夕食・朝食とも部屋食。評判に違わず、地元の食材を使用した見た目にも美しい料理に感動した。
岩美町は人口13、000人余りの小さな町で、鳥取県の最東北端に位置し、東で兵庫県、北は日本海、南と西で鳥取市に接している。
町の観光資源は3つある。
浦富(うらどめ)海岸、松葉がに(ずわいがに)それに岩井温泉だ。
今回の旅では浦富海岸を観光すべく、国道178号線からそれて海食崖の上を通る1.5車線の細い道を走った。
浦富海岸は陸上(くがみ)岬から駟馳山(しちやま)までの15kmのリアス式海岸線の総称である。
日本海の荒波と風雪によって浸食された断崖・絶壁・洞窟・奇岩の荒々しい景観と白砂青松の穏やかな風景が見事なコントラストを見せている。
山陰海岸国立公園の中でもすぐれた景勝地として、国の名勝及び天然記念物に指定されている他、「白砂青松100選」「渚100選」にも選ばれている。
浦富海岸のすぐ西には、対称的な風景・鳥取県最大の観光スポット・鳥取砂丘が広がっている。
また、岩美町は松葉ガニ(ズワイガニのオス)の漁獲量が市町村単位で日本一、町域の網代港と田後港のズワイガニ水揚げが、鳥取県全体の7割を占めている。
冬のシーズン到来とともに、この地方は松葉ガニ一色となり、宿泊料金も跳ね上がる。
料 理
風 呂
日本百名湯の宿・岩井屋は江戸末期の創業。
昭和9年の大火で岩井温泉の大半が焼失したが、岩井屋のしっとりした木造3階建ては、その直後に再建されたものだ。
4年前に立ち寄ったが、岩井屋の館内が木の温もりと館内畳敷きと骨董・民芸家具調度が醸し出す小粋で洒落た雰囲気が気に入った。
宿のパンフレットはよくある三つ折のものでなく。小冊子になっていて写真はすべてモノトーンでなにやら高級感がある
そんな訳でいつかは泊まろうと思っていた宿だ。
それが実現したのが4年後の早春、思い立って鳥取の温泉を集中的に周ろうと思い、1日目はここ岩井屋、2泊目ははわい温泉(追って掲載)とした。
実際に宿泊してみて、立ち寄った時の印象に間違いなく、粋な和の雰囲気と見事な風呂、それに洗練された料理が一層この宿の評価を高めた。
海食崖の道路から見る浦富海岸
背戸の湯
長寿の湯と繋がっている露天風呂だが開放感は無い。
3軒の宿の何れかに宿泊の場合、「入浴手形(1000円)」を購入すると残りの宿2軒と共同浴場の3か所で入浴できる。
購入日から1年間有効で、さらに有効期限内にもう一度宿泊すると宿泊料金が10%割引になる。
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美しい色とりどりの前菜
見事な盛りつけのお造り
風呂は内湯が2ヶ所、露天風呂が1ヶ所、貸切風呂が1ヶ所ある。
中でも有名なのが「源泉長寿の湯」だ。
浴槽の一部は直立しても胸元までくる深さで、長さ6m・幅2m50cmほどあり、底の松板の簀の間から源泉温度47.6℃の温泉が湧き出てくる。
風呂の真下に源泉があるのか、演出なのかは定かでない。
泉質はカルシウム・ナトリウムー硫酸塩温泉(含芒硝石膏泉)で、艶のある透明、肌に優しい感触の温泉である。
こちらには、半露天風呂の「背戸の湯」が隣り合っている。
露天風呂と言っても東屋風の屋根と竹垣に囲まれて展望は全くきかず、注意しないと内湯と思ってしまう
もう一方の内湯「祝いの湯」は太い梁が巡らされた高い天井の下にある。猪脅しのある小粋な和風坪庭を設けた浴室には、高級感を感じさせる御影石の湯船があり、長寿の湯と同じく中央部が深くなっている。
朝の散歩、山里の風情
温泉街の横を流れる蒲生川
朝食も充実していた。
住 所 | 鳥取県岩美郡岩美町岩井544 |
電 話 | 0857−72−1525 |
