その3
しかし、その光のかたまりは、飛影くんをかすめたかと思うと、そのまま下へ落ちていってしまいました。
「!?」
ドシーン!という音が響いたかと思うと、その光はやがて消えてしまいました。
不思議に思った飛影くんは、するすると木の下に降りてみました。
するとそこには、大きなソリと、茶色い変な生き物と、そして仰向けにぶっ倒れてる赤い服を着た変な人間が倒れてました。
「こんな夜中に、変な連中がいるもんだな」
と飛影くんはいいました。
すると、赤い服を着た人間は、腰をおさえながらのそりと起きあがりました。彼は座高だけでも飛影くんの背より遙かに高い人でした。
その人間は、飛影を見るとにこりと笑って
「やあ、飛影くん。わしはサンタクロースじゃよ」
と言いました。
「フン。ありがちだな…」
「おや、信じないのかい」
「当たり前だろう。今日はまだクリスマスじゃないんだぜ。なのになぜサンタなんかがこんなところにいる。だいたいそんなものがこの世にいるはずがない」
小さな体に大きな態度で、飛影くんは言いました。
「ほっほっほ。わしの存在を信じない子どもには、わしの姿は見えないはずじゃが」
その言葉に、飛影くんは少し反応しました。
「だったら、サンタなぞがなぜこんなところにいる」
すると、サンタと名乗った男は、どっこいしょと重そうな体を持ち上げて言いました。
「実はのう…。
…君にわしの仕事を手伝って欲しいんじゃよ」
「なんだと」
サンタさんは立ち上がると、飛影くんの3倍ぐらいの大きさになり、小さな飛影くんを見下ろしながらまた言いはじめました。
「実は、わしはクリスマスに向けていつもトレーニングをしているのじゃが、このあいだちょっと無理してしまってのう…。足を折ってしまったんじゃ」
サンタさんは、ソリからひょいと松葉杖を出すと、ズボンのすそをめくって、飛影くんに足の包帯を見せました。
「クリスマスの直前に、間抜けなサンタがいたもんだな」
「なんとでもいいなさい」
サンタさんは相変わらずにこにこしています。
「この町だけでいいから、君にやってもらえんかの。そうしたらわしは、とっても助かるんだがねえ」
サンタさんは、飛影くんの背とあわせようと、けいこ先生のようにしゃがんで飛影くんに言いました。
「ふざけるな。誰がそんなことをするものか」
飛影くんは横を向いて言いました。
「仲良しの友達に、プレゼントを配ってあげられるのじゃよ?
おや…。飛影くん、幼稚園で、何かいやなことでもあったのかい?」
それを聞くと、飛影くんはむっとして
「貴様には関係ない!!」
と怒って、後ろをぷいと向いてしまいました。
「オレは、幽遊幼稚園でいちばん悪い子どもだ。問題児なんだ。仲良しの友達などいやしない!
お母さんだっていないんだ!」
飛影くんは意地を貼りましたが、涙声になっているのが、サンタさんにも、飛影くん自身にもわかりました。
「ホッホッホ…」
と、サンタさんは飛影くんに近づき、彼の頭をポンと撫でました。
「悪い子どものところには、サンタクロースなどきやせんよ」
その言葉で、飛影くんは上を向き、上からのぞいてきたサンタさんの顔を眺めました。
飛影くんは目に涙を溜めていましたが、それが流れるのをぐっとこらえていました。
「クリスマスイブの日、わしはまたここに来るから。 どうじゃ、やってもらえぬかの?」
飛影くんは、目をごしごしこすり、サンタさんの方に振り返り、
「フン…わかった。貴様の間抜けさに免じてな」
と言いました。
「おお、ありがとう飛影くん。それじゃあ、クリスマスにまた会おう」
そう言うと、サンタさんは、ソリやトナカイと一緒に、来たときと同じようにベルの音と光の渦に包まれて、あっという間に消えていってしまいました。
つづく♪
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