「ヤドカリの物語」の続き作品5です。

フムフムさん

波達がつくりだす泡が、ヤドカリの体にあたっては弾ける。あたっては弾ける。
朝焼けにおおわれた うす明るい海に次々と消えていく泡を見つめながら、だんだんと深く暗い方へと沈んで行きました。
あぁ 何て心地いいのだろう。
とても大きなふかふかの布団のような海に静かに身を任せ揺られているうち、ヤドカリは気持ちよくて、眠ってしまいました。
目が覚めたときが夜なのか朝なのか。でも 目にうつる海の中は ヤドカリが見たことのない美しいところでした。ここは何て たくさんの色であふれているのだろう。珊瑚のテーブルの上をゆらゆらと泳ぐ魚達も 波に揺れるイソギンチャクや不思議な花も 楽しくおどっているようです。
ヤドカリは久しぶりに感じる子供のようにワクワクした気持ちにおされて、奥へ 奥へとはずむ様に進んで行きます。かくれんぼをしているタコやクマノミ。海の中の星達にも出会いました。
銀色に光り輝く小さな魚達の大群が大きな魚のようになって押し寄せると、ヤドカリの体はふわりと海の底をただよいました。
すると高い上の方に 太陽の光が差し込むところが見えました。ヤドカリは太陽の方に爪をのばすと、海の外で見た星空を思い出して、ヒトデに聞きました。
「何のために 生きるの?」
「ヒトデくんは星なの?夜の星は 海に降って 海で生きて、夜になると空にもどるの?」
するとヒトデはヤドカリに聞きました。
「じゃあ、ヤドカリくんは昼が終わると陸に降りてくるお日様なの?」
「えっ」
ヤドカリは 首をかしげました。
「ヤドカリくんは 上から見るとお日様にそっくりだよ。」
と ヒトデはカメの背中にのって言いました。
「ぼくは、星になれないし、ヤドカリくんも お日様にはなれないよ。」
「わたしも山にはなれないしな。」
とヒトデのあとに カメも言いました。
「でも それでいい。」
「でも それでいい。」
ローカンは少しゆったりとした やさしさを取り戻したようにヤドカリは思いました。
「でも それでいい。」
ヤドカリは つぶやきました。

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