「ゾロさん、この人はあなたの仲間なんですか?」
コビーの質問にゾロは 咄嗟になんと答えていいのか判らず、沈黙せざるを得なかった。
「この子は、本当に私の妹よ。」
まさか、139歳の女だ、と言うこともこれはくれはの見栄で隠している。
女は灰になるまで女なのだ。
若い男を誘惑し、思うが侭に操る事をくれはは ドサクサ紛れに楽しんでいる。
「名前は?」とコビーは もじもじしながら、直接サンジに聞けば言いのに
くれはに間接的に聞く。
サンジだ、と言えば男とばれる。
「カル・・・、うん、そう、カール、カール、」とサンジが急に思いついた。
ゾロの前で女の言葉を使うのは 汗が全身に噴出すほど嫌だ。
だが、ゾロと旧知らしい男達の前で、
「こいつ、本当は男なんだけど、女に変身してるんだ。」と本当のことを言われるよりは
まし、と腹を括って、コビーに
「そう、私、カールっていうの。」とやや引きつった笑顔を向けた。
(カールだと?どっからそんな名前を思いつくんだ、こいつ)とゾロがちら、とサンジの顔を見る。
しかし、肌を重ねている時以外は滅多に 笑顔など見せない、顰め面ばかりの
無愛想な男がここまでの美少女になるとは 予想していなかった。
髪も瞳も肌も 普段と全く変わりないし、顔立ちもやや幼くなっただけなのだが。
声か?体型か?とゾロはそのまま ジロジロとサンジを見る。
その視線を受け、いつもなら 「なんだ、やんのか、てめえ。」といきり立ってくるのだが、
サンジはパッと 顔を赤らめて横を向いてしまった。
(ジロジロ見るんじゃねえ。)
女の姿をゾロに見られること自体、恥かしい。
心の中はいつものサンジなのだから、男の姿のままで女装しているところを見られているのと
同じ気分なのだ。
どんなに 滑稽な姿に映っているのか、と思うと恥かしいと言うより
後で馬鹿にされることが判っているのが悔しくてならない。
まず、ここで本当のことを言わないでいてくれる事に関して
感謝しつつも、それも なんだか無理に気を使ってくれていることが素直に喜べない。
どうして欲しいのか、自分でもサッパリ判らない状態で、
不躾にゾロがジロジロ見るのが 腹が立つやら、恥かしいやら、
イライラするやら、サンジはとにかく 自分の感情が整理できるまでなるべく口を利きたくない。
名前を聞かれて、本当は「ビビです」と言いたかった。
が、さすがにアラバスタの王女と同姓同名は不味い、とすぐに考え直し、
常にその傍らにいる、「超カルガモ」の名前をもじったのだ。
横を向いてしまったサンジに、コビーも、ヘルメッポもじっと視線を注いでいる。
「私の妹、可愛いでしょう?」とくれはがやや皮肉っぽい口調で二人に言うと、
「いいえ、あの、シルバーさんも充分美しいですよっ。」とヘルメッポが慌てて言い繕う。
「とにかく、ワポルを失脚させることが出来たら、私か、妹の」
「接吻をプレゼントするわ♪」とくれはは にっこり、と28歳の華やかな笑みを浮かべた。
「麻薬を使ってるって、ここの女たちに使ってるって事?」と
くれはは いつもの口調と違った言葉遣いでヘルメッポに尋ねる。
「おそらく。ただ、大部屋の女達に限って、のことなんですが。」
強い姦淫作用と幻覚、幻聴、浮遊感、高揚感などを感じ、
女達は男に抱かれないと気が狂うほどの苦しみを覚えるのだ、と言う。
だが、コビーもヘルメッポも女達が一体どこで その薬を与えられているのか
その現場も、その現物も、まだ見つけられていない、と言う。
まして、薬を飲まされるとか、食べ物に混ぜられているとか、そう言う可能性もない、と言う。
個室を与えられているのは、そういう自我をなくしての行為を強いる必要のないもの、
例えば 気位の高そうな美女を無理矢理強姦する、
あるいは そう言う女に虐げられて歓ぶ嗜好の客の為のニーズに応えるために
遭えて 自我を拘束しないのだ。
「じゃあ、なにかい、あたしゃ変態専用かい」とくれははうっかりもとの口調で激昂した。
その口調にヘルメッポとコビーの顔が一瞬 強張った。
が、すぐにくれはは それに気がつき、「酷いわ!」と顔を両手で覆う。もちろん、嘘泣きだ。
ここで、若い男に引かれたら 女として辛い。
(いくら、若くて可愛くても、中身は粗暴な男なんだよ。負けてたまるか)と
サンジに対して妙な対抗意識が芽生えていた。