交通機関 | 中国自動車道佐用ICから90km JR山陰本線岩美駅から日本交通バス岩井・長谷橋行きで10分、岩井温泉下車すぐ |
施設(日帰り用) | 浴室以外特に無し。 駐車場:周辺に15台 |
宿 泊 | 15室 15,000円(税別)〜 カニの場合は別料金(詳細は下記HP参照) |
泉 質 | カルシウム・ナトリウム硫酸塩泉(含芒硝石膏泉) 泉温47.6℃ |
適応症 | 不記載(理由は「温泉の基礎知識ー温泉の効能」参照) |
入浴時間 | 12時〜19時30分(最終受付19時00分) 予約不要 |
定休日 | 日帰り入浴は不定休なので念のため事前に確認した方が良い。 |
入浴料金 | 大人 750円 |
入浴施設 | 内湯 男女別各1、露天風呂1、貸切風呂1 (宿泊の場合、午後8時に男女交代) |
浴室備品(日帰り) | シャンプー、ボディソープ、ロッカー、ドライヤー |
観光スポット | 浦冨海岸(4kmの海岸遊歩道)、但馬御火浦、鳥取砂丘、鳥取市内(久松公園・わらべ館・やまびこ館・県立博物館等) |
お土産・食事 | 温泉街で昼食取れるかどうか不詳。 |
近くの温泉 | 湯村・鳥取・吉岡・浜坂・浜村・鹿野・・三朝・東郷・羽合温泉等 |
岩見町HP 岩井屋HP |
http://www.iwami.gr.jp/ http://www.iwaiya.jp/ |
雑記帳 | 鳥取県を代表する農産物として20世紀梨がある。これはもともと千葉県で二十世紀梨の実生が発見されて、後に鳥取県で栽培されるようになった。平成16年で導入100周年を迎えたが、最近は後発の梨に押されて生産高が減少している。 |
夜間の長寿の湯(左・中)と祝いの湯(右)
岩井屋・花屋・明石家が寄りそうにして立つ。
館内すべてが畳敷きでスリッパを履かないで歩けるのが心地よい。
兵庫県豊岡市方面から国道178号線で鳥取県に入って間もなく、岩井温泉方面の標識に従って県道256号線に乗り換えて6kmほど進む。
国道9号線を横切り蒲生川を跨ぐゆかむり大橋を渡って旧国道9号線にぶつかると、そこが平安時代初期の歴史書にも登場するという岩井温泉だ。
この小さな温泉地が全国的に知られたのは、温泉教授こと松田忠徳氏の著書「日本百名湯」に選考されたことが大きい。
旅館が3軒と共同浴場1軒だけの小さな温泉地で、国指定の国民保養温泉になっている。
宿泊した宿「岩井屋」の女将によれば、思い出すだけで4軒の宿が廃業したという。
今も残る江戸時代創業の3軒の老舗宿、「岩井屋」「明石家」「花屋旅館」は旧道に面して向かい合って建っている(いずれも立ち寄り入浴可能)。
部屋は家内のために階段を上り下りしない1階「こぶし」の間。10畳と6畳2間(T付き)の広い和室で民芸家具も配置され高級感が感じられる部屋だ。アメニテイも充実し、就寝用に2枚目の浴衣が置かれている。
現在の建物は、1936年(昭和11年)に再建された木造3階建ての和風建築だ。
館内はロビー・廊下をはじめすべてに畳が敷かれ、鳥取民芸の家具や調度が配置され、野の花がさりげなく彩りを添えている。
間違いなく女性が好む宿の雰囲気を備えている。
客室の造りは一つ一つ異なるが、因州和紙の壁紙と民芸家具で統一されている。
館内のいたるところに民芸・骨董家具が配置され、花が投げ込まれて、心地よい雰囲気を醸し出している。
岩井温泉に行くと「湯かむり」という言葉をよく見かける。
これは岩井温泉独特の入浴方法で江戸時代の湯治客の中から生まれたという。
頭に手ぬぐいを乗せ、唄に合わせて柄杓で湯をかむり、湯をたたいてリズムをとる入浴方法だそうだ。
現在は、保存会がこの伝統を受け継いでいる。
ゆかむり温泉共同浴場
花屋
明石家
ステンドグラスの照明
長寿の湯のタイル
貸切風呂