温泉更新制を検討
産経新聞(朝) 2006.8.9
湯の街 ビクビク? 環境省 「10年以上」成分調査義務付けを検討
温泉認定のための泉質は、湧出時に測定した限りで、その後、30年、40年経過しても有効だ。
本来、温泉は生き物、湧出量・温度・色・臭い・成分などは、経時によって変化することが稀ではない。

今回、そこらの課題を解決する手始めとして、環境省では、温泉の更新制を検討している様だ。

しかしながら、効能を謳うのであれが、源泉の分析でなくて、実際に浸かる風呂で測定しなければならない。
循環・滅菌・加水・加温などがあれば(温泉の7割以上がこれの全部・一部を実施)、効能が低下したり・無効が十分考えられる。

しかし、今回の検討では、「浴槽で分析すると数が膨大で、分析が追いつかない恐れがある」として、これを避けるようだ。
だが、これは詭弁、分析にそんなに時間はかからない。
温泉の監督は、環境省から委嘱された都道府県だから、地場観光産業の盛衰に関わることなので、そこまで立ち入れないのが本音だろう。

当サイトでは、かねてから温泉に関する行政の曖昧な、あるいは甘い管理に疑問を呈してきた。
例えば、温泉の効能、そのベースとなる温泉の分析などである。


医薬品の場合、一つの医薬品、例えば高血圧の治療薬を厚生省に申請・認可までには、10年、300〜500億の研究開発費用を要する。
しかも巨額な費用を投下したが、途中で有効性・安全性などの点からドロップアウトする開発品の方が遥かに多い。

健康食品も、特定のものを除き、効能を謳うことが禁じられている。

一方、温泉に関しては、元々は、医薬品と同じ旧厚生省が管轄、現在は環境省が所管するが、温泉の効能に関しては放置状態である。

マスコミや温泉ガイドブックでも同様である。例えば、某温泉ガイドブックで、温泉の効能を拾ってみると「高血圧・糖尿病・動脈硬化・痛風・肥満症・神経痛・筋肉痛・やけど・慢性皮膚病・関節痛・胃腸病・婦人病・リウマチ・痔疾・・・」などの記載がある。
温泉法では、温泉とは25度以上か規定成分が一定量以上含まれると定義されているが、成分分析は温泉施設を始めるとき、源泉で1回行うことが義務づけられているだけ。
環境省は「10年ごとの見直しが妥当」との通知は出しているが、強制力はない。

このため、再分析していない温泉が多く、平成16年に環境省が実施した調査では、掲示してある成分分析日からの期間は、5年未満が42%あるものの、10年以上20年未満が21%、20年以上も15%と全体の3分の1以上が10年以上経過していた。


有名温泉地を多く抱える静岡県は、定期分析の義務化を環境省に要望してきた。
県健康福祉部は「根拠が国の通知だけでは再分析の強い指導ができず、利用者に正しい情報が伝えられていない恐れがある」と話す。

同省は今年6月、有識者による懇談会を設置し、定期的な成分分析を義務づける方向で検討を進めている。
中央温泉研究所の甘露寺泰雄所長は、20年以上経過した成分分析表は掲示しないというドイツの例を参考に「再分析の期間は10年が適当」という。

ここで問題になるのはが、再分析で「温泉」でなくなった場合だ。
温泉でなくなったのに温泉と表示すれば、公正取引委員会の景品表示法に抵触する可能性がある。
長年「温泉」を売りに営業してきた施設にとって影響が大きい。

どのくらいの施設が温泉でなくなるかは「不明」(環境j省)。懇談会では「温泉以外の魅力で売っていくしかない」という声がある一方、「そう簡単にもいかない」という指摘も。

また、源泉と浴槽のどちらで成分分析するかの問題もある。
源泉から浴槽まで引く間に湯の成分が変化するケースもある。(それよりも加水・加温・循環・滅菌などが問題・・当サイト管理者注記)

ただ、浴槽で分析すると数が膨大で、分析が追いつかない恐れがある。環境省では課題の検討を続け、今年中をめどに結論を出す予定だ。

温泉を巡っては、平成16年に発覚した長野県の白骨温泉の入浴剤混入問題を契機に省令が改正され、加水や加温、入浴剤混入の有無などを表示する義務が新たに課されている。
義務付けられている成分表表示
温泉施設を開業するときに源泉を分析する。
効能を謳うのなら、実際に浸かる風呂の湯を分析すべきだ。(ここは目の前の源泉から直接流している)