ヤドカリの物語

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文 石歌庵・絵 はまなゆみ

小さな島の、小さないそで、ヤドカリが、なやんでおりました。
苦しい。
歩くのが、苦しい。
生きるのが、つらい。
何のために 生きるのだろう。
小さいころは、あんなに楽しかったのに。
ローカンは、やさしく ゆったりしていたのに。
今、ローカンは がんこで きゅうくつだ。……

ヤドカリは、カメノテのところに行って 聞きました。
「何のために 生きるの?」
カメノテは、言いました。
「答えは、高い空にある」

ヤドカリは、空を 見上げました。
空は、青く 高く きれいでしたが、何も教えてくれません。
それでも ヤドカリは、いそにねころんで 見つづけました。
雲がわき、雨がふりました。
風がふき、あらしになりました。
それでも ヤドカリは、みじろぎもせず おりました。

あらしが しずまり、空が 赤くやけました。
明星が、西の空に かがやきました。
それを合図に、星達が ひとつ ひとつと
目をさましてゆきました。
やがて、漆黒のキャンバスで、いく万 いく億の星が またたきを 始めました。
「あの星の ひとつひとつが お日様なのさ」
カメノテも いっしょに 夜空を 見上げてくれていたのでした。
「えっ」
ヤドカリは その時、何か分かったような 気がしました。
でも それは、言葉になる前に 夜空にとけてゆきました。
星は、ヤドカリに 無数の光を ふらせました。
ヤドカリは、なみだを 砂の上に こぼしました。

次の日、ヤドカリは、シオマネキに 聞きました。
「何のために 生きるの?」
シオマネキは、言いました。
「答えは、深い海にある」
ヤドカリは海にしずんでゆきました。

つづきはあなたが作ってください。

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