施設名 : つぼ湯  (入浴日:2007.3.1)
所在地 : 田辺市本宮町
温泉名 : 湯の峰温泉  
 湯の峰温泉 つぼ湯 (和歌山県)
2005年5月1日付けで、東牟婁郡本宮町は、田辺市を核に龍神村、中辺路町、大塔村とともに合併した。
これにより(新)田辺市は、太平洋側から国道311号線沿いに県下最東部の山間部まで、ちょうど世界遺産登録となった熊野古道の中心「中辺路(なかへち)」をカバーする、東西に細長い広域自治体となった

本宮町の歴史は古く、熊野本宮大社や熊野古道、わが国最古の温泉とも言われる湯の峰温泉等で知られている。
言うまでもなく、「本宮」という町名は、熊野三山のの一つ「熊野本宮大社」に由来する。
現在の本宮町は森林地帯が93%を閉める林業の町。北に果無山脈、南に大塔山系の山岳で囲まれ、町の中を熊野川が流れている。

国道168号線を秘境・十津川村から南下し、本宮町内の川湯・湯の峰・渡瀬温泉を通過すると、やがて穏やかな山並みの間をぬって流れる熊野川が左手に見えてくる。
168号線もここら辺りまで来るとカーブがゆるやかに、道幅も広くなってきて熊野川の景観を楽しみながら快適なドライブが楽しめる。
白浜方面から国道311号線を進むと、熊野古道・中辺路を通り過ぎる。
日本三古泉とは、「有馬」「白浜」「道後」を言うが、熊野三山の北奥にある湯の峰温泉はこれらを凌ぐ日本最古の温泉と言われる。平安時代から熊野詣の「湯垢離場」として知られ、ここで穢れを落としてから熊野三山の詣を行った。
現在の湯の峰温泉は、湯の谷川に沿って旅館4軒、民宿15軒が建ち並ぶ小さな温泉街だ。

この温泉街の中心には、日本最古の共同浴場「つぼ湯」、湯煙を上げる自然湧出源泉の「湯筒」、源泉掛け流しの「湯の峰温泉共同浴場」や「東光寺」が集まって、何とも言えない温泉街情緒を醸し出している。

湯量に恵まれない関西の有名温泉地が大型化した中で、湯の峰温泉は昔ながらの規模を維持し、限られた温泉を大切に利用して、いまも源泉掛け流しを保っている。

宿では「日本秘湯を守る会」会員旅館であり、江戸時代から続く木造建築の「あづまや」が有名だが、残る3軒もそれぞれ特色を出して営業しているし、多くの温泉民宿があるので手軽に名湯を味わえる。
徒歩で5分も歩けば通り過ぎてしまう小さな温泉地だが、これぞ日本の温泉と感じ入る。
4度目の来訪で、ようやく世界で唯一の世界文化遺産の風呂、「つぼ湯」に入浴することが出来た。
100℃近い源泉が湧く「湯筒」。温泉たまごを作れる。
入浴料が別の2つの風呂を持つ公衆浴場
右が旅館「あづまや」
境内が世界遺産の東光寺
住 所 和歌山県田辺市本宮町湯の峰温泉
電 話 0735−42−0074 (湯の峰温泉公衆浴場)
交通機関 五條から国道168号線で約115km
新宮市街から国道168号線で約40km
阪和自動車道みなべICから国道42・311号線で約75km
JRきのくに線紀伊田辺駅から龍神バス本宮大社前行きで1時間40分湯の峰温泉下車
施 設(日帰り用) 駐車場(100台・・・湯の峰温泉公衆浴場と共用・・民宿瀧よし横))
宿 泊 不可
泉 質 含硫黄ーナトリウムー炭酸水素塩・塩化物温泉
適応症 不記載(理由は「温泉の基礎知識ー温泉の効能」参照)
入浴時間 6時〜21時30分
定休日 無休
入浴料金 大人750円 (これで公衆浴場にも入浴できる)
入浴施設 混浴風呂1
浴室備品 シャンプー・ボデイソープ・ロッカーなど無し
観光スポット 熊野本宮大社、熊野古道、瀞峡(ウォータージェット)
土産・食事 旅館街で可能だが店は少ない
近くの温泉 川湯温泉渡瀬温泉湯の口温泉、熊野川温泉、奥熊野温泉上小野温泉十津川温泉郷
田辺市HP
観光協会HP
http://www.city.tanabe.lg.jp/
http://www.hongu.jp/
雑記帳 湯の峰温泉にリーズナブルな料金で宿泊を、という方には「湯の峯荘」がお薦めだ。
温泉街から少し離れているが(徒歩7〜8分)、内湯も露天風呂も掛け流しで、特に露天風呂が良い。
データは変更されている可能性もあります。お出かけ前にご確認ください。
2004年7月1日、中国で開催された第28回世界遺産委員会で、和歌山・奈良・三重県にまたがる「紀伊山地の霊場と参詣道」が世界文化遺産に登録された。
この時、ここ「つぼ湯」
も熊野信仰との関わりが深いということで、現在も使用されている浴場としては、世界で唯一の世界文化遺産に登録された(「現在も使用されている」、とあるのは、古代ローマのカラカラ浴場が世界遺産?)。

