湯上り処だろうか、ここだけは真新しい。
川端康成資料室
雑線としたフロント周辺
お馴染みの提灯
施設名 : 福田家 (入浴日:2007.3.26)
河津町は伊豆半島の南端に近い東海岸に位置し、北は800メートル以上の天城の山々を境に伊豆市、南は下田市に接していいて、総面積の83%が山林・原野で占められている。
河津川の上流には火山から流出した溶岩で形成された大滝などの数多い滝があり、海岸部も今井浜などの海岸美に恵まれている。
この自然に加えて、河津町には3つの観光資源がある。
1つは、町域に豊富に湧き出る温泉群である
2つ目は、町が「花の町、かわづ」とPRしているように、町域には早咲きで知られる河津桜をはじめ、1100種6000本のバラが咲く河津バガデル公園、かわづ花菖蒲園、かわづカーネンション見本園などの花の施設がある。
特に、1月下旬から蕾がほころび始め、3月上旬までピンク色の花を咲かせる早咲きの河津桜は、満開時にはその模様が全国に報道され、多くの観光客で賑わう。
3つめは川端康成の名作・伊豆の踊り子の舞台であることだ。
湯ヶ島、天城峠を越えて下田に向かう旅芸人一座と道連れになった、孤独に悩む青年の淡い恋と旅情を描くこの物語は、彼が19歳ののとき、湯ヶ野で踊り子達と出会った実体験に基づき、後にこの小説が生まれることになった。
浄蓮の滝入口にある踊り子像
「伊豆の踊り子」は、湯ヶ島・湯ヶ野温泉だけの観光資源でなく、伊豆半島全体、特に中伊豆、東伊豆の重要な観光媒体だ。
●1981年(昭和56)より、国鉄(1987年よりJR東日本)・伊豆急線・伊豆箱根鉄道線直通特急列車の名称に「踊り子」号の名称が充てられている。
●過去に6回、映画化されている。
主演女優は、「田中絹代・美空ひばり・鰐淵晴子・吉永小百合・内藤洋子・山口百恵」と、それぞれの時代の人気女優だった。(年配の方でないと、一人も知らないかも知れませんね。)
河津町の山側から相模湾に向かって流れる河津川沿いに、大滝・七滝・湯ヶ野・峰・谷津・今井浜・河津浜の7つの温泉地が点在している。
これらを総称して河津温泉郷と呼ぶ。
いずれも旅館(ペンションを含む)数軒の小さな温泉地だが、山里・渓流・海岸と周囲の自然が異なっている。
この日、前日宿泊した西伊豆・松崎温泉から県道15号線(松崎街道)で東行、その後、国道414号線(天城街道)で北上し湯ヶ野温泉にやって来た。
しかし、東京方面からやって来る場合は、2つのルートがあるので、途中の渋滞状況、どこの温泉に立ち寄るか、海側がいいか山側がいいか、などを勘案して選択すればいい。
一つは、東海岸沿いの国道135号線を南下し、伊東・稲取・熱川温泉等を通過するルート。
ニつ目は、三島方面から国道136・414号線で修善寺・嵯峨沢・湯ヶ島温泉等を通過し天城越えをするルートだ。
後者のルートを取った場合、天城峠を越え、ループ橋(写真)を通過すると間もなく、右手に湯ヶ島温泉が見えてくる。
宿が4軒ほどの小さな温泉地なので、気をつけないとあっという間に通り過ぎてしまう。
ここかなと疑いつつ右折し、狭い荒れた道をほんの少し下ると、そこに停めにくいが福田家の小さな駐車場がある(6台程度)。
国道414号線のループ橋。手前側が湯ヶ野温泉方面。
湯ヶ野温泉、河津川に面して数軒の旅館。
伊豆には文豪・川端康成ゆかりの宿が2軒ある。
一軒は、彼が「伊豆の踊り子」を執筆した湯ヶ島温泉湯本館(上の写真)である。
もう一軒が、ここ湯ヶ野温泉福田家だ。
彼は19歳のとき伊豆を旅行し、湯ヶ野温泉では福田家に3泊、ここで踊り子達と出会い、その実体験が後の出世作「伊豆の踊り子」のベースとなった。
この2軒が「日本秘湯を守る会」で繋がっていることも面白い。
福田家は、駐車場から河津川を跨ぐ橋を渡りきった正面にある。
川端康成が大正7年に泊まった部屋は、明治12年に建てられた本館の2階にあり、今も客室名「踊子の1」として使用されている。
本館内に入ると、歴史を感じさせる古びた木造の和みが至る所で感じられ、鹿の頭部分の剥製がかかっていたり、壁にポスターがベタベタ貼ってあったり、秘湯の宿の雰囲気が横溢している。
本館があるからには新館があるはずだが、何分にも立ち寄りなので、どうなっているかは窺い知れない。
住 所 |
静岡県賀茂郡河津町湯ヶ野236
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電 話 |
0558−35−7201 |
交通機関 |
東京(東名高速)→厚木IC(厚木・小田原道路)→小田原(国道135号線)→伊東→湯ヶ野(約4時間)
東名高速・沼津IC(国道1・136・414号線)→三島・修善寺→湯ヶ野温泉(約3時間)
伊豆急行線河津駅より東海天城線バスで約15分、湯ヶ野下車徒歩3分 |
施 設(日帰り)
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川端康成ゆかりの品展示室、ロビー、湯上り処(橋入口側にもある)
駐車場(約6台・・・橋手前に」あるが見つけるのが難しい) |
宿 泊 |
12室、(BT2、T3、BTなし5、内風呂付きBT2)
12,000円〜20,000円(館内に表示 2007年3月現在))
