長良川河口堰と鮎の遡上問題
水質班
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環境への配慮
 河口堰は川を遡上してくる魚など、環境への配慮がなされている。その1つに魚道の整備がある。魚道とは魚類の遡上、降下のための施設で、長良川河口堰には呼び水式魚道、ロック式魚道、せせらぎ魚道が設置されている。呼び水式魚道とロック式魚道については、アユのそ上期(2月1日〜6月30日)には11t/秒、その他の時期には4t/秒の水を確保して流している。このように、魚道に対して優先的に流量を確保することで川の生態系に配慮している。
 また、河口堰から伊勢湾にかけては干潟が広がっていて、野鳥やシジミなどのすみかとなっている。さらに、浚渫した土砂を干潟に再利用することで、環境への負荷の低減を図っている。







河口堰完成による効果
 長良川河口堰が完成したことにより、海水(塩分)の進入がせき止められて、真水が得られるようになる。 それは貴重な水資源となる。木曽三川の水を利用している地域では、最近の18年間のうち、必要な水を十分取ることが出来なかった年が12年もあった。中部圏は毎年のように水不足に悩まされているのだ。 長良川河口堰は貴重な水を生み出すことができ、中部圏に水道用水、工業用水を安定的に供給することができる。このようにうまれた貴重な水資源は地元の発展にも役立つ。
 中部圏は中部国際空港(愛称:セントレア)が開港するなど、これからも発展が見込まれている地域だ。 地域の経済や社会が発展し、生活が向上してくると水の使用量が増えることが予想される。 長良川河口堰の水はこの需要を支え中部圏の発展に役立つ。水資源は不足したからといって、すぐ開発できないのが現状だ。長良川河口堰は中部圏の発展とそれに伴う将来の水使用量の増大を見通したものである。私たちの生活に水はかかせない。したがって、いつ訪れるかわからない大渇水にそなえ貴重な水を確保しておかなくてはならない意味でも、河口堰が果たす役割は大きいといえる。
 河口堰の水は周辺の都市だけでなく、知多半島にも運ばれている。知多半島には昭和36年に造られた愛知用水が既に稼動している。この愛知用水は水源の確保に困っていた愛知県、知多半島などの人々の生活に大変役に立ってきたが、その地域に生活する人が増加し、愛知用水の水だけでは不足するようになった。また、木曽川での水開発にも限りがあったことから、長良川の水を知多半島まで送るための導水路が計画された。 工事は下流部の約29kmは愛知県の企業連合が造り、取水施設と上流部の木曽川を渡った所までの約5kmは水資源開発公団が平成4年に造り始め、平成10年3月に完成させた。



参考資料
 アクアプラザながらの展示パネル
 アクアプラザながら パンフレット「長良川河口堰とともに「川・人・いのち」(2005)
 独立行政法人 水資源機構 長良川河口堰管理所「長良川河口堰調査報告書」(2005)
 日本自然保護協会 報告書「長良川河口堰事業の問題点・第3次報告」(1996)
 日本自然保護協会 報告書「長良川河口堰が自然環境に与えた影響」(1999)
 日本自然保護協会 報告書「河口堰の生態系への影響と河口域の保全」(2000)
背景:長良川河口堰
右・右奥:魚道のようす