「じゃあ、一体どうやって麻薬を女に使ってるんだ。」とゾロがコビーの意見を尋ねた。
「それがわからないから、調べてるんです。」と、
まだ なんの手がかりも掴んでいない事を溜息混じりに答える。
「個室の女になくて、大部屋の女に与えられてるものなんて、ないし。」とコビーが言えば、
「上でも、別に飲み物は客に出す物と同じだし、注射器を使ったり、
煙草を吸わせたりしてるわけじゃないんだ。」とヘルメッポも意見を述べる。
「個室の女になくて、大部屋の女に与えられているもの・・・?。」とサンジは腕組をした。
自分はここに来て、なにもやってない。
正直、今目の前にいる誰よりも状況がわかっていない。
ただ、ワポルのものになるか、売られるか、どちらかだろう、と自分の立場だけは
判っているけれど。
ゾロは、サンジに黙って くれはの書いた見取り図を渡した。
それをサンジも黙って受け取る。
なんだろう、自分達になくて、大部屋の女に与えられているものってのは・・・。
「あの、カールさん。」コビーがサンジの声をかける。
だが、サンジは じっと見取り図を見つめていて、答えない。
「カールさん。」コビーはもう一度声をかけた。
この件が片付いたら、いちど、二人きりで会ってくれませんか、と喉まで出かかっている。
初恋だ、これが初恋って奴だ、とコビーは桃色のフィルタ―のかかった
目がね越しに「カール」を見つめている。
こんなに大人しくて、清純そうで、可愛いい少女、今まで見たことがない。
天使が自分の心臓にハートのついた矢を打ちこんだ瞬間を確かに感じた。
「カールさん。」
「うるせえな、黙ってろ。」
ああ、コビーに真実を言うべきか、とゾロは困惑した。
サンジの憮然と放った一言で、コビーの体が、表情が強張ってしまった。
「なあ、俺達の部屋には風呂がついてッけど、大部屋の女って、ここの風呂を使うのか?」
よほど、色々頭を働かせたせいか、サンジの口調がすっかりいつもどおりのものになって
しまっていた。
コビーは固まったままだ。
あ、やべえ。素になっちまった。
とサンジは気がついた。
「ごめんなさいね。この子、集中すると男言葉になっちゃうのよ。」と
くれはが咄嗟にコビーに微笑んだ。
「そうなの、驚かせてごめんなさいね。」とサンジも慌ててにっこり、とコビーに
笑い掛ける。
「ああ、そうなんだ、びっくりした、男みたいな口調だったから。」と
コビーはホッとしたように表情を緩める。
「で、どうなんですか?」とサンジはコビーの目の前に見取り図を広げて見せる。
自然、二人の顔が頬がつきそうなほど近くに寄せられる。
(ああ、カールさん、なんて良い匂いなんだ。)とコビーは
心臓の鼓動が自分の耳に聞こえそうなほど高鳴っていることに気がついて、
それが カール、いや、サンジ?に聞こえないか、と緊張した。
「ええ、そうです、大部屋の人たちは順番にこの風呂に・・・。」
「石鹸とか、入浴剤とか、そういうの調べた?」
サンジの言葉にコビーとヘルメッポが顔を見合わせ、そして首を振った。
「僕達、男だから女風呂には入れないよ。」
「そこで使われてる物も、どこに保管してあるかなんて、知らないし。」
コビーは、目を輝かせてサンジ・・・いや、可憐なカールを見た。
なかなか掴めなかった手がかりになるかもしれない案を
思いついたカールの知性にますます 胸の中のハートが膨らむ。
「カールさんなら、女風呂に混じって入っていても誰も怪しみません。」
コビーとヘルメッポの説は、シルバことくれはは、もう 店に出ているから
他の女に顔が知られている。
大浴場にその姿があるのは 不自然なのだ。
だが、サンジ・・・いや、「プリンセス」は名前だけは 「ワポル王に目をつけられている
処女がいるらしい」と言う噂で女たちの間で広がっているが、
その顔も姿も誰も知らない。
だから、新入りのようなフリをして、入浴する女達に混ざっても
なんの不都合もない、と言うのだ。
「だめだよ、あんたたち!」と、まず くれはが反対した。
当然だ、若い男が若い女しかいない風呂場を堂々と覗くのだ。
邪な事を考えないはずがない。
「なんで反対するんだ、クソババア!」負けずとサンジも言い返す。
こんなチャンスは二度とない。
男なら一度は夢見る、女風呂を覗く・・・・いや、
覗くどころか、一緒に入るのだ。メンタマをひんむいて見ていたとしても、
