体の痛みで失神したのではなく、S−1は、血が流れすぎたことによって、
意識を失っていた。
それでも、普通の人間なら輸血したり、止血剤を投与されないと
死ぬ程の重態になりかねない状態でも、クローンの肉体は
自己修復するように出来ている。

「驚いたな。」

その声に、目を開くと、壁も、床も赤い色の部屋だった。

焦点がなかなか合わずに、s−1は横たわったままで声の主を見上げる。
唇がいやに濡れて気味の悪い笑みを浮かべたクロが、自分を
卑しげな動物を見るような目つきで見下ろしていた。

「せっかく、舐めて治してやろうと思ったのに、」
「傷が見る見るうちに塞がっていった。」


クロは、S−1の両手も、両足も、鎖で繋いだ。
食事も、まるで、犬に餌をやるように、銀色の皿に残飯を山盛りにした物を、
目の前に置くだけだ。

身につけるモノも一切与えられない。

(こんなの、)動物と同じ扱いじゃないか。とS−1は腹が立った。

そんな扱いをされて、いくら腹が減ろうと絶対にそんな食事には
手をつけなかった。
そんな扱いをするくせに、クロは自分と交尾をしようとする。

「なぜ、餌を食わない。」と猫撫で声で言う、その目つきは声とは裏腹に
残虐な光りとギラついた性欲を宿していた。

「俺は動物じゃない」とS−1は怯えもせずに、吐き捨てる様に言い放った。

「動物じゃない?じゃあなんだ」とクロは面白そうにs−1に聞き返す。
「お前は、自分が人間だとでも思っているのか。」

クロにそう聞き返されて、S−1は唇を噛んだ。
人間に決っているのに、人間だ、と胸を張って言い返していいのかどうか、
咄嗟に迷った。

宝石を模して作られたものは宝石ではない。
故に、人間を模して作られたものは。

人間じゃない。

(でも、)とS−1はそんな迷いを払いのける。
人間である、と言う確固たる自信が無いからこそ、人間としての自覚を
人間以上に持つべきだ、と考えなおした。

「俺は、普通の人間だ。」とクロにキッパリとした口調で言い返す。
「俺を獣扱いするっていうなら、あんたも人間じゃないって事になる。」

「なんだと。」とクロはあれだけ痛めつけたのに、全く自分に屈しないS−1の
生意気さに少々、ペースを乱されながらも、眉を寄せ、薄笑いを浮かべる。

「猫は猫としか交尾しない。どんなに下等な生き物だって、」
「自分と同じ種としか交尾しないじゃないか。」
「俺と交尾するつもりなら、俺を人間として扱え。」

S−1が大真面目にそう言うと、クロは
「交尾だと。」とS−1の言葉をなぞって、すぐに大声で笑い出した。

「面白い奴だ。」
「お前は、俺の部下に抱かれていた時も、交尾だと思っていたのか。」

そう聞かれて、S−1は躊躇せずに「そうだ。」と答えた。
「交尾っていう排泄行為だ。俺はメスじゃないんだから。」

「お前は、バカなのか、利口なのかわからん奴だ。」とクロはS−1の言葉を
聞いてまた、せせら笑った。

「だが、まだ躾が足りない事がよ〜く、判った。」
「俺がお前を動物扱いしようが、人間扱いしようが、お前に説教される覚えはない。」
「枠に、嵌らない事をやるのが、高等な生物の証なんだよ。」

そういうと、S−1の頭を押さえつけ、床に這いつくばらせた。
スピードのある動きに対応できる肉体を持つクロは、当然、自分の体の
筋肉をその為に鍛え上げてある。したがって、腕力も鎖で動きを拘束されたS−1を
服従させるのは それこそ、「赤子の手を捻り上げるよりも」簡単な事だった。

