エースは、サンジの足枷、手枷を出きる限り素早く取り払った。
「大丈夫か。」
大丈夫なわけがないのだが、それでもエースは コックに尋ねた。
「・・・あんたがなんで ここにいる。」
コックは 体を起こし、鋭い視線を投げかけてきた。
どうやら、今のところは大丈夫らしい。
だが、全身濡れて 着衣も肌に張りつき、今だ 出血しつづけている体は
すでに 平熱を大きく下回っているのか、肌の色は白を通り越して、蒼ざめ、
歯の根も合っていない。
「・・・そんな話は後だ。」
エースは、コックを抱きかかえようと 体に手を伸ばした。
サンジは、エースが何故 ここにいるのかが まずわからない。
とにかく、自分の失態で招いた危機をどうにか 回避できた事は判った。
けれど、立ちあがるどころか 歩く事も出来そうにないし、
しっかりと気を張っていないと、ふっと意識が遠のきそうだった。
第一、 この黒髪の男、ルフィの兄は、自分をちゃんと 「ルフィのところのコック」と認識しているかのような口ぶりだ。
エースの固い髪が額に触れている。
それに気がつき、サンジは慌てて 重たい瞼を持ち上げた。
意識を保っていた筈が、何時の間にか 意識を失いかけていた事を
ルフィの同じ感触の髪が額に触れる事で気がついた。
なにやってんだ。
そう言いたいのに、喉を何かが塞いでいて うまく声が出せない。
「やべえな。」
エースはそう呟くと、サンジの体を抱き抱え、立ちあがった。
どうやら、サンジの体温を測っていたらしい。
「死にたくねエなら、暴れたりするなよ。」
子供に囁くような声が サンジの耳に流れこんでくる。
おい、どこに連れていくつもりだ。
俺がここにいないと、大騒ぎになっちまう。
どうにか 声を振り絞り、切れ切れながらも エースにそれだけのこと言った途端、
サンジの意識はぷっつりと切れた。
「大丈夫さ。お前の所の航海士はなかなか策士だからな。」
その言葉は、サンジの耳には、既に届いていないのを承知で エースは
また さっきと同じ声音で また サンジの耳元で囁いた。
エースは、自分の今の任務よりも、サンジを優先することにした。
白目をむいて悶絶した表情のまま 身動きしないドルドルの男の体を
エースはつま先で突付く。
それから、自分の腕の中のサンジへ
「こんなやつよりゃ、お前の方が"白ひげ"へのいい土産になるからな。」と
悪戯っぽく 笑いかけた。
翌日の朝早く。
ウーピー卿が、血相を変えて ゴーイングメリー号へ駈け込んで来た。
「サンジくんがいなくなったですって!!」
ナミの顔色も変わる。
ナミだけではない、麦わらの一味の全員の顔色が変わった。
「王族しか入れない中庭の池が血で澱んでいるし、見た事もない男が転がっているし、
ラダ様のお姿も見えないし、一体 どうなっているのか・・・?」と泣き叫ばんばかりだ。
「こっちこそ、一体どうなってんのか、聞きたいわよ?!」
「一億ベリーじゃきかないわよ?!」とナミをウーピー卿に胸倉を掴み、
火を吐かんばかりに怒り狂った。
「・・・ナミ。」
激怒するナミに、ゾロの落ちついた声がかかった。
「この国のゴタゴタに首を突っ込むのはもう 止せ。」
ゾロのその一言で、麦わらの一味が隠していたゼダをウーピー卿に引き渡すことになった。
「ゼダ殿下!」
「ウーピー卿!」
ウーピー卿は、麦わらの一味に騙されていた事よりも、ゼダを無事に保護していてくれた事を喜び、感謝し、狂気乱舞の態だった。
「あたし達は約束を守ったわよ。2億ベリー、払ってちょうだい、今すぐよ!」
だが、その光景を見たところで、ナミの気持ちは治まらない。
「2億ベリー?一億ベリーだったはずでは?」と暢気に答えてくるウーピー卿に
ナミは声をますます 荒げて 怒鳴った。
「サンジくんを一体どこにやったのよ。五体満足で帰ってくるんでしょうね?」
「・・・ナミさん。僕の所為です・・・。きっと、サンジって人は見つけます。」
「約束のお金も払います。」
ゼダがおずおずとナミに声をかけてきた。
その姿は 数日の間にすっかり女性化して、すでに サンジとは瓜二つ、とは
言いがたい容姿に変貌している。
「違う。あいつ、なんか ヘマやったんだ。」
ゾロが口を挟んだ。
ゼダを庇ったわけではなく、この下らない言い合いを早く切上げて、
サンジの行方を探しに行きたかっただけだ。
壁に持たれたまま、まるで 会話に無関心かのような態度のゾロから
そんな言葉が出て、ゼダは どういう訳か 頬を染めた。
池が澱むほどの血がサンジのものなのか。
一体どこに行ったのか、皆目見当がつかない。
「庭に転がされていた男は、全身酷い火傷で、まるで 炎の中に放りこまれたようだと
言う話で、尋問しようにも、酸欠で頭のほうも イカれてしまっているらしく、・・・・。」とウーピー卿が 申し訳なさげに漏らし始めた情報を そこにいた全員が
聞き逃さなかった。
「「「炎だって!!!!」」」」
「エースだ。」
ルフィが呆然と呟いた。
そして、に〜〜〜っと白い歯を剥き出して 大声で笑い出した。
「なんだ、エースなら大丈夫だ。きっと、サンジを助けてくれたんだ。」
「すぐ、連れて来てくれるさ。」
ルフィのその言葉に 麦わらの一味一同は顔を見合わせた。
確かに、エースは弟思いのいい兄貴で、常識人だと思う。
ルフィの言うとおり、エースがサンジを連れ去ったと言うのなら、なんの心配もいらないのかもしれない。
だが、ゾロだけは、その考えを 心の中で否定した。
確かに、エースは 弟思いだろう。それは 誰よりも まず、自分が認めた事だ。
だが、一海賊として、サンジと言う人間に出会ったらどうだろう。
ルフィも、それに気がついていない。
ルフィ自身、サンジの気質や、その強さに魅力を感じたから、仲間にしようと決めたのだ。
エースだって、同じだろう。
海賊なら、生きる場所に海を選んだ男なら、誰だって サンジが欲しくなる筈だ。
「心配ねエよ。」と言うルフィや、ウソップの言葉をゾロは 無視して、
チョッパーに協力してもらい、
おそらく サンジを連れているだろう、エースを探すことにした。
寒い。
とにかく、寒くてたまらない。
そして、頭がぼんやりするほど 眠くて、
その割りに足先が痺れるほど 冷えを感じてサンジは、体を丸めた。
体を丸めて、ひたすら 眠ろうとした。
寒さも、眠たさも 同じ位の割合でサンジの体を支配して、
思考を完全に止めていた。
「・・・熱が出てきたなあ。当たり前か。消毒と止血しかしてないからな。」
どこかで聞いたような声だ。
そうだ、これは ルフィの兄貴だ。
サンジが不快な感覚で縛られている体を鞭打って、どうにか 瞼を持ち上げた。
唇が押しつけられ、苦い水が咥内に注ぎこまれ、思わず飲みこんだ。
「解熱剤と痛み止めだ。すぐに楽になる。」
出血の所為で、サンジの身体は冷え切っていた。
それをエースは自分の寝床に横たえ、適切に手当てを施した。
「あんた、血を流しすぎたんだ。もうしばらくここにいてもらうぜ。」
サンジに飲ませた痛み止めには、下肢の感覚を鈍くさせる成分が含まれている。
起上がる事は出来ても、傷ついた血管が繋がるまでは歩かない方がいいし、
折角 手にいれた戦利品を自由にしてやるつもりもない。
「・・・俺がここにいることをルフィに・・・。」
言う訳ないだろう、とエースは心の中で 薄く笑うが、
心からサンジを心配しているかのような表情を浮かべ、
「ああ、安心しろ。すぐに知らせてやる。」と言ってやった。
すると、それに安心したのか、サンジはまた 眠りに落ちた。
それにしても、顔色が冴えない。
昨夜の今朝なのだから 仕方がないが。
上掛けをめくってみてみると、止血した包帯がもう 赤く染まって湿り、
シーツに赤い沁みをつくっていた。
(やっぱり、縫合しねえと止まらないな。)
(いっそ、船医もひっさらってやるか。)
しかし、そこまでしたら 流石に弟のささやかな 海賊団の存亡に
関わるだろう、と考えて、船医まで誘拐するのは思いとどまる。
このまま 血が止まらなければ 明日にも死ぬだろうな、とエースは考えた。
「よし。医者に連れてくか。」
サンジがいなくなって、宮殿は大騒ぎになっているだろう。
きっと、麦わらの一味もその行方をあちこち探しているだろうが、
もしも 蜂あわせしたところで エースは少しも悪びれる必要はない。
海賊が海賊の宝を狙って 強奪を行うのは当たり前の事だ。
エースはサンジを背負った。
(・・・軽い男だな。)
チョッパーは鼻を蠢かせる。
ルフィの言ったとおり、サンジの匂いと一緒に あまり嗅ぎなれてはいないが、
確かに 知っている匂いを感じて、これがルフィの兄、エースの匂いだと
認識した。
二人の匂いを辿ると、やはり 港についた。
「血の匂いが濃いよ。早く 探そう。」
ルフィは、エースなら大丈夫、といったが怪我の手当てなどは
当然 素人だ。どんな怪我をしたのか判らないが
チョッパーの鼻を信じるなら、相当の血を流していると予想できる。
チョッパーも徐々に焦り出した。
船には二人の姿は既にない。
「ゾロ、こっちだ!」
エースは、麦わらの一味の船医がまさか 人を探索できる嗅覚を持っているとは
予想していなかった。
サンジを背負って この町の医者を探している内に、すぐにチョッパーとゾロが
追いついた。
「おい、そいつをどうするつもりだ。」
ゾロはエースの前に回りこんで仁王立ちになった
自然、その進路を立ちふさぐ形になる。
しまった、とエースはゾロの顔を見て思った。
依りによって、ロロノアだ。
狙撃手や、航海士なら、うまく丸めこめるし、ルフィならもっと簡単に騙せる。
けれど、ロロノア・ゾロには 理屈をいくらこねたところで
自分の目論みを看破する 眼力くらい持っているだろう。
自分も「火拳のエース」と言われて猛者として名を馳せているが、
ロロノア・ゾロの強さも噂で伝え聞いている。
「俺が医者に連れていくから心配しないでくれ。」と
言っても 目の前のロロノア・ゾロは明らかに 自分に向けて
疑わしげな眼差しを向けている。決して、エースの言葉を鵜のみになど
しそうになかった。
(はあ〜ん。)
エースはその眼差しの理由を予測した。
同じ穴のむじなってやつか
こいつも、このコックに執着してるんだ。
だから、俺の企みに気がついたって訳だ。
ゾロを目の前にして、何も言葉を発せず、立ち尽くしたエースに
ゾロは自分の予想があたった事を察した。
「そいつをどうするんだって、聞いてるんだよ。」
ルフィの兄ではあっても、今は、仲間を拉致しようとしている海賊だ。ゾロの声音が荒い。
「・・・どうするって?医者に連れていくのさ。」
エースの目がぎらつく。
言葉とは裏腹に、ゾロと一戦交える気迫を滲ませている。
ゾロも鯉口を切る。
「ちょっと、二人とも!」
チョッパーが ひと型に変身して 二人の間に割って入った。
「どうして喧嘩になるんだよ?ルフィのニイさんは、サンジを医者に連れていくって言ってくれてるのに!」
「そうだ、そうだ。俺は親切で言ってやってんだぜ?」
エースはチョッパーの弁護にすぐに乗った。
「チョッパー、こいつはコックをさらうつもりだぜ。」
「下がってろ。」
「丸焼きにされるぞ。」
ゾロは、エースのそんな調子のよさに 引っかかったりしない。
「え・・・まさか。」
チョッパーが信じられない、といった表情を浮かべて、エースの顔をジッと見た。
その戸惑いの視線を受けて、エースはニヤ、と笑う。
その笑みの意味がやはり 人のいいチョッパーには判らなかった。
「下がってろって言ってんだ、チョッパーッ。」と
ゾロが叫んだ瞬間と、ぬっと突き出したエースの掌から炎が走ったのが同時だった。
「下がってろって言ってんだ、チョッパーッ。」と
ゾロが叫んだ瞬間と、ぬっと突き出したエースの掌から炎が走ったのが
同時だった。
「アチチチッチッ〜〜〜〜〜ッ。」
チョッパーは、下がらなかった。
むしろ、前へ出た。
こんな無駄な喧嘩に時間を食いたくなかったから、自分が盾になったのだ。
エースも本気でゾロを焼殺すつもりはなかったから、いわば
威嚇の火炎放射で、その威力は弱かった。
そのおかげで、チョッパーは体毛に炎が燃え移ったけれど、
慌てて寝転がれば消す事が出来、大事には至らなかった。
「おい、どういうつもりだっ。」
ゾロはますます 声を荒げた。表情も険しい。
「返すつもりはねえって事さ。」
エースの掌から炎の玉が投げつけられ、ゾロは飛びずさってそれを避けた。
「俺は一回、お前らを誘ったよなあ?白ひげ海賊団にこねえかって。」
「ルフィには断わられたが、このニイちゃんには断わられてねえぜ。」
ゾロは刀を抜いた。
「・・・なんだと?」
「ま、もっとも。」エースは口の端を歪めて、不敵な面構えで笑う。
ゾロなど、怖くもなんともない、といわんばかりの高圧的な態度だ。
エースの体の周りの空気が揺らぐ。
「聞いてもいねえけどな!!」
振り上げた掌から、今度は玉ではなくまるで 布のように広がった炎が
ゾロの目前に一瞬 凄まじい高温をもって立ち昇った。
「くっ・・・・っ。」ゾロは顔の前で腕を交差し、その輻射熱を避ける。
「いい加減にしろ!!!!!」
ひと型に変身したままのチョッパーが怒鳴り声を上げ、
エースに街角に具えつけられていた防火用の水をぶっ掛けた。
まるで、犬の喧嘩を止めるようだ。
当然、サンジの体もびしょぬれになる。
「そんな無駄な時間を食ってる暇はないだろ!」
「さっさとゴーイングメリー号に運ぶんだ!」
医者の剣幕に二人は 戦意を削がれた。
「ちっ・・・。」確かに、サンジが死ぬようなことがあったら、
白ひげへの手土産に、と暢気な事を言っている場合ではなくなる。
ルフィにも当然 恨まれるだろうし。
自分もこのコックを死なせたくない。
どうしても、死なせたくない。
「・・・仕方ネエ。傷が見た目より深くて俺の手にゃ負えねえんだ。」
「今回は諦めてやるよ。」
今回は・・?だと。
ゾロの眉間に皺が寄る。
「ルフィの兄貴じゃなかったら、ぶった切ってるぞ、てめえ。」
「俺も、お前がルフィの仲間じゃなかったら、一瞬で炭にしてやったんだぜ。」
お互いの眼球に突き刺さるかと思うほど ゾロとエースは鋭い視線を投げつけあった。
「ふん。まあ、いい。グランドラインにいりゃ、また 会えるだろうさ。」
とエースは未練がましく言うと、背を向けた。
「ルフィには、昔から俺は大事なおもちゃをたくさん やったんだ。」
「たまには、兄貴にも おもちゃを寄越せって言ってたって伝えてくれ。」
「ふざけンな。」
エースの背中を見えなくなるまで ゾロは睨みつけていた。
チョッパーの腕の中にはサンジが大事そうに抱えられている。
「ゾロ、とにかく早く船に帰ろう。」
サンジがいなくなり、宮殿は大騒ぎになったが 昼過ぎ頃に
ウーピー卿がゼダを連れ帰り、その騒ぎは納まった。
ゼダの婚約者のうち、一人が死んだので、結婚は白紙になった。
だが、ゼダは、すぐに王位につく、という決断をして、
それを実行した。
その日の夕方には、ゼダがこの国の王として 世界政府に認可された、という
知らせが 届いた。
ゼダは、これからこの国の王として、するべき事、しなければ行けない事を
考えなければならないのに、少しもその事に集中できずにいた。
結局、ゼダの婚約者の一人を毒殺したのは、隣国の密偵の仕業で、
この国との戦争のきっかけにするつもりだったらしい、と、
ウーピー卿が報告して来た。
ラダは、隣国と手を結んで この国を支配しようとしていたと言うことも
会わせてゼダに伝えられ、ますます ゼダは気が滅入る。
即位式の、細々とした支度は周りの人間が勝手にやるし、
政治にしても、実権を握っているのは軍務大臣と財務大臣で、
自分はただ、傀儡のように 王座に鎮座しているだけでこの国は
日々、歴史を刻んで行ける。
けれど。
武器を作り、人々の犠牲の上に成り立つこの国の豊かさを
ゼダは肯定したくなかった。
王にはなったけれど、あの緑の剣士が言ったように
今まで犯した罪を償うにはどうすれば言いのかさえ 判らない。
幼い頃から 自分の婚約者と言われて 信頼して、恋心も抱いていたラダのことなど、
少しも頭に浮かばなかった。
ラダが死のうが、生きてどこかに遁走しようが 今のゼダにはどうでもいい事なのだ。
はっきりとわかる。
一人でこの国を変える力など 自分にはない。
けれど、あの強い瞳が側にあれば、或いは どんな困難にも立ち向かっていけるかもしれない。
傀儡の王として 生まれ育ったこの宮殿にいるよりも、
あの 粗末な海賊船にいた時の方が、はるかに心は安らかだった。
守られている事に、今まで感じた事のない 幸福感を感じて、
交わす一言、一言で胸が高鳴った。
想いを重ねても無駄な事は判っている。
それでも、口に出さずにはいられなかった。
「ウーピー卿。あの人たちにお金を払わなければならないんでしょう?。」
ナミは、2億ベリー、と言って聞かなかった。
チョッパーとゾロがサンジをゴーイングメリー号に連れて帰り、
すぐに処置をしたが、それでもサンジは 高熱を出して、
クルーを心配させた。
エースが飲ませた薬の成分が体から抜けるのに、まる2日かかり、
その間、サンジは立つ事さえ出来なかったのだ。
「こんな怪我をするほど危ない仕事だなんて、一言も聞いてないわ。」
とあくまでも粘り、結局 ナミの言うとおり、2億ベリー、支払われる事になった。
ゼダからの使者は、麦わらの一味に、
「ロロノア氏一人で取りに来て頂きたい。」と伝言して来た。
「なんで俺が。」
ゾロは 明らかに仏頂面をして 気乗りのしない様子を見せた。
「向こうから 届けるのが筋だろ。」
「でも、向こうがそう言ってるんだもの。行ってきてよ。」と
ナミが命令口調で言っても なかなか うん、と言わなかった。
「お金がないのよ、サンジくんの薬代も払えないのよっ?
「明日の解熱剤を買うお金もないのよっ?」
この女、人の弱みにつけこむのがうますぎる、とゾロは心の中で舌打した。
そう言われると、いやがる訳には行かない。
「判ったよ、行きゃ、いいんだろ、行きゃ!」
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