改定2版
那智勝浦町は那智山(熊野那智大社・青岸渡寺・那智の滝)の門前町である那智と温泉・漁業の町である勝浦が合併した町だ。

紀伊半島のほぼ南端に位置し、気候温暖、海・山・森・滝と自然に恵まれ、そのシンボルが日本一の落差を誇る那智の滝である。

また、神武東征の上陸地、熊野三山の一つ熊野那智大社、西国33所第一番札所の青岸渡寺そして世界遺産に登録された熊野古道(大門坂)が所在する歴史・信仰の地でもある。

さらに町域には豊富な温泉が湧出し、また勝浦港は延縄漁法による生マグロ水揚げ日本一である。

和歌山県の高速道路は西側に阪和自動車道南紀田辺ICまで延伸されてきたが、そこから42号線を約100kmほど走らねばならない。

それでも宿泊・日帰り観光客の合計が170万人(平成17年)に達するのは、上述の通り自然・歴史・温泉・海の幸の4拍子が揃い、多くの人々を魅了するからだろう。
白浜温泉と並んで南紀を代表する南紀勝浦温泉は、源泉数が175本、旅館ホテル13軒、年間の宿泊客が90万人前後、「日本の温泉100選」の常連メンバーであり、関西を代表する温泉地の一つである。

南紀勝浦温泉は「紀の松島」と言われる風光明媚な海を背景に、漁港と温泉という2つの顔が混在し、多数の漁船が停泊する港周辺に白亜の大型ホテルが建ち並んでいる。

中でも「洞窟温泉・忘帰洞のホテル浦島」「らくだの湯の越の湯」「紀州潮聞之湯のホテル中の島」等は、巨大な洞窟風呂や眼前に海を見ながら入浴を楽しめる露天風呂などを持つことでよく知られている。

JR紀伊勝浦駅から勝浦漁港にかけての一帯は、鮮魚・海産物店や新鮮な魚介類を食べさせる食堂が建ち並び、土産を買い求めたり昼食を取るのに絶好のポイントだ。
少し早起きして、7時頃から始まる勝浦漁港のセリ市を見るのも楽しい。
 
湯量が豊富なこともあって、多くの旅館・ホテルが立ち寄り入浴客を受け入れている。周囲に点在する日帰り温泉施設と合わせて、いつでも気軽に入浴することが出来る。

現在の南紀勝浦温泉は、2011年3月の東日本大震災による自粛ムード、、さらに同年9月の台風12号による道路・鉄道などの被害により観光客を大きく減らしている。
那智の滝は勝浦温泉から車で30分弱、高さ133メートルで日本一の滝だ。
温泉教授松田忠徳氏の著書「日本百名湯」に選ばれた南紀勝浦温泉「海のホテル一の滝」。
これまでに、2003年2月6日、2005年12月14日と2回宿泊したが、5年半ぶりに3度目の宿泊をした。今回は宿泊客の多くが利用するという素泊まりで予約し、夕食は勝浦漁港(延縄漁法による生鮮マグロの水揚げ日本一)に多数ある「まぐろを食べさせる店」の一軒で取った。

以前と変わらず、内湯の加温無しと加温ありの浴槽からは、硫黄臭がする滑らかな温泉が贅沢に溢れ出し、シャワーも温泉がそのまま使われていた。
勝浦漁港、正面には巨大なホテル浦島
地元の人が通う公衆浴場・はまゆ
「海のホテル一の滝」 この名前の由来は?

「海のホテル」・・・ロビーやすべての客室からは、目の前に漁船の船泊まり弁天島、その先には那智湾の静かな海が広がり、水平線を見る茫々たる大洋とは違った穏やかな内海風景が見られる。

さらに「一の滝」・・・これは敷地内から那智の滝=一の滝(別に二の滝、三の滝もある)が見えることに由来する。

ここは、温泉教授で知られる松田忠徳氏が日経新聞に連載された記事を編集した「日本百名湯(日本経済新聞社刊)」の中で南紀勝浦温泉をその一つに選考し、代表旅館・ホテルとして全国的に有名なホテル浦島を差し置いて推薦した宿である。