つぼ湯に入浴するには、先ず、50mほど離れた公衆浴場で入浴料(750円)を支払う。
少々高いように思われるが、公衆浴場の2つの風呂(公衆浴場250円・くすり湯380円)の何れかに入浴できるのだから、リーズナブルだ。
と言うよりは、世界遺産の風呂に入るのだから、もう少し高くても納得する。
料金を支払う際、係の人から入浴時の注意を丁寧に受ける。

・先客がいたら、つぼ湯のそばにある待合所で待機する。
・3cm四方くらいの番号札を、入浴の際につぼ湯のフックにかける
・入口前に履物を置いて、入浴中を知らせる
・入浴は30分の間に終えること
・公衆浴場のどちらかの風呂に無料で入浴できる

などなどだ。

この日、「あづまや」にチェックイン後、すぐに公衆浴場に駆けつけた。
幸い、先客はいなかったので、すぐに入浴できた。
湯の谷川沿いの道から階段を下りて湯小屋へ。
言われた通り番号札を掛けて、靴を外に置いて木造の小さな湯小屋に入る。
湯小屋の横を湯の谷川が流れる。
靴を外に置いて中に入る因みに中からのロックを探したが見つからなかった。見落としたのだろうか。
5,6段の石の階段を下った先に湯船がある。
大きさは畳1畳も無く、つぼ湯の「つぼ」は「坪(畳2枚)」でないと思った。湯船の形態からして、「壺湯」なのだろうか。

2人で入るには、膝を折り曲げないと無理な大きさだ。
七色に変化するという硫黄泉(含む硫黄ーナトリウムー炭酸水素塩・塩化物温泉)だが、今日の色は不透明な薄いブルー。
脱衣所は無く、岩の上に置かれた籠に衣服を入れる。
不透明なので湯船の深さが分からないので、ゆっくりと足を入れる。

湯は私にとって適温、ということは40℃くらいだろうか。
なめらかな泉質だ。
「湯が湧く場所を探してください」といった趣旨の札が下がっていたので、どこから湧くか、しばし探ったが分からなかった。
入口から見下ろす湯船。
実際の色はもう少し薄かった。波紋が見えるところが湧出場所だろうか。
入浴しながらの撮影。前の板囲いは上に引き上げられる。
1000年の歴史を誇る湯に浸かっている歓びがじわじわと湧き上がってきた。
入浴中、「ただ今、他の人(私のこと)が入浴中です。中に入らないでください。」というマイク放送があった。入浴ルールを知らない誰かが、どんな風呂か覗こうとしたのだろう。
また、入浴を終えて湯小屋から外に出ると「番号札4番の方どうぞ」と再びマイクが。
モニター画像を見ながら公衆浴場でリモート監視しているのだろうか。


寺の前に「小栗判官蘇生の地」と書かれた柱が立ち、同じ文言の幟があちこちに翻っている。
湯の峰温泉、即ちつぼ湯は、スーパー歌舞伎でも有名になった小栗判官と照手姫の舞台でもある。
小栗判官満重は桓武天皇の曾孫高望王の末裔、常陸国真壁郡小栗邑の領主だったが、戦に破れ悲劇的な最後を迎える。

その後、彼は地の底から蘇生し、餓鬼阿弥(がきあみ)となった小栗判官が熊野に向かい、湯の峰温泉のつぼ湯に入湯して、もとの勇者に戻るという伝説が残る。
この伝説が浄瑠璃・歌舞伎などで演じられ、広く庶民に親しまれることになった。