人文地理学
経済地理学
経済活動の空間的異質性を説明する地理学。各種産業に注目した産業地理学(農業を扱う農業地理学、工業を扱う工業地理学、商業を扱う商業地理学などがある。)
消費者行動に注目した消費地理学、産業等の立地展開に注目した経済立地論などが主要なテーマ。これらは、人文地理学の中でも議論されることが多い分野である。そのほかの分野として、近年、英米の地理学者を中心に、小売業の立地的側面、金融的側面、消費者行動的側面など小売業を多面的に扱った新しい小売地理学や、経済活動の文化的側面に注目する傾向、そして、グローバルな経済活動がもたらすさまざまの問題を帝国主義や世界覇権とのかかわりで論ずる批判地理学が現れている。だが、日本ではこの分野の研究者は少なく、発展途上の段階にある。
社会地理学
社会階層や社会構造など社会学に関するテーマに対する地理学。具体的には、民族問題や過疎・過密、女性問題やコミュニティの問題などを扱う。
政治地理学
政治に関する地理学。過去には、軍事侵略や植民地に関するテーマを扱っていた。現在は、学区域の問題や国政や地方行政や国際関係と地理との関係を主流にする。最近では、地理学で政治を扱うと、学問の性質上、地方自治にスポットがあてられることが多いので、この分野を敢えて行政地理学という表現をすることもあったが、近年では、グローバルな政治の問題も、新しい地政学などとしてしばしば取り上げられる。
都市地理学
都市特有の現象を扱う地理学。交通網・移動、犯罪・非行や、都心・郊外に関するテーマなどを扱う。経済地理学・社会地理学と連携を密にすることが多い。また、都市計画学、都市工学、都市社会学などの分野ともしばしば連携される。
歴史地理学
地理学では、通常の時間軸は現在であるが、歴史地理学は過去である。歴史的な現象・事柄の文献学的な意義のみならず、地理学的な意義を求める分野である。歴史学の一分野としても扱われるが、通常は地理学の分野である。民俗学と連携をとることもある。
文化地理学
文化や風俗を扱った地理学。宗教施設や、祭りなどを考察対象とする。民俗学・文化人類学・社会学などとの連携をとることもある。
宗教地理学
宗教に関する地理学。地理学では、多くは宗教の教義や思想的なアプローチは行わず、宗教の社会的・文化的役割とその関係を見ることがほとんどである。文化地理学の一分野でもある。
人口地理学
人口問題・人口移動・人口政策などを扱った地理学。単独ではなく、社会地理学や経済地理学の一分野にされることもある。
集落地理学
人間の居住形態である集落というものに対する地理学。大きな括りをすれば、農村地理学や都市地理学もこの一分野である。
農村地理学
農村に関する地理学。集落地理学や農業地理学との連携が大きい。
交通地理学
交通に関する地理学。交通網の発達と立地展開の関係、日々の人々の移動に関する研究などを扱う。計量的に分析することが多く、鉄道網や道路網に対する知識や関心はその前提と見なされている。都市地理学や経済地理学などとの連関が多い。
病理地理学
伝染病・風土病などの疾病の地理的な分布・伝播を扱った地理学。医学の専門的な知識を求められるため、地理学の一部門でありながら、人文地理学で論じられることは稀である。
言語地理学
言語や方言に関する地理学。方言の分布など探る。ただし、社会言語学的な性質が強く、人文地理学の一分野と見る論者は少なく、また議論になることも稀である。