誰もそれを咎めたりしない。
こんな夢のような経験ができるチャンスを逃がしてなるものか、と必死になった。
「誰がクソババアだ、このっ・・・。」くれはは言葉を飲みこんだ。
「俺も反対だ。」
ゾロが苦虫を噛み潰したような顔をして、くれはを援護する。
この馬鹿、絶対女風呂なんかに行かせたら のぼせるまで出てこねえ。
いや、予想もつかないほど、突飛なヘマをやりかねない。
「バアさん・・・いや、そんな若い役に立ちそうにネエバカ女より、
こっちのネエさんの方が頼りになるんじゃネエか。」と
コビ―達に不信がられないような理屈をこねて見る。
だが、誰の反対があったって、どんな正当な理由があったって、
サンジの情熱の前にはなんの役にも立たない。
「い〜や、ここは俺が・・・いや、私が適任だ。わ。私しかいないじゃないの、
ねえ、コビーさん?ヘルメッポさん?」と無理矢理若い二人を同意させる。
この馬鹿・・・・とくれはとゾロは顔を見合わせ、溜息をつく。
かくして、サンジが堂々と女風呂に入る事になった。
女たちは、仕事が終ったものから順に風呂に入る。
人数がある程度いる時間帯の方がいい、と言うコビーの言葉に
サンジは狂気乱舞した。
コビーも、ヘルメッポも、「カールさんて、風呂好きなんだな。」と思うだけで、
その喜びように別に不信を抱かない。
「いいかい、その石鹸やら入浴剤やらが怪しいのなら、絶対に自分で使うんじゃないよ。」
とにかく、その現物を手に入れられたら、ゾロがそれを外部に持ちだし、
チョッパーが分析してもらう。
そうすれば、女達の自我を拘束している物か、そうでないかが 判る筈だ。
「口から飲まなくても、体のどこからか 吸収するかもしれない。念のため、
飲んでおきな。」と用心の為に
サンジが風呂に入りに行く前、くれはは「5時間体を騙す薬」を飲ませた。
「浮かれてんじゃないよ。判ってんのかい。」とくれはがすごんでも、サンジの目が
もう、どうしようもないほど
輝いて、ずっとニヤニヤしている。
これが男の姿だったら、随分とみっともなく、だらしない表情なのだが、
いたいけな少女の顔だから、
コビーや、ヘルメッポには、ずっと、サンジ・・・いや、カールが
にこやかに笑っているようにしか見えないのだ。
当然、ゾロにもそう見えるのだが、ゾロはサンジの本音も知っている所為で、
そのニヤけた顔を見ると 心底、こいつは本当に馬鹿だ、とか思えない。
かくして。
男が夢に見る、女風呂にサンジは一糸纏わない姿で潜入する。
「はあ〜〜〜〜〜〜〜〜〜。」
およそ、10人ほどの若い女が疲れた、気だるげな表情で
湯気立ち昇る風呂の中に 生まれたままの身体を晒している。
サンジは、だらしのないため息を漏らした。
ああ、こりゃ、天国だぜ、オイ。
右を向いても左を向いても、
水を弾くような肌の女の無防備な姿だけがある。
メスメスの実を食べて良かった、とサンジははじめて心から思った。
出入口で突っ立ってボンヤリ・・・いや、周りの女から見ればそんな風に
見えるかもしれないが、
本人は、もう、ヨダレをたらさんばかりのスケベな顔と目つきでただ、女の体を眺め回しているのだ。
(おっと、石鹸、石鹸。)
サンジは、頭に冷たい水滴が落ちてきたので ハッと我に返る。
身体を洗うらしいと思われる場所に 大きな瓶に入った液体が置いてあった。
女達はその中の液体を掌で受け、泡を立ててそれで身体を洗っていた。
(あれか・・・。)
が、その液体も3種類あり、薄紫、桃色、うぐいす色、とある。
(まさか、液体だとは・・・。)
持ってきたタオルに沁みこませて持って帰るしかないとサンジは考えた。
サンジがしゃがんで、薄紫の瓶の中の液体をタオルに染み込ませよう、とした時、
「あなた、それはシャンプーよ。ボディソープは桃色。」と背中から声がかかった。
(おお、綺麗な声の人だあ・・・・♪)と思いつつ、「ありがとう、・・・。」といいながら振りかえると、
髪の毛を一つにまとめ、首がほっそりと長く、肩のラインが滑らかで、
とても綺麗な形の乳房の女性が立っていた。
サンジがしゃがんでいて、その女性が立っているのだから、
目の前には女性の柔らかそうな腹部、そして、そこからまた視線をほんの少し 下へずらせば、
サンジが触った事も見たこともない、神秘の器官がある。
もう、頭がくらくらする。
触りてえ!
