平成13年6月21日(兵庫県北淡町の野島断層に続いて岐阜県根尾谷断層を見学し,3年生の授業に使いました)

平成7年1月17日の兵庫県南部地震は大きな被害をもたらしました。岡山県に出かけたためにその3日前と2日前の両日,この地を通過し神戸市東灘区に住んでいた次男が被災した私にとって忘れられない地震です。まだまだ立ち直れない方も多いとは聞きますが,少なくとも外見的には元の町に戻ったように見えます。
この地震で生じた北淡町には,野島断層の一部を保存し,地震についての知識を深め,地震災害に対する注意をうながすための教材として活用するために,野島断層保存館が作られました。
この保存館は以前にも一度見学したのですが,3年生の地震の学習を前にして,もう一度学び,生徒に正しい知識を伝えたいと再度見学に出かけました。前にはなかったものとしてメモリアルハウスができていて,台所の被災状況が再現されていました。いただいてきたパンフレットを教材にして授業を展開し,撮ってきた断層の写真を170枚ほどカラープリンタでプリントし生徒に配布しました。この写真は生徒のノートをより現実的なものとし,地震災害の恐ろしさを体験できるノートを生み出したように思います。
教科書には,大きな断層の例として,岐阜県根尾谷断層の写真があります。私が学び,教えたどの教科書にも出ていた写真です。しかし,ここに行ったことはありません。授業では,「明治24の濃尾地震でこんなに大きな断層ができたのです」と話しながら,私自身は行ったことがなかったのです。そこで,梅雨の晴れ間の6月17日,ここに車を走らせました。
国指定特別天然記念物「根尾谷断層」は,100年あまりの歳月を経た今も明確に存在していました。まずは,基礎知識をと,平成3年濃尾地震100周年記念事業として開館された地震断層観察館を見学しました。そして,地震資料館,さらに平成11年に併設された地震体験館に入りました。
断層を真上から掘り下げたところを見学しました。垂直に断ち切られた6mにおよぶくいちがいの姿は,これを作り出した大自然の威力のすさまじさを感じさせるのに十分です。また,分かりやすい展示が私たちに十分に理解させるための手伝いをしてくれました。
併設された地震体験館では,シートベルトをして座席につきます。目には,立体視するための眼鏡をかけます。小学生を主役にした映画で明治24年の濃尾地震を体験させてくれました。「震度は4〜5に設定ししてあります」とのことでしたから,実際はもっともっとすごい揺れだったのでしょう。でも,上から物が落ちてくる,柱が倒れてくるといった立体的な映像は地震を十分に疑似体験させてくれました。
観察館の横には特別天然記念物「根尾谷断層」が続いています。窓を通して,今しがた見て来た断層の場所が分かります。そこからずっと続いている断層は道を横切っています。6メートルの段差,私が立っている道,その横の水田,後ろの堤防のように見えるところの上に道があります。盛り土の上の道のように見えますが,そうではありません。地表を切り裂き,ここから向こうのすべてを約6メートル持ち上げたのです。向こうには大きな家があります。森もあります。そのすべてが6m持ち上げられたのです。


この写真を使った授業では,「機会があれば,見学するように」と話しました。このほか,根尾村には有名なものとして薄墨桜があります。樹齢1500年という継体天皇が若い頃に植えられたというあの桜です。ことらのほうは有名で,春のシーズンには見に行く日とが多いのだそうですが,地震・断層保存館,地震体験館にも足を運んでほしいものだと思います。地震国・日本です。こうした体験がこれからの地震への対応に役立ち,多くの人たちのこうしたことへの理解がこれからの日本の地震学の発展につながると思うのです。

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