このように、温泉療養をしてはいけない病気や症状も少なくありません。いずれにしても、温泉療養を行う際は自己診断だけではなく、
医師の指導を受けることが望ましいと思われます。特に、温泉の知識を持った「温泉療法医」に相談されることをお勧めいたします。
(2)温泉療法の注意事項
以下温泉療法について、浴用と飲用に分けて一般的な注意事項を簡単にまとめます。
(これはいわゆる湯治の場合の注意事項ですが、温泉旅行で2回〜3回程度入浴する際にも参考になります。管理者注)
*浴用上の注意事項
@温泉療養を始める場合は、最初の数日は入浴回数を1日あたり1回位とするのがよいでしょう。その後は1日2〜3回までとします。
A温泉療養のための必要期間は、おおむね2〜3週間が適当です。
B温泉療養開始後3〜7日前後に、「湯あたり」、「湯さわり」などの浴用反応が現れることがあります。
この間は、入浴回数を減らすか中止し、湯あたり症状の回復を待ってから入浴を再開して下さい。
C強酸性泉や硫化水素泉では、入浴後皮膚に「湯ただれ」ができやすいので、皮膚の敏感な人は注意が必要です。
D入浴の方法
・入浴時間は泉温によって異なりますが、初め3〜10分程度で、なれるに従って延長していきます。
・運動浴を除き、入浴中は安静を守ることが大切です。
・入浴後、身体についた温泉の有効成分を洗い流さないようにし、皮膚から吸収されるように自然乾燥させることが望ましいのです。
(ただし、循環式浴槽の温泉の場合は上がり湯をかけて流して下さい)
・入浴後は湯冷めに注意して、必ず一定時間の安静を保ってください。
・高血圧や動脈硬化症、心臓病については、原則として高温浴(42℃以上)は避けてください。
・熱い温泉に急に入ると脳貧血を起こす場合があります。入浴前に頭部や身体にかぶり湯やかけ湯をしてから浴槽に入ってください。
・食事の直前直後の入浴は避けましょう。また、飲酒しての入浴は特に危険です。
*飲用上の注意事項
@飲用の許可のあることを必ず確認し、できる限り温泉療法医の指導を受けましょう。
A飲用には温泉湧出口の新鮮なものを用い、1回量は一般にコップで一杯程度。1日の量はおおむね200〜1,000ミリgまで
とします。ただし、酸性泉やナトリウム塩化物泉などは、泉質濃度によって減量や希釈します。
B一般に飲泉は食前30分〜1時間前または空腹時がよく、夕食後から就寝前はなるべく避けましょう。
C鉄泉、放射能泉、ヒ素、沃素、臭素を含有する温泉は、必ず飲用の許可を確認すること。また、これらの飲用直後には、お茶、
コーヒーは飲まないようにしましょう。
(3)温泉の効能
(源泉100%、源泉湧出(汲み上げ)後の時間的経過が少ない湯に入浴するという前提で、)温泉には次のような効能が
あります。
(a)温泉の一般的効能
泉質に関係なく、次のようなものがある。
@温熱作用によるによる保温効果
A)疲労回復(血流の促進により酸素・栄養物質を組織に送り込み、組織にたまった炭酸ガスや代謝産物
・疲労物質を速やかに排出する)
Bストレス等からゆがめられた人の体内リズムを整えてくれる変調作用で、これによって健康を取り戻し、病気から守ってく
れる作用。これはわが国の温泉でもっとも期待されている効果である。
具体的な適応症には次のようなものがあり、これは一定量の化学物質を含まない単純温泉の効能でもある。
神経痛、筋肉痛、関節痛、五十肩、運動麻痺、関節のこわばり、うちみ、くじき、慢性消化器病、痔疾、冷え性、病 後回復期、疲労回復、健康増進 |
適 応 症
泉 質 |
高 血 圧 症 |
動 脈 硬 化 症 |
糖
尿 病 |
痛
風 |
肥 満 症 |
胆 石 症 |
慢
性 胆 嚢 炎
|
肝 臓 病 |
慢 性 消 化 器 病 |
慢 性 便 秘 |
貧 血 |
慢 性 婦 人 病 |
月 経 障 害 |
虚 弱 児 童 |
慢 性 皮 膚 病 |
切 り 傷 |
や け ど |
単純温泉 | 一般的適応症に準ずる | ||||||||||||||||
塩化物泉 | ☆ |
☆ |
○ |
○ |
○ |
○ |
○ |
||||||||||
炭酸水素塩泉 |
☆ |
☆ | ☆ | ☆ |
○ |
○ |
○ | ||||||||||
硫酸塩泉 | ○ | ☆ | ☆ | ☆ | ☆ | ☆ | ☆ |
○ |
○ |
○ |
|||||||
二酸化炭素泉 |
○ |
○ | ☆ | ☆ |
○ |
○ |
|||||||||||
含鉄泉 | ☆ | ○ | |||||||||||||||
含銅・鉄泉 | ☆ | ○ | |||||||||||||||
酸性泉 | ☆ | ○ | |||||||||||||||
硫黄泉 | ○▲ | ○▲ | ○☆ | ☆ | ☆ | ○ | ○ | ○ | |||||||||
放射能泉 |
○ |
○☆ | ○☆ | ○☆ |
☆ |
○ |
○ |
急性疾患、(とくに熱のある場合)、活動性の結核、悪性腫瘍、重い心臓病、呼吸不全、腎不全、出血性の疾患、高度の貧血、その他一般に病勢進行中の疾患、妊娠中(とくに初期と末期) |
泉質 | 浴用 | 飲用 |
塩化物泉
炭酸水素塩泉 |
一般的禁忌症に準ずる | 腎臓病、高血圧症、一般むくみがあるとき、甲状機能亢進症のときヨウ素を含有する温泉は禁忌 |
硫酸塩泉 | 一般的禁忌症に準ずる | 下痢のとき |
二酸化炭素泉 | 一般的禁忌症に準ずる | 下痢のとき |
硫黄泉
酸性泉 |
皮膚、粘膜の過敏な人、とくに光線過敏症の人(硫化水素型)
高齢者の皮膚乾燥症 |
下痢のとき |