「まず、今回の件については、既に墓守協会は保険金の給与を決定しています。この決定はいかなる事態があろうと覆りませんので、それだけは安心していただいてよろしいです」

「ほ、ホントなのそれ!?」

 泡を食って驚いたのはイタラ。
 メイではなくこちらに聞いてくる。

「ああ、タカさん...墓守協会の管理長が言ってるんだ。間違いない」

「...いいのですか?」

 目を見開いておずおずと聞いてきたのはナガノ。
 素直に喜ぶべきところではないのかもしれないが、それにも増して信じられないと言う思いが表情のほとんどを占めている。

「それをどうこうする権限はありませんし、そう言うことの為に今ここにいるわけでもありません」
 淡々と、あらかじめ台詞が決まっていたかのようにはっきりと、けれどどこか棒読みで答える。
「なら何故、今こんなことをしているのかと言う疑問はおありでしょう」
 それはネクロマンサーの契約内容に深く関わってきます」

「契約?」

「ネクロマンサーは、死者の悔いを基に死者と契約します。その悔いを晴らすことを引き換えに、死者を呼び起こし契約を交わす。これが常套手段なのです。
 無論、無理に言うことを聞かせる手もありますが。
 今回わたしはタカ・セイビナ墓守協会管理主任の依頼により、ヤナシ・ウェルストンさんと契約を交わしました。
 契約内容は、タカさんとの交渉。内容はお教えできませんが、交渉は無事果たされ、タカさんはこの事件を事故と断定しました。つまりこの時点でそういった話は終了しているわけです。
 後は事後処理です。こちらが契約通りヤナシ・ウェルストンの悔いを果たせば契約内容は終了となります」

「父の...悔い?」

「ええ、遺言です」
 そこまで言って、メイは「時間です」 と呟いて杖を握り締めた。
 それから、杖の先端についた水晶玉の根付けに額をあて、呟く。
「<展開>」

 そして、呪文が流れる。


BackstageDrifters.