出産までの経緯

1999年6月12日、朝に少し出血がありました。
その日は近場で一泊旅行の予定だったので、「向こうでなにかあったら大変だ」と、
朝一番に通っている産婦人科へ行きました。
大したことなければいいなあと思っていましたが、切迫早産で絶対安静、即入院となりました。
もちろん旅行はとりやめです。

入院中は、トイレ洗面付きの部屋で、食事もベッドでとらなければいけません。
お腹がときどき張ることと少しの出血があること以外は症状もないので、一日寝ていなければならないことが
とても苦痛でした。食事はとても豪華でおいしかったけど・・・。
一日に何度かモニター(よく分娩時に使用する赤ちゃんの心拍を測定する機械)をつけ、お腹の張りを調べます。
赤ちゃんが動くと少し張ってしまうのですが、ひなこはとても元気で、お腹を蹴ったりぐるぐる回転したりするので
すぐお腹がカチカチに張ってきます。
張り止めの点滴を続け、安静にしていると少しずつ張りも出血もおさまりました。
点滴も飲み薬にかわり、「明日ぐらいには退院できそう」というところまできたのですが、その翌朝、異変があったのです。

6月23日朝5時半頃、何か変な感じがして目が覚めてトイレにいってみると、びっくりするほどの大量出血があり、
生理痛のような鈍い痛みが来ました。
あわてて看護婦さんを呼んで、モニターをつけ張り止めの点滴をしましたが、出血は続きます。
痛みも少しずつ強くなり、お腹の張りも痛みと同じタイミングで強くなります。
当直の先生がやってきて、内診をしてもらったところ、子宮口がほぼ全開になっていました。出産がはじまっていたのです。
まだ29週でした。今ここで生まれても、個人病院のため設備が整っていません。
救急車で県立病院に搬送されることになりました。(もちろん運ばれたときはどこの病院だか全くわかりませんでしたが・・・。)

いきなりのことで呼吸法もまだよくわからず、酸欠状態(?)で手がしびれていました。
「いきんじゃダメよ」と言われても、勝手に力が入ってしまうのを押さえようとするのですが、それがなかなかうまくいかず、
どうしようどうしようとばかり考えていました。
病院に着いてから先生がやってきて、緊急帝王切開の手術で赤ちゃんを出そうということになりました。
出産ははじまっているけど、赤ちゃんはまだ出てくる準備ができていない。
幸い破水もせず、胎盤もはがれていないから手術は可能です。
お腹が小さいからもしかしたら1000グラムもないかもしれないけど、このままだと赤ちゃんにかなりのストレスがかかり続けて
危ないから・・・ということでした。
ばたばたと手術着に着替えさせられ、血液を採って検査し、いろいろな処置をした後にまだ手術の同意書にサインをする・・・。
手がふるえてうまく書けなくてイライラしながら、もう「早く出してやってー!!」と叫びたくなりました。

午前9時頃、やっと手術が始まりました。
麻酔が効いてくると、痛みもなにも感じません。さわられている感覚だけしか感じないので、今どういう状況なのか全くわからず
少し不安でした。
そして30分ほどたったころ、小さな小さな泣き声が聞こえました。
思わずそちらを見ると、助産婦さんがタオルにくるんだ赤ちゃんを抱いてやってきます。
「お嬢ちゃんですよ。」
午前9時31分、身長36センチ、体重1211グラムでその子は産まれました。
一瞬ピンク色をした手がピクッと動くのが見えた瞬間、無事産まれたことの安堵感と赤ちゃんのあまりの小ささへの驚きとで、
思わず涙が止まりませんでした。