触りてえ!と頭の中で自分の声がわめいている。
いい加減なことに、顔立ちよりも、その身体の美しさに目が眩んだ。
俺はやっぱり、女の体の方が断然好きだなあ〜〜〜と
しみじみ思った。
「あの・・・。教えてくださったから、お背中流します♪」
石鹸だの、麻薬だの、そんな事はサンジの頭の中から完全に消え、
目の前のナイスバディの女性の背中を流すことだけに全ての神経は注がれている。
「遅い、あの馬鹿!!」
あまり長く持ち場を離れているわけにも行かず、ヘルメッポとコビーは、
一旦、くれはの自室から引き上げて行った。
ゾロが脱出する際に、ヘルメッポがもう一度くれはの部屋にくる事になっている。
それが、サンジが風呂場に行ってから ちょうど一時間後の約束だった。
あと、5分でその時間になる。
サンジは女風呂で石鹸と入浴剤だけ手にいれたらすぐに戻ってくる、と言う手筈だったのに、まだ くれはの部屋に帰って来ない。
ゾロが苛つくのも無理はない。
もともと、サンジは女好きだ。
当たり前だが、若い女の裸に興奮するに決まっている。
柔らけ〜。
すべすべだ〜。
サンジは、やたら丁寧にその女性の体を・・・と言っても、
背中だけなのだが、磨くように流す。
「ありがとう。」とその女性はサンジを振りかえった。
顔立ちは、あまり美しい方ではない。
歯並びも良くないし、きっと、太陽に晒されてる仕事なのだろう、服から出ている部分の肌は浅黒い。
けれど、首から下の肌は、サンジの肌の白さと弾力よりもさらに
女性らしく、年のころ、21、22と言ったところか、掌をのせると吸い付いて来るような艶やかさ。
サンジの口からはいつものような軽口も、口説き文句も出て来ない。
はじめて触る、女性の体の艶めかしさにすっかり緊張してしまって、それでも
向けられた微笑に、ぎこちなく笑顔を返した。
「私も流してあげるわね。」
なぬっ。
それはヤバイだろ、とは思わない。
そんな事したら、・・・と思わず身体の中心部へ目が行った。
だが、そこにはつるりとした肌があるだけ。
(お、そうか、俺、今 女の身体だからどんだけ興奮しても外からわからねえのか。)
10歳の時に 凄まじい飢餓を体験したサンジの第二次性徴は通常より大幅に遅かった。
だから、15歳の体躯ながら、初潮も、陰毛も生えていない身体の少女になってしまったのだ。
「背中を向けてね。」と人の良さそうな女性に言われて、サンジは素直に「はい」と答えて背を向けた。
桃色の液体をたっぷり含んだ泡がサンジの身体を包んだ。
「何やってたんだい、この馬鹿!」
サンジは、何を言われても腹が立たない。
幸せ過ぎて、頭がボウッとしているサンジにくれはは怒声を上げ、
ゾロも馬鹿にしきった眼差しを向けている。
「とにかくよお。このタオルに、桃色、この布に薄紫と緑色、全部沁みこませて来たんだ、
なんか文句あるかよ。」
サンジがこの布、と言ったのはちいさな 女性の下着の事だ。
薄紫が胸を、みどり色のは下半身を保護する為に使う。
「お前、馬鹿か!」
ゾロはさすがに露骨なほどの大声を上げた。
コビーと、ヘルメッポの前で、いわゆるノーパン、ノーブラである。
いくら短いとはいえ ズボンをはいていると言ってもあまりに無神経だ。
「ああ、馬鹿だよ。馬鹿で幸せだね。」と上機嫌のサンジは取り合わない。
とにかく、それを持ってゾロは一旦 ナミ達の所へ戻った。
一方、ルフィやナミ達はワポルを完全に倒す方法を考えていた。
ワポルの恐ろしさはなんでも食べてしまう事、それを合成して武器を作る事。
