平成14年10月11日(中学校の教科書,火成岩としては安山岩と花こう岩しか出ていません。やっぱり,深成岩には,花崗岩,閃緑岩,斑砺岩,火山岩にも流紋岩,安山岩,玄武岩がほしいなあと思います)

 実習用の火成岩の標本を配って,2種類に分けさせました。「どんなやり方でもいいよ」と言って,各グループがどんな分け方をしているかを聞いて廻りました。全体の色調,粒の大きさなどに目をつけて分類しているようでした。中には,「これは変な臭いがする,こちらのほうはそんな臭いがしない」そんな理由で分けてくれたグループもありました。それでもいいのです。それなりに,きちんとした理由のある分け方であればどんな分け方でもいいのです。でも,理科室にあるものは多かれ少なかれ,何かの臭いが染みついています。ひょっとすれば,45年間理科教師をしてきた私にも,生徒のきらいな臭いが染みついているかもしれないのです。やはり,適切な分類の手段とは言えません。
 そんなことを話しながら,火成岩は大きな結晶のそろっているものと,細かい石基の中に斑晶が存在しているのとに分けていきました。そうした作業の中で発見が生まれます。結晶の美しさに目を引かれる生徒が出てきます。
 「この白っぽい石は中学棟の玄関のところの石みたいだ」「この黒い石は本館の玄関のところに立っている『至誠力行』の石と同じではないですか」そんな声が聞こえてきます。『至誠力行』の石,それは奈良学園中学校・高等学校の校訓を彫り込んだ石です。こんな学習の中で,あらためて校訓を思い出す生徒もいるのです。
 それにしても,見出しに書いたように,やはり,色指数の小さなものから大きなものまで,二酸化珪素の含有量の多いものからすくないものまで,白っぽいものから黒っぽいものまで,岩石にはいろいろあるんだ,そんなことを考えさえたいのです。
 代表のものを1つだけ取り上げたのでは面白くないのです。学習が深まらないのです。比較するものがあってはじめて発見に結びつくのです。ピッチャーという単語とキャッチャーという単語,合わせて覚えるから覚えられるのです。「今年から一方だけでいいよ。やさしくなったでしょう」そんなわけにはいかないのです。新しい教科書を見ながら,そんなことを考えました。そして,火山岩3つと深成岩3つを覚えさせました。昭和39年,小学校から中学校に転勤してからずっとやってきた勉強です。そんなにたくさん覚えられない,そんなことはありません。3つだから面白い,それと同じ色指数のもの2組だから面白いと思うのです。
 3年生が持っている高校地学1Bの教科書には,この6種が出ています。花こう岩,せん緑岩,斑れい岩,そして火山岩は,流紋岩,安山岩,玄武岩と書かれています。これでいいのです。中学生だってそれくらいのことは分かるのです。玄武岩のことを話しながら,玄米や玄人から「玄」が黒いということを表している字であることを知り,岩石の理解につながるのです。やさしくしたから,量をへらしたから覚えやすいはずだ,そう簡単にはいかないと思うのです。

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