「俺はお前の主人だ。俺に従順になって、尻尾のかわりにケツをふるまで、」
「しっかり躾てやる。」とS−1の耳元でゾっとするほど冷たく、低い声で囁いた。





「誰も躾てくれ、なんて頼んでねえ!」とS−1は自分の体に
伸しかかっているクロを跳ね除けようと暴れた。

「お前は、自分が裸だってことも恥かしいとは思わんのか。」とクロは
S−1の臀部を掌で強く叩く。頬を張られたような音が立った。

「恥かしいっていったら、服を着せてくれるのか、そんな気も無いくせに」
とS−1は噛み付く様にクロを睨んでそう答える。

押さえつけるのは簡単でも、S−1の暴れ方は今まで嬲ってきた「玩具」とは
比べ物にならない。拘束されていても、膝頭や、肘など、動かせる部分を巧みに使って
本気でクロに挑みかかってくる。
野良犬どころか、野生の猛獣の躾のつもりでやらないと

(噛みつかれて痛い目をみるな。)とクロは考えた。
それはそれで、慣れた時の楽しみが増えると言う物だ。

「随分、綺麗なピアスをつけてるじゃないか。」と押さえこんで、
S−1が息を整える瞬間、クロは意地悪く、s−1の左耳に装着してある、
翡翠らしいピアスを見てそう言った。

「大人しくしないと、耳ごと、これを引き千切るぞ。」

そう言った途端、S−1は怯えた様に動かなくなった。

このピアスは、「産まれて」すぐにR−1がつけてくれたものだ。
R−1の髪と瞳の色と同じ小さな宝珠。

肉体以外何も持っていないS−1にとって、かけがえのない、たった一つの宝物だ。
耳なんか千切られても構わないが、このピアスだけは絶対になにがあっても
手放したくない。

「ほお、大人しくなったな。そんなに大事なモノか。」とクロは嬲るように
そういって、舌先でそのピアスをペロリと舐めた。

「これからナマイキな事を言ったらこれを海に捨ててやる。」

そう冷ややかに言い放つと、うつ伏せにしたまま、S−1の腰を高く持ち上げた。
「まだ、お前の体をゆっくり見てなかったからな。すみずみまで、見てやろう。」

不思議な肉体だ、とまず、クロは思った。
あきらかに男の外観なのだが、皮膚の質感が若い女よりもずっと柔らかで
キメが細かい。触れた事など無いが、「赤ん坊」の肌に近いような気がする。

白いといっても、不健康な色ではなく、桃色のような肌あいの色で、
普通、黒子の一つや二つはどんなに美しい女でもあるものなのに、
全身、それこそ、尻の穴の側まで、性器の裏側まで見ても、それらしい痣も、
黒子も、少年の頃に怪我をした跡なども、男なら必ずどこかにある筈なのに、
それすらもない。

クロはS−1の柔らかな性器を掌に握り込んだ。
そのまま、弄ぶとちゃんと興奮の兆候を見せる。

「交尾、って言う割にもう、息が上がってるのか。」とクロは
体の下で小さく喘ぎ始めたS−1をあざ笑った。

「体の方の躾は良く出来てるようだな。」と言い、もう片方の手で
小さな砂糖菓子のようなものをポケットから摘み出した。

大きさは、普通の飴玉よりも小さい。
薄桃色のそれは、ゴツゴツと突起が突き出ている。

「オヤツをやるよ。」とクロはその飴を一旦自分の口元に寄せ、
唾液で十分に濡らした。

「オヤツ・・・?」とS−1は切れ切れの息の中から怪訝な声を出した。

「ああ、コンペイトーとか言うらしい。」とクロはそう可笑しそうに答えて、
唾液が滴り落ちるほどに湿らせたその「コンペイトー」をS−1に見せた。

見せながらも、クロは片手でずっとS−1の性器を嬲るように握っている。
先端をくすぐったり、クビレを掻いたりして、S−1の体の反応を
観察し続けていた。

喘ぎを堪えようとするS−1の、鼻にかかった吐息でクロは興奮してくる。
だが、このまま強姦に及べば、部下達の躾となんら変わらない。

クロの手から逃れようと体を捩るS−1の目論みに乗るように、
一旦、クロはS−1を解放してやる。

これも、「もう少しで射精出来るのに、」と言うところまで追い上げておいて、と
計算づくだった。

多分、気持ちはまだクロに反抗するつもりはあっても、S−1の体は
クロからの愛撫を強請ってくる。
そう思って、クロはわざと勃起したそこには触れずに、いやらしげな手つきで
S−1の腹や足の付け根を指でなぞる。

