すると、分岐点の中央に源泉名から乳頭温泉と呼ばれる大型で近代的な「休暇村田沢湖高原」、さらに左手の道を500mほど進むと「妙乃湯温泉」、その100m先に「大釜温泉」、道の突き当たりに「蟹場(がにば)温泉」がある。
先ほどの分岐点に戻り、休暇村の右手の細い道をしばらく進むとやがて行き止まりとなり、そこに車を停めて山道を下ったところに「黒湯温泉」、そこから10分ほど歩き先達川を跨ぐ木橋を渡ると、もっとも湯治場の雰囲気を残す「孫六温泉」に到着する。
私達は、乳頭温泉郷を代表する鶴の湯温泉と女性に人気の妙乃湯温泉に宿泊し、「湯めぐり帳」を購入して、休暇村を除く6ヶ所の温泉に入浴した。、また、ここをベースにして、八幡平散策と周辺の3ヶ所の名湯・秘湯、「玉川温泉」「後生掛温泉」「藤七温泉」に立ち寄った。
田沢湖
田沢湖高原
鶴の湯
妙乃湯
大釜温泉
蟹場(がにば)温泉
黒湯温泉
孫六温泉
乳頭温泉郷の中で最も歴史が長く(1701年・元禄14年開湯)、温泉ファンにとって憧れの人気温泉旅館。いまも宿泊に供されている茅葺長屋の本陣をはじめとする佇まいは、明治・大正を飛び越えて江戸時代にタイムスリップしたような気持ちにさせる。予約が非常に難しく、私の場合は4ヶ月前に電話で予約した。(休日の日帰り入浴は大変混雑し、付近が渋滞、入浴は順番待ちとなることも珍しくないそうだ。)
客室は囲炉裏を囲んで食事が出来る本陣からハイクラスの新本陣まで予算に応じて選択でき、湯治客専用の建物も2棟ある。宿泊料金は最高クラスでも15,000円程度であり、予算を心配することな不要だ。(私が宿泊した部屋はトイレ付き8畳で12,000円)。テレビは設置されていないので俗界を離れ、のんびりと静養できる。
青味がかった乳濁色の混浴大露天風呂は、鶴の湯ばかりでなく乳頭温泉郷のシンボルだ。他に半径50mの範囲から湧出する泉質が異なる4種類の温泉を利用した女性用の露天風呂(2ヶ所)や男女別の内湯があり、存分に湯巡りを楽しめる。鶴の湯の手前に別館の「山の湯」があり、こちらはほとんどがバス・トイレ付きで、入浴のために鶴の湯にマイクロバスで送迎してくれる。
館内のあちこちの生け花、特注したり自分で探してきた家具や器類・・・東京の建築会社で仕事をしていた女将のセンスが随所に見られる和風モダンな「脱湯治場旅館」で、客室はわずかに16。女性に人気があり予約が困難と言われており、私達が宿泊した6月中旬の平日でも満室だった(私達の部屋は8畳トイレ付きで14,000円)。売物は「金の湯」「銀の湯」と呼ぶ泉質が異なる二つの源泉を利用した7つの風呂だが、くわえて従業員の接遇が素晴らしく、部屋出しされる夕食も洗練されていた。
乳頭温泉郷のなかで最も新しく、1962年に開業した。妙乃湯温泉から歩いて3分、路線バスの終点にあり、周囲は明るいブナの林に囲まれ、旧中学校の木材を再利用した木造2階建ての家庭的な雰囲気の宿だ。宿の脇から乳頭山への登山道がスタートしている。湯量は豊富、PH2.58の強酸性源泉の温度は98度と高い。しかし、自慢のヒバの2つの露天風呂は、お湯が高温・低温と2種類に設定されているので、好みに応じて入浴できるのが嬉しい。
沢蟹が多くいたところからこの温泉名が付けられた。開湯は1846年(弘化3年)、現館主は15代目だという。客室は15室、乳頭温泉郷の中で最も早い時期に改装しているが、山の宿の雰囲気はタップリ残っている。ここの売物は、渓流沿い、ブナの林に囲まれた大きな混浴露天風呂「唐子の湯(女性タイムあり)」。透明な重曹泉がすぐそばから噴き出し、そのまま湯舟に注がれている。乳白色の硫化水素泉で満たされている杉と岩を使った2つの内湯も雰囲気がある。
乳頭温泉の最深部にあり、秋田藩佐竹家の湯治場だった歴史がある。一軒宿だが規模は大きく、旅館部に22室、湯治部に20室の部屋がある。ブナなどの広葉樹に囲まれた敷地内のあちらこちらから湯煙が立ち上がり、人気のワイルドな混浴露天風呂前のガレ場からも煙が立ち昇っている。浴場は「上の湯」と「下の湯」の2ヶ所があり、女性専用の大き目の内湯や露天風呂を含めて全部で7つの風呂がある。冬季は休業し、営業は5月中旬から11月上旬までなので要注意。
ここだけは車で行くことが出来ず、黒湯温泉または大釜温泉から歩いていくことになる。(それぞれ10分、15分)。簡素な宿舎や湯小屋が立ち並び、乳頭温泉郷の中で、昔ながらの湯治場の雰囲気をもっとも色濃く残している。開業は1906年(明治39年)、客室は15室、他に20名を収容できる自炊部がある。源泉が4つあり、風呂は先達川の河畔に並び、全部で6ヵ所の内湯・露天風呂がある。
乳頭温泉手前の林
乳頭温泉郷六湯の露天風呂(すべて温泉名が旅館名)
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