少し前までは30室だったが、すべての宿泊客に目が届くように、それに震度7の地震にも耐えられるようにとの目的で、3階部分の客室を閉鎖し、わずか20室に減少させた。

喫茶・軽食処 きよもんからの汽水湖・ゆかし潟の眺めが抜群。
突堤から見た海のホテル一の滝。3階部分は使用していない。
南紀勝浦温泉・海のホテル一の滝 (和歌山県)
温泉名 : 南紀勝浦温泉
施設名 : 海のホテル一の滝 (宿泊日:1回目 2003.2.6 2回目 2005.12.14 3回目 2011.5.27 )
所在地 : 東牟婁郡那智勝浦町(ひがしむろぐん なちかつうらちょう)
8畳+広縁+T(シャワー無)、すべての部屋から那智湾を望む。
外観・館内とも古びているが、清掃はどこも行き届いている。
客室は8畳(T)が中心で、シンプルな造りだが広縁には応接セットが置かれ、窓からは弁天島、その向こうには穏やかな那智湾がまるで湖のように広がっている。

2食付の料金は、1室2人で1人11,000円と13,000円、料金の差はお造りの違いだけだ。
しかし、最近は素泊まりの利用が60%を超えているそうで、この場合の料金は同じ条件で1人5000円(別に消費税250円)ぽっきり、今回はこれで予約したが、チェックアウトの際の支払いは10,500円、なんだか申し訳ない気持ちになった。


宿にはマグロが食べられる店を中心に、たくさんの食事処が掲載されたマップが用意されており、それを参考に夕食に出かけると良い。
ホテルでもいくつか推薦してもらえるが、後で後悔しないように、事前にインターネットで那智勝浦の食事処の評判を調べておいた方が良いだろう。

● 前回、11、000円の際の夕食の一部。料金を考えると高級食材が多用されないのは当然で、肉を使わず魚介類を調理した家庭的な料理が供された。
● 上記のとおり今回(3回目)の宿泊は素泊まりだったので、ホテルで教えてもらった店に出かけた。しかし、安い定食(1500円)を注文、料金をけちったのでここに掲載するほどのものではないのだが、ご参考までに。
お店サービースの血合いを調理したもの。
マグロステーキ
まぐろ三品
食 事
風 呂
前菜に鮑、マグロは無骨に分厚く切られていた。鍋は魚介類と野菜、天麩羅は揚げたてが出された。
風呂は内湯のみで露天風呂は無い。
露天風呂を作る敷地は十分にあるが、館主のかけ流し温泉へのこだわりだろうか、資金的に余裕がないためだろうか、そこらへんは定かではないが、その必要性を感じない素晴らしい内湯だ。


上述の松田忠徳教授の「温泉教授の全国温泉ガイド」の一節を引用する。

海のホテル一の滝の風呂はいつも惚れ惚れするほど良質の湯があふれている。(中略)
湯船にゆっくり肩まで浸かると、水一滴加えない源泉100%の温泉が贅沢にあふれ出る。

湯はややぬるめだが、無色透明の単純硫化水素泉でやわらかく、肌あたりがよい(他の著書では「絹の感触」と表現)。これだけの大温泉地にこれだけの湯質の温泉が残されていること自体、にわかに信じがたい。(中略)
まさに極上の湯である。
弓形の大きな浴槽は2つに仕切られ、右側は人肌くらいの温めの風呂、左側は加温されている。入浴しながら海が見えるが、いつもガラスが曇っていてはっきりは見通せない。
源泉は、以前の記事で2本の源泉(一の滝源泉、一の滝2号源泉 合計湯量約300リットル/分と記しているが、この出典が今回確認できず、今も2本の混合泉かどうか不明だ。
浴室内には、一の滝源泉の「単純温泉 145L/分 源泉温度38.8℃ pH8.1 無色微混濁 中硫化水素臭」が表示されており、2号源泉はもう使用されていないのかもしれない。


単純温泉ながらしっかりした硫黄臭が漂い、pH値が高いためか、滑らかな感触が女性に好まれるだろう。
松田教授の「絹の感触」は言いえて妙だ。

20人が一度に入れる大きな風呂は2つに仕切られ、右側は加温無しで人肌ほどの温さ、これがとても心地よくていくらでも浸かっていられる。
左側は加温されており41℃程度か、但し、両方の浴槽とも、季節や入浴時間によって温泉が上下するだろう


