〜前回までの「病院だより」〜
(見たい題名をクリックするとジャンプします)


<題名>

循環器シリーズ3 (2008.6.15 up)
循環器シリーズ2 (2008.4.5 up)
循環器シリーズ1 (2008.3.8 up)
皮膚病シリーズ9 (2006.12.28 up)
皮膚病シリーズ8 (200610.26 up)
皮膚病シリーズ7 (2006.7.21 up)
皮膚病シリーズ6 (2006.6.2 up)
皮膚病シリーズ5 (2006.3)
皮膚病シリーズ4 (2006.1.28)
皮膚病シリーズ3 (2005.11.30)
犬について(その1) (2005,11.4 up)
皮膚病シリーズ2 (2005,9,25 up)
皮膚病シリーズ1(2005.7.24 up)
大きなダニ(2005.6.23 up)
毛の抜け変わる季節となりました(2005.5.13 up)
ハムスターって…(2005.4.14 up)
ノミの予防について(2004.3.12 up)
ウサギって・・・?  その2(2004.1.7 up)
ウサギって・・・? その1(2003.10.16 up)
犬猫の避妊・去勢手術について(2003.9.11 up)
意外と怖いノミ(2003.7.12 up)
猫にもフィラリア?(2003.5.8 up)
フィラリア(犬糸状虫症)について(2003.4.4 up)
予防できる病気について(ワンちゃん編)(2003.3.10 up)
くっくっ苦しい〜(2003.1.8 up)
予期せぬ事故(2002.12.5 up)
クリスマスシーズン到来!!(2002.12.5 up)
犬の老齢疾患について(2002.11.1 up)
交通事故に気を付けてください(2002.11.1 up)
猫ちゃん、注意してね・・・(2002.10.11 up)
年をとったワンちゃん、要注意です。(2002.10.11 up)


循環器シリーズ3<不整脈について> (2008.6.15 up)

 みなさん、こんにちは。アップが遅れて申し訳ありません。前回の予告通り、今回は不整脈について触れたいと思います。
 不整脈とは、「心臓インパルス(刺激)の形成、伝導、速度、規律性の異常」と定義されています。この言葉を聞くだけでムムムッ???って思う人もいるかもしれません。実は、私もそうですが、次へのステップのため書きたいと思います。用語や図は、前回の稿を参考にしてください。
 不整脈を簡単に言うと、下記のような現象の事を言います。
 @定期的に心臓の洞房結節から出される刺激やリズムが何らかの状況により乱れる事により起きる
 A刺激の伝わり方の異常
 B伝わるスピードの異常
 C迂回路のようなものができることで起こる異常
 不整脈が発生するメカニズムは多種多様で、前述の因子に何らかの異常をきたすことによりリズムの規律性が乱れます。そうなる事により、同じ間隔やスピードで刺激が送られなくなり、心臓の収縮に乱れが出てきます。
 不整脈の種類はたくさんあります。その不整脈すべてを挙げていると、とてもではないですが、不整脈だけで何回もシリーズ化しないと終わりません。よって、一般的によくみられる不整脈や、命にかかわる不整脈などを記載していきたいと思います。
 不整脈は大きく分けると、「心源性」と「心外性」とに分ける事ができます。「心源性」はご存じのように、心不全、心筋症、フィラリア感染症などにより起こる、心臓疾患に起因する病気です。「心外性」で代表的なものは胃脾捻転症候群があります。その他、心外性のものとして、子宮蓄膿症、交通事故、腎不全、腫瘍、中毒、代謝性疾患、術後などが起因して起こる不整脈もあります。
 一般的に良く認められる不整脈には、洞性頻脈、洞性徐脈、洞性不整脈、心房細動、心室性期外収縮などが挙げられます。心房細動、心室性期外収縮、第2度房室ブロック(モビッツT型)の波形を載せます。

<心房細動>


<心室性期外収縮>



第2度房室ブロック(モビッツT型)


 聴診などの一般身体検査だけで分かる不整脈もありますが、一般的には聴診や触診だけで不整脈を発見するのは困難です。危険な不整脈はいつも一緒にいる飼い主さんが注意深く臨床症状をチェックしていることにより発見できることもあります。一般的な臨床症状は、運動をしたがらない、運動に耐えられない、すぐに座り込む、倒れる、ふらつく事がある、脱力、失神です。これらの症状があるからと言って、必ずしも不整脈とは限りませんし、これらの症状が出たからと言って病院で心電図を測定しても、不整脈が臨床症状と一致するとは限りません。しかし、ホルター心電計をつけたり、病院で預かって落ち着いてから心電図をとったりすると、不整脈が現れたりすることもあります。
 早急に治療が必要な不整脈と、治療を必要としない不整脈を下記に記したいと思います。

<治療を必要としない不整脈>
・洞性不整脈(呼吸性不整脈は正常です。吸気時に早くなり、呼気時に遅くなります)
・洞停止(停止時間が3秒以下の場合)
・洞性除脈・洞性頻脈(臨床症状がない場合)
・第T・U度房室ブロック(モビッツT型)
・単形性でまれな心室性および心房性期外収縮
・右脚ブロック
<即治療を必要とする不整脈>
・多形性期外収縮および心室性期外収縮
・発作性心室頻拍(特に多形性で持続型)
・失神を伴う洞性除脈および第V度房室ブロック
・頻脈性心房細動
・洞不全症候群



循環器シリーズ2<電気の流れ> (2008.4.5 up)

前回に引き続き、循環器シリーズの第2回、「電気の流れ」についてお話したいと思います。

 心臓は自ら刺激を作り出し、定期的なリズムで信号を送り、心臓の筋肉を動かし続ける臓器になります。この刺激信号がなくなったり、激しく信号が乱れたりすると、心臓は止まってしまいます。また、刺激のリズムが崩れたり、途中で信号が止まったり、迂回路ができたりすることにより、不整脈というものが発生します。
 今回は、その刺激の発生、流れを図で示しながらお話ししていきたいと思います。その前に心臓の筋肉の生理学的な特性についてお話ししておきます(ちょっとマニアックです)。

 
心臓の筋肉は、5つの生理学特性を持っています。
@ 自動性
 洞(房)結節は、主要なペースメーカの役割を果たしています。しかし、伝導系の細胞のすべてが適切な状況下で独自のインパルスを作り出すことができます。

A 興奮性
  
電気刺激が静止電位※1を閾値※2以下に低下させると、心臓の筋肉は興奮します
  
細胞内の静止電位のレベルが細胞の興奮性を決定し、これは「全か無の法則※3」に従っています
  
※1 何の刺激も受けない、つまり情報の伝導が行われていない状態
  
※2 刺激を徐々に大きくしていくと、ある時点を持って活動電位※4が発生します。その電位が発生するレベルの事を「閾値」といいます。
  
※3 閾値より小さい刺激に対して活動電位は全く反応せず、閾値より大きな刺激に対してのみ活動電位が発生します。よって、刺激の大きさに比例して発生するのではなく、まったく発生しないか、あるいは発生するかのいずれかになります、その法則を「全か無の法則」といいます。
  
※4 細胞が興奮すると細胞の膜に変化が生じ、刺激が発生します。膜電位の変化を「活動電位」といいます。
B 不応期
 心臓の筋肉は収縮期の間、外部の刺激には反応しません。一度活動電位が発生した神経や筋肉は、刺激を与えても、活動電位の発生が起こらない期間があります。
C 伝導性

  
各々の筋細胞の活性化が、近隣の筋細胞の活動を引き起こします。
  
伝導速度は特殊伝導系と筋線維の各部位で異なります
 伝導速度はプルキンエ線維で最大で、房室結節の中央部で最低である

  
活性化する順序は、収縮により最大の機械的効率が得られるように決められている
D 収縮性
  
電流に反応して起こる
  心電図は実際の収縮そのものではなく、収縮刺激を測定しているにすぎません。収縮性の評価には、心エコー検査で評価します。

次に刺激の流れについてです。
  
心臓の刺激は、右心房の洞(房)結節というところで自動的に刺激が作られます。その刺激が以下のように伝わります(図)。
  
洞(房)結節 → 結節間心房内伝導路 → 房室結節 → ヒス束 → 右脚および左脚 → プルキンエ線維系


刺激の伝導スピードは場所によって違います。参考までにスピードを記載しておきます。

・心房…0.1〜0.5m/秒
・房室結節…0.01〜0.1m/秒
・左脚…2.0〜4.0m/秒
・プルキンエ線維…2.0〜4.0m/秒



 
このような流れで、刺激は流れていきます。
  れらいずれかの伝導路の障害や筋肉の伸展または肥大などの筋肉の変化によって不整脈がおきます。軽度な不整脈は症状には出ない事が多いですが、症状に出始める場合は、これらの障害や変化が進行して重篤な状態になっていることが多いです。定期健診が重要になってきます。

 次回の第3回は、「不整脈」について載せたいと思います。今回は、なかなかマニアックになってしまい、申し訳ありません。ひょっとしたら獣医さんや動物看護師さんにもみていただいているかもしれませんので…。しかし、これを知っておくと、このあとがとてもわかりやすくなります。ちなみに第4回は「心臓を評価する検査」となっています。月1回程度の更新を目標に頑張っていきたいと思いますので、飽きずにみていただけたらと思います。



循環器シリーズ1<心臓って???> (2008.3.8 up)

みなさん、こんにちは。久しぶりの「病院だより」になります。前回の皮膚病シリーズに続き、今回からは心臓病についてシリーズで書かせていただきたいと思います。
 
 今回は、循環器疾患をお話しするのに大切な基礎の部分をお話しさせていただきたいと思います。難しいイメージのある心臓ですが、病気を理解するのはそれほど難しくありません。解りやすく書くつもりでいますので、一度読んでみてください。
 
 心臓は筋肉でできていて、全身に血液を循環させるポンプの役割をしています。新鮮な酸素を含んだ血液は、心臓から全身を回り、それぞれの臓器で酸素が消費されることにより血液中の酸素が減って、また心臓に返ってきます(大循環)。そして心臓に戻ってきた血液は肺へ運ばれ、新鮮な酸素を取り入れ、また心臓に戻ってきます(肺循環)。
 
 大まかな血液の流れを図1に示しました。色分けは、赤が酸素の豊富な血流、青が酸素の少ない血流となっています(注;図には記されていませんが、肝臓にも動脈は走っています)。
 
 一般に心臓から出る血液を「動脈」、心臓へ戻ってくる血液を「静脈」と言います。
心臓から全身へ…大動脈
心臓から肺へ…肺動脈
全身から心臓へ…大静脈
肺から心臓へ…肺静脈
(それぞれの血管にはさらに分岐があるのですが、ここでは簡単に書かせていただきました。ご了承ください)



〜心臓の構造〜

 心臓は右側の部屋と左側の部屋に分けられ、それぞれ上の部屋、下の部屋と合計4つの部屋に分けられています(図2)。上の部屋を 「心房」、下の部屋を「心室」といい、それぞれ以下のように名前が付けられています(ここで述べられる右・左は、体の右側、体の左側という意味で使っています)。
左上の部屋…左心房
左下の部屋…左心室
右上の部屋…右心房
右下の部屋…右心室

 上述のように4つの部屋に分かれていますが、左右の部屋を分ける柱にも名前が付いています。
左心房と右心房を分ける柱…心房中隔
左心室と右心室を分ける柱…心室中隔

 また、それぞれに進んだ血液が逆流しないように弁も4つ作られていて、心房と心室、心室と動脈の間にそれぞれ弁があります。それぞれの名前は下記のとおりです。
左心房と左心室の間…僧帽弁
左心室と大動脈の間…大動脈弁
右心房と右心室の間…三尖弁
右心室と肺動脈の間…肺動脈弁

 心臓の大きさは動物種によって違い、犬においては犬種によっても変わるんですよ。



〜血流、心拍数について〜

 心拍数は犬で70〜160回/分で、小型犬は早く、大型犬は遅い傾向いあります。仔犬では220回/分になることもあります。また、猫では1分間に160〜240回/分程度あります。心臓は常に休むことなく動き続ける大事な臓器です。
 血液は、下記のように流れています。(図3)

左心房 → 左心室 → 大動脈 → 全身の
各臓器 → 大静脈 → 右心房 → 左心室 → 肺動脈 → 肺 → 肺静脈 → 左心房
(赤が酸素の豊富な血流、青が酸素の少ない血流)

 今回は、ここまでのお話にしておきます。少しは心臓の構造や、血液の流れが理解できたでしょうか?分かりにくい場合、修正や改訂をしますので、メールにてご連絡いただければ幸いです。

 次回は心臓の電気の流れについてお話したいと思います。




 皮膚病シリーズ9<スキンケアをしましょう> (2006.12.28 up)


 今までのこのシリーズでは、“皮膚病”として様々な病気について書いてきました。まだまだ書ききれていない病気もたくさんありますが。今回は、ガラッと変わって病気のお話しではなく、一般的なスキンケアについて書いてみたいと思います。

 スキンケアと言うと、シャンプーすればいいのかと思われがちですか、ただ単にすれば良いというものでもありません。シャンプーひとつにしてもいろいろあるのです。シャンプーが原因で症状が悪化してしまうこともあります。 

 まず覚えておいていただきたいのが、ワンちゃんの皮膚は非常にデリケートだという事です。人間に比べると皮膚の厚さは1/5〜1/6しかありません。また、pHも7.5(弱アルカリ性)と人間の5.5(弱酸性)に比べると高くなっています。弱アルカリ性という環境は、弱酸性に比べて細菌が繁殖しやすい環境なのです。というわけで、シャンプーをする際は単に洗うだけでなく、いくつか注意すべき事がでてきます。

 最初は、シャンプー剤選びから。たまにある多きな間違いが、人間用のシャンプー剤を利用しているということです。先程も書いたように人間とワンちゃんでは皮膚のpHが違いますから、いくら人間にはいいシャンプー剤を使っていてもワンちゃんの皮膚には合わないわけです。ではどんなシャンプー剤がいいかというと、ワンちゃんによっても異なってきます。乾燥タイプやべっとりタイプ、鱗屑(ふけ)がよく出るタイプ、特に問題がないワンちゃんなどなど・・・。その子その子によって皮膚の状態が違ってくるので、使うシャンプー剤も変わってきます。特に、皮膚に問題を抱えているワンちゃんは要注意です。その時の状態に合っていないシャンプーを使うと一気に症状が悪化していくことがあります。そうならないようにかかりつけの獣医さんで診察してもらって、どんなシャンプー剤を使うべきか相談される事をお勧めします。

 さて、次によくある質問がシャンプーの間隔です。どれくらいのペースでする方がよいかということですが、これもその子その子によって変わってきます。基本的には、皮膚に問題を抱えている場合は頻回(時には毎日)、症状に合ったシャンプー剤を利用して洗います。大きな問題を抱えていない場合には、洗いすぎるのも良くないですし、洗わなさすぎるのも良くないです。例えば、脱脂作用の強いシャンプー剤で頻回に洗ったことで、逆に皮膚がかさついて痒みの原因になることがあります。逆に、シャンプーをしてないために鱗屑(フケ)がいっぱいでているワンちゃんもいます。シャンプーのタイミングとしては、鱗屑(フケ)が少し出てきたり、痒みが出てきたり、ちょっと臭いがしてきた時です。勿論シャンプーをした後に症状がひどくなってくる様であれば、シャンプー剤が合っていないのかもしれませんし、皮膚に病気をもっていることも考えられますので早めに獣医さんに診てもらいましょう。

