月と腕輪

「これ、良かったら。」

そう言って、サンジはロビンから腕輪を貰った。

眠れない、と言うロビンの退屈凌ぎにポーカーの相手をし、思い掛けなく勝ってしまって、
その負け分の支払いに、とロビンは翌朝になって、サンジに二つ、色の違う腕輪を渡した。

「ちょっと見、お揃いじゃないみたいでしょ?」
「いいのかい?なんだか、」サンジは片手に一つづつ、それを持ってロビンに申し訳なさそうに
「遺跡から発掘して来た見たいな感じだけど」

「あら、そんなモノじゃないわ、ちゃんと売っていたモノよ。」
「どこから手に入れたかまでは知らないけどね。」

そう言って、ロビンは青い方の腕輪をサンジの腕に嵌めた。
「ほら、やっぱりあなた、蒼色が似合うわ。」そうして、サンジが持っていた翠の方をちらりと
見て、「そっちは、剣士さんにあげて頂戴。」と少し艶めいた、悪戯を楽しむような目つきで
サンジを見て笑う。


「マエトサキノアイテニアエル」
「ヒカッタライク。カエルトキハコトバヲトナエル。」

ロビンは、棒読みのようにそう言って、サンジの手首をなぞる様にその腕輪の表面を
指でなぞった。

「なんだい、それ?」「さあ、知らないわ。そう刻んであるのを読んだだけよ。」

サンジの手首に不思議な腕輪。
そして、その夜からゾロの腕にも、その腕輪が嵌められていた。


悪い事に、その腕輪はどうやっても外す事が出来ない。。

「こんなもんしてたら、色々とナミさんにからかわれるじゃねエか!!」
「くだらねえことを気にするんじゃねえよ.。」
ゾロはそんなサンジの心配を一蹴した.。
今更、自分達の関係を恥じる事などないとゾロは考えているからだ.
それに外せないのだから、いちいち騒ぐのも無駄という物だ。さして、邪魔にもならないのだから、
ずっとつけておけばいい。

「どうしてもイヤっつうんなら、斬ってやるぜ、この腕輪。」とゾロが言うと、
「折角、ロビンちゃんが俺にくれたものを粗末には出来ねエ」とサンジは言う。

そんな訳で、色違いの腕輪をつけたまま、数日が過ぎた。

夜、ゾロは見張り台の上で不寝番をする。
月がちょうど、頭上に昇ったころ、サンジが夜食を携えて見張り台に登って来た.。

二人の会話はもっぱら腕輪の事になる。
「サキトアトノアイテって、どういう事だろうな?」
「考えてもわからねエよ。あの女の考えてる事自体、からねえんだから.」

ふと、二人の会話が一瞬途切れた。

「来いよ。」

向かい合わせに膝を突き合わせるように座っていたサンジがゾロの言葉で隣ににじり寄ってくる。
サンジの顎に手を添え、浅く口付ける。

うっすらと重たげに開かれた瞼から、蒼い瞳がのぞく.

「みろ、でかい月だ。.」ゾロはサンジに囁いた.
サンジはその言葉に重たげに瞼を開いた。
「ああ、でかいな。」薄く笑って相槌を打つ。

その表情を見て、穏やかな気持が心の隅々にまで広がっていくのを感じた。


ゾロは件のサンジの腕輪が異様な輝きを放っているのを視界の端に捉えた。

すぐにそっちへ視線を移して、また自分の腕輪の変化も確認する。
まるで、クリスマスのイルミネーションのように埋めこまれている石が激しく発光し、
不規則に瞬いている。
サンジもすぐにそれに気がついた。

「なんだ?!」
「どうやったら、止まるんだ?」
ゾロは自分の腕輪を慌てて眺め回したが、スイッチらしいものは何もない.。
さっきまでの甘い時間は夢だったかと思うほどに.、サンジとゾロは豹変する。

「「なんとかしろ、」「エロ剣士!!」
         「アホコック!!」

二人は同時に叫んだ.。

次の瞬間、サンジの体は緑の閃光に、
     ゾロの体は蒼い閃光に包まれ、お互いの姿が見えなくなった.。

いや、自分も目がくらんだ。

確かにゴーイングメリー号の見張り台にいたはずだった。
激しい光に目を開く事が出来ないでいるだけのはずだった。

だが、二人は体が浮き上がり、激流に落ちた木の葉のように、何処かへ無理矢理運ばれていくような錯覚を感じた.。

(なんだ?)やがて、閉じた瞼にも刺激を感じられなくなった.。
どうやら、腕輪からの光がようやく治まった様だ.。

・ ・・ゾロは。ゆっくりと目を開いた。(→夢の行方.)   
・ ・・サンジは。ゆっくりと目を開いた。(→夢の足跡) 

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