2階にある山水館専用の大浴場「山水の湯」。縁にヒノキを配した石造りの浴槽。
見事に温泉が掛け流し状態になっている。外に小さな露天風呂が付属している。
花巻市は人口73,000人、岩手県中央に位置する中核都市で、花巻空港、東北新幹線、東北自動車道などの高速交通が集中する要衝の地だ。
市域の東部には北上川が流れ、約60%が山地だが、その他は肥沃な北上盆地に属する。
花巻市のホームページを開くと、観光・温泉の他に、郷土が生んだ作家・宮沢賢治や彫刻家・高村光太郎の縁の地などを観光資源としてPRしている。
花巻市縁の人物として、もう1人の「賢治」がいる。
日本の黒幕・政商と言われた国際興業の創始者で、ロッキード事件の公判中に亡くなった「小佐野賢治」である。
一時は花巻温泉のホテル・旅館を買占め、花巻空港は、そこへの客を運び込むために国に働きかけて開設させた、という噂があったくらいの実力者だった。
東北自動車道花巻南ICで見かけた「花巻南温泉峡」の案内板。「大沢・鉛・渡り温泉」などが含まれていた。
「雨ニモマケズ」、「風の又三郎」、「銀河鉄道の夜」など数々の名作を遺した宮沢賢治は、明治29年(1896年)花巻で生まれた。
賢治は盛岡高等農林学校卒業後、花巻農学校の教師として農村子弟の教育にあたり、多くの詩や童話の創作を続け、30歳の時に農学校を退職、独居生活に入った。
ここで、農民講座を開設し、青年たちに農業を指導した。その後、2度病に倒れ、昭和8年(1933年)9月21日、37歳の若さで永眠した。
宮沢賢治は、童話と詩が有名だが、教育者であり、農業者でもあり、天文・気象・地理・歴史・哲学・宗教・化学・園芸・生物・美術・音楽・・・・・あげていけばきりがないほど多彩な方面に関心を示していた。
左:宮沢賢治記念館
宮沢賢治記念館は、詩や童話、教育、農業、科学と多彩な活動を繰り広げた賢治の「イーハトーブ」の世界を賢治の愛用品・原稿などで見せている。
左:館内には「セロ弾きのゴーシュ」を思い起こさせる賢治愛用のセロが展示されていた。
岩手県を代表する湯どころ花巻温泉郷は、北側、台川沿いの花巻・台温泉と豊沢川沿いに湧く大沢・鉛・渡り・松倉温泉・志戸平温泉などから成る。
温泉ガイドブックでは、全部を括って「花巻温泉郷」と称したり前者を「花巻温泉郷」、後者を「南花巻温泉郷」と分けてあるものもある。
地元では上に掲載した写真の通り、後者の温泉群を括ってを「花巻南温泉峡」と称している。
100室を超える大型旅館・ホテルが建ち並ぶ花巻温泉(台温泉からの引き湯)には興味がなく、前回は「台温泉」「鉛温泉」「大沢温泉」を宿泊候補に上げていた。
最終的には、家内が気に入っていた大沢温泉再泊となった。
大沢温泉は、真偽はともかく征夷大将軍坂上田村麻呂によって発見されたという伝承が残り、古くから湯治場として知られていた。
宝暦年間(1751年〜61年)には、南部藩主が入浴した記録が残っている。
1階にある半露天風呂の「豊沢の湯」。暗い浴室内、透明な湯で満たされた大きな浴槽越しに、緑豊かな豊沢川の渓谷が目に飛び込んできて、見事な借景だった。
前回宿泊の際の山菜盛り
6月の東北は山菜の季節、初めて聞く地元の山菜を含めて10種類近くが供された。
温泉教授・松田忠徳氏の「日本百名湯」にも選考され、北東北を代表する名旅館の評判が高い山水館に2度目の宿泊をした。
今回は、少し贅沢して牡丹の間(高村光太郎ゆかりの部屋)に宿泊、部屋・風呂・料理良しの三拍子揃った宿を存分に満喫した。
施設名 : 山水閣 (宿泊日 : 2004。6。14 & 2007。5。9)
広大な林の中にある高村光太郎記念館と高村山荘。
高村 光太郎(1883年 - 1956年 東京都出身)は日本を代表する彫刻家であるとともに画家・評論家・詩人としても知られる。
有名な詩集「智恵子抄」には、彼女と結婚する以前から彼女の死後の30年間にわたって書かれた詩29篇、短歌6首、3篇の散文が収録されている。
昔の教科書にはこれが掲載されていたので、詩人として認識されている方も多い。
花巻市の郊外にある記念館には、高村光太郎の遺品などが展示されている。
同じ敷地内に保存されている高村山荘は、戦後、光太郎が晩年の7年間を過したものだが、あまりの狭さと粗末、これでよく冬が過せたな、と驚かされる。
大沢温泉は花巻南温泉峡のほぼ中央はにある温泉で、豊沢川沿いに岩手県を代表する名旅館・山水閣がある。写真はその山水閣の別館・菊水館。
大沢温泉は花巻南温泉郷の中心であり、大沢温泉と言えば山水閣といわれるほどで、ここの温泉郷のみならず岩手県の温泉の中でもとりわけ有名・人気の温泉宿だ。
山水閣は県道から少し奥まった渓流沿いにある。
昔ながらの自炊部を持つ山水閣本体に加えて、豊沢川を跨ぐ橋を渡った先にある菊水館を経営している。
合計の部屋数は131室、詰め込めば最大600名弱を収容できる。
これだけ部屋数が多いと、ハイシーズンに山水閣に宿泊すると、風呂も大混雑を危惧する。