日帰り入浴(大人500円)は、午後3時から午後11時までと長く、そのため、宿泊者は少なくても風呂が無人になることはほとんど無い。
加温された浴槽から撮影。縁から温泉が溢れる様を見るのは毎度のことながら快感だ。
一の滝は、南紀勝浦温泉から西へ数キロ離れた国道42号線沿い、汽水湖のゆかし潟に面して、旅館数軒がある南紀湯川温泉に日帰り温泉施設「きよもん湯」と軽食・喫茶の店「きよもん」を経営している。
ホテルの経営は子息に委ねたのだろうか、3度、食事と喫茶をきよもんでとったが、その内、2回、ご夫妻が知人とのんびり談笑されていた。
関連施設
湯口から注がれる湯量はこの位。
カランは硫黄分で真っ黒、片方の水道水用の取っ手が外されて、一方から温泉のみが出てくる。
こんな表示も貼られていた。
南紀湯川温泉の入り口にあるきよもん湯。温泉があふれ出る様は、ゆかし潟対岸にあるゆりの山温泉並だ。
南紀湯川温泉 きよもん湯
一の滝の女将(左側)と。
国道42号線沿い。広い駐車場がある。
データ (データは変更されている可能性もあります。お出かけ前に当該施設のHP等でご確認ください。)
住  所 和歌山県東牟婁郡那智勝浦町勝浦752
電  話 0735−52−0080
交通機関 阪和自動車道南部Cから国道42号線で130km
五條から国道168・42号線で約160km
施  設(立ち寄り) 湯上り処、ラウンジ(時間帯によって喫茶可能)、ロビー、 駐車場(40台)
宿  泊 20室 11,000円・13,000円の2種類のみで、この差はお造りの違いだけ。 (2人1室1人当たりの料金 1泊2食付)
素泊まり 5000円(2人1室1人料金)
このほかに朝食付きなどの料金もあるので詳しくはホテルのHPを参照ください。
外来入浴時間 15:00〜23:00(予約不要)
定休日 毎週火曜日(宿泊も不可) 但し連休・夏休み期間・年末年始は営業
泉 質 単純温泉
一の滝源泉
 pH8.1 源泉温度38.8℃ 湧出量145リットル/分 (館内の表示はこちらのみ)
一の滝2号源泉 pH8.4 源泉温度36.5℃ 湧出量166リットル/分
(現在の状況不明)
適応症 不記載(理由は「温泉の基礎知識ー温泉の効能」参照)
入浴料金 大人 500円
入浴施設 内湯 : 男女各1(露天風呂・貸切風呂無し)
浴室備品 シャンプー、ボデイソープ、ロッカー、ドライヤー
観光スポット 勝浦漁港周辺、那智の滝、熊野那智大社、青岸渡寺、紀の松島(観光船)熊野本宮大社、熊野速玉大社、瀞峡(ウォータージェット船)、北山川筏下り、くじらの博物館、鯨ウオッチング
お土産・食事 那智勝浦駅から勝浦漁港にかけて食堂・鮮魚/水産加工品販売店多数
近くの温泉 湯川温泉、めざめ温泉、太地温泉、串本温泉、夏山温泉、錦温泉、雲取温泉湯の峰温泉渡瀬温泉川湯温泉
那智勝浦町内:公衆浴場はまゆきよもん湯さくら湯ゆりの山温泉、那智天然温泉(2011年9月の豪雨で流出)
那智勝浦町HP
観光協会HP
旅館組合HP
海のホテル一の滝HP
http://www.town.nachikatsuura.wakayama.jp/index.html
http://www.nachikan.jp/
http://www3.ocn.ne.jp/%7Enk-onsen/
http://www.ichinotaki.co.jp/
雑記帳 白浜から那智勝浦に至る約100kmは、ほとんどが海沿いで素晴らしい景観だ。しかし、、カーブが多いので安全・慎重運転をしてください。
信号も少なく快適なドライブが楽しめるが、車間距離を取らず煽るトラックが必ず出現するのでこれも要注意。尚、白浜・那智勝浦間は2時間を見込んでおいた方が良い。
旅館としては珍しく定休日があるので要注意(毎週火曜日ー但し連休・夏休み・年末年始は営業)
喫茶&軽食 きよもん
ロビーからも那智湾が目の前に見える。
夜明けの弁天島、左と同様に部屋から撮影。
小型船の船泊まり。ホ茫洋とした外海でなく、遠近感がある海景色だ。