第5話


部屋に着くなり、サンジはシャツのボタンを外した。

それを見たゾロが、
「・・・堂々と着替えんじゃねえ。」
サンジから目をそらし、眉間に皺を寄せた。

「女じゃあるまいし、なんでコソコソ着替えなきゃならねえんだ。」
サンジはゾロの非難に構うことなく、シャツを脱いだ。

「・・・サッサとそれを羽織れ。」
ゾロはベッドの側にある、ここへきて買ったサンジの着替えのシャツを指差した。
不自然なほど、あからさまに視線を明後日の方へ向けて。

「いつまでも、そんなカッコしてたら、・・・・犯りたくなっちまう。」

サンジはその言葉を聞いて吹き出した。
「ハッ良く言うぜ。10年前のお前は、俺の意志にかかわりなく、
押し倒して好き放題してたじゃねえか。」

ゾロが苦笑いして、つぶやいた。
「・・・生きてりゃ、そうしてたさ。」

サンジの顔から、潮が引くように笑顔が消える。

自分が自分と同じ場所に立っていたゾロを求めているように、
このゾロも、時間を共に重ねた未来の自分を未だに 求めてやまない事を知った。

ゾロは目線を合わせないで、言葉を続ける。
「・・・お前を抱いたら、離せなくなる。」
「腕輪が原因なら、それを外して壊すだろう。・・・・お前の腕ごと、たったっ斬ってもな。」
サンジは何も言えず、黙って乾いたシャツを羽織った。

何時の間にか、雨がやみ、月の光が部屋に差し込んでいる。
サンジが窓辺に歩みより、空を見上げると欠ける事のない月が
天空に静かに輝いている。

「・・・それとも、お前、俺に抱かれたくて、誘ってたのか?」
大人しく服を見に着けたサンジにゾロは視線を戻し、冗談めいた口調で
からかった。

「バカいってんじゃねえ。」


「エロ剣士」


突然、サンジの腕輪が激しく発光した。

「「!!」」

二人とも、目がくらむ。

「サンジ!!」ゾロは思わず、叫んだ。
その時が来た。言わなければならない事がある。
別れ際が来たら、必ず言いたかった。閃光に遮られて、サンジの姿は既に見えない。


ゾロの姿が見えない。
が、サンジに声だけがしっかりと届いた。

「きっと、未来は変えられる。お前に新しい未来を」
「共に夢をかなえる未来を生きてくれ。」

光の激流に飲みこまれながら、確かにサンジはその言葉を受け取った。
そして、また サンジの体は何処かへ運ばれていく。

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番外編