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釘の打ち方まで注意する必要性


7.考察

この実験をみていただけたらおわかりだと思うが、本実験における耐力壁の破壊は、釘のパンチングによって生じたことはわかっていただけたと思う。

壁倍率が合板の規定値2.5倍を下回っているかどうかは、複数回試験をしないと不明だが、今回の試験体が標準仕様に比べて耐力が下回っていて、変形も増大していることは見てとれるはずである。

構造用合板貼耐力壁の場合、面材に多数の釘が打たれていて、その隅部から破壊していくため劇的な現象は起きないが、釘の打ち方が全般的な耐力の低下・変形能力の低下に影響していることはわかっていただけたと思う。

また、その他にも釘を打ち付ける木材の端部や側面と釘の間の距離も、釘の耐力に影響を及ぼすことがしられており、構造耐力上は15mm以上合板の端距離確保や、柱・梁の側面と釘の端距離確保することが望ましい。

補強金物の場合は一箇所あたりの釘やビスなどのファスナーの本数が少ないので、釘の打ち方等の影響はより大きい。

筋かい金物では、筋かいに取り付けた釘・ビスと木材の側面との距離が十分取れていないと、筋かいが割れたりして所定の耐力が発揮できなくなる危険がある。

今回は構造用合板貼耐力壁の耐力と、筋かい金物について簡単にふれたが、その他の耐力壁・床構面や各種補強金物類でも、釘の打ち方(ファスナーの設置状態)はその耐力を決定する要因となっている。

仕様や施工要領書をよく理解した上で、施工・監理にあたるのが設計者・施工者の務めである。


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 ©Tahara Architect & Associates, 2003