平成18年1月11日(天理市田井庄長寿会の総会に招かれて「ジイジの智恵・バアバの智恵」という題でお話ししました。)

 天理市田井庄長寿会の会長さんから,「1年が過ぎて,総会の時期になりました。みんなに元気が出るようなお話しをしていただけますか」という電話がかかって来ました。まだまだ,1月に始まり12月に終わるという会が多いようで,こうした会では1月に総会が開かれます。
 この日,お集まりになった皆さんに,自信をもって,今年もご活躍いただきたと,こんなお話しをさせていただきました。
 「1年が過ぎました。総会を開きます」
この1年という長さ,今はカレンダーを見れば,一目瞭然,「あの日の総会から1年だ」と分かります。でも,こんなものがない大昔,「これが1年だ」って気づいたのはどんな人だったのでしょう。私は,そんな大昔のことを想像してみました。
A:「サクラの花が咲いてから,次に咲くまで,気をつけていたらなあ,360日やったで」
B:「わしはな,裏山のモミジが紅葉するまでの間は南日か数えてたら,いつも大体360日やということが分かってん」
A:「大体,360日で同じ季節になるらしい。こんなことが繰り返されるみたいだ」
こうして,1年という時間を見つけたのはお年寄りに違いないと思います。何度も,春に巡り合って桜を見,何度も裏山の紅葉を見たからできた発見なのです。
 でも,きっちり360日というわけではありません。正確にいえば,365.24219日なのです。だから,閏年を作るという工夫をしてきました。こんな発見には,数多くの体験が必要です。年をとるということはたくさんの経験を積み重ねるということなのです。こうした発見の多くはお年寄りによってされたことではないでしょうか。
 良い種籾を選別するために,塩水を使う,これも,たくさんの体験から見いだされたことなのでしょう。「塩水は物を浮かせる力が大きい」こんな発見が全国に広がっていったのに違いありません。
 「ところで,塩水はものを浮かせる力が大きいようですが,砂糖水はどうなのでしょう」とお尋ねしてみたら,「それは駄目でしょう」というご意見がほとんどでした。
 ペットボトルに入れて行った塩水と砂糖水,卵を使って実験してみました。この場合は,砂糖水に浮き,塩水には沈みました。「反対ではないですか」という方もありましたから,なめて確認していただき,ものがたくさん溶けている重い液体は浮かせる力が大きいということをお話ししました。
 そのほかにもいろいろな例をあげてお話ししたのですが,最後まで,しっかりとお聞きいただいた皆さんに,こんなことをお話ししました。それは,こんな話です。
 私たちは,「親の話はしっかり聞く,学校では先生の話をしっかり聞く」ということを非常に厳しく言われて育ちました。そんなことがきちんとできるようになった私たちは,人の話に学び,多くの智恵を身につけました。
 でも,最近は,こうしたことができにくくなっている子どもたちが多いと聞きます。長い年月に身につけた大切なこと,これを次の時代をになう子どもたちに伝えて行きたいものです。
 ジイジとバアバの智恵を,次の世代に受け継いで行きたいものです。
 そして,ピタリと予定の時間に終えました。年寄りの話は長い」と言われないように時間をきっちりと守りながら,今年も多くの子どもたちに話しかけていきたいと思います。

※ 6つ目の写真は,死海の水に浮く体験ができた愛・地球博のヨルダン館の前に置かれた死海の塩の結晶です。

1 サクラの花が咲きました  2 きれいな紅葉です  3 夏から夏も1年です
4 砂糖水に浮く卵 5 塩水に沈む卵 6 死海の塩

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