反戦ビラ配布事件 最高裁判決 :2008.4.17
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2004年にイラク戦争反対のビラを自衛隊宿舎に配布した人たち3名が逮捕、起訴された。
1審では無罪判決だったが、検察が控訴し控訴審では逆転有罪となった。
被告が上告したが11日に最高裁判決があり、予想通り上告棄却で有罪が確定した。

私はこの問題にずっとこだわっている。関係することを何回かこのHPにも書いてきた。

 『(読書記録)これが犯罪?「ビラ配りで逮捕」を考える(2005年8月18日)』
 『公務員の政治活動(2006年7月7日)』
 『政党ビラ配布 逆転有罪に怒り(2007年12月12日)』

ビラを郵便受けや新聞受けに入れていただけで「住居侵入」の罪になるなんておかしい。
最後の部分をクリックすると判決の主文が出てくるので一読してみてほしい。

住居侵入罪と言っているが、部屋の中に入り込んだわけではなく、共有スペースに
入っただけだ。それに、共有スペースに入るために鍵をこじ開けたわけでもないし、
フェンスを乗り越えて入ったわけでもない。敷地入り口には門扉もないのである。
では、なぜ、逮捕されたのか。

それは、自衛隊宿舎の管理者から住居侵入での被害届が出されていたからだ。
自衛隊宿舎は敷地や建物がいくつかに分けられていて複数部門の管理になるが、
当然、全部、自衛隊と防衛省の管理である。
(陸上自衛隊東立川駐屯地業務隊長、航空自衛隊第1補給処立川支処長、
 防衛庁契約本部ないし同庁技術研究本部第3研究所)

この敷地に入ってビラを配布したのは、逮捕されたグループだけだったのだろうか。
おそらく違うだろう。そうだとすると、自衛隊・防衛庁は、住居侵入全体を問題視したのでなく
反戦ビラを配布したグループだけを問題にしたことになる。
さらに、住居侵入をやめさせようと思えば、ビラの配布元に連絡すれば良いはずだ。
そうせずに、再度、ビラを配布したときに逮捕させることを目的として被害届を出したのだ。

このようにしてビラの内容で区別された住居侵入罪を、防衛省、警察、検察が推し進め
裁判所までもが認めたわけである。
これは国家権力の乱用である。


裁判所が間違った判断をした場合、国民が最低限すべきことは、最高裁判所裁判官の
国民審査で「×」印を付けることだ。
しかし、これがまた不十分な制度である。

国民審査を受けるのは、最高裁裁判官になって最初の衆議院選挙の際と、以降は10年を
越えて次の衆議院選挙の際ということになっている。

今回の裁判の裁判官は、
  今井功氏
  津野修氏
  中川了滋氏
の3人だが、3人とも2005年の衆議院選挙の際に、国民審査を受けている。
次に国民審査を受けるのは2015年以降になるが、最高裁判所の裁判官というのは
70歳定年なので、そのときには3人とも最高裁裁判官を辞めている。
これでは全く国民の意思を示すことができない。
衆議院選挙ごとに、全員の審査をできるようにすべきだ。

同じ事をやっていても、権力に楯突かない人は逮捕されず、権力に楯突く人は逮捕され、
起訴され、有罪判決を受ける。
こんな不平等に法が適用される国を法治国家と呼んでいいのだろうか。


 最高裁判決の主文