ファンを蹴り、テーブルを蹴り、その足で階段の一段目にまで飛ぶ。
狩人たちは、一瞬私を追いかけるのを躊躇した。
駆け上がる。二階、奥の部屋が自分の部屋、その向かいがトイレ。開ける。
「くそっ」
歯噛みする、
「残念だったな。てめえの荷物程度じゃ、俺たちの腹の足しにもなりゃしねえとよ」
嘲笑の声が複数、階段を上ってくる。
窓、ここからなら店の表側に降りられる。
はやる気持ちを抑えて窓枠を押す。
「窓から逃げようなんて思うんじゃねえぞ」
トーナーの嫌みったらしい声が徐々に近づいてくる。
「くそっくそっ! 鍵が!!」
焦るな、ただのネジ式の鍵だ。落ち着いてまわせばすぐに開く。
だが既に男たちの足音は、扉の前にまで来ていた。
いやだ、もう捕まりたくない。
ノックしてすぐに開ける音。バカ野郎、ノックすりゃいいってもんじゃないだろ。
「――!? いない!!」
「こっちだ、トーナー!!」
ようやく窓が開く。私は、トイレの小さな窓を潜り抜けるように外へと飛び出した。
はじめから、自分の部屋には入っていなかったのだ。
「お前たちが来た時点で、荷物が無事なんて思ってないさ」
ぼやいて、窓枠に手をかけて慎重に下の足場に体重を預ける。
足場は、あの硬い扉の屋根だった。
BackstageDrifters.