現実の木材ははじめは弾性で、途中から塑性になる(弾塑性)ような性質を示します。荷重-変形関係をX-Yグラフで表現するとはじめは直線で、ある変形量以上になると徐々にグラフの傾きがゆるくなっていき、最後は負の傾きになって破壊で終わる曲線に変化します。
このような曲線を含むグラフを数式化すると複雑になりすぎて、簡単に計算が出来ません。そこで、これを破壊するか荷重が最大荷重の0.8倍まで低下したときまでに吸収するエネルギーが等くなるような完全弾塑性要素に置き換えて、直線だけで表現します。こうすれば終局時まで荷重-変形性能を計算上で評価できるようになります。計算モデルは実際とは若干荷重-変形関係が異なりますが、概ね同じといってよく、また吸収エネルギーが同じであるので、終局耐力は同等であることが保証されます。(Fig.1-8)
一般に、材料の荷重−変形性能は構造計算が容易なように、試験結果を完全弾塑性に置き換えて、材料性能のばらつき・施工精度、劣化等の影響を加味した上で統計的に処理して求めます。
Fig.1-8 荷重-変形関係のモデル化 |
建物に被害が全く生じないようにするには、建物の材料や接合部等全ての変形が弾性変形範囲に収まらないといけません。しかし、百年に1回起きるかもしれないような大地震に対しても、被害が生じないようにするのは経済的ではない場合があるので、建物が倒壊したりして人命に被害が及ぶようなことがない程度の塑性変形を許容した設計が許されています。
この建物が倒れないぎりぎりの状態を終局状態といい、そのときの強度を終局強度といいます。塑性変形は地震動のエネルギーを変形することでよく消費できるので、終局状態を計算に入れることで耐震性をアップすることができます。
耐力要素・建物全体の終局耐力の計算は、材料・接合部の荷重−変形性能を用いて全体の変形を計算することで可能になります。