平成12年9月16日(郡山西幼稚園は,子どもたちの元気な声と生き生きした花がいっぱいでした)
郡山西幼稚園の荒井恵子園長さんから,「私の幼稚園の家庭教育学級でお話していただけませんか」との電話がありました。荒井園長さんは,私が学校教育課指導主事としてかかわった指定研究園。治道幼稚園での研究の中心的な役割をになっておられた先生です。その後ご無沙汰していましたから,先生の園を見せていただきたいという気持ちもあって,9月16日に出かけることをお約束しました。
さて,この朝は,すっきりと晴れ上がったすばらしい日になりました。矢田丘陵の東に位置する郡山西幼稚園には子どもたちの元気な声がいっぱいでした。そして,園庭には花がいっぱいでした。保育参観のあと,ホールで「自然と遊ぶ・自然に学ぶ」と題してお話をしました。
この頃の子どもたちの理科ばなれ・自然ばなれが気になります。そんな話を,中学生のかいたニワトリとトンボとアリの絵を見てもらいながらお話を進めました。また,多くの食べ物が生物からのものであること知らない子どもが多いという事実を調査結果からお話しました。
さて,ヒトは長い長い進化の歴史を通って単細胞の生物から,今のような複雑な生物に変わってきました。ヒトは,1個の精子と卵という単細胞からスタートし,鰓をもつ水中生物の時代をとおり,肺呼吸をする陸上生物として誕生します。それは,10カ月ほどの胎児の時代に繰り返す長い長い進化の歴史な</FONT>のです。これが,生物としての人生なのです。ヒトは,人類の歴史を繰り返して誕生するのです。
では,社会的な存在としてのヒトはどう生きているのでしょう。人類の歴史をひもといてみますと,狩猟経済の時代から農業生産の時代,商工業の時代を経て,今のような高度情報化の時代を迎えました。
さきの例と合わせて考えるならば,ヒトは,その人生の中で,こうしたことを繰り返して社会的な人間に成長しなければなりません。
狩猟経済の時代,それは,野原を駆けめぐり,花を摘み,トンボを追いかけ,木いちごをとって食べてみる生活です。農業生産の時代,それは,チューリップを植え,アサガオを育て,メダカを飼い,という生活です。商工業の時代は,ままごとを楽しみ,ナイフを使って竹トンボを作り,という生活です。こうした経験をしないで,突然,ファミコンに代表される高度情報に触れるのはどんなものでしょう。それは大切な体験です。これから必要になることがらです。でも,その前に,狩猟経済,農業生産,商工業の生活の疑似体験が必要なのです。
こんなお話を通して,自然とのふれあいの大切さ,それが,ヒトをより良く成長させるものであることをお話させていただきました。
そのあと,園長さんとこの幼稚園の保育についていろいろと伺いました。園で飼っているニワトリの卵を順番に持って帰らせる話の中で,「こんな卵いや。だって温かいもの」といった子どもの話を聞きました。卵といえば,冷蔵庫の中から取り出す冷たいものなのですから,当然のことなのでしょう。でも,生き物がくれたプレゼントとしての卵は温かいものなのです。彼は,そんなお話を園長さんから聞いて,うれしそうにお家に持って帰ったということでした。

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