 シャンプーの仕方はどうでしょうか。まず、シャンプーをする前にブラッシングを十分にしましょう。余分な毛や汚れが浮いてくれます。その後、お湯で毛全体にしっかり水分を含ませます。この時使うお湯の温度は熱すぎてはいけません。大体25度くらいを目安に、人肌ではちょっとぬるめくらいがいい温度です。次にシャンプー剤を体表にまんべんなく塗布して、皮膚に浸透するように優しくマッサージします。特に動物病院で処方されているような薬用シャンプーの場合は、マッサージした後10〜15分なじませてください。泡立ちが悪い時は、二度洗いしましょう。泡立たないからといって、シャンプー剤を大量にかけてはいけません。基本的に薬用シャンプーになると泡立ちにくいものが多いです。洗い終わった後は、シャンプー剤をお湯でしっかりと洗い流してください。シャンプー剤が残ってしまっていると、それが基で皮膚が炎症を起こしてしまうこともあります。

 シャンプーが終わったら、しっかり乾かしましょう。まずはタオルで余分な水分をふき取って下さい。その後はドライヤーを使ってしっかり乾かしていきましょう。その際にドライヤーを近づけすぎるのもあまりよくありません。少し遠めから、優しくが基本です。乾燥肌タイプのワンちゃんは、この後保湿剤を利用するのもいいでしょう。また、耳の中に水分が残ってしまっていると、外耳炎の原因にもなりかねません。コットンなどを利用してふき取っておきましょう。この時に綿棒を使いすぎてもあまりよくありません。最後にしっかりブラッシングをして終了です。

 以上が基本的なシャンプーの方法です。シャンプーは皮膚病予防にも皮膚病の治療としても、とても有効な方法です。時間、体力的には大変ですが、効果は十分に得られるはずです。


 皮膚病シリーズ8<よく発生する皮膚病;膿皮症> (2006.10.26 up)


いままで取り上げてきた皮膚病シリーズのなかにも何回か“膿皮症”と言ったフレーズが出てきたと思います。原発で起こったり、他の皮膚疾患に続発して起こったりするこの病気について、今回は取りあげてみます。

 ワンちゃんの皮膚の病気でよく発生しているのが、“膿皮症”といわれる病気です。ネコちゃんでは、“膿皮症”の発症が外傷による膿瘍や自分で舐めることに関与している事が多く、発生はワンちゃんに比べると稀です。

 まず、“膿皮症”とはどんな病気なのかお話しましょう。膿皮症とは、皮膚に細菌が感染した化膿性感染症です。膿皮症は、発生している皮膚の深さによって表在性、浅在性、深在性と分類されます。また、感染している細菌も様々です。一番多いのが、ブドウ球菌という細菌です。この菌には、多くの種類が存在し、その一部には皮膚に常在しているものもあります。何らかの基礎疾患で免疫力が低下したり、皮膚のバリアが崩壊したりした時にこれらの細菌が繁殖してしまうことで膿皮症が成立します。

 では、原発としてではなく続発として起こってくる膿皮症の基となる病気にはどのようなものがあるのでしょうか。基本的には皮膚病の多くがそうです。アレルギー性皮膚炎、皮膚糸状菌症、毛包虫症など。皮膚病以外にも免疫力を低下させてしまうような病気、例えば内分泌性疾患(甲状腺機能低下症や副腎皮質機能亢進症など)や悪性腫瘍などが引き金となっている場合もあります。

 症状としては、細菌感染が起こっている皮膚の深さによって異なってきます。表面だけの感染であれば、皮膚の発疹・発赤、鱗屑(ふけ)、痒みが主な症状です。症状が進んで、細菌が深いところに感染してくると、病変部に腫脹、膿瘍、発熱、痛みなどが出てくるようになります。また、痒みが強いので舐めたり引っかいたりしてしまうと脱毛が起こってきます。膿皮症では、特徴的な円形の、表皮小環と呼ばれる病変が見られることが多いです。表皮小環の中心部の古い病変は、色素沈着で黒くなることもあり、周囲の新しい病変は、赤く痂皮が付着しています。
 診断してく過程で重要なことは、膿皮症が原発で起こっているのか、他の基礎疾患が基で起こっているのかを鑑別することです。基礎疾患が起こっている場合は、それに対しての治療も行っていかなければいけないからです。基礎疾患の鑑別を行っていくために、血液検査、皮膚の一部を掻き取ったり、真菌培養を行ったりといろいろ検査が必要になることがあります。病変部の痂皮や毛、滲出液などを染色して顕微鏡で見ると細菌と最近を食べる細胞が多く出ている時は、膿皮症が疑われます。また、治療への反応が悪い場合などは原因となっている細菌を培養・同定することもあります。その結果に基づいてどの抗生剤を使うか考えるのです。

 しかし、膿皮症の場合は検査で確定をするよりも、問診・症状・治療に対する反応などで診断をしていきます。

 治療方法についてです。細菌感染が原因で起こるのが膿皮症なので、抗生剤を使います。ここで注意しなくてはいけないことが一つあります。抗生剤に反応して皮膚が一見治っているように見えても途中で勝手に止めずに、主治医の先生から処方されている分はしっかりと飲ませきるということです。途中で止めてしまうと、再発の原因となります。その他に、シャンプー療法や局所療法などがあります。局所療法では、軟膏、クリーム、ローションなどを利用します。シャンプーに関しては、抗菌効果に優れていて毛包洗浄作用のあるようなものを利用します。基本的には、市販のシャンプーではなく、病院で処方するような薬用シャンプーをお勧めしています。膿皮症では、シャンプー療法が重要な役目を果たしています。以上のような方法が“膿皮症”に対しての治療方法ですが、基礎疾患として他の病気をもっている場合には、そちらの治療も行っていかなければいけません。

 ごく稀に原因疾患が見つからず、抗生剤に反応はするもののお薬を止めると短期間のうちの再発する“特発性再発性膿皮症”と呼ばれる病気があります。この場合の治療としては、免疫賦活剤(免疫力を増強して抵抗力を強めるお薬)を利用したり抗生剤を長期投与したりします。

 基本的には基礎疾患をもっていない場合、しっかりと治療を行えば治癒していく病気です。ただ、一度治ってもまた再発を繰り返してくる場合は、何かしら原因となっている基礎疾患が存在しているはずです。それを見つけてあげないといけません。

 今回は、膿皮症について取り上げてみました。さて、徐々に涼しくなって皮膚病の多発シーズンは終わっていきますが、おうちのワンちゃん・ネコちゃん皮膚は大丈夫ですが?


 皮膚病シリーズ7<外耳炎について> (2006年7月21日 up)

今回の皮膚病シリーズは、外耳に生じた皮膚炎ということで「外耳炎」を取り上げたいと思います。

 “耳を掻く”“頭をよく振る”“耳が臭い”といった様な外耳炎の症状で病院を受診し「外耳炎」と診断されてことが一度はあるというワンちゃん・ネコちゃんは多いかもしれません。たかが外耳炎思って放置しておくと、中耳や内耳にまで炎症が波及してしまい、“首が傾く(斜頸)”“回転運動をする”“ふらつく”などといった神経症状を示す可能性もでてきます。そうなる前に少しでも知っていただこうと、今回は“外耳炎”をテーマにしてみました。
 
 外耳炎を発症するには、様々な原因や要因が関与しています。まず、ワンちゃんやネコちゃんの外耳の構造が人間と違っていることが、大きなポイントとなっています。人間の外耳は横穴だけですが、ワンちゃんとネコちゃんの外耳には竪穴から折れ曲がって横穴へと続きます。このことが、ワンちゃん・ネコちゃんの外耳を乾きにくくしてしまい、炎症が起こり易くなる要因となっています。その他の要因としては、垂れ耳、耳道内の緻密な毛などの形態的要因や温度や湿度(夏季に多い)などの気候的要因などがあります。また、綿棒をしての過剰なお手入れや刺激性のある洗浄液の利用なども要因の一つになってしまっていることがあります。

 病的な原因としては、次のようなことが考えられます。原発疾患としては、アトピーやアレルギー、耳ヒゼンダニ、疥癬甲状腺機能低下症、副腎皮質機能亢進症、腫瘍、特発性脂漏症、自己免疫性疾患、異物などがあります。その後、二次的に細菌や真菌などが耳道内で増殖していきます。

 症状としては、「耳を痒がる」「頭をよく振る」「耳垢、耳だれが多い」「耳が臭い」「耳が腫れている」「耳が赤い」などといった事が主です。原発疾患によっては、耳介部分に痂皮ができたり、脱毛したり発疹ができたりといった症状もでてきます。もちろん耳だけでなく、全身症状がでてくる事もあります。

 さて、治療方法ですが原発性疾患を治療していきながら耳のケアを進めていきます。耳のケア=洗浄については、病院によって様々な方法で行われています。実際、現時点ではこれといった確定した洗浄方法はありませんが、耳道に溜まっている膿や耳垢を洗い流すことを目的として行います。洗浄の方法や頻度によっては逆に悪化させてしまうこともあるので、外耳炎の時のおうちでのお手入れは、主治医の先生と相談しながら行っていきましょう。

 症状のレベルによっては、外耳洗浄や点耳薬だけで改善していきますが、重症の場合や慢性化してしまっている場合はなかなか洗浄だけでは改善していきません。原発疾患の治療を含めた全身治療(お薬の経口投与)が必要となります。例えば、アレルギー性の可能性がある場合には食事療法や環境の改善などといったことを行う必要もあります。

 また、あまりにも重症であったり再発を繰り返したりする場合は、外科的な方法で治療することもあります。外側耳道切除術、垂直耳道切除術や全耳道切除術などといった方法があります。

 一度外耳炎になったワンちゃんやネコちゃんは、再発する可能性があるので、症状が改善した後も定期的に洗浄されることをお勧めします。ただし、初めにも書いたように、綿棒を使ったり刺激のあるもの(例えば、アルコールなど)で洗浄しすぎたりすると逆に外耳炎を引き起こしてしまいます。おうちでのお手入れは、イヤークリーナーを使ったり、コットンでやさしく拭いたりといった方法がお勧めです。特に、シャンプー後や水に濡れた後なんかは、外耳炎を起こしやすいので要注意です。後は、主治医の先生に定期的に耳道のチェックをしてもらって、本格的に洗浄してもらうことで外耳炎の予防にもなります。


 たかが耳の汚れですが、悪化したり慢性化したりすると中耳や内耳にまで影響を及ぼし神経症状を示しかねない“外耳炎”。今が時期的には多いシーズンです。たまにワンちゃんやネコちゃんの耳を覗いてあげてくださいね。


 皮膚病シリーズ6<犬特異性・遺伝性の関与が疑われる脱毛症> (2006.6.2 up)


ワンちゃんの脱毛症には、いまだに原因が明確にされていない病気がいくつかあります。いずれの病気に関しても、犬種特異的であったり、遺伝的要因が関わっていることが疑われていたりします。また、はっきりとした治療方法も確立されていないことが多いです。つまり、今現在、いろいろと研究が進められて、少しずつ解明されつつある病気について今回は取り上げて見ます。
 好発犬種や特徴的病変、治療法などについて簡単にまとめてみました。


 Alopecia X(脱毛症X)

(原因)
 ステロイドホルモンの代謝異常と考えられている。
(好発犬種)
 サモエド,スピッツ,パピヨン,ポメラニアンなど北方犬種,プードルなど
(好発年齢・性差)
 ・明らかな性差はなく、好発年齢も様々だが、若年の未去勢の雄犬に多い。  (ポメラニアンでは若齢で多く、プードルでは高齢で多い傾向がある)
(発症部位)
 頭部と四肢端以外の部分(特に大腿部の脱毛が特徴的)
(脱毛の特徴)
 境界が不明瞭な両側性脱毛
(その他症状)
 ・軽度から重度の色素沈着
 ・残った被毛は乾燥し、光沢がなくなる。
 ・炎症を伴わず、痒みを伴わないことが多い。ただし、細菌感染などの二次
  感染を起こしたり、慢性症例において乾性脂漏症が見られたりする場合
  は、痒みがでてくる。
 ・皮膚症状以外は、問題なし。
(治療方法)
 ・未去勢雄では、去勢手術。
 ・メラトニン(国内未発売)やトリロスタンといった薬を使って治療する場合
  もあるが、効果には個体差がある。
(予後)
 未治療では改善は見込めない。


 Seasonal Flank Alopecia(季節性側腹部脱毛症)

(原因)
 不明。季節が関与している(春と秋に多い)。
(好発犬種)
 ボクサー,スコティッシュ・テリア,ブルドッグ,プードル,ミニチュア・シュナウ
 ザーなど
(好発年齢)
 特になし
(性差)
 避妊した雌に多い。雄でも見られる。
(発症部位)
 左右の側腹部
(脱毛の特徴)
 ・境界明瞭な両側性脱毛。
 ・痒みは伴わない場合が多い。
(その他症状)
 ・強い色素沈着。
 ・皮膚症状以外は、問題なし。
(治療方法)
 メラトニンを使用する場合もあるが、放置して季節が過ぎれば再び発毛す
 る傾向にある。


 Pattern Baldness(パターン脱毛症)

(原因)
 不明
(好発犬種)ダックスフンド,チワワ,ミニチュア・ピンシャー,ボストンテリア,グ
     レイトハウンドなど
(好発年齢)
 若齢犬(6ヶ月〜9ヶ月齢)
(性差)
 ・ダックスフンドでは、雌に比べて雄で多い。
 ・その他の犬種では、主に雌。
(発症部位)
 ・ダックスフンド:耳介部
 ・その他:耳介後部、首から胸の腹側、体の腹側
(脱毛の特徴)
 ・非常にゆっくりと進行していく。
   (ダックスフンドでは8〜9歳、その他の犬種では1歳まで)
 ・痒みは伴わない場合が多い。
(その他症状)
 ・色素沈着。
 ・皮膚症状以外は、問題なし。
(治療方法)
 有効な治療方法は、確立されていない。
   (メラトニンが効果を示した報告もある)
(予後)
 発毛は期待できない。


 Color Dilution Alopecia(色素淡色(希釈)性脱毛症)

(原因)
 不明。毛色に関係した遺伝性の病気と考えられている。
(好発犬種)
 淡色被毛(シルバー,ブルー,クリーム,オレンジなど)をもつ多くの犬種
    ↓     ↓     ↓    ↓     ↓
 ヨークシャ・テリア,ミニチュア・シュナウザー,プードル,ダックスフンド,ミニ
 チュア・ピンシャーなど
(好発年齢)
 4ヶ月齢〜3歳齢(特に2〜3歳齢)
(性差)
 特になし
(好発部位)
 全身のどの場所でも、淡色被毛部位に起こる。
(脱毛の特徴)
 ・淡色被毛部位に限局した非炎症性脱毛で、徐々に進行していくことが多
  い。比較的境界明瞭。
 ・痒みは伴わない。
(その他症状)
 ・進行していくと、乾燥、鱗屑(フケ)、色素沈着、脂漏、細菌感染による膿皮
  症を伴うことがある。
 ・他の毛色領域は正常。
 ・皮膚症状以外は、問題なし。
(治療方法)
 有効な治療法は、確立されていない。
(予後)
 ・基本的には治らない。
 ・遺伝する可能性もあるので、繁殖させない方が良い。