「・・ゥ・・ッ。」
S−1は苦痛に耐えるような顔をしていた。

クロは、両手で無理やり、S−1の臀部を割開く。
さっきも十分に見たのだが、窄まったままの小さな穴の周りは、
たくさんの男達に嬲られた跡など一切残っていなくて、

今日初めて、クロを受け入れるかのように初々しい桃色だった。

そこへ、じっとりと湿った「オヤツ」を指先で押し当てる。
音も無く、その「オヤツ」はS−1の体内へ飲み込まれる。

下半身に違和感を感じたS−1が腹に力を入れるとそれが押し戻されてくる。
それを無理矢理、クロはS−1の体の奥へ、と指が届くだけの場所へと捻じ込んだ。
そして、乱暴にS−1の体を持ち上げ、揺さ振ってやる。

「・・ッァアッ・・・」
S−1の体を一番、苦しく、熱くさせる場所でそれは狭い場所なのに、
その肉の襞の中で転がるようで、内側から猛烈刺激をS−1に与える。
堪え切れずに、S−1の口から悲鳴のような嬌声が漏れた。

「美味いか?」とクロは悶えはじめたS−1に尋ねた。
「動物が発情する成分がたっぷり入っているオヤツだ。」

そのS−1の様をクロは面白そうに体を離して眺める。

痛みを感じるほど、S−1の性器は大きく肥大する。
痛いと熱と、どうにかなりそうな衝動がS−1の理性を押し潰す。

クロが何を喋っていようと、なにをしようとどうでも良かった。
今まで、自分に施されていた「交尾」とは比べ物にならないほど、
メチャクチャにされていても、その痛みと熱と、体が溶けそうな嫌な感覚から
逃れられる為にそれが必要なら、受け入れるしかない。

クロの白濁した体液と、「オヤツ」の溶けた汁がS−1の体の中で混じった。
自分の体力以上の性欲が沸き上がり、
それがS−1の体を強引に煽って、S−1を苦しめる。
声を出すことで、苦痛を逃しても、体が戦慄くのは止められない。
それは、性的快感などとは全く違って、拷問以外の何物でもなかった。

誰が、なんの為に、という事ももう考えられなくて、ただ、
この時間が早く過ぎる事を呆然と思うだけだった。

そうするうちに、S−1は胃が引きつるような激痛を感じ、
唐突に、床にむかって、胃袋から生ぬるい胃液を吐き出してしまった。

「なんだ、そんな粗相をして」と
汗だくになっていたクロは、繋がったままでS−1の様子を見、そう溜息をついた。

もう、指1本、動かせないのに、S−1はまだ意識がうっすらと残っている。
クロは、最後の一滴まで体液をS−1の狭い穴の中へ注ぎ込み終わると、

ズルリと自分の性器を引き抜いた。

息を乱して、目の焦点を定まらないままで横たわっているS−1の表情は
クロの目から見ると、恍惚としているように見えた。

汗ばんで、艶やかに濡れているS−1を抱き起こしても、もう、一切抵抗はしない。
全てを預けきっているように、クロの腕の中に収まる。
まだ、行為に疲れ切った、恍惚としたボンヤリした表情のままだ。

すると、唐突にクロの胸の中におかしな感情が走った。
慣れない動物が、自分だけに慣れた、
「特別な存在」だと認められた、すると、誰にでも尻尾を振る者には
持ち得ない感情だと自己分析して、クロはS−1を抱き上げた。

きっと、海賊に捕えられてまで今日まで、ぐっすりと眠った事などなかっただろう。
ヨゴレなど綺麗に落としてやり、温かい寝床で休ませようと気まぐれに
優しくしてやりたくなったのだ。

1回や、2回の遊戯で壊れてもらっては困る。
だから、今は十分に体を休めて体力を回復するのを見守ってやろう。
クロはただ、そんな気持ちでS−1を自分だけが使う船長用の浴室に
連れていき、自分が汚しきった体を丁寧に、

また、同じ遊びを楽しみたいがために、丁寧に磨き上げた。




トップページ    次のページ