「ヤドカリの物語」 のつづき作品1です。

O.I.

 ヤドカリは群れで渦を巻くイワシにたずねました。
「何のために、生きるの?」

 すると、そこにマグロがやってきて、イワシは海の上を飛び跳ねながら答えました。
「逃げるためだよ。いのちを守るためだよ!」
 天敵から逃れようとするイワシにそれ以上は聞けませんでした。

 光の届かない海の底でヤドカリはチョウチンアンコウに出会いました。
「何のために、生きるの?」
 ヤドカリの問いかけに、チョウチンアンコウは、ちらりとヤドカリの方を見ましたが、何も答えずに暗い海へと戻っていきました。
 その姿は、悠々としていて、ひとりぼっちなのに、どこかしら楽しげにも見えました。

 砂浜に戻り、ヤドカリは、再び空を見上げます。そして、もう一度つぶやいてみます。
「僕は、何のために生きるのだろう?」
 答えは相変わらずわかりませんが、ヤドカリはローカンを脱いでみました。
 今までに感じたことのない体の一部に涼しさを感じて、ヤドカリは、一筋の涙を流しました。

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