 Black hair follicular dysplasia(黒色毛性毛包形成不全)

(原因)
 遺伝性の病気と考えられているが、不明
(好発犬種)
 ・白黒又は白黒を含む三色の被毛をもつワンちゃん
 ・発生が報告されている犬種には、ボーダー・コリー,チワワ,パピヨン,ジャ
  ックラッセル・テリア,ビーグル,キャバリア,ミニチュア・ピンシャーなどがあ
  る。
(好発年齢)
 幼齢〜若齢(4歳以下)
(性差)
 特になし
(好発部位)
 ・全身のどの部位でも、黒色被毛領域に起こる。
 ・脱毛の特徴;黒色被毛領域に限局した非炎症性脱毛。
 ・痒みは伴わない。
(その他症状)
 皮膚症状以外は、問題なし。
(治療方法)
 有効な治療方法は、確立されていない。
   (メラトニンで効果を示した報告もある)
(予後)
 被毛の再生は期待できない。


 今回取り上げた5つの病期の他にも、毛色に関連しない毛包形成不全などもあります。いずれの病気にしても、バイオプシー検査により診断をつけます。勿論、真菌感染や外部寄生虫(毛包虫や疥癬)、膿皮症(細菌感染)、アレルギー、内分泌系疾患などの他の病気による脱毛を除外するために他の検査も必要にはなってきます。

 以上、まだ原因や治療方法がはっきりと解明されていない脱毛症について取り上げてみました。


 皮膚病シリーズ5 (2006年3月 up)


 “内分泌疾患”とは、体の健康状態や働きを維持するために内分泌腺から放出されているホルモンの異常(不足や過剰)によって起こってくる病気のことです。
 内分泌疾患に伴う皮膚疾患で問題となってくるのは、特に、甲状腺機能低下症と副腎皮質機能亢進症と言われる病気。ネコちゃんでは、いずれの病気もワンちゃんに比べると稀です。内分泌疾患は複雑な病気になるので、このシリーズでは、皮膚病変を中心に、特にこの二つの病気に関して簡単に説明してみます
 
 まずは、甲状腺機能低下症について。この病気は、ワンちゃんやネコちゃんの喉に人間と同じ様に存在する甲状腺からの甲状腺ホルモンの産生・分泌の低下によって起こります。その原因としては、甲状腺の萎縮・破壊・腫瘍化などが挙げられます。甲状腺ホルモンは、炭水化物や脂肪の代謝、蛋白合成、エネルギーの産生、熱産生による体温上昇など生体が活発になるように働いています。つまり、甲状腺の機能が低下し甲状腺ホルモンの分泌量が減少すると、ワンちゃんやネコちゃんの活力が低下してしまうわけです。
 全身症状としては、元気消失・精神的不活発・運動意欲の消失・運動不耐性・食欲増加を伴わない体重増加や肥満・寒冷不耐性・便秘・徐脈などです。重症になってくると、神経症状(運動失調や四肢の麻痺、旋回運動など)や筋障害(虚弱化)などが起こることもあります。 
 皮膚の異常は、この病気の約80%の症例で認められます。症状としては、脱毛・色素沈着・脂漏・皮膚の肥厚・発毛の遅延・乾燥した光沢のない被毛・再発性の皮膚感染症など。一番典型的な症状は、“脱毛”です。脱毛に関しては、痒みを伴わず、四肢・頭部を除いた部位に両側対称性に起こることが多いです。重症例になってくると、頭部から肩にかけての皮膚が厚く腫れ(粘液水腫)、“悲しげな表情”を呈します。また、尾の脱毛が起こり、“ラットテール”と言われる状態になります。 
 診断方法は、血中の甲状腺ホルモン値の測定、甲状腺刺激ホルモンを用いた特殊試験などがあります。
 治療は、一般的には甲状腺ホルモン製剤の投薬によって行われます。多くの場合が投薬により症状の改善が認められます。投薬期間については、症状によって長期、もしくは生涯にわたる場合もあります。

 次は、副腎皮質機能亢進症についてです。この病気は、名前の通り腎臓の近くにある副腎からの副腎皮質ホルモン(主にコルチゾール/糖質コルチコイド)の分泌が過剰になることで起こってきます。副腎皮質ホルモンの過剰によって起こってくる状態を、クッシング症候群(厳密に言うと少し異なりますが)と言われています。
 副腎皮質ホルモンの働きは、一言で言うと「体の活性を抑制する」ことです。具体的に挙げていくと大変な上複雑になるので、今回は省略させてもらいます。この副腎皮質ホルモンの分泌が過剰になってくるのには、いくつかの原因があります。副腎皮質にホルモンを分泌する様に命令している脳の“下垂体”という部分があります。下垂体の腫瘍や過形成が起こると、どんどん命令が送られてきてしまい、副腎皮質が働きすぎてしまう場合、副腎皮質自身が腫瘍化する場合、そして医原性の場合などです。医原性の副腎皮質機能亢進症が起こってくるのは、長期のステロイド剤の投与に伴ってです。
 一般症状としては、多飲多尿・多食・腹囲膨満・活動性の低下・筋肉の脆弱化・免疫力の低下などがあります。免疫力が低下するので、感染症にかかりやすくなってしまいます。その他には、発作などの神経症状を示すことがあったり、糖尿病を併発し易かったりします。
 皮膚の異常は、脱毛・皮膚の菲薄化・色素沈着・再発性の皮膚感染症などです。脱毛は、頭部・四肢・尾以外のところで起きてきます。内分泌性疾患に典型的な両側対称性脱毛であることが多く、程度は軽度のものから重篤なものまで様々です。貧弱な被毛だけが脱毛することもあります。また、特徴的なこととしては、皮膚が“薄く”なり、しわになり易かったり、簡単に血管が透けて見えたりします。“色素沈着”としては、カルシウム沈着が起こることで白いブツブツが、ケラチンが沈着することで黒いブツブツ(面皰)ができたりします。
 確定診断を行うためには、いくつかの特殊検査を行っていく必要があります。また、CTやMRIにより副腎や下垂体の大きさを調べる方法も最近では行われています。
 治療方法は、どのタイプの副腎皮質機能亢進症かによって異なってきます。内科的な方法では、副腎皮質ホルモンを出す副腎の細胞を壊すお薬、副腎皮質ホルモンの合成を抑制するお薬や下垂体から副腎に対して命令を減らすお薬などがあります。外科的治療法としては、副腎腫瘍摘出を目的とした副腎摘出術、下垂体切除術などです。いずれの手術に関しても大きなリスクが伴う手術となります。また、下垂体腫瘍に対しては、放射線療法が適用されることもあります。もちろん、医原性の場合は、投与されていた副腎皮質ホルモン製剤が原因なので、使用を中止する必要があります。どの方法にしろ、この病気の治療は複雑な場合が多いです。

 以上、大まかにですが、皮膚疾患を伴う内分泌性疾患のうち代表的な二つについてお話してみました。もちろんこの他にも、皮膚疾患に関わる内分泌疾患は様々存在します。次回は、ちょっと珍しい脱毛症について取り上げてみようかと考えています。


皮膚病シリーズ4 (2006.1.26 up) 

 真菌(カビ)による皮膚炎;皮膚糸状菌症

 今回は、皮膚が真菌(カビ)の一種である皮膚糸状菌に感染することで起こる皮膚病である“皮膚糸状菌症”について取り上げてみます。

  皮膚糸状菌は、現在では約40菌種が知られており、Microsporum(小胞糸菌)、Trichophyton(白癬菌)、Epidermophyton(表皮菌)という3属の真菌に分類されています。。その中でも、特にワンちゃんやネコちゃんに感染する菌種は、Microsporum canis(犬小胞糸菌)、Microsporum gypseum(石膏状小胞糸菌)、Trichophyton metagrophytes(毛瘡白癬菌)の3種です。ワンちゃんの皮膚糸状菌症の原因菌は、約70%が犬小胞糸菌であり、約20%が石膏状小胞糸菌、約10%が毛瘡白癬菌です。一方、ネコちゃんでは、ほとんどの場合(約80〜90%)で、犬小胞糸菌が原因菌となります。
  これらの皮膚糸状菌は、皮膚の角質層や被毛、爪などに寄生して病変を作ります。また、皮膚の損傷部分から侵入した菌は、やがて毛包(毛の付け根)に達して、増殖しながら侵襲していきます。
 感染経路は、菌によって少し変わってきます。犬小胞糸菌や毛瘡白癬菌は、動物に感染することで生息している菌(動物寄生菌)なので、感染しているワンちゃんやネコちゃんと直接接触することで感染します。それだけではなく、感染しているワンちゃんやネコちゃんから落ちた鱗屑(フケ)や毛、使っていたブラシなどからも感染してしまいます。一方、石膏小胞糸菌は、土の中に生息している菌(土壌生息菌)なので、土を介して感染することが多いです。

 診断方法は、いくつかあります。手っ取り早い方法は、病変の毛や鱗屑を採り、顕微鏡で直接見つける方法です。ただ見つからない場合もあるので、確定診断を行うためには培養検査が必要となってきます。病変の毛や鱗屑を培地にのせて培養します。培地の変色や真菌の増殖などにより判定を行います。判定が付くまでに、約1週間から2週間かかります。時間がかかる検査ですが、信頼度の高い方法です。
 また、犬小胞糸菌が感染している被毛に、ウッド灯という機械を用いて特殊な紫外線を当てると、蛍光を発します。簡単な検査なうえ、すぐに結果が判るのですが、一方で、判断がつかないことがあったり、犬小胞糸菌以外の皮膚糸状菌が蛍光を発しなかったりという欠点もあります。
 病変が出てくる場所としては、頭部、顔面や肢が多いです。その中でも特に、眼の周囲、鼻、口の周囲、耳そして四肢端によく発症します。抵抗力や免疫力が低下した時、若齢動物や老齢動物などが感染しやすく、より重篤な症状を示す傾向にあります。

 症状として最も一般的なのは、円形の脱毛(“Ring worm”と呼ばれることもある)です。脱毛の中心部は鱗屑が出たり、黒く色素沈着したりしていることが多く、脱毛部位全体は赤く腫れます。感染の初期では、脱毛がまだ起こっておらず、円形の病変が隠されていることもあります。細菌などの二次感染を起こすと、炎症が強くなり、出血、痂皮(かさぶた)、び爛が起こり、膿瘍が形成されることもあります。
 痒みは、皮膚糸状菌の単独感染では軽いことが多いようですが、二次感染を起こすと強くなります。

 さて、治療方法なのですが、いくつかの選択肢があります。大きく分けると、真菌に効果のある内服薬での治療と外用薬での治療です。ワンちゃん、ネコちゃんの年齢、基礎疾患の有無、そして病変の範囲などによって決めていきます。また、可能であれば、抗菌作用のあるシャンプー(勿論、ワンちゃん・ネコちゃん用の)で洗ってもらうことも一つの治療方法となります。皮膚を清潔に保つことが可能になるからです。さらには、ワンちゃんやネコちゃんのいる環境(ケージや寝床など)を常に清潔にすることも、再感染を防止するという意味合いでは大切になってきます。

 この皮膚糸状菌については、感染しているワンちゃん、ネコちゃんから人にもうつる人獣共通感染症です。人の症状としては、感染した場所が赤く円形に腫れてくることが多いようです。もし、症状が認められた場合には、ワンちゃんやネコちゃん同様、早く受診(人の皮膚科に)されることをお勧めします。また、ワンちゃん・ネコちゃんに皮膚症状がある場合は、そのことをお医者さんに伝えて下さい。お医者さんが診断される際の重要な手がかりとなります。


皮膚病シリーズ 3 (2005.11.30 up)

皮膚に棲みついている寄生虫 2
ワンちゃん・ネコちゃんの体表に寄生している外部寄生虫について取り上げている二回目です。前回は、疥癬<かいせん>についてお話しましたが、今回は毛包虫(ニキビダニ)について取り上げてみます。

 毛包虫は、通称“アカラス”と呼ばれているニキビダニです。ダニの仲間で、毛包内(毛穴)や皮脂腺に棲みついていることから、“毛包虫”と呼ばれています。健康なワンちゃん、ネコちゃん、そして人にも存在しているのですが、異常に繁殖してしまった場合に症状を示す様になります。ワンちゃんにはワンちゃんの、ネコちゃんにはネコちゃんの、人には人の毛包虫が存在しています。基本的には、動物種を超えての感染はないとは言われています。

 感染経路としては、生後間もない頃に母犬や母猫との接触によるものがほとんどですが、感染している個体との濃密な接触によっても感染することもあります。

 発症要因としては、年齢、遺伝、ストレス、気温、環境の他に、免疫力の低下や基礎疾患の存在が考えられます。基礎疾患としては、様々なことが考えられますが、内分泌性皮膚炎(副腎皮質機能亢進症、甲状腺機能低下症など)やアレルギー性皮膚炎などの皮膚疾患を併発していることが多いです。また、発情や妊娠がきっかけとなって、発症することもあります。

 診断は、疥癬と同様に皮膚の一部を掻き取り、顕微鏡を使って見つける方法が一般的です。疥癬と比べると、寄生している場所が毛穴の奥深くなので、皮膚を深く掻き取る必要があります。初期の場合は寄生数が少なかったり、皮膚の奥深くに潜んでいたりすることから、一回の検査では検出できないことがあます。そのため、疑わしい場合は、検査を何回か行っていきます。

 症状を示して問題となってくるのは、多くがワンちゃんです。ネコちゃんも感染するのですが、発症するのはマレです。発症しても全身性にはなりません。一方、ワンちゃんでは限局性(顔・四肢端など)の場合と全身性の場合があります。全身性でも、症状は初め、顔(眼や口の周り)、四肢端に表れ、その後首や頭、肩や胴などに広がっていきます。毛包虫が多数寄生することで、皮脂腺や毛包が拡張、破壊され、脱毛していきます。また、不快感からワンちゃんが掻いたり、舐めたりすることで細菌の二次感染が起こってきます。二次感染を起こした皮膚は、赤黒く腫れ、化膿し
、痒みも強くなり、臭いの強い脂漏症を発します。

 子犬や子猫では、免疫力が弱いことから発症することがよくあります。局所的な病変であり、症状も軽いことが多く、90%近くが自然治癒していく傾向にあります。そのため、子犬や子猫では積極的な治療(駆虫薬を使った治療など)は行わず、対症療法となっていくことがあります。

 治療方法には、いくつか方法があります。駆虫薬(殺ダニ剤)の投与や薬用シャンプー、薬浴などです。ワンちゃん・ネコちゃんの年齢や発症部位(全身性or限局性)、症状、存在している基礎疾患、体質などを考慮して治療方法を決定していきます。例えば、コリー種(コリー、シェルティ、ボーダーコリーなど)は特殊な体質を持っているため、副作用が発生する危険性があるので、駆虫薬を投与することができません。もちろん細菌の二次感染により膿皮症を併発している場合は
、抗生剤の投与も必要となってきます。発情や妊娠のたびに再発を繰り返す場合は、避妊・去勢手術を行うのも一つの治療方法と言えるでしょう。もちろん、基礎疾患によっては、同時にそちらの治療も行っていかなくてはいけません。また、アレルギー性皮膚炎を併発している場合に、ステロイド剤が炎症や痒みを抑えるために処方される事がよくありますが、ステロイド剤は投与日数や投与量によっては免疫力を低下させてしまうことがあるため、毛包虫が増殖し、症状が悪化していくこともあります。

