平成19年7月21日(奈良県教育振興会の会誌「やまと」に連載している「奈良サイエンススポット」に「宮滝のおう穴」を書きました。サブタイトルは「大自然のすごい力が実感できます」です。)

 7月号には宮滝のおう穴のことを書きました。今回の手紙の相手は,中学1年の憲司君,以下はその全文です。

 憲司君,先日はお手紙ありがとう。中学生活を楽しんでいる様子がよくわかりました。理科の教科書が2冊になったとのこと,第1分野と第2分野ですね。今頃だと,第2分野で川のはたらきの1つ・侵食を勉強したのではないでしょうか。
侵食といえば,この写真を見てください。なんだと思いますか。誰かが細工したみたいですね。実は,これが川の水のはたらきでできたんです。この穴の大きさ,直径がおよそ1メートルもあります。でも,この写真を撮るのにはちょっと失敗しました。それは,何か大きさの基準になるものを置いておかなかったことです。今,「物差しではなくてもいいから,何か,長さの基準になるものを傍に置いておけば良かったなあ」と反省しています。測定するということは理科の勉強ではとっても大切なことですからね。それはさておいて,今日はこの穴のことをお話しすることにします。理科の勉強の参考にしてください。
この写真を撮ったのは,吉野川の上流,宮滝の付近です。国道169号線の宮滝大橋のあたりから細い道を降りて行くと,吉野川の川原に出ます。このあたりは川の流れで削られた切り立った岩で,この岩の上に穴があいているのです。
この穴は,岩のくぼみに入った砂やれきが水の流れではげしく動き,この岩を削り取ってできたものなのです。穴が大きくなるにつれて,大きなれきが入り込み,この大きなれきが激しく動き,削り取っていったと思われます。このようにしてできた穴を「おう穴」と言います。昔は,「甌穴」と書きましたが,今ではこんな難しい漢字を使わなくなりました。またの名は「かめ穴」です。水をいれるかめ(n)のような穴という意味です。英語のポットホールも同じ意味です。水を入れるポットです。でも,このおう穴,今のように大きくなるまでにどのくらいかかったのでしょう。ちょっと想像がつかない長い時間ですね。
ひまができたら,一度来ませんか。おう穴の探検に行きましょう。また,この近くには吉野歴史資料館があり,ここで出土した縄文時代から奈良時代までの遺物や遺構が展示されています。宮滝は,飛鳥時代には持統天皇が30回以上も訪れ,奈良時代には吉野離宮が造営されたそうです。ですから,万葉集の短歌にも出てきます。理科だけではなく,国語や歴史の勉強にも面白いところなのです。
短歌の会に入っておられるおばあちゃんも誘ってきてはいかがですか。待っています。皆さんによろしく。

文末のスポットへの案内は
 近鉄「大和上市」から奈良交通バス「宮滝」下車すぐ。自家用車では,国道169号線を吉野川に沿って上流に走り,宮滝の交差点を右に入った吉野川の河原です。立ち入りは自由ですが,危険なところに近づかないように気をつけてください。
 吉野歴史資料館は,電話0746-32-1349,月曜日・火曜日と12月1日〜2月末日は休館です。

です。 


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