平成19年9月18日(小学校の子どもたちに「大地のようす」のお話をしました。子どもたちは「やっぱり理科が好きなんだ」と思いました。)

 2学期の地学の準備で玄武洞に出かけたとき,S小学校の教頭先生から「6年生5クラスに地層の話をしていただけますか」という電話を受けました。予定表を見ると,空いているのは9月14日と18日だけでしたが,「なんとか調整します。この日には予定を入れないでください」とのことでした。
 帰宅してから学校に出かけ,5人の担任の先生に会いました。「地層」ということでしたが,教科書を見せてもらうと,以前の5年生の「地層」と6年生の「火山」が統合され,「大地のようす」となっていました。打ち合わせの最後に「配慮の必要なお子さんはおられませんか」と尋ねると,「5組のS君は視覚にハンディキャップがあるのですが,特別支援の先生がついていますから大丈夫です」ということでした。50年の経験で初めてのことですが,何か工夫したいなあと思いました。
 これまでに撮りためた写真を集め,パワーポイントで編集しました。しかし,9日から3日間は文部科学省の仕事で埼玉県へ,12日は奈良サイエンススポット執筆のため五條市の柿博物館へ,13日は奈良ロータリークラブ例会での卓話ということで,「何かの工夫」はとうとう前日の夜になってしまいました。

1 S小学校の子どもたち 2 昭和新山です 3 平成新山です 4 地層の模型です


工夫T 導入の部分の「理科は美しい自然を学ぶ教科です」と春夏秋冬の美しい景色を見せるところでは,写真の説明はやめ,ただ,これをじっくりと見せることにし,「どこからとなく梅の香りがただよってきて,ウグイスの声で春が始まります。初夏にはヒバリのさえずりが聞こえ,夏にはセミの声,雷,夕立の雨の音が騒がしく,秋になるとスズムシなどの虫の音がにぎやかです。」,そして,雪が積もった景色を見せながら「やんわりと積もった雪がすべての音を吸い込んでしまうのか,音が聞こえない以上に静まり返るひとときです」と多くを音声にたよる展開をすることにしました。
工夫U 大豆くらいの小石@,米粒くらいの小石A,細かい砂Bを集めてきました。1枚の板を準備し,下のほうから順に@,A,Bを木工ボンドで貼り付けました。目で見る地層の断面図ではなく,手で触れる地層の断面模型ができました。
 これらを持って学校に行きました。お話しするのは南館3階のコンピュータ室です。ビデオプロジェクターにパソコンを接続し,ちゃんと投影できるようにしてくれています。持って行ったUSBメモリーを接続し,ちゃんと映ることを確認して始まりを待ちました。
 2時間目,子どもたちがやってきました。久しぶりの小学生への話,担任の先生の日ごろのご指導のおかげでしょうか,子どもたちは一生懸命に話を聞いてくれました。S君は地層の断面模型に手を触れて勉強してくれました。玄武岩の標本,角張った礫や流れによって角が丸くなった礫に手を触れてもらいました。説明はゆっくりと情景が目に浮かぶようにと気をつけて話しました。断層の模型は5時間の授業終了後,S君にプレゼントしました。
 いよいよ,この後にそれぞれのクラスで「大地のようす」の授業が始まります。見せてもらった教科書には大きくカラフルな写真がありました。あんなすばらしい学級です。「先生,前に見せてもらったあの火山だね」と活発な学習が展開され,この美しい自然を守る心と力を伸ばしてくれることだろうと期待しています。
  


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