・ ・・・何をしていたのだろう。
・ ・・・とても、長い夢を見ていたような気がする。

・ ・・・どんな夢だったのだろう。

・ ・・・思い出せない。

二人の手首からは、何時の間にか腕輪が消えていた。

呆けたように、サンジもゾロも黙って月を見上げている。

「今、夢を見てたみてえだ。」
先に口を開いたのは、サンジだった。

「俺もだ。」
ゾロは相槌を打ち、一息ついて、

「おかしいな。なんか、こう・・・。いい夢だった様な気がするんだが・・・?」
ゾロは首を捻りつつ、

サンジも同じような仕草をしつつ、同時に、

「「覚えてねえ」」と同じ言葉を口にした。


腕輪が消え去った事さえ、二人が気がつかなかった。

「マエトサキノアイテニアエル」
だが、忘れた。

幼いサンジの見た夢の行方。
世界の頂点に立ったゾロが引き継いだサンジの夢の足跡。

満月と妖精が見せた不思議な出来事は ただ、ぼんやりと二人の心に
「ねむった時に見た夢」として、残っただけだった。


人生を変えた過去。
これから変えていく未来。

「・・・お前とは、もっと前から知り合ってたような気がする。」
サンジがポツリとつぶやいた。

「・・・たぶん、死ぬまで一緒にいるんだろうよ。」
ゾロも静かにささやいた。


大きな、大きな、満月が海の上を明るすぎるほど、照らしていた。

(終わり)