予約の際に電話で確認下さい。 |
泉 質 |
石膏泉 (源泉温度 62.5℃ 無色・無味・無臭) |
適応症 |
不記載(理由は「温泉の基礎知識ー温泉の効能」参照) |
入浴時間 |
10時〜16時 (6月〜9月は17時) 要予約 |
定休日 |
不定休(宿泊客が多い場合は使用不可の可能性有り) |
入浴料金 |
露天風呂+岩風呂か榧風呂何れかで700円(50分)
露天風呂+岩風呂+榧風呂全部で1,000円(60分)
玄関ロビー+資料室見学100円
玄関ロビー+資料室+伊豆の踊り子の部屋見学200円
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入浴施設 |
内風呂2 露天風呂1 (男女交代性 宿泊客は時間帯・混み具合によって何れも貸切可) |
浴室備品 |
シャンプー、ボデイソープ、ロッカー、ドライヤー |
観光スポット |
河津桜(早咲きで有名)、河津バガデル公園、かわづ花菖蒲園、かわづカーネンション見本園、河津七滝、今井浜海水浴場、浄蓮の滝、下田 |
お土産・食事 |
ワサビ、地元ニューサマーオレンジを使ったボデイソープ、シャンプー、天城の水
食事は温泉街入口で可能と思うが未確認 |
近くの温泉 |
峰・今井浜・河津浜・谷津・河津七滝・大滝・蓮台寺・河内・稲取・熱川・北川・天城湯ヶ島温泉郷、松崎・堂ヶ島等多数 |
河津町HP
河津温泉郷HP
福田家HP
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http://www.town.kawazu.shizuoka.jp/
http://www.kawazu-onsen.com/ryokan/index.html
http://www4.ocn.ne.jp/~hukudaya/
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雑記帳 |
「伊豆の踊り子」ゆかりの榧風呂。
「仄暗い湯殿の奥から、突然裸の女が走り出して来たかと思うと、脱衣場のとっぱなに川岸へ飛びおりそうな格好で立ち、両手を伸ばして何か叫んでいる。手拭もない真っ裸だ。それが踊り子だった。」
このとき、「私」が見ていた場所が榧風呂だった。 |
データは変更されている可能性もあります。お出かけ前にご確認ください。
福田家を訪れたとき、ちょうどどこかのテレビ局だろうか、撮影クルーが右往左往していてドタバタしていた。そんな状況なのに、出迎えてくれた女将(多分)は、とても親切。
「お風呂は榧(かや)風呂になさいますか、露天風呂ですか?」と丁寧に聞かれ、「榧風呂に入りに奈良から来ました」と答える。すると「それはそれは遠路から」とにっこり微笑み、即座に玄関横にある脱衣室・浴室をテキパキと片付け、湯加減を見てから「ごゆっくり入浴してください」と言いながら、貸切の札を表にした。
さすが老舗、と感動しながら浴室に入る。(入浴料金700円 入浴時間10時〜16時 要確認)
榧風呂は、階段を7,8段下った半地下にある。
周囲の壁には古いタイルが等間隔に張られ、床は伊豆石だろうか。明り取りは上部にあるだけでほの暗い。
浴槽の内部は、勿論、榧造りで2畳弱ほどの大きさで、3人入れば満員になる。。
風呂の縁と床以外は、明治12年の創業当時のままで、なんとも心が和む雰囲気だ。
小説の中で、「私」が対岸の共同浴場(現在は地元専用)から裸のままで駆け出してきた踊り子を見かけるシーン(下記雑記帳参照)があるが、このとき「私」が居たのが榧風呂だ。
既述の通り、風呂は半地下に設けられているが、これは動力のない明治時代、対岸の源泉から湯を引いてくるため、傾斜を設ける必要があったためだ。
泉質は、石膏泉(ナトリウム・マグネシウムー塩化物泉)、無色・透明・無臭でさらさらした感触だった。
ガイドブックによれば、福田家の風呂(3ヶ所)は、「場合によって加温の上、一部かけ流し、又は循環併用」のマークが付いている。
この日は、まだ縁から湯が溢れていなかったが、他の方のサイトによれば、どうやらこの風呂に限って言えば掛け流しのようだ。
「川端康成・伊豆の踊り子ゆかりの宿」「創業明治12年」「有名な榧風呂」といった予備知識があったためのハロー効果もあろうが、レトロな風情はやはり歴史を感じさせ、味わい深いものがあった。
雰囲気と広さからして、身内はともかく、他人がいない貸切風呂にして、ゆっくりと入浴を楽しみたい。
風呂は、この他に岩風呂(露天風呂に繋がる)があり、1000円を支払えば、両方とも入浴できる。(宿泊の場合、男女交代、時間によって貸切が可能だ。)
文豪・川端康成は旅の途中、湯ヶ野温泉福田家に3泊、ここで踊り子達と出会い、その実体験が後に彼の出世作「伊豆の踊り子」を生むこととなった。明治12年創業時の「榧(かや)風呂」はほぼ当時のままに保存され使用されている。
河津川を跨ぐ橋を渡った先が福田家。正面左の2階が川端康成が泊まった部屋。200円出すと見学できる。
温泉通に知られた「榧風呂」。ケロリン桶が置いてあった。
100年以上使われてきた榧の優しい肌ざわりの浴槽に身を委ね、古き明治時代に思いを馳せる。