しかし、風呂数が多いこと、山水閣専用の大浴場・露天風呂があることから、その心配は少ない。
逆に山水閣に泊まった場合は、湯治部にある有名な混浴露天風呂の他、菊水館・湯治部の内風呂などすべてで入浴することが出来て、一日でこれらを制覇するのが難しいほどだ。
高級感溢れる山水閣玄関。
自炊部玄関
豊沢川を渡って対岸の菊水館へ
菊水館の茅葺の棟
渓谷・渓流が目の前の高級感が感じられるロビー。スタッフの対応はシティホテルのような控えめな接遇で、旅館の雰囲気ではない。
渓谷に面し、滞在中、豊沢川の瀬音が聞こえてくる。山水閣には57室ある。(今回撮影)
前回は10畳の和室(T付)で14,000円。今回(写真)は10畳+6畳+広縁で床の間2つの牡丹の間(光太郎の間))で18,000円(T付)
山水館に泊まった場合は、是非、自炊部を覗いて見たい。(混浴露天風呂に行く途中)
湯治客室
湯治用売店、なんでも揃ってる
古い家具がずらり
休憩処
自炊部玄関
左手に食堂・右手に売店
風呂の数が多く、かつ、すべて雰囲気が異なる。
1泊ですべてに入浴するのはかなりハードで慌しくなる。
写真以外に、自炊部の内湯、山水閣の貸切風呂がある。
データは変更されている可能性もあります。事前にご確認ください。
住 所 |
岩手県花巻市湯口字大沢181 |
電 話 |
0198−25−2021 菊水館0198−25−2452 自炊部0198−25−2315 |
交通機関 |
東北自動車道花巻南ICから県道12号線約11km
JR東北新幹線新花巻駅から新鉛温泉行バスで約45分大沢温泉下車
|
施設(日帰り用) |
休憩所、食事処、売店、駐車場100台 |
宿 泊 |
山水閣 57室 1泊2食付13,800円(税込み))〜
菊水館 17室 1泊2食付7,290円(税込み)〜
自炊部 57室 2000円〜 |
泉 質 |
弱アルカリ性単純温泉 |
適応症 |
不記載(理由は「温泉の基礎知識ー温泉の効能」参照) |
外来入浴時間 |
8時〜20時 |
定休日 |
無休 |
入浴料金 |
大人500円 小人300円 |
入浴施設 |
山水閣・菊水館・湯治部合計 内湯:男女各3 露天風呂:男女各2 混浴1 貸切3 |
浴室備品 |
シャンプー、ボデイソープ、ロッカー |
観光スポット |
宮沢賢治記念館、宮沢賢治いーハートーブ館、宮沢賢治童話村、高村光太郎記念館 |
お土産・食事 |
館内で可
|
近くの温泉 |
花巻温泉、台温泉、松倉温泉、渡り温泉、志戸平温泉、鉛温泉、新鉛温泉、 |
花巻市HP
観光協会HP
大沢温泉HP |
http://www.city.hanamaki.iwate.jp/index.html
http://www.kanko-hanamaki.ne.jp/
http://www.oosawaonsen.com/ |
雑記帳 |
(今回は時間の関係で入浴できなかったが、すぐ近くにある鉛温泉藤三旅館には、名物の混浴露天風呂「白猿の湯」がある。入口から階段を下りると混浴の浴槽がある。深さが125センチあり、客は立ったままで入浴する。)
上記は前回宿泊の際のコメントだが、今回、ここに入浴を果たした。 |
山水の湯の露天風呂
一番気に入った菊水館の桧の南部の湯、3,4人しか入れないが、ここの湯が一番柔らかだった。
湯治部にある混浴の大沢の湯、橋から丸見えだ。
菊水館への橋の上から。
前回の宿泊の際、「手の込んだ」「きれいな盛り付け」「ボリュームを抑えた」夕食だったが、今回も同様だった。
まるで我々の年令を考慮したのでは?と思ったが、予約の際に年令は告げていない。
年令を推定するとしたらチェックインの時だけだ。
それほど、腹にピッタリ、胃に負担のかからない食材・料理・ボリュームだった。
朝食はレストランで和洋のバイキング、これが素晴らしい。
とても朝食とは思えないほど品数が多く、特に和食派の方は嬉しいだろう。
パン食の身には、和食だけのバイキングが多い旅館の中で、ここは洋食もOKで、その上メニューも充実していた。
山水の湯に向かうアプローチ
水菓子(枝豆アイス・メロン・苺)
止め椀:雑穀煎餅汁薄葛仕立
酢の物:酢焚蛸他
中皿:三陸貝サラダ
煮物:白金豚春野菜葛煮鍋仕立
焼物:鰈雲丹長芋天豆焼き
造り:鮪平目勘八赤貝
吸物:新緑仕立て
前菜:山菜盛り
小鉢:岩手牛すね肉茶碗蒸し
宿のホームページを見ながら」電話で予約した際、宿から「高村光太郎縁の部屋」が空いていると聞いた。
わたしの「設定標準料金」はらすると少々高かったが、そこを予約した。
部屋は床の間が2つある2部屋の落ち着いた和室、それに数多くある風呂、食にうるさくない自分でも凝った料理と思えた夕食と品数が多い和洋の朝食バイキング、加えて湯治場の雰囲気も味わえる。それらを総合して、温泉宿ベスト100の常連旅館であることを、改めて実感した。
満足のパン食バイキング
これが朝食か!と思える品数のバイキング