つまり、食べる意欲を無くすか、生きるために必要な分しか
食べられなくなれば、「バクバクの実」の力は無力化する筈だ。
「咀嚼力がとにかく、化けモノ並だし。」とナミが腕を組む。
ルフィにあれだけぶっ飛ばされても 復活した生命力もあなどれない。
「咀嚼力もだけど、歯も人間のモノじゃないよ。」とチョッパーも頷く。
「食欲がない時って、どんな時だろうね。」とチョッパーは誰に言うともなく呟く。
「そんな時はないっ」
「ルフィに聞いてないわよ。」
ナミがチョッパーの言葉に即座に返答したルフィに 呆れる。
「食べたくても食べたくない時ね・・・。悩み事がある時?体調が悪い時?」
「好きな食べ物が食卓にない時?」
とナミとウソップ、チョッパーは色々と仮説を立ててみる。
「そうだ、俺、催眠術を少し、教えてもらったんだ。」とチョッパーは自分の医療道具から手帳を取り出した。
「催眠術?」とウソップは怪訝な顔をしてチョッパーの言葉を聞き返した。
「麦わらの船長、ロロノアさんが帰ってきました。」
外で見張りをしていた男がゾロを案内して 家の中に入ってきた。
ゾロは早速、サンジが手にいれてきたモノをチョッパーに渡す。
「今のところ、怪しい物ってこれくらいしかねえって。」
「ゾロ、それって」ナミがチョッパーの手に渡されたものを見て渋い顔をした。
男が手に持っていいモノではない。
「仕方ネエだろ、あの馬鹿コックがこれに沁みこませて来たんだ。」とゾロは掻い摘んでナミに
手にいれた経緯を話す。
「え、コビーが?」ルフィは眼を輝かせた。
「ああ、いい面がまえになってたぜ。ただ、」女の趣味はよくねえみたいだ、と
ゾロは付け加える。
「好きな女がいるのか?あのコビーに?」と尋ねるルフィにゾロは曖昧に笑った。
となりでその笑みを見たウソップがその意味を悟る。
「サンジって、そんなに可愛いのか?」とゾロとルフィの会話に割って入った。
その間、チョッパーは成分を分析している。
ゾロが帰って、5時間経った。
サンジの身体に得体の知れない熱がうねり始める。
(な、なんだ・・・・?)
下腹部がむずむずしてきた。
そこだけ熱があるような、そこにだけ汗をかくような、そんな不快感を感じた。
やがて、その不快感は小さな膨らみの先端にも感じ始め、
そこから弱い電流のような痺れが走り、それが途切れると
その突起も、下腹部も、鈍く、重い痛みに襲われる。
奇妙な感覚と痛みの落差が時間を追うごとに激しくなってきた。
くれははすでに部屋に帰ってしまった。
コビーを呼ぼうにも、声を出そうとすれば 自然に入る下腹部への力で全身に痺れが走る。
サンジの右手が痛い所を押さえたがる欲求にしたがい、敏感な個所へと伸ばされた。
(!)声にならない叫び声を上げる。
そこへ触れた途端、身体中が戦慄いた。
痛みと、痺れしか感じられない。望んでいる、あの奇妙な気持ち良さには程遠い。
何時の間にか、全身に汗が滲んでいる。
「ゾロ!判ったよ!」
サンジが部屋でのた打ち回り始めた頃、チョッパーはようやく
その薬の分析に成功したことをゾロに知らせてきた。
「やっぱり、これに含まれてた。習慣性のある、強烈な催淫剤だ。」
サンジが風呂場で採取してきた、すべての液体の中にそれが含まれている、とチョッパーは言った。
「解毒剤を作るのに、10時間はかかるけど・・・。」
とにかく、このことをくれはに伝えるためにゾロはもう一度くれはの元へと向かう。
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