 気をつけないといけないことは、治療を行って症状が改善されても再発する危険性があるということです。慢性化したり再発を繰り返したりする場合は、治療期間が長引くことがあります。いずれにしても、治療が困難な皮膚病の一つになります。

 日頃から皮膚の状況をよくチェックして、早期発見、早期治療することが大切です。また、基礎疾患に関しても同じことが言えるでしょう。

 今回二回に分けて取り上げてきた外部寄生虫による皮膚炎ですが、疥癬や毛包虫の他にもノミやシラミなどによる皮膚炎もあります。シラミが寄生しているワンちゃんやネコちゃんを見かけることは少なくなりましたが、ノミが寄生していることはよくあります。ノミは寄生して吸血することで痒みをもたらすだけではなく、ノミアレルギー性皮膚炎を起こしたり、条虫と呼ばれる消化管内寄生虫を媒介したりします。ノミに関しては、スポットオンタイプのお薬をつけるだけで、駆除・予防ができます。最近では、暖かい室内で、ノミは年中発生しています。この季節のノミ予防もお勧めします。


犬について(その1) (2005.11.4 up)

日々寒くなってきましたね。今回は犬について連載してみたいと思います。犬をもう少し知ることで、より楽しく過ごせたら…、と思います
 まずはじめに、犬の祖先についてお話したいと思います。犬の祖先は、みなさんご存知のとおりオオカミです。しかし他の多くの肉食獣とも遠い血縁関係にあります。現在肉食獣は7種類(ネコ、アライグマ、イタチ、ハイエナ、シベットとマングース、クマ、イヌ)の祖先は同じでした。ここでそれより前の祖先をたどって見ましょう。
 今日の哺乳類の祖先は、その時代の環境に適応して生き残るために進化してきました。
ミアキス;<およそ5000万年前に現在は絶滅しているミアキスと呼ばれる肉食哺乳類の一種が進化して、現在の歯形を持つ肉食獣が出現しました。
  ↓
ヘスパーオシオン
3800〜2600万年前に、イヌ科の直接的な祖先が高いと思われる動物に進化しています。解剖学的にイヌ科の特長である内耳を持っています。
  ↓
レプトシオン
2600〜700万年前には、現在、犬および全肉食動物の原種といわれるレプトシオンが出現しました。この時点で犬によく似たイヌ科の動物が42種類います。
  ↓
カニダー
200万年前〜更新世の始まりにかけて現在の肉食獣の基本的な種類に進化を遂げています。この時点でイヌ科の動物は大きく減少して10種類になっています。このうち一番大きいグループはイヌ属で、オオカミ、ジャッカル、コヨーテ、イヌはここに入っています。ちなみに二番目に大きいグループは12種類のキツネが入っているキツネ属です。
 イヌ科の特徴としては、細長い頭蓋骨、瞬発力のあるがっしりした後ろ足、筋肉に支えられた柔軟に動く前足、保温性の高い被毛、コンパクトな足、獲物を捕らえ押さえ込み切り裂く巨大な歯、容積の大きい頭脳を持ち、さらには鋭い聴覚と嗅覚をを備えています。

<犬と遠い仲間>
 犬はイヌ科イヌ属に入りますが、イヌ科は他に9種類(属)あります。他のイヌ属の動物は家犬の遠い仲間に当たりますが、現在も存在するのが21種類のキツネやリカオン、ドウル、タテガミオオカミ、ヤブイヌ、タヌキです。これらの動物たちは共通した進化をしているので、行動パターンもよく似ています。

<犬と近い仲間>
 コヨーテ、ジャッカル、オオカミ(ホッキョクオオカミ・アカオオカミ・北アメリカオオカミ・メキシコオオカミ・ヨーロッパオオカミ・アジア/アラブオオカミ)が近い仲間として知られています。



皮膚病シリーズ2 (2005.9.25 up)

皮膚に棲みついている寄生虫 1
ワンちゃん・ネコちゃんの体表に、虫が寄生していることがあります。ノミをはじめとして、シラミ・ダニなど様々な外部寄生虫がいます。そのうち特に、疥癬<かいせん>(ヒゼンダニ)と毛包虫(ニキビダニ)について二回に分けては取り上げてみましょう。
 今回は、疥癬についてです。疥癬は、体表に寄生しているマダニとは違い小さなダニなので、肉眼で見つけることは困難です。ワンちゃんでは主としてイヌセンコウヒゼンダニ(犬疥癬)が、一方ネコちゃんでは主としてネコショウセンコウヒゼンダニ(猫疥癬)と呼ばれる種類の疥癬が寄生していることが多いです。犬疥癬は猫疥癬に比べるとやや大きく楕円形であり、猫疥癬は円盤状で脚の短いダニになります。基本的には、「宿主特異性」が強いので、ワンちゃんにはワンちゃんの、ネコちゃんにはネコちゃんの疥癬が寄生します。どちらの疥癬も、ワンちゃんやネコちゃんの体に寄生したオスとメスが交尾すると、メスが産卵のために皮膚にトンネルを掘り、その中に卵を産みつけます。卵からかえった幼ダニは若ダニ・成ダニとなり、繁殖していきます。
 診断は、ワンちゃんやネコちゃんの皮膚から痂皮(<かひ>かさぶたのこと)をもらい、顕微鏡でダニや卵、糞を見つけ出すことによって行います。ただ、一回の検査で必ずしも見つけ出せるというわけでもありません。
 感染経路としては、多くの場合が感染してしまっているワンちゃんやネコちゃんに直接接触することによりおこります。また、お散歩などで外に出た時などに、感染しているワンちゃんやネコちゃんの体から落ちていた疥癬をもらってしまうこともあります。
ワンちゃんでは、初期には顔や四肢、特に耳やわきの下など毛の薄い部分に皮膚炎を発症することが多く、その後全身性に広がっていきます。赤いブツブツなどができ、激しい痒みをしめします。かくことで、皮膚が傷ついてしまい脱毛したり、痂皮ができたりします。さらには、その場所に細菌が二次感染することで化膿し、膿皮症を起こします。慢性感染を起こしている場所では、潰瘍やび爛を生じてきたり、皮膚の状態が悪化することで、独特の臭いがしてきたりする場合があります。
一方、ネコちゃんでは、主に耳や眼の周囲などの顔に発生しますが、この部位を激しくかくことで、後肢にさらには腹部に広がることがあります。最初はワンちゃん同様、赤いブツブツができ、その後、かくことにより脱毛、痂皮が見られるようになります。鋭い爪でかくことで、引っかき傷が全身に見られます。感染が慢性化してくると、皮膚が象の皮膚のように分厚くなってきて、額にしわが寄って見えることもあります。一般的には、病変部はカサカサしていることが多いですが、やはり細菌の二次感染により膿皮症を起こしていると、ジュクジュクした感じになります。
激しい皮膚の痒みの原因としては、疥癬が皮膚にトンネルを掘ることというよりも、疥癬が出す糞や分泌物質などに対してアレルギー反応を示すためだと考えられています。
治療方法としては、基本的には駆虫薬を使います。一回の駆虫だけでは、不十分なことが多く何度か駆虫を行う必要があります。その他の方法としては、薬用シャンプーと薬浴を併用することもあります。ワンちゃん・ネコちゃんの年齢や種類、一般状態により治療方法が変わってくることもあります。また、細菌の二次感染による膿皮症を起こしている場合には、抗生物質も併用します。多頭飼いをされている時は、他の子へうつる可能性もあるので、同時に治療していくことをお勧めします。最近では、海外で疥癬に対しての効果が承認されているスポットオンタイプ(首に垂らすタイプ)のお薬を使った治療方法も検討され始め、効果が認められたという報告もされています。
疥癬には、耳に寄生するミミヒゼンダニ(耳疥癬)という種類のダニもいます。この疥癬は、ワンちゃん・ネコちゃんともに同一種が寄生します。感染初期には軽い痒みを示すだけですが、慢性化してくると耳の中の炎症が進み、激しく耳をかいたり、頭を振ったりするようになります。耳の中には、黒い耳垢がたまり、悪臭を放ちます。ほっておくと、内耳や中耳にまで炎症が波及してしまい、神経症状を示す場合もあります。検査方法としては、耳垢をもらい、顕微鏡でダニを確認します。また、耳鏡を使って耳の中をのぞいた際に、動いているダニが見えることもあります。治療方法としては、耳の中をきれいに洗浄し、駆虫薬を投与します。また、ネコちゃんではスポットタイプでこの耳疥癬を駆除する効果のあるお薬(レボリューション)もあります。
ちなみに疥癬は、人にも痒みを起こすことがあります。感染しているワンちゃんやネコちゃんに接触した可能性があって、症状が見られた場合は、是非、人の皮膚科に受診して下さい。


皮膚病シリーズ1 (2005.7.24 up)

ワンちゃん・ネコちゃんにも起こるアレルギー
 「アレルギー」とは、普通のワンちゃん・ネコちゃんにとっては無害な物質(アレルゲン)が侵入した時に起こる過敏反応のことです。アレルゲンとなる物には、食べ物・ノミ・花粉・真菌(かび)・ハウスダスト・動物の毛など数多くあります。アレルゲンは、皮膚への接触・吸入・接種などから起こります。人のアレルギー疾患の症状は、喘息・鼻炎・くしゃみ・皮膚炎及び下痢と様々ですが、ワンちゃん・ネコちゃんでは体の表皮に発疹(赤やピンクのブツブツ))ができたり、赤くただれたり、かさぶたができたりして、無性に痒くなる「アレルギー性皮膚炎」が主になります。ネコちゃんの場合、人間と同じ様に呼吸器症状が現れることもあります。一般にネコちゃんよりワンちゃんの方がアレルギー性皮膚炎のなるケースが多い様です。
 さて、アレルギーが起こっている時、体の中ではどんなことが起こっているのでしょうか?なんらかのアレルゲンに曝されると、体の中ではそのアレルゲンに反応する抗体(IgEと呼ばれるもの)が大量に産生されます。産生されたIgE抗体は、肥満細胞と呼ばれる細胞に結合します。そうすると、この細胞の中からいろいろな化学物質(ヒスタミンやロイコトリエン等)が放出され、周辺の部位に炎症を起こすことで皮膚炎に代表されるアレルギー症状が引き起こされます。
 主なアレルギー性皮膚炎には、「ノミアレルギー性皮膚炎」「アトピー性皮膚炎」「食餌性アレルギー性皮膚炎」や「接触性アレルギー性皮膚炎」などがあります。ワンちゃん・ネコちゃんに最も多いのが「ノミアレルギー性皮膚炎」。背中の腰からお尻、尾の付け根にかけて、毛が抜けたり発疹ができたりすることが多いです。原因はノミ。ノミの多い少ないに関わらず、発症するので、明らかにノミが見つからなくてもノミの駆除・予防はしておく必要があります。もちろん、それと同時にワンちゃん・ネコちゃんのいる環境からノミを駆除し、環境を清潔に保つことも大切です。
 近年主にワンちゃんで増加してきたのが、「アトピー性皮膚炎」です。「アトピー性皮膚炎」は何が原因物質となるアレルゲンとなっているかは、ワンちゃん・ネコちゃんによって異なります。花粉・ハウスダスト・ダニや真菌などの環境中のアレルゲンであったり、食餌性であったり、それらが組み合わさって起こっていたりします。顔、わきの下、内股、四肢などに強い痒みを起こし、皮膚が赤くなります。痒みが著しい時には、痒みを抑える薬(ステロイドや抗ヒスタミン剤など)を使います。また、アレルゲンとの接触をできる限り少なくするために、シャンプーをして体に付いたアレルゲンを洗い流したり、食餌を変更したりします。最近では、免疫抑制剤やインターフェロンを使うことでアレルギー反応を起こりにくくする治療も行われています。犬種的には、柴犬、シーズー、レトリバー系、ウエスト・ハイランド・ホワイト・テリア(ウエスティ)などに多く見られます。
 「食餌性アレルギー性皮膚炎」は、特定の食べ物に対して起こるアレルギー反応によるものです。基本的には、アレルゲンとなる食べ物を含まない食餌を続けることにより症状は改善します。ただ、アレルゲンとなる食べ物が何かを解明することが大変です。また、この病気の10〜15%では、皮膚症状だけではなく、下痢などの消化器症状も見られます。
 その他にも様々な原因でアレルギー性皮膚炎は起こっています。アレルギー検査を行うことにより、アレルゲンとなっているものをある程度知ることもできます。ワンちゃん・ネコちゃんの血液をもらうことで、アレルゲンとなりやすい何種類(当病院では92種類)かの物質に反応を示すかどうかを検査します。例えばその検査結果によって食餌を変更したり、敷物を変更したりすることでアレルギーが起こるのをある程度抑えることができるのです。積極的な方法では、減感作療法と呼ばれる治療を行うことも可能です。これは、アレルギー検査によって判明したアレルゲンの入った抽出液を少しずつ、量を増やしながら一定期間にわたって注射していくことで、アレルゲンに対する感受性を低下させることも目的とした治療法です。
 たかが痒みと思われる方もおられるかもしれませんが、痒みがひどくなると、元気や食欲がなくなる事もあります。完全に治る可能性の低い病気ではありますが、方法によっては上手くコントロールしてあげることもできる病気です。皆さんのおうちのワンちゃん・ネコちゃんは痒みを訴えていませんか?痒みがひどくなる前に病院に連れて行ってあげて下さいね。


大きなダニ (/.\)

関西地方も梅雨入りしましたね。先日は雨が降りましたが、梅雨というのに雨が少ないのでこの夏は水不足が心配ですね。節水しないと…。温度や湿度が上がればダニやノミも増えてくる恐れがありますので、十分に気をつけましょう。

 さて、今回はマダニについてお話したいと思います。ここ最近「ダニがついた」とか「血豆ができたみたい」と言って来院される方が多くなってきました。診察室で見たり、飼い主さんが持ってきたものをみると、それはまさしく「マダニ」です。そもそもマダニは、山中などの自然領域に成育している虫です。人間が山を切り開いたり、開拓していくうちにその場所に残ってしまい、動物に寄生し悪さをするのです。マダニは悪者に思われますが(実際、ワンちゃんに寄生して様々な病気をもたらすので悪者ですが・・・)、人間も悪者振りを発揮させる原因を作っているのではないかと思ったりもします。難しいですね・・・。
 話が脱線してしまいましたが、犬バベシア症は、Babesia canis および B.gibusoni にという原虫の感染によって引き起こされるのが一般的です。これらの寄生虫は赤血球に寄生して進行性の貧血を起こします。バベシアは何によって伝播されるかというと、主にフタトケチマダニ(マダニの一種)や輸血によって媒介されます。一般的には、関西より南側の病気といわれていますが、輸送手段が発達した現在では、ほぼ全国で発生しているようです。先ほども触れたように、山中、草むら、公園などに潜んでいることが多いので、そのようなところに行った場合は、十分にワンちゃん体をチェックしてくださいね。
 マダニ類の発育は、卵→幼ダニ→若ダニ→成ダニと成長していき、卵を除くそれぞれの段階で動物を吸血します。産卵時には必ず地上に落下し、そこで孵化した幼ダニは新たに寄生する動物を探します。バベシアに感染している動物の血を、媒介動物であるマダニの成ダニが吸血します。その時に、バベシア原虫はダニの卵巣を通過して卵に移行します。幼ダニが孵化すると原虫はその体内で一定の発育を行って感染力を獲得した後に、ダニの唾液腺に集まって感染する機会を待ちます。幼ダニが動物に寄生し吸血を行う時には大量の唾液を動物の体内に注入するので、注入されたバベシアは唾液に乗って新たな動物に感染します。体内に注入されたバベシアは赤血球に侵入し、そこで分裂しながら増殖して赤血球を破壊して再び新たな赤血球に進入して増殖を繰り返します。そして、どんどん赤血球を破壊して動物を重度の貧血状態にしていきます。
 一般にバベシアに感染してから発症までの潜伏期間は10〜21日といわれています。症状を発症しないまま経過する場合もあるので、感染日を特定することは困難な場合が多いです。

 臨床症状は、甚急性または急性感染では、貧血と発熱が起こり、それによって粘膜蒼白、頻脈、頻呼吸、沈うつ、食欲不振となります。また黄疸、点状出血および肝臓・脾臓腫大になることもありますが、これは感染病期と播種性血管内凝固症候群(血管の中で血液が固まってしまい血栓を作る病気です)が存在している場合起こります。慢性感染では、体重減少、食欲不振が起こります。

 感染しているかどうかを調べる場合は、一般的に血液塗抹といい、血液を染色液で染めてバベシア原虫虫体を確認します。最近では、検査機関にて間接蛍光抗体検査やPCRという検査法によって診断することも可能です。

 治療方法は、貧血の状態や一般状態によって変わりますが、一般的にガナゼック(Diminazen aceturate)という特殊な薬を使用して原虫を駆除します。しかし、本製品は副作用を起こすことがあるので、慎重に使用しないといけない薬品です。現在は様々な理由で製造中止になっています(文書で正確に伝えるのは長くなるので、省略させていただきます。詳しくは製薬会社へ問い合わせてください)。症状が軽度の場合は、抗生剤をする場合もあります。

 最後に、バベシア症は治療を行うと症状が出なくなります(完治することは稀です)。しかし、ワンちゃんの抵抗力が低下した時などに再発することが多々あります。一度バベシアに感染したワンちゃんは、定期検診することをお勧めします。

 以上でバベシア症の話を終わらせていただきます。詳しいことを聞きたい場合は、ホームドクターに尋ねるか、掲示板をご利用ください。また当院に来院されている患者さんは、直接獣医師に聞いてください。ご説明させていただきます。


毛の抜け変わる季節となりました(2005.5.13 up)

ワンちゃんワンちゃん・ネコちゃんの抜け毛が多いことに心配されている飼い主さんも多いので?綿毛のようなふわふわした毛が、カーペットなどにべったり張り付いていて、掃除に苦労することもあったりしませんか?

 春から夏にかけて季節の変わり目であるこの時期、生理的に脱毛が多くなります。これは皮膚病というよりも、季節とのかかわりによる換毛と考えられます。ワンちゃん・ネコちゃんの皮膚は、密集した被毛でおおわれています。春や夏には上毛と呼ばれる丈夫な毛だけが生えていますが、秋から冬にかけては上毛に加えて柔らかな下毛が生えています。この下毛は、冬毛とも呼ばれ、寒い時期では保温の役割を果たしていますが、暖かな季節になると不要となり抜け、毛皮の風通しが良くなります。このため、この時期の脱毛が多くなるのです。また、最近では、屋内で飼われているワンちゃん・ネコちゃんが多いため、冬に暖房を使い始めた時期の脱毛も増えてきています。

 ネコちゃんの場合には抜け毛が気になるのか、しきりに体を舐める子もいます。そのため、体内に入った毛が胃の中で固まりになることも…。毛球が胃内につかえたネコちゃんは、頻回に嘔吐するので注意してあげてください。また、毛を多く飲み込んで糞便に毛が混じっていることもあります。毛球防止のためには、まずよくブラッシングをしましょう。ブラッシングが困難な場合は、ヘアボールコントロールや毛玉ケアなどといった毛球を作りにくくするような食餌があったり、便中の被毛を柔らかくして排泄を促進するペースト状の予防薬などがあったりします。

 季節的な生理的脱毛は、脱毛部が目立つことはなく、また痒みや発疹などの症状が見られることはありません。一方、病的な脱毛になってくると、部分的に脱毛して地肌が見えたり、皮膚が赤くなっていたり、色素が集まって黒ずんでいたり、痒みや悪臭などの症状が伴うこともあります。部分的な脱毛ではなくても、体全体から異常に毛が抜ける場合にも病的な原因が考えられます。

 病的な脱毛の原因としては、いろいろな病気が考えられます。主な原因は、アレルギー性皮膚炎、内分泌性(ホルモン性)疾患、寄生虫や真菌、最近による感染症などです。アレルギー性皮膚炎や感染症では、毛の根元にある毛を作る毛包がおかされて毛が抜け、痒みでワンちゃん・ネコちゃんは体をひっかきます
。また、内分泌性疾患では、ホルモンの分泌される量が変化した結果、毛包の活動が止まって脱毛します。内分泌性疾患による脱毛では、異常をおこすホルモンの種類によって脱毛するところが変わっていきます。このタイプの脱毛では、痒みを伴わないことがほとんどです。

病的な原因による脱毛を含めて、皮膚病は様々な原因が混合していることもあり、原因によっては治療に長い時間を要することもあります。おうちのワンちゃん・ネコちゃんの皮膚に何か心配な事がある場合は、早めに病院へ連れて行ってあげてくださいね。


ハムスターって… (2005年4月14日 up)

 お久しぶりです。ワンちゃんを飼っている方は、フィラリアの検査はお済ですか?今年は例年より蚊が早く発生しているようなので、お済でない方は動物病院へ駆け込んでくださいね。
 しばらくアップができなくて申し訳ございませんでした。今回はハムスターのことについて書きたいと思います。

 現在日本でペットとして飼われるハムスターは大きく分けると3種の属があります。ゴールデンハムスターがいるゴールデンハムスター属、ジャンガリアンハムスター、ロボロフスキーハムスター、キャンベルハムスターがいるヒメキヌゲネズミ属、チャイニーズハムスターがいるキヌゲネズミ属があります。ハムスターの種類は23〜25種あるといわれています。

 ハムスターは自然界ではどのような環境中に住んでいるのでしょうか?ゴールデンハムスターはブルガリア、ルーマニアからイランにかけての砂丘や砂漠のへりなどの乾燥したところ住んでいます。またジャンガリアン、キャンベル、ロボロフスキー、チャイニーズはいずれもアジア大陸の乾燥地帯に生息しています。これらのことで分かるように、いずれのハムスターも乾燥した地域に生息するので、乾燥には強く湿気には弱いのです。ただし、乾燥した地域に住んでいるからといい水の量が少なくてよいかというと、そういうわけではありません。砂漠のサボテンも環境や気候が違うところで栽培すると、水を与えないといけないように(放置すれば枯れます)、ハムスターも飼育下では環境条件が変わるので、常に水を飲めるようにしておかなければなりません。また、どのハムスターも野生では温度変化の少ない地下に坑道を掘って穴の中で生活しているので、温度変化が激しいと温度調節が簡単にできないハムスターは簡単に熱中症や低体温に陥るので注意してくださいね。

 ハムスターを飼う場合は、自然界での生活をよく理解しておく必要があります。ハムスターは先程も書いたように、乾燥地帯に暮らし、地下に巣穴を掘って暮らしています。巣穴には寝室、トイレ、食堂などなど部屋を小分けにして生活しています。夜行性なので、基本的には昼間はよく寝て夜に動き回ります。よって、夜間の食餌量や排泄量が増えます。また、ハムスターはリスなどと違い、地面を這いつくばって生活しているので、豊富な食糧に恵まれるとは限らないので、わりと粗食に耐えることができます。食餌は大きな頬袋に入れて持ち運びます。ほかに食餌に関しては小さな昆虫なども食べることもあると言われています。水分についてもあまりたくさん飲むことはなく、夜露や草、食餌についた水分でまかないます。
 また、外気温が10℃下がると巣穴で過ごし、巣穴の中が4〜5℃下がると冬眠すると言われています。ここで注意してもらいたいのですが、ペットとして飼われているハムスターは、冬眠を絶対にさせないようにしてください。自然界と違い、毎日ほどほどの食餌を取ることができるペットのハムスターは、冬眠前にたくさんの食餌を取らずに冬眠に入ります。よって、冬眠すると栄養不十分で亡くなってしまうことがほとんどです。温度管理は慎重にしてくださいね。暑すぎず、寒すぎず・・・。


ノミの予防について(2004.3.12 up)


今回はノミの予防薬について書きたいと思います。現在ノミの予防薬はスポットタイプ(スプレータイプも含む)、内服タイプ、注射、首輪の4種類が発売されています。また薬理作用は大きく分けると、成虫駆除剤、発育阻害剤の二つのタイプがあります。
 それぞれについて説明していきたいと思います。ここに書いているノミの予防薬は、病院で処方できるものに限って書いています。市販の物については、当てはまらない事もありますのでご了承ください。
 また、ノミの生活環などについては、過去に書いています(意外と怖いノミ(2003.7.12 up))ので参照してください。


<種類>

スポットタイプ;皮膚に直接滴下するタイプの予防薬です。
(利点):簡便
     ノミアレルギー性皮膚炎の子にはお勧め。
(欠点):地肌に滴下しないと効果が落ちる。
     舐められない首の後ろに滴下しないと、効果が出る前に取れてしまう。

内服タイプ;薬を飲むことにより、予防するお薬です。予防薬を飲むときは、ご飯と一緒に飲ませるようにしましょう。
(利点):ご飯と一緒に食べてもらえるかも・・・。
(欠点):飲んだと思っていても、吐き出してしまっていることがある。

注射タイプ;1回注射をすると6ヶ月間効果は持続します。
(利点):毎月滴下や、投薬をしなくて良い
     一瞬で終わってしまう。
(欠点):注射時に疼痛を示す子がいる。

首輪タイプ;通常の首輪のように装着します。
(利点):効果の持続期間が長く(数ヶ月)、比較的経済的。
(欠点):元気・食欲をなくす子がたまにいる。その場合、首輪を袋から出してすぐには付けず、2日くらい放置してからつけると良い。


<薬理作用について>
成虫駆除剤;体についたノミの成虫を駆除する薬です。よく知られている薬はフロントライン、アドバンテージというものがあります。両者ともノミの神経系に作用します。ノミの神経系に作用しますが、犬や猫、人間には無害です。フロントラインはノミ以外にも、マダニにも同様の作用を示します。

発育阻害剤;ノミの産んだ卵を成虫に孵らなくすることでノミを予防します。内服タイプや注射タイプがこれに属します。一部滴下タイプでもあります。

成虫駆除剤+発育阻害剤;先日発売されたフロントラインプラスが二つの効果を併せ持っています。


<一般的に病院内で処方されるノミの予防薬>

滴下タイプ;フロントライン、フロントラインプラス、アドバンテージ、ダーナムスポット

内服タイプ;プログラム

注射タイプ;プログラム注射薬(猫用のみ)

首輪;ボルボカラー(犬用のみ)


最後に、ノミはワンちゃんや猫ちゃんだけでなく、人間にも害を及ぼします。また目で見えるくらいノミがいるということは、少なくてもその数の10倍は体の表面に寄生しています(1匹見つけたら10匹はいるということです)。さらには現在ノミにアレルギーを起こしていなくても、将来的にアレルギーになることも考えられます。発症時期を遅らせるためにも、予防をしておきましょう。


ウサギって・・・?  その2(2004.1.7 up)


 あけましておめでとうございます。しばらくの間アップができなくて申し訳ありませんでした。久々にアップしました。お楽しみにしていた方(いないかな?)お待たせいたしました。
 本格的な冬を向かえ、高齢のワンちゃんにはしんどい時期を迎えますね。特に心疾患を持っているワンちゃんは十分に気をつけてくださいね。

 さて、前回に引き続きウサギさんについて少し書きたいと思います。少し難しいかもしれませんが、分かりやすく書くつもりなので、頑張って理解してくださいね。そして、長い・・・。

<解剖学的特長>
(眼)
 ウサギさんの眼って真横についていますよね。片方の眼だけで約190度も見渡せるんですよ。だから死角はほとんどないのですが、唯一頭の真後ろだけは見ることができません。とはいっても、頭の真後ろにつけるものって小さな虫などしかないですよね。瞳孔は暗いところでよく広がり、少しの光をだけで物が良く見えま(夜行性ですもんね)。あと、ウサギさんの目は構造的に青と緑の色に対しての敏感な色感を持っています。

(肉垂)
 肉垂ってどこ?と思われる方もいるかもしれませんが、肉垂とはあごの下にブラーンと垂れているヒダのことをいいます。オスにはほとんど見られないのですが(あったとしてもそんなに大きくない)、メスでは年齢が上がると必ず見ることができます。個体差はありますが、2歳くらいから(遅くても3歳頃には)目立ち始めてきます。太っているウサギさんの肉垂には脂肪がた〜くさん入ってます。
(耳) 
 ウサギさんの耳って大きいですよね。垂れてる子もいればピーンと立っている子もいますよね。概観からも分かるように、ウサギさんの耳は非常に聴力がよく、外敵の音をすばやく察知して逃げれます。あと、もうひとつ非常に大事な役割が耳にはあります。それは体温を逃がすという役割です。ウサギさんの耳って血管がたくさん見えますよね。暖かいときは血管が拡張して体温を放散しながら体温調節をしているんですよ。このことからも分かるように、ウサギさんは暑さには強くありません。もともと夜行性ですから、涼しい時間帯に活動をして、暑いときは穴の中の涼しいところで生活しています。よって夏場締め切った部屋に放置しておいたり、直射日光が当たりすぎたりすると、簡単に熱射病になってしまいます。気をつけてくださいね。

(その他)
 ウサギさんの骨は身軽に動けるように軽くできていています。そのせいか意外と簡単に骨折してしまいます。特に運動をしていないウサギさんは骨折しやすいですね。間違ってもウサギさんにとって無理のかかる抑え方や高いところから落ちることは避けてくださいね。
 特徴のひとつとして、胸郭(胸の大きさ)がすごく狭くなっています。よって、肺活量は少なくなっています。ウサギさんはスプリンターであってマラソンランナーではないのです。あんまりギュッと抱きしめたり、暴れて興奮するウサギを長時間にわたって強く抑えすぎると呼吸困難になり低酸素症に陥ることがあります。
 歯についてですが、ウサギさんには犬歯(いわゆる牙)がないのは飼われている方ならご存知だと思います。これは草食動物では一般的なことです。ウサギさんが変わっている点は、上顎切歯(前歯)は2本見えますが、実は切歯の裏に小切歯といわれる小さな切歯があり、大切歯(前歯)と小切歯とは前後に重なって生えているので重歯目といわれるのです。切歯は生涯にわたり伸び続けます。一年当たり約10〜12cm伸びるといわれています。その切歯で食べ物を擦り合わせて切っていくので、噛みあわせが悪い子以外はうまく削れてノミのような鋭さが保てられます。切歯の後ろはしばらく間が開いて臼歯になります。左右それぞれ上が6本、下が5本になってます。この歯も切歯ほど早くはないですが、伸び続けます。噛みあわせが悪いと、不正咬合という病気になってしまいます。
 最後に腸ですが、体長の10倍あるといわれています。お腹の中のほとんどが盲腸です。基本的に草食動物は草を消化するのに長い腸が必要になってきます。盲腸はすごく発達していて、植物性の栄養素を動物が利用可能なものにするために、盲腸内の常在細菌の発酵作用と盲腸の複雑な機能が重要な働きをしています(牛や羊などの反芻動物は、複胃といって4つの胃を持っています。そこで盲腸の代わりの働きをしています。だからウサギや馬などよりは盲腸は小さいのです)。犬や猫、人などとは違いますね。

<生理学的特長>
 ウサギは完全な草食動物ですから、植物という栄養源から動物の肉体を構成していきます。よってその消化器官は一般に肉食動物の消化器官よりも複雑であり、高機能でパワフルにできています。先ほども述べたようにウサギさんの腸はすごく長く、盲腸が巨大なので、この盲腸で植物は発酵、消化されてエネルギー化さてます。じっくり時間をかけて消化吸収されるのです。また、カロリー含有量の少ない植物を栄養源とするために、頻繁に食事をします。そうしないと、体を維持する栄養分が続かないのです。よって絶食には非常に弱い動物になります。食事の与え忘れや、長期の食欲不振が大きな問題となってきます。
 ウサギさんは、夜便または盲腸便という柔らかくて粘液に包まれた黒色の便をします。通常は夜〜朝方にかけ肛門に口をつけてこれを食べます。これは食糞とも言います。野生のうさぎさんは昼でも巣穴の中で食べるんですよ。食糞には盲腸内の微生物によって合成されたビタミンB群やその他のビタミン、蛋白質が多く含まれています。つまりウサギさんは食物を1回通過させただけでは十分な栄養分を効率よく吸収できないので2回通過させるのです。牛や羊などの反芻類の場合は、胃から口に何度も食物を逆流させて咀嚼(これを反芻といいます)しています。ウサギさんとはちょっと違う形をとっています。ウサギさんが食糞をしないと貧血を起こして30日くらいで死んでしまうこともあります。
 ウサギさんは先ほども書いたように夜行性なので、汗腺がないため汗をかくことはありません。だからあんな大きな耳で体温を外ににがしているのですよ。本来の夜行性という生理学的なリズムを尊重するなら、昼間は休ませて夜に食事を多めに上げるほうがよいと思います。あまりのかわいさで、昼間遊びすぎて夜に休まなくてはいけないということになると、それが病気の原因になることもあります。よって、病気のウサギさん、高齢のウサギさん、体力の落ちたウサギさんは、なるべく遊ぶ時間帯は夕方以降の夜にしてあげたほうがよいと思います。特に食欲低下時は夜にたくさん食べれるようにしてあげるほうが回復にも有利に働くこともあります。
 最後に、一般的にはウサギさんは人間の生活リズムに合わせる余力はあるので、元気なときは人間に合わせて昼間遊んで昼食べる生活をしても大丈夫です。安心してくださいね。

基礎データ ⇒ 出生時体重;30〜50g(中型種)
       妊娠期間;29〜35日
       体温;38.5〜40.0℃
       心拍数:130〜325/分
       呼吸数:32〜60/分
       寿命:6〜7歳(10歳までいくと長寿ですね)

<ウサギさんの病気>
 ウサギさんの病気で一般的に多いのは、皮膚疾患、消化器疾患、歯科疾患といわれています.

・皮膚炎
 皮膚炎は大きく分けると、@皮膚糸状菌症、A細菌性皮膚炎、B寄生性皮膚炎の3つに分けられます。
@は主に毛蒼白癬菌というカビによりおこります。部屋の湿度が高かったり、全身の抵抗力が低下しいる場合に発症することがあります。リング状に広がっていくようなものが多く、鱗屑(リンセツ;いわゆるフケ)がほとんどの子で見られます。皮膚が赤くなったり痒みは出ないことがほとんどですが、細菌感染が重なっていると皮膚が赤くなり痒くなります。治療は皮膚糸状菌のみが原因の場合はそれを治療しますが、根本的な疾病を抱えている場合もありますので、その場合はその治療をしないと治癒することはありません。
Aは「湿性皮膚炎」と「足底潰瘍」に分けられます。「湿性皮膚炎」は涙が出ることにより、眼の内側が湿って皮膚炎になったり、よだれが出ることにより口周りや肉垂のしわの部分が皮膚炎になったり、尿やけといって、おしっこなどにより会陰部が常に濡れていると皮膚炎になったります。「足底潰瘍」は別名「飛節びらん」または「潰瘍性四肢皮膚炎」と言われます。ウサギさんは人間と一緒で足の底に体重がかかるので、金属でできた床や足の底の毛が薄かったり、太って体重がかかりすぎているウサギさんに非常に多いです。対処方法は、体重を減らす、敷きワラを増やすなどの対応をしないとなりません。同時に内服も必要になります。
B寄生性皮膚炎は耳疥癬、ツメダニ、ワクモ、シラミ、ノミなどが原因で起こります。それらの原因寄生物を除去(薬により)する以外は対処法はありません。

・消化器疾患
良くご存知かと思いますが、毛球症や消化管うっ滞があります。毛球症は毛球により胃の出口がふさがってしまいます。そうなると、胃腸の運動が低下して腸内細菌が異常に増殖し、鼓腸症となります。ウサギさんはワンちゃんや猫ちゃんと違い吐くことができないため、このようなことが起こりやすいのです。食欲の低下が主な症状になりますが、それを繰り返し起こす子もいれば、重篤な症状になり死にいたる子もいます。毛の含んだ糞をするウサギさんは十分に注意しましょう。
消化管のうっ滞は、胃腸の動きが低下することにより盲腸に多量の食べ物などが滞ってしまうことにより起こります。原因としては毛球症もそうですが、臼歯の不正咬合があることにより十分な食餌をとることができず、胃腸に刺激が与えられないため(よって、胃腸の動きが低下してしまいます)に起こる場合もあります。
このような消化器症状が出た場合は、早めにお近くの病院へ行かれることをお勧めします。

・歯科疾患
これは不正咬合のことになります。臼歯の噛みあわせが悪いパターンや切歯の噛みあわせが悪いパターンがあります。臼歯の場合は、先天的な要素が多いといわれますが、不適切な食餌が原因でも起こります。食餌については前回の物を参照してくださいね。臼歯の場合は麻酔をかけて臼歯を整形してあげる事をお勧めします。放置しておくと眼窩膿瘍といって、歯の根元などに膿の塊を作ってしまうことになります。そうなると、大変ですよ。
切歯についても先天的な要因が多いのですが、ケージをかじる、顔を強く打ったりして物理的な歯の変形によって起こることもあります。あまりひどい子は切歯を定期的に切除することをお勧めします。

その他に多いのは「子宮蓄膿症」や「尿石症」、「斜頸」ですね。「子宮蓄膿症」は食欲低下、陰部から血や膿が出てくる場合もあります。その場合は手術をして摘出しなければならなくなりますよ。子宮蓄膿症になるのは年をとってからになるので、体力も落ちてきます。って若いうちに避妊手術をしておくことをお勧めします。
「尿石症」はウサギさんの場合は「カルシウム結石」が多いとされてます。対処方法はカルシウム含有量の少ないペレット(詳しくはお近くの病院でお聞きください)や牧草(チモシーやイネ科の牧草)を与えてあげることによって、予防できます。
「斜頸」は頭が横に傾いていったり、眼振がおきたりします。原因は口の中から細菌が内耳に進入し内耳炎を起こしたり(他の感染ルートもあります)、尿を介して感染するエンセファリトゾーン脳炎という病気もあります。このような場合もなるべく早く受診してくださいね。


ウサギって・・・?  その1(2003.10.16 up

 朝晩も冷え込みはじめ、もうすっかり秋になりましたね。皆さん風邪を引かないように気をつけてくださいね。あっ、人間ですよ。ワンちゃん、猫ちゃん、ウサギさん、ハムスターさん、鳥さん、フェレットさん、プレーリードックさん・・・、季節の変わり目なので体調を崩さないようにしてくださいね。

 さて、今回と次回はウサギさんについて少し書きたいと思います。

(食餌)
 様々な議論がありますが、基本的にはラビットフードと乾草を与え、また野菜、果物なども多少与えるほうが良いとされています。しかし、意外とウサギさんは食餌に対してこだわりが強く、慎重な動物です。幼いうちに食べたことのない食餌を大人になってから食べ始めるというのは、意外と難しいです。また、ラビットフードを与えない場合で他のもので与えようとすると、理想的な栄養バランスをとるのは非常に難しくなります。少なくてもラビットフード+乾草(牧草またはワラ)で食餌を与えることをお勧めします。乾草は線維が多く含まれているので、胃腸の働きを良くしたり、歯を均等に磨耗させたりします。乾草の重要性は意外と高いので、必ず乾草も混ぜてくださいね。病気の予防にもなりますよ。
 ラビットフードを購入するときの注意点としては、粗線維は20%以上(特に、運動量の少ないウサギ)、蛋白含有量は成長期では15%、大人のウサギでは13%が目安です。決してパッケージのかわいさや派手さに惑わされないようにしてくださいね。

(環境など)
 室内でウサギを飼うには、ウサギ用ケージが市販されているので、それを使用すると便利だと思います。犬猫用のケージを使用してもいいのですが糞と尿の片付けが大変になるので、ウサギ用のケージを使用するほうが良いかと思います。ケージの中にはトイレや食器、給水ボトルなどを用意すると良いと思います。トイレも案外上手に使います。食器に関しては簡単にひっくり返すので、軽いものより重めのものを使うことをお勧めします。
 室外で飼う場合は、床は高めにする方が良いです。また、運動する場所を作ってあげるとなお良いと思います。そして忘れてはいけないことは、犬、猫、イタチなどが進入してこないように網などでバリケードを作ってあげてください。
 基本的にはウサギさんは寒さには強いのですが、湿気や隙間風などには弱いので、小屋などは防水し、隙間風を防ぐ必要があります。また小屋の中はできればワラを敷くと良いでしょう。夏は薄めに、冬は厚めに敷いてあげてくださいね。
 多頭飼いも良いのですが、ウサギさんを飼ったことのない人はできれば一頭で飼うのが良いでしょう。雄同士、雌同士で飼うことは兄弟以外では避けるほうが無難です。雄と雌はよほど相性が悪くない限りは仲良く暮らしてくれます。
 雌が出産した場合は、雄とは別居させてください。基本的にはウサギさんはよくなつきますが、雄は縄張り意識が強いのでスプレー行動をする事が多々あります。よって、去勢手術をすることをお勧めします。
 うさぎさんはとても神経質な動物ですので、同居していた仲間が亡くなったり、いなくなった時は、精神的なストレスがかなりかかり不安状態になりますので、十分に注意してください。

 次回は「ウサギの病気と体のメカニズム?」について触れたいと思います。


犬猫の避妊・去勢手術について(2003.9.11 up
)


 今年は冷夏でワンちゃん、猫ちゃんにとっては過ごしやすかったかと思います。農家にとっては大変な夏になりましたね。さらに今年は残暑が続くとのことで、ん〜異常気象で困りますね。環境保護に力を入れていきたいとは思っています。
 話がいきなり脱線してしまいましたが、今回はワンちゃん、猫ちゃんの避妊・去勢手術にてお話したいと思います。興味のある方、ない方是非一読下さい。新しいことがわかるかも・・・。

 皆さん様々な理由で避妊・去勢手術を行います。避妊・去勢手術ができる時期は、生後5〜6ヶ月から行うことができます。あまりに早く手術をしすぎると、ホルモンの病気になったり、成長に支障をきたすことも(大きくなりすぎたり、小さすぎたり)あります。手術の方法は、全身麻酔にて行います。手術時間は去勢手術で15〜30分、避妊手術で40〜50分で終了します。通常手術は、雄が精巣摘出術、雌が卵巣子宮全摘出術を行います。当院では術前検査(一般身体検査、血液検査など)を行いそこで手術不適となった子は、延期になります。

 ワンちゃんの避妊・去勢手術をお勧めする理由は、年をとってからの様々な病気を予防する目的もあるのです。ほとんどが高齢になってから発症し手術に対する負担が大きくなるので、若いうちに手術をすることをお勧めします。また、特に雄の陰睾(精巣が二つまたは一つ正常な場所に下りてきていない場合)は、去勢手術をすることをお勧めします。陰睾は奇形になりますので、下に降りてきていない精巣は腫瘍化しやすいのです。よく発症する病気としては、雄の場合は、前立腺炎、肛門周囲腺癌または肛門周囲腺腫、会陰ヘルニア(お尻の横が膨れてきて、皮の下に腸や膀胱等が出てきてしまう病気です)などを予防し、雌の場合は乳腺腫瘍(乳癌)、子宮蓄膿症などの子宮の病気などを予防します。特に雌は最初の生理が始まる前(通常生後6ヶ月くらい)に避妊手術をすると、乳癌の発生をかなりの高率で抑えられるといわれます。
 何故子宮や卵巣、精巣を取ると病気にならないのか・・・。それは雄の場合は精巣から出るホルモンが原因となり、前立腺の病気や肛門周囲の腫瘍を引き起こすからです。雌の場合は卵巣・子宮をとることで子宮の病気はまずなくなります。
 避妊・去勢手術をすることによって引き起こされる悪い点としては、太りやすくなる子がいるという点です。しかし、食餌によるコントロール(食餌量を減らしたり、食餌の種類を変えるなど)することにより、体重を維持することは容易です。


 猫ちゃんは病気を予防するという考えより、マーキングの予防、発情での鳴き声の予防などの意味合いが大きいようです。確かに避妊・去勢手術をすると予防はできます。小さいころに手術を行うと、気持ちは子供のまま成長することが多いので、なつきやすくなるというのもあります。さらに、外に出る子の場合は外に出なくなったり、外の猫ちゃんとの交尾もなくなり、喧嘩も最小限に抑えることができるので、猫エイズや猫白血病に感染する可能性も低くなります。手術をすると引き起こされる悪い点は、犬と同様です。


 よく勘違いされて方がいらっしゃるのですが、避妊・去勢手術をすると寿命が短くなるとか、一回子供を産まないと子宮の病気や癌になりやすくなるとか・・・。医学的には根拠はないといわれています。先ほども書いたように、最初の発情が始まる前に避妊手術を行えばかなりの高率で乳癌の発生を抑えることができまし、卵巣と子宮を摘出してしまえば、子宮の病気になることはありません。


 避妊・去勢手術をすることにかなりの抵抗を感じている方が多いのも事実です。その大きな理由は、痛そうで可哀相だから、麻酔をかけると寿命が縮まるから、自然のままに生きてもらいたいという方がほとんどです。が、実際はそうとも限らず、痛みに関しては通常2〜3日程度で感じなくなります。現在は痛みを抑えるための鎮痛剤もあります。食欲もほとんどの子は次の日から普通に戻ります。麻酔をかけることによって寿命が縮まるということはまずありません。様々な防げる病気をなくすために、さらには一日でも長くワンちゃん、猫ちゃんと楽しく暮らしたいとお考えの方は、ぜひ避妊・去勢手術をお勧めします。


意外と怖いノミ(2003.7.12 up)

 暖かくなってきましたね。ワンちゃん、猫ちゃんには過ごしやすい季節ですし、発情のシーズンなので、避妊、去勢を行っていない子供を産ませたくないと思っていらっしゃる飼い主さんは十分に気をつけてくださいね。
 さて暖かくなってきたこの季節、やはりノミがたくさん増えてきます。そこで今回はノミについて少しお話したいと思います。

<ノミの生活環>

 ノミにもたくさん種類(ネコノミ、イヌノミ、ヒトノミ)がありますが、通常犬や猫に寄生するノミはネコノミ(犬では92.4%、ネコでは99.8%がネコノミの寄生)といわれています。動物の吸血を行うのは成虫だけで、その他の時期(卵、幼虫、サナギ)は動物の体の上ではなく、環境中(マット、じゅうたん、畳など)で生活しています。ノミの成虫が動物の体に寄生した場合、原則的に一生体から離れることはないと言われています。また、ノミの成虫は全生活環の約5%しかいないといわれています。残りの95%は未成熟なノミ(卵、幼虫、サナギ)です。ノミの幼虫が発育するのに最も好ましい条件は、18〜27℃、湿度は75〜85%といわれています。
 ノミは血を吸う昆虫ですが、先ほども書いたように成虫しか吸血することはありません。ノミの生活環は、成虫→卵→幼虫→サナギ→成虫・・・・・と繰り返されます。もうちょっと詳しく書くと、ノミの発育しやすい環境にもよりますが、条件が良ければ寿命は3〜4週間といわれています。この間に雌の成虫は1日に10〜50個の卵を、一生に200〜1000個の卵を産むといわれてます(一頭の動物にノミが10匹いたら・・・、おそろしいです)。卵は1〜2日で孵化し、幼虫になります。幼虫は主に成虫の糞を食べて成長していき(ちなみに成虫の糞はほとんどが血液の成分です)、7〜10日の間に2回脱皮して3齢幼虫(幼虫のさらに大人になった幼虫)になり、その3齢幼虫は糸を吐き出し繭(マユ)を作りその中でサナギになります(ゴミも一緒に集めて繭を作ります)。サナギは5〜10日間繭の中で過ごして脱皮し、成虫になります。繭は乾燥している環境や殺虫剤などの駆虫薬に対して、強い抵抗性を持っています。よって、この時期はバルサンなども意味がありません。成虫は繭の中からすぐに出ることはなく、猫やその他の動物(人もですよ)が通る振動や体温、吐息の二酸化炭素を察知すると、繭から脱出して動物に飛び移ります。上記のような刺激がないと、成虫は繭の中で数ヶ月間生き続けることができます。
 以上がノミの発育についてです。わかりにくいですかね?
 ちなみにノミの発生時期は、暖かくなってきてから寒くなるまで(その年にもよりますが、だいたい4月〜10月)となっています。しかし、最近は人間が快適に暮らせるように室内の環境がかなり良くなっているため、一年中ノミの発生を繰り返すことがあります。

<症状>
 ノミが寄生した場合、次のような症状を起こします。ほとんどの子が痒みから始まりす。腰・お腹・背中に脱毛や皮膚の赤み、湿疹ができます。ノミが寄生することで起こる病気としては、ノミアレルギー性皮膚炎、ノミの感染が重度な場合は貧血、皮膚における細菌の二次感染、瓜実条虫の感染、猫ひっかき病、人のノミアレルギー性皮膚炎などなど・・・。
 通常ノミの成虫を見つけるのはかなり苦労します。獣医さんやなれた人はノミの糞を見つけることによってノミの寄生を確認します。一匹の成虫を見つけた場合、通常はその10倍以上の成虫が寄生しています。

<ノミの予防>
 ノミの予防には、飲み薬、首輪、スポットタイプ(首の後ろなどに垂らす)があります。いずれの予防薬でも対処できます。持続効果も1〜3ヶ月と薬により様々です。また、ノミの予防薬のタイプには、発育阻害剤、成虫駆除剤があります。詳しくはかかりつけの動物病院へお尋ねください。
 予防期間は、その場所や年にもよりますが、4月〜10月頃までですが、先ほども書いたように、一年中予防することをお勧めします。


<まとめ>
・ノミの生活環は、成虫→卵→幼虫→サナギ→成虫・・・・・と繰り返す
・成虫の寿命は条件がよければ3〜4週間
・雌の成虫は1日に10〜50個の卵を、一生に200〜1000個の卵を産む
・卵は1〜2日で孵化し幼虫に
・幼虫は7〜10日でサナギに
・サナギは5〜10日で成虫に
・卵から成虫になるまでの期間は、条件の良い環境では2〜3週間で、悪い条件では180日以上
・成虫になっても繭の中で潜み、猫やその他の動物(人もですよ)が通る振動や体温、吐息の二酸化炭素を察知すると初めて外界へ脱出する


猫にもフィラリア?(2003.5.8 up)


猫のフィラリア症(犬糸状虫症)について

 この病気は犬のフィラリア症と同種の寄生虫が、蚊の媒介によって感染します。猫ではまれな疾患ですが、感染してしまうと突然死する例もあります。また確定診断が難しく、診断されても治療が困難です。しかし予防は可能ですので、犬でのフィラリア症の発生が多い地域では予防対策を考える必要がありますよ。
先日も原因不明でしんどそうな猫ちゃんが来院されました。食欲なく、元気もない、しんどそう・・・。呼吸も少しおかしい。念のため血液検査をしても特に問題ない、聴診で肺の音が荒いんだけどな〜。血液を染色液で染めてみると、寄生虫がいたりアレルギー性疾患などで増える細胞がたくさんある。もしやと思いレントゲンを撮ると、フィラリアに感染している時に見られる像が・・・。あっ、ひょっとしたら、えらいこっちゃ〜。亡くなってしまうかもしれないと十分にお話した後、症状に応じた処置など様々な処置をしました。数日後から食欲が出てきて、なんとか今は普通の状態になってます。確定診断は下記の理由でできませんが、疑いはあるまま・・・。たぶんそうだったのかな?なんて思っています。怖い病気です。皆さんも十分に気をつけてください。

<原因>

 蚊の吸血時に、犬糸状虫(フィラリア)の子虫が猫の体内に侵入することで、感染が成立します。侵入した子虫は猫の体内で成長し、最終的には肺動脈(心臓から肺に向かう大きな血管)に移行してそこで成熟します。なかには中枢神経系や皮下に迷い込む虫体もあります(これを異所性迷入といいます)。犬と違い、フィラリアの寿命は2〜3年と言われ、成虫の大きさも犬より小さいと言われています。ただ、犬に比べて心臓がえらい小さいですからね・・・(フィラリアの詳しいことは、前回までの病院だよりを見てくださいね)。

<症状>

@無症状
A慢性経過をとる場合;咳や呼吸困難、嘔吐、食欲不振、嗜眠(よく眠る)傾向など。
B急性経過をとる場合;劇的な突然死(肺動脈の急性閉塞による肺機能不全と考えられます)

<診断>

 特異的な症状に乏しく、寄生虫体数が少ないことなどから、診断は容易ではありません。有効な診断法は、X線検査、超音波検査、血液検査などで、猫の症状や飼育環境と合わせて総合的に診断します。

<治療>

@症状に応じた治療を行います(対症療法)
A外科的に虫体を取り出したり、駆虫薬を投与して虫体を死滅させる方法がありますが、いずれの方法も危険性はかなり高くなります


<予防>

犬と同じように蚊のいる間、月一回の割合で予防薬を飲ませることによって予防は可能です。

まれな病気で、まさかの病気ですが、怖い病気です。十分に気をつけてくださいね。詳しくはかかりつけの獣医さんに相談してくださいね。


フィラリア(犬糸状虫症)について(2003.4.4 up)

フィラリアに感染しているワンちゃんは多いですね。きちんと予防をしていればかかることのない病気です。住んでいる都市(北は北海道から南は沖縄まで)によって予防する期間が違いますので、主治医の先生の言われるとおりに予防してくださいね。

 フィラリア(犬糸状虫症)とは、蚊の媒介によってワンちゃんの心臓や肺動脈に寄生する寄生虫疾患です。寄生するとほとんどのワンちゃんが右心不全を引き起こし、肝臓、腎臓、肺などの臓器に障害を与えてしまいます。
 
 <感染経路>
 どのようにワンちゃんへ感染するのでしょうか?それは、感染しているワンちゃんの血を吸った蚊が飼っているワンちゃんの血を吸うことにより感染が成立します。蚊はいわゆる媒介動物になります。ワンちゃんの体の中に入ったフィラリアの幼虫は、皮膚から筋肉を通り成長しながら約2ヶ月かけて血管へ到達します。血管へ到達した幼虫は、心臓や肺動脈に向けて進んで行き、巣を作ります。そこでさらに成長します。一般的に感染してから6ヶ月で成虫になるといわれています。成虫になったフィラリアは交尾をし(雄雌がいるので)子虫を作り出します。その子虫が血液の中を循環し、さらに蚊の媒介によって感染をひどくしたり、広げたりします。
 ここで言う子虫とは、心臓の中で成虫が交尾してできた子供の虫の事を言っています。幼虫とは他のワンちゃんから蚊を介して感染した虫の事を言っています。分かりにくいですね。
  
 <主な検査方法>
 病院で行っている検査方法には2通りあり、
  @子虫を見つける方法と、
  A成虫がいるかどうか確認する方法があります。
 いずれも血液が必要になります。
  @はフィルターを用いたり、遠心器を用いて顕微鏡下で子虫を見つける方法です。子虫が存在するということは、成虫が存在するということになります。よって、フィラリアに感染しているということがわかります。
  Aの方法は、検査キットを使ってフィラリアの成虫が存在するかを見る方法です。血液を採って検査キットの試薬と反応させたり、直接キットに入れたりして成虫がいるかキットで見ます。成虫がいれば「陽性」、いなければ「陰性」となります。
 ここで大事なのは、子虫がいないからといって成虫がいないとは言い切れないところです。繁殖能力の低い雌の成虫や雄しかいない場合などは、子虫が産み出されることはないので、@の方法ではフィラリアの存在を見落とすこともあります。しかし、フィラリアの予防薬を主治医の先生の指示通りに飲んでいれば、通常は感染することありませんので安心してください。
 
 <症状>
 症状はどんなものか?犬糸状虫に感染したワンちゃんの症状としては、咳、散歩や運動を嫌がるなどが主な症状になりますが、重症になってくると、腹水がたまり慢性的な経過をたどって亡くなります。また、犬糸状虫症には突然赤い色の尿(血尿と違い血色素尿といい、血が壊されて赤ブドウ酒のようないろのおしっこをします)と虚脱状態、喀血、嘔吐、下痢などの症状をきたす急性の場合もあります。このような場合は死亡する可能性が高まります。
 
 <ここまでわかれば・・・>
 ここからは少し詳しく書きますよ。なぜそのようになるか・・・。正確に言うと犬糸状虫は主に肺動脈に寄生するのですが、そこに寄生することによって肺高血圧症(肺性心)という状態に陥ります。肺高血圧症になると右側の心臓が肺へ血液を送るのに頑張りすぎて二次的に右心肥大が起こります。さらには肺動脈に寄生した虫の排泄物や分泌物が刺激になって肺動脈の硬化症になります。そのため、さらに心臓に負担がかかり、結果的には心不全になります。心不全になると、心臓が思うように動かないので全身の臓器(肺、肝臓、腎臓など)に血がたまってしまい、うっ血を起こて肝硬変、腎不全など各臓器の機能不全になります。いわゆる多臓器不全になるので、このようになると各臓器は元の健康な状態に戻ることはありません。治療もいわゆる対症療法(症状を緩和する治療方法)になります。
 一番怖いのが、急性に経過をたどる場合です。さっきも少し書きましたが、突然赤い色のおしっこをしたり、急性循環不全(虚脱状態)、喀血、嘔吐、下痢など急な症状が出てきた場合は早急な治療が必要になります。いわゆる「大静脈症候群」と言われる状態です。通常はフィラリアの虫体は肺動脈もしくは右心室に住んでいるのですが、突然右心房(右側の心臓の上の部屋)と右心室(右側の心臓の下の部屋)の間にまたがって寄生してしまうのです。右心房と右心室の間には三尖弁という上の部屋と下の部屋をわける弁があります。この弁が閉まらなくなることにより急性の循環不全が起こります。こうなった場合は、虫体を摘出する手術をすぐに行う必要があります。その前にショックで死亡するかも・・・。
 
 <治療>
 主な治療方法は残念ながらありません。だから予防をした方がいいのですよ。感染した場合、様々な方法で維持などをしていきます。フィラリアに感染した心臓はすでに悪くなっているので、その悪くなった心臓を治すことはできません。よって、いかに心臓へ負担をかけずに今後を過ごしていくかというのが治療?目的になります。これ以上フィラリアが増えないようにフィラリアの予防薬を飲みながら心臓の薬を飲んだり、気管支拡張剤をのんだり、利尿剤を飲んだり、抗血栓薬を飲んだり、などなど・・・、その時々のワンちゃんの状態により異なります。主治医の先生とご相談ください。
 ワンちゃんの状態がよければ成虫を駆除する方法もあります。しかし、体にかなり負担をかける薬になりますので、駆虫前に心臓の検査や血液検査などを行い、駆虫ができる体かチェックしてからになります。高齢の場合あまり適しません。

 <最後に>
 臨床症状(咳、散歩や運動を嫌がる、やせてくる、貧血など)がでてくるまでにはある程度長い年月がかかります。早めの検診を受けて、フィラリアの予防または駆虫をすることをお勧めします。


予防できる病気について(ワンちゃん編)(2003.3.10 up)

ワンちゃんには予防しておいた方がよい病気がたくさんあるんですよ。

@ 狂犬病
 これは人畜共通の法定伝染病のひとつで、ワンちゃんを飼っている人には接種する義務があり、法律で定められています。生後91日齢以上のワンちゃんで接種することができます。狂犬病を接種していないワンちゃんが人間を噛んだりした場合、ワンちゃんの狂犬病鑑定を行わなければいけなくなり、法律で定められた期間、ワンちゃんの散歩や外出ができなくなります。必ず接種してくださいね。

A 混合ワクチンで予防できる病気
 混合ワクチンには一般的に5種、8種、9種とあります。5種には「犬ジステンパー感染症、犬アデノウイルスU型感染症、犬伝染性肝炎、犬パラインフルエンザウイルス感染症、犬パルボウイルス感染症」が入っています。8種には5種+「コロナウイルス感染症、レプトスピラ感染症(黄疸出血型とカニコーラ型の2種類)」が入っています。9種には8種+レプトスピラ感染症がもう一種類入っています。感染経路は基本的には糞や尿、汚染された物(タオルや衣服でも)を介して感染します。

B フィラリア
 蚊が媒介して、心臓に寄生虫が住みつく病気です。フィラリアに感染している動物の血を吸った蚊が、愛犬を刺すことによって感染します。5月〜12月まで月一回予防薬を飲むことにより感染を予防できます。飲み始める前には必ず検査を受けてからのみ始めましょう(年間投与している人は検査は必要ありません)。最近では年2回の注射で一年中予防できる予防薬もあります。また、今年から滴下タイプの予防薬も出ました。詳しくは動物病院でお尋ねください。

C ノミ・ダニ
 ノミやダニは散歩に行くとワンちゃんは楽しくて草むらに入って行ったり、野原を歩いたりしますよね。そんなちょっとした事でも簡単に寄生します。ノミについては条虫という寄生虫をワンちゃんに移したり、皮膚炎をおこしてものすごく痒い思いをさせてしまいます。ダニはバベシアという血をどんどん壊していく血に感染する虫を媒介します。そうなるとワンちゃんの血がどんどんなくなっていき、亡くなる子までいるくらい危険なものです。しっかり予防することをお勧めします。
 ノミの予防には成虫駆除剤と発育阻害剤の二種類の予防薬があります。いずれもノミを予防してくれます。投与タイプは滴下式、内服とがあります。

それぞれの病気についてはまた詳しく説明していきたいと思います。次回はフィラリアについて少しお話したいと思います。お楽しみに・・・。


くっくっ苦しい〜(2003.1.8 up)

年明け早々、こんなことも・・・。お雑煮はおいしいですね。お澄まし、味噌仕立てなどなど、土地によっていろいろありますよね。私はどちらも好きです。まさか、ワンちゃんや猫ちゃんにお雑煮を食べさせる飼い主さんはいないと思いますが、ちょっと目をはなしたすきに「パクッ、モグモグ・・・、うっくっくっ苦しい」となることもあります。まさかとお思いでしょうが、実際にあることなので注意してください。
おもち自体に毒性などはないのですが、熱いのと粘り気があるために、口の中や食道に張り付いてしまうと、さぁ大変。熱さのあまり暴れまくる子もいれば、火傷のため食べ物が通ると痛くて食欲が低下することも・・・。そのくらいで終わってくれればかわいいものですが、詰ってしまったら気管や心臓を圧迫して呼吸停止や心停止を招くこともありますので(気管の中に入ったらもっと大変かも・・・、窒息したり、肺炎になったりしますよ)、十分盗食には注意してくださいね。
今回は「おもち」について書いていますが、おもち以外でも似たような事が起こることがあります。例えば、とうもろこし、りんご、鈴、ボール、靴下などなど口から入る可能性があるものは、火傷はないにしても気管や心臓を圧迫して同じ症状に陥ることがあります。消化吸収ができない物では吐かせることができない物もあるので、内視鏡や胃切開を行い異物を取り出さなければいけないこともあります。十分に注意してくださいね。

予期せぬ事故(2002.12.5 up)

寒くなってきましたね。ワンちゃん、猫ちゃんは体調を崩さないように気を付けてくださいね。
さて、今回は思いもよらない事故について書きたいと思います。
寒くなってくるとお部屋を暖めようと、ファンヒーター、ストーブ、コタツ、ホットカーペットなどをつけて部屋を暖めますよね。また猫ちゃんは暖かい所を求めて移動したりするので、暖かい浴槽の蓋の上に座って・・・、などなど、そんなときに起きる事故があります。特に活発な子犬、子猫、ウサギさんに多い事故が、電気コードなどをかじることによって起こる「感電」です。軽症から重症まで結構多いんですよ。軽症の場合は、口唇の火傷程度ですみます。だんだんひどくなると、舌の火傷により口の中が痛くて食べることができなくなる子もいます。さらにひどくなると、肺水腫や心停止を起こしてしまいます。ここまでくると、亡くなる可能性が高いですが・・・。軽症・重症ありますが、年に数回はおきる事故です。ちょっとした飼い主さんの油断や、見ていられないところの事故になりますので、あらかじめ予防措置をとっておくほうがよいかと思います。
火傷についてですが、温まろうとストーブの前に立っていてズボンを引っ張られてめちゃくちゃ熱い思いをしたことはありませんか?動物の毛も同じようなことが起こります。外見上は大丈夫でも、皮下織(皮膚の内側)に火傷をしている場合もあります。また浴槽などに落ちて全身火傷になると、ほとんどの動物は亡くなってしまいます。毛があるために皮膚そのものがなかなか見えず、発見が遅れることが多いです。症状は脱毛、皮膚のタダレや壊死(皮膚が腐って剥がれ落ちてきます)、脱水、食欲元気の低下、などと一週間以上かけてゆっくり進んでいきます。
寒くなってきて起こる意外と怖い事故になりますので、十分に注意してください。


クリスマスシーズン到来!!(2002.12.5 up)


クリスマスといえば、チキン!!。ケンタッキーフライドチキンがよく売れて、うらやましい限りです。でも、売れるだけあって美味しいですよね。フライドチキンを買われる方も多いと思いますが、十分に注意してくださいね。この季節になると必ずといっていいほど、鳥の骨を食べてしまって来院されるワンちゃんがいます。牛や豚の骨とは違い、鳥の骨は縦に裂けますので口の中やその奥の消化器に突き刺さることがあり、非常に危険です。最悪の場合には開腹手術により鳥の骨を取り出すことも考えられます。もし、そうなったらワンちゃんは数日間の絶食が必要となり、楽しいクリスマスはもちろんのこと、経過がよくなければ、お正月も台無しになってしまうかもしれません。台無しといってもワンちゃんにクリスマスケーキやおせち料理はお勧めできませんが、飼い主さんがブルーになるのは間違いなしです。飼い主さんもわんちゃんも楽しく年末年始を迎えるため、鳥の骨には十分気をつけてくださいね。


犬の老齢疾患について(2002.11.1 up)

歳を取ってきたワンちゃんは、年齢とともに体の様々な場所を酷使し疲れてきていると思います。さて、歳を取ってきたワンちゃんにはどんな病気があるのでしょうか?すべてを挙げるときりがないので、多いものを取り上げたいと思います。

ボケ;ワンちゃんもボケるのです。一般的には7歳以上が高齢といわれる場合が多いです。初期症状のうちに発見すると食餌療法により、ひどい症状を抑えられることもできますが、初期段階では多くの場合は症状が見過ごされるます。これを発見するには、飼い主さんがいかにいつもワンちゃんに触れ合っているか、よく見てあげているかにかかってきます。症状としては、食欲の亢進、耳が遠くなる、粗相をするようになる、首と尻尾を下にさげたままになっている、活気がない、壁を目の前にしても後ろに下がれない、徘徊する、夜も昼も関係なく泣き叫ぶなどがあります。
これから高齢犬が増えて行くと思われますので、愛犬のいつものしぐさを気をつけて見ていて怪しいしぐさを見つけたら、お近くの動物病院にご相談してくださいね。

前立腺炎;雄犬特有の病気です。精巣から出るホルモンにより、前立腺に炎症を引き起こします。よって、早期に去勢手術をしている場合は発生率が非常に低いといわれています。現在、この病気になった場合は、去勢手術を行う場合や抗生剤の内服、前立腺の炎症を引かせる薬などを使って治療をします。治るのまで時間がかかるので、結構大変な病気ですよ。

子宮蓄膿症;避妊手術をしているワンちゃんには起こりませんが、子宮に膿がたまる病気です。簡単に考えていると、亡くなってしまうほどの恐ろしい病気です。発見が遅れると、子宮にたまった膿の毒素が体全体を回り腎臓などを犯し、急性腎不全で亡くなります。症状は、食欲・元気の低下、陰部より血や膿が出てくる、多飲・多尿、眼の充血などがあります。そのような症状がある場合、すぐに来院をお勧めします。状況によっては、当日の手術になることもあるくらいの緊急疾患です。

脊椎疾患;簡単に言うと、椎間板ヘルニアみたいなものになります。ダックスフント、ビーグルなど胴の長い犬種が比較的多い気もしますが、柴犬やその他の犬種でも脊椎疾患になります。さて、どんな子がなるのか?肥満、階段やマットを昇り降りする子などに多く発生します。症状は、体を触ると痛がる、後ろ足がもつれるというのが初期症状になります。その後は後ろ足に力が入らない・・・などなど。脊椎疾患が進行すると、お家での管理が大変です。ひどい場合は後ろ足が麻痺して立ちにくくなり、排尿や排便が困難になり、最終的には起立困難・不能になります。そこまで行くと、治療は困難です。早期に見つければ、内科的療法や外科手術などでよくなることが多いです。

心疾患:2002.10.11upの「病院だより(年をとったワンちゃん、要注意です。)」で書きましたが、歳を取ってくると心臓も常に動いていますので疲労が起きます。この病気にかかるワンちゃんは潜在的多いと思います。見逃していませんか?症状は運動を嫌がったり、咳をしたり、じっとしてる、横になって寝れないなどがあります。早期に診断がつき、お薬を飲み始めると、症状は改善し、心臓の負担も軽くなるので長生きできます。末期になると、肺水腫といって、心臓の動きが悪いために肺に水がたまり呼吸がしにくくなります。そうなると治療である程度は改善しますが、悪くなった心臓自体が元に戻ることはありません。怪しいな?という症状が出てきた場合または歳を取ってきた場合は心臓の検査をお薦めします。レントゲン検査や超音波検査、心電図検査などである程度心臓の状態を把握することができます。

腫瘍;平たく言うと癌やイボのことです。若いうちに避妊手術、去勢手術をすることで、予防できるものもあります。早期不妊手術で予防できる腫瘍は、乳腺腫瘍、前立腺癌、肛門周囲腺癌、セルトリー細胞腫などです。しかし、予防できない腫瘍もあります。体の表面にできる腫瘍は比較的目に付きますので分かりやすいですが、小さいうちに動物病院にて確認してもらい、切除したほうが良いものは腫瘍が小さいうちに切除するほうが麻酔時間が短いので、ワンちゃんに負担がかからずにすみます。体の中にある腫瘍(胸やお腹)は、触診、レントゲン、超音波検査にて分かることがほとんどです。歳を取ってきたら定期的な検査を行い、早期発見早期治療に努める事をおすすめします。

関節炎;長い間生きていると、たくさん歩いたり走ったりしますね。この病気は特に肥満のワンちゃんに多いです。足を酷使すると、関節内の潤滑液がなくなり骨と骨が擦れ合って炎症を引き起こします。そうなると、足をひきずったり、足が痛くて歩けなくなり、ひどい場合には起立困難になる子もいるくらいです。現在は痛み止めや関節のお薬を飲むと時間をかけて回復していく場合が多いので、なるべく早くに病院に行き治療をしてもらいましょう。


交通事故に気を付けてください(2002.11.1 up)

 交通事故にあうワンちゃん、猫ちゃんが増えています。特にワンちゃんに関しては、飼い主さんの認識不足によるものもあります。散歩の時だけではなく、抱っこして外出の時もリードや胴輪を付けることは基本中の基本になります。ワンちゃんは相手にしてもらいたくて突然走り出したりします。「うちの子は大丈夫」と言われる方もいらっしゃいますが、事実、家の鍵を閉めようとして愛犬を下において鍵を閉め、振り返った瞬間に車に引かれて亡くなってしまった子もいます。これ以上悲しい結末はありません。大事な家族の一員を亡くさないために、必ずリードや胴輪をつけてください。
 また交通事故だけでなく、他にもあります。散歩中にリードを離し何か食べ物を加えて帰ってきて、飼い主さんの目の前でその食べ物を食べました。その食べ物とは殺鼠剤入りの食べ物で、中毒を起こし亡くなってしまった子もいます。その他には、「うちの子は絶対咬まない」とおっしゃっていた飼い主さんのワンちゃんが、突然ものすごく興奮し、人間とワンちゃんを咬んでしまったこともあります。ワンちゃんは興奮するとどんな行動を取るか予想できない事も多々あります。ぜひ皆さん気を付けてくださいね。


猫ちゃん、注意してね・・・(2002.10.11 up)

 朝晩がの冷え込みがだいぶ厳しくなってきました。これから猫ちゃんと飼い主さんにとって、注意しないといけない季節になります。
 季節の変わり目にあるよくある病気は、「おしっこが出ない、おしっこに血が混ざっている」という症状で来院されます。いわゆる膀胱炎や尿石症(猫泌尿器症候群:FUS)です。症状的には、血尿、排尿障害が多く見られます。その状況に気がつきすぐに来院すれば大事には至らないことが多いですが、遅れたり、尿が出ない日が3日ほど続くと死亡することがあります。死亡しないまでも、尿毒症という重篤な状態になり入院を余儀なくされることがほとんどです。
 原因は様々ですが、単純に細菌性膀胱炎、結石または結晶にによる排尿障害により膀胱炎になります。細菌性の場合は抗生剤の治療で治ることもありますが、結石または結晶の場合は食餌を改善しなければ、再発したり、排尿困難になったりします。基本的には尿石症の場合は完治することはないので、一生処方食が続くことになります。処方食を食べることで、猫ちゃんが快適な生活を送れるよう皆さん頑張って処方食を食べましょう。
 ちなみに、尿石症には「ストルバイト(リン酸アンモニウムマグネシウム)、シュウ酸カルシウム、尿酸アンモニウム、尿酸」などがありますが、一番多いのはストルバイトと言われるものです。処方食にはそれぞれにあった処方食がありますので、一度お近くの動物病院で尿検査をしてもらい、症状にあった処方食を出してもらいましょう。


年をとったワンちゃん、要注意です。(2002.10.11 up)

 寒くなってくると咳をするワンちゃんが増えてきます。咳をするといってもピンと来ない方もいらっしゃると思いますが、風邪を引いているだけと思ってはいませんか?実は心臓が悪くて咳をしているワンちゃんもたくさんいます。運動や動いた後に咳をする、興奮した後に咳をする、横になって寝ることができない・・・、などの症状がある場合はなるべく早くに近くの病院へ行くことをお勧めします。
 一般的に朝晩の気温の温度差が10度以上ある場合は、心疾患を持っているワンちゃんは咳が出やすいとされています。また、気温が寒くなり、乾燥状態が続いた場合も同様です。
 心臓は血液を全身に送るポンプの役割をしています。心臓が悪くなると血液の流れが悪くなり、血液中の酸素や栄養分が効率よく全身にいきわたらなくなります。そうなると血液の滞る部分が出てくることもあります。心疾患に多い症状は、肺に水が溜まる「肺水腫」です。肺は新鮮な空気を入れるところになるので、肺に水が溜まりだすと呼吸するスペースがなくなるので、少し運動するだけで苦しくなったりします。また横になると片方の肺に水が偏るので、苦しくてすぐに起き上がってしまいます。肺水腫とは分かりやすく言うと、「水におぼれている状態」です。それは苦しいと思います。通常利尿剤などの処置をすることにより、肺水腫は改善しますが、重度の場合は入院し酸素吸入などの処置が必要になることもあります。そうなると、亡くなる可能性があるくらい心疾患の症状が進んでいるということになります。
皆さん家族の一員として、よ〜くワンちゃんを見ていてくださいね。
一度悪くなった心臓は元には戻りません。今ある心臓の負担をいかに軽くして楽しい生活をするか、それが心臓疾患と分かった後に考えていくことです